【9月海外ドラマランキングTOP20】初登場に『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のスピンオフ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』が登場
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2022年に公開された映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のスピンオフ・ドラマ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』が、いよいよ9月20日(金)より配信スタート。ゴッサム・シティを長年牛耳ってきたカーマイン・ファルコーネの死を契機にして、ペンギンことオズ・コブが権力を手中に収めようとする、全8話のクライム・ストーリーだ。
ペンギン役は、映画に続いてコリン・ファレルが続投。カーマインの娘ソフィア役にクリスティン・ミリオティ、ある事件をきっかけにしてオズの子分になる少年ビクター・アギラー役にレンジー・フェリズ、ファルコーネと共にゴッサム・シティを牛耳ってきたマフィアのサルバトーレ・マローニ役にクランシー・ブラウンが出演する。
現時点でまだ1話までの配信だが、まるで、ゴッサム・シティで繰り広げられる“スカーフェイス”のような、ヒリヒリするような犯罪ドラマに仕上がっている。
まずは、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』についておさらいしておこう。もともとこの企画は、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)、『ジャスティス・リーグ』(2017年)でバットマンを演じたベン・アフレックの監督・製作・脚本・主演作品として構想されていた。イランで発生したアメリカ大使館人質事件を描き、第85回アカデミー賞で作品賞を受賞『アルゴ』(2012年)の監督・製作・主演を務めるなど、ベン・アフレックが優れたクリエイターであることは周知の事実。彼の手腕をもってすれば、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)を新たなステージに引き上げてくれると期待されていたのだ。
だが、次第にバットマンへの情熱を失ってしまったベン・アフレックはプロジェクトを降板。代わって、『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2018年)や、リブート版『猿の惑星』シリーズの『猿の惑星:新世紀』(2014年)、『猿の惑星: 聖戦記』(2017年)で知られるマット・リーヴスが監督に招聘される。バットマン役には、ドラマ『トワイライト』シリーズで人気を博し、『TENET テネット』(2020年)にも出演したロバート・パティンソンが抜擢された。
このような経緯を経て制作された『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は、これまでのバットマン映画のなかで、最も陰鬱で最もダークな手触りの一作に仕上がっている。『ブレードランナー』(1982年)のロサンゼルスのように、雨が降りしきるゴッサム・シティ。痩せこけた顔に狂気を滲ませた、ロバート・パティンソンの怪演。劇中にニルヴァーナの『Something in the Way』が流れる、グランジ・ロックな音楽。
マット・リーヴスは、『フレンチ・コネクション』(1971年)、『チャイナタウン』(1974年)、『大統領の陰謀』(1976年)、『タクシードライバー』(1976年)などの作品からインスパイアを受けたと公言しているが、確かにこの映画には、どこか70年代のアメリカ映画を思わせるような、鬱屈したエモーションが渦巻いている。
本作のヴィランは、暗号やパズルで事件の手がかりを残す知能犯リドラー。『バットマン フォーエヴァー』(1995年)では、ジム・キャリーがお得意の顔芸を駆使して演じていた人気キャラだ。だがポール・ダノが演じる今作のリドラーは、ゴッサム・シティの不正を暴くため、街の権力者を次々と血祭りにあげていくヴィジランテのような存在。巨悪を突き止める『大統領の陰謀』的主題、悪をもって悪を制する『タクシードライバー』的主題が掛け合わされることで、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は独特の筆致を獲得している。
リドラーの策謀によって、カーマイン・ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)は殺され、ゴッサム・スクエアと市庁舎は大洪水に見舞われた。ドラマ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』は、その直後から物語が始まる。
ジョーカー、トゥーフェイス、ミスター・フリーズ、スケアクロウ、ベインなど、「バットマン」には数多くのヴィランが登場するが、その中でもペンギンは特に異彩を放っている。
ティム・バートン監督の『バットマン リターンズ』(1992年)では、閉鎖された動物園でペンギンに育てられるというフリークスのような存在を、ダニー・デヴィートがユーモアと悲哀たっぷりに演じていた。
だが今作のペンギンは、カーマイン・ファルコーネの手下として暗躍するナイトクラブ経営者。麻薬ビジネスを取り仕切る現場責任者として一目置かれる存在ではあるものの、映画でジェームズ・ゴードン警部補(ジェフリー・ライト)から「小物」呼ばわりされていたように、ボスからの命令には従わざるを得ない中間管理職のような立場にとどまっている。カーマイン・ファルコーネ亡き後、ペンギン=オズ・コブはどのようにしてゴッサム・シティの帝王へと上り詰めていくのか。アル・パチーノ演じるトニー・モンタナが麻薬王としてのし上がっていく、『スカーフェイス』(1983年)を彷彿とさせる展開だ。
特殊メイクとファットスーツに身を包んだコリン・ファレルは、もはや本人かどうかを識別できないくらいの激変ぶり。その風貌は、まるで『アンタッチャブル』(1987年)でアル・カポネを演じたロバート・デ・ニーロのようだ。だがコリン・ファレル本人は、『ゴッドファーザー』(1972年)のフレド・コルレオーネ(ジョン・カザール)をイメージして役を創り上げたのだという。
偉大なドン・ヴィトーの跡継ぎと目されていた長兄のソニー(ジェームズ・カーン)、頭脳明晰な三男マイケル(アル・パチーノ)のあいだに挟まれた次男のフレドは、“能力のない人間”として見なされ、ファミリーで居場所を失っていた。彼は自分の能力を示すチャンスを得られないまま、静かに表舞台から去っていく。
もちろんコリン・ファレルの荒々しい芝居は、気弱なフレドのキャラクターとは全く異なるものだ。だが、“チャンスに恵まれなかった男”という背景はよく似ている。生まれつきペンギンのくちばしのように大きな鼻をもったオズ・コブは、幼少時からいじめられ、巨大なコンプレックスを抱えて生きてきた。ファルコーネ・ファミリーの一員としてその働きぶりは認められていたものの、ボスに忠誠を誓う“脇役”であることには変わりない。『ゴッドファーザー』でフレドは権力の座を掌握できなかったが、オズ・コブは千載一遇のチャンスを逃すまいと奔走する。
近年、『ジョーカー』(2018年)、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021年)、『モービウス』(2022年)など、ヴィランを主人公にした作品が数多く作られている。それは、単なるダークヒーロー・ストーリーではない。社会からあぶれてしまった、哀しいアウトサイダーたちの物語だ。だからこそ我々視聴者は、狡猾な犯罪者オズ・コブにどこかシンパシーを感じてしまうのだろう。
すでに映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の続編が、2026年をめどに公開されることがアナウンスされている。『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』は、パート2への橋渡しとなる重要な作品となることだろう。バットマン・サーガは、まだ始まったばかりだ。
【今後の放送スケジュール】
第2話 09月30日(月)AM10時〜
第3話 10月07日(月)AM10時〜
第4話 10月14日(月)AM10時〜
第5話 10月21日(月)AM10時〜
第6話 10月28日(月)AM10時〜
第7話 11月04日(月)AM11時〜
第8話 11月11日(月)AM11時〜
『THE LAST OF US』が1位に返り咲き。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』など人気作が上位に並ぶ
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