「やっとキャリーが戻ってきた！」

現在（2025年6月27日）エピソード5まで配信されている『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』（以下、AJLT）シーズン3の感想が、これだ。シーズン2までは、エピソード毎に「そして、こんな風に…（And just like that）、◯◯した」というキャリーのナレーションで締め括られていたが、シーズン3ではその形式を取っていない。前身ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』（以下、SATC）で、キャリーはコラムを通して感情を吐露していたが、「AJLT」シーズン3は、それに似つつも新しくもある形で、キャリーの心の内を表現している。

シーズン1ではPodcast番組のパーソナリティに挑戦、シーズン2では回顧録を刊行し、そのオーディオブック収録や講演会でのスピーチに集中していたキャリー。再び筆を執って生き生きとする姿に、彼女らしさを感じて嬉しくなった。

※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。

避けて通れなかった、シーズン1と2の“重さ”

今思うと、「AJLT」のシーズン1と2は、シーズン3への地固めだったのかもしれない。「SATC」は基本的に、キャリー、ミランダ、シャーロット、サマンサの4人をメインに、キャリーの親友スタンフォード、シャーロットの親友アンソニーのエピソードがサブで描かれるという構成だった。

しかし、「AJLT」でサマンサは不在となり、その代わりに、そして多様性を重視する意図からも、新たなキャラクターが加わった。キャリーの仕事仲間としてバイセクシャルでノンバイナリーであるラテン系のチェ、キャリーが依頼する不動産仲介人としてインド系のシーマ、ミランダが通う法学部の教授として黒人のマヤ、シャーロットのママ友として黒人のリサである。これにより、物語で掘り下げるべきキャラクターが大幅に増えることとなった。

また、彼らは、死別、離婚、性的指向の変化、アルコール依存症、不妊、流産といったテーマに直面。ランチ会の猥談など楽しい場面もある一方、辛い場面も多く待ち受けていることを覚悟しながら視聴するドラマとなっていた。

賛否両論あるだろうが、キャラクターたちの変化を考えると、必要な過程ではあっただろう。キャリーがビッグとの死別から乗り越えるのも、ミランダが平穏から抜け出して新しい自分を探求するのも、シャーロットが仕事を再開させて家庭との適当なバランスを見つけるのも、ある程度時間がかかるはずだからだ。

そして、シーズン2の最終話で各キャラクターが「手放したいもの」を発表したことでそれぞれの問題が一区切りし、シーズン1と2を覆っていた曇り空がやっと晴れ模様に。サマンサのカメオ出演も、キャラクター間の確執が終焉を迎えたことを決定づけ、ファンたちのモヤモヤを解消。今後、どのキャラクターが何かしらの事情で登場しなくとも不自然にはならない、と感じさせるフィナーレだった。

“いつメン”同士の距離も近くなり、軽やかなムード漂うシーズン3

シーズン3では、シーズン2のラストで新たな恋を見つけたチェとナヤは登場せず、キャリー、ミランダ、シャーロット、アンソニー、シーマ、リサを中心に物語が展開していく。

それぞれの状況について軽くおさらいすると、シーズン1・2で、キャリーはビッグとの死別やエイダンとの再交際、ミランダは性的指向の変化やスティーブとの離婚、シャーロットはキャリアの再開や子どものアイデンティティ、アンソニーはスタンフォードとの離婚や新恋人ジュゼッペとの関係、リサは流産、シーマは真剣交際などに悩んでいた。

だが、シーズン3の冒頭では、キャリーはエイダンとの遠距離恋愛と並行して新居整備に集中し、ミランダは人権のために闘う団体のインターンをしながらシングルを謳歌し、シャーロットはワークライフバランスの取れた家庭円満な生活を送り、アンソニー、シーマ、リサも仕事・恋愛共に充実した様子の、ハッピームードで始まる。

様々な過去を乗り越えて未来へ前進し続ける彼らには、これまで以上に深刻な問題が待ち受けていない様子。実際、現時点（エピソード5）では心がえぐられるほどの辛い話はなく、ドラマ全体に軽やかなムードが漂っている。

ドラマの明るさには、「AJLT」から加わったシーマとリサがすっかり馴染み、どのキャラクターの組み合わせでも違和感がなくなったことも影響しているだろう。シーズン1の前半では、キャリーとシーマが正面衝突を経てから友情を育む様子や、シャーロットとリサが互いに探り合いながら距離を縮めていく様子が描かれていた。

以降、彼女たち2人はキャリーたちのコミュニティの一員になっていく。シーズン3では2人のキャラクターがより一層確立され、コミュニティ内での立ち位置も固まり、会話劇のテンポが小気味良くなっている。

現実世界でもよくある、“友達の友達は、友達になる”がドラマ上でも実現したのだ。また、テンポが良くなったことでジョークの飛ばし合いも冴え、本シリーズが楽しいラブ“コメ”であることを思い出した。

やっぱり恋愛エピソード充実＝満足度高し！

シーズン3で唯一影を落としているのは、キャリーとエイダンのハッキリしない関係だ。2人は、真剣交際、浮気騒動で破局、復縁、婚約破棄、旅行先で浮気…と波乱に満ちた歴史を持つが、シーズン2で再会を果たしたところ、やはり相性は良かった。

