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米アカデミー賞&ゴールデン・グローブ賞を獲得した「ナートゥナートゥ」の曲と超絶ダンス。マグマのような熱量で見る者を圧倒し、3時間という長さを感じさせない物語とその演者たち──日本でも『RRR』は新たな観客をインド映画に引き込み、リピーターを続出させて、公開7ヶ月余となる5月末には興収が20億円を突破しました。
『バーフバリ 伝説誕生』(2015)と『バーフバリ 王の凱旋』(2017)のS.S.ラージャマウリ監督作品、という知名度の土台はあったにしても、これほどまでにヒットしたのはいったいなぜなのでしょうか?1998年に日本で『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995)が樹立した記録「興収4億円強」が四半世紀ぶりに大幅更新されたのは、インド映画自体にも何らかの変化があったからでしょうか?
※6月21日(水)12:00よりアクセス可能
『RRR』が非常に魅力的な作品であることは、インド映画ファンはもちろん、それまでインド映画を見たことがなかった人たちも劇場に足を運んでいること、そして多くの人が複数回鑑賞するリピーターとなっていることからもわかります。回を重ねて見る理由は様々でしょうが、基本にあるのは、『RRR』の3つの大きな魅力が吸引力になっているからでしょう。その三大魅力とは、①物語作りの巧みさ、②次々と繰り出される見どころ満載シーン、そして、③挿入曲とそれを映像化したシーンの素晴らしさ、と言えると思います。もちろん、俳優の優れた演技やCG&VFX処理技術の高さなど、賞賛すべきことは他にもたくさんありますが、上記3点が魅力の中心となっているのは間違いありません。
ラージャマウリ監督は現在まで12本の作品を監督していますが、第1作を除いて、すべて自身で脚本も執筆しており、その物語世界は常に観客を魅了してきました。
しかし『RRR』は1920年の英領時代を舞台に、初めて実在の人物、それも2人を主人公にするとあっては、描き方が難しかったはず。主人公の1人は、旧アーンドラ・プラデーシュ州の海岸に近い村出身のA・ラーマ・ラージュ(演じたのはラーム・チャラン)、もう1人は内陸部のゴーンド族の村人コムラム・ビーム(同NTR Jr.)。実在の2人は反英独立運動を闘った時期がずれているのですが、もしもこの2人が出遭っていたら、という発想を元に、史実と虚構を組み合わせて『RRR』の壮大な物語を紡ぎ上げた手腕は、見事としか言いようがありません。注意深く見ると、インド神話の要素も垣間見えるこの物語は、見るたびにいろんな発見があって、観客を『RRR』中毒にしてしまうのです。
本作は、オープニングから見せ場が登場。狩りに来たインド総督夫妻が、ゴーンド族の村から少女を連れ去るシーンで、イギリス人の非道ぶりが余すところなく描かれます。続いて、警察署のイギリス国王の写真を傷つけた犯人を捕らえるため、何百人という群衆の海に飛び込んでいくラーマのシーンと、森の中、素手で虎と闘うビームのシーンとで、主人公2人が強く印象づけられます。そして、丸い籠船から川に落ちた魚獲りの少年を、周囲に炎が迫る中、初対面のラーマとビームが連携して救い出すシーンで興奮は早くもマックスに。少年を助けた2人が手を結び合い、名乗り合うところで映画のタイトルが出るのですが、ここまでで39分。10分に1回の見せ場という驚きのサイクルはその後も続き、見せ場が途切れることがありません。
どのシーンも、もう一度見たい、じっくり見てみたい、と思わせられるものばかりで、リピーター続出も納得です。
作曲は、ラージャマウリ監督作品すべての音楽を担当しているM.M.キーラヴァーニ。実はキーラヴァーニはラージャマウリ監督の従兄で、2人の連携は毎回見事です。『RRR』では、アカデミー賞受賞の超絶ダンス曲「ナートゥナートゥ(踊れ踊れ)」ばかりが注目されましたが、ラーマとビームの友情が芽生えるシーンに流れる「ドースティ(友情)」、鞭打ち刑に処せられるビームがせつせつと歌う「コムラム・ビームロー(コムラム・ビームよ)」、そしてエンディングの「エッタラ・チェンダ(旗を掲げて)」が、それぞれに印象的なソング・ピクチャライゼーション(歌の映像化)を施されて本作を彩ります。
歌と踊りはインド映画のお家芸ですが、『RRR』では伝統と斬新さの両方を生かした使われ方をしていて、見る人を引きつけます。
かつてのインド映画の定型スタイル──歌と踊りが入り、恋愛・アクション・コメディ等あらゆる娯楽要素が盛り込まれて最後はハッピーエンド、上映時間は3時間枠に合わせて2時間40分前後で途中に休憩が入る──は、1991年から始まった経済発展でインドにも1997年にシネコンが登場して以降、かなり変化しました。
休憩は入るものの、シネコンは上映開始&終了時間がフレキシブルなため、映画が全般的に短くなりました。削られたのはソング&ダンスシーンで、歌の多くはBGM処理に。また、あらゆる娯楽要素も不要になり、サスペンス映画、コメディ映画、といったジャンル映画が増えてきています。
さらに最近登場したのが「汎インド映画」という考え方で、大作映画は言語を吹き替えて、より広い地域での公開を目指すようになりました。『RRR』もテルグ語で製作されたのち、同じ南インドの言語であるタミル語、マラヤーラム語、カンナダ語と、北インド全体で理解されるヒンディー語とに吹き替えられて全国公開されました。
他国から見ると現在のインド映画は、①歌を多用し、ソング&ダンスシーンも時に登場、②物語性を重視し、インド神話も含んだ豊かな物語が展開される、③魅力的な俳優と優秀なスタッフが揃うので見応え十分、な映画と見られているのではないかと思います。「汎インド映画」はそのうち必ず、「汎世界映画」へと進化していくことでしょう。『RRR』の世界的人気は、その第一歩が踏み出されたことを感じさせてくれました。
※6月21日(水)12:00よりアクセス可能
『RRR』を筆頭にインド映画の魅力を語ってきましたが