もはや家族愛の域へと達している2人だったが、シーズン2のエピソード10で問題発生。エイダンの第3子ワイアットが、母（エイダンの元妻）ではなく父と一緒にいたいと家出をし、薬物やアルコールを摂取した上、事故を引き起こしたのだ。エイダンは自責の念に駆られ、「息子が成人になるまで待ってほしい」とキャリーに告げる。

その間、なんと5年…！！キャリーは、彼女にとっては宝物だがエイダンにとってはトラウマであるマンションを知人の若者に譲り、2人の未来を見据えた新居を購入したばかり。期待することを手放したのに、と切なすぎる言葉をこぼしつつ、結局は待つことに決める。

シーズン3はそれから約3カ月後を描いているようだが、エイダンは「家族のことに集中するから」とキャリーに連絡自粛を促していたのにも関わらず、「自分を追い詰め過ぎていた」と自ら掟を破って電話をしてくる。その流れで、キャリーは出張を言い訳にエイダンの住む街へ立ち寄り、彼が息子たちと住む家にお泊まり。

家族ぐるみの交際が一瞬成立しそうだったが、ワイアットが拒絶反応を起こしたことで、待機モードへ逆戻りしてしまう。その後、キャリーはエイダンからのロマンチックな贈り物に胸をときめかせているが、この先も本当に待ち続けるのか？

エピソード5では、キャリーの6カ月限定の隣人として、伝記作家のダンカンが初登場。エイダンとの“期待したら負け”な関係を継続するよりも、ダンカンといがみ合いながらも惹かれ合っていく未来に、どうしても期待してしまう。

シーズン1・2で自身の性的指向の変化に離婚と慌ただしかったミランダは、シーズン3で本格的に恋愛市場にカムバック。初回エピソードで、“観光中の修道女とワンナイト”という強力なネタを生み出しつつ、仕事上の付き合いをしていたテレビ局社員のジョイとプライベートでも関係をスタートさせる。ジョイは仕事をテキパキこなすスマートなタイプだが、恋愛には奥手。「誰かに惹かれるとシャットダウンする」というギャップがあり、ミランダが夢中になるのも納得だ。不器用同士な2人の恋愛は上手くいくのか？いつも空回りするミランダの成熟した姿を、そろそろ見たいところである。

シャーロットは相変わらずハリーと仲睦まじい日々を過ごしているが、飼い犬の件で老女クレーマーに悪評を広められたり、仕事上の潜在顧客に勘違いして迫られたりと、珍エピソードを繰り出し、これまで同様、ドラマのアイスブレイク的な役割を担当。エピソード5で発覚したハリーの件で悲劇が起こらないことを願うばかりだ。アンソニーとジュゼッペの関係も、時々小さな諍いはあるが、末長く幸せに続きそうである。

シーマはワーカホリックな映画監督ラビに別れを告げ、婚活を試したりもするが、半強制的なキャリアの見直しによって生活基盤が揺れている状態。キャリー宅の植栽を担当している庭師アダムにそそられるが、全く合わないタイプであると自覚しており、また、エピソード5ではアダムに恋人がいることも発覚。シーマの生活が変わることで、2人の間にケミストリーが生まれるのか？現状、アダムの存在が意味深すぎるので、全く予想がつかない。

そしてこれから荒れそうなのが、リサである。長年取り掛かっているドキュメンタリー作品の映像編集担当グレイスが別の有名監督に引き抜かれてしまい、新たな編集者選びに奔走。女性だと思って面接をした相手が、男性マリオットだった。グレイスの推薦ということもあり、経歴も仕事ぶりも性格も申し分なく、リサはマリオットを採用。しかし、夫も嫉妬するほどゴージャスなマリオット。エピソード5、リサはシャーロットとの会話の中で、彼に恋をしたことを認めている。美しい家庭を築き上げてきたリサは、この先どんな選択をするのか？

…これから一体どうなるのか、こうなったら良いのでは、と鼻息荒く綴ってしまったが、これこそが「SATC」ユニバースの醍醐味と言えるだろう。本作は、仕事や家庭、健康など、人生で起こりうる様々な出来事を取り上げるヒューマンドラマでもある。しかし、キャリーを筆頭に、愛を信じる登場人物たちの恋愛模様に一喜一憂したい、というのも本音だ。ということで現時点で、筆者にとってシーズン3は、非常に満足度の高い作品となっている。

「AJLT」シーズン3は、今週配信のエピソード6が折り返し地点。楽しいムードは続くのか、それとも波乱万丈となるのか？この先の展開も待ち遠しい！

『AND JUST LIKE THAT... シーズン３ / セックス・アンド・ザ・シティ新章』

AND JUST LIKE THAT... シーズン３ / セックス・アンド・ザ・シティ新章

2025年｜アメリカ

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4人の女性の赤裸々なNYライフを描いた「SATC」から「AJLT」最新シーズンまで全作品を網羅

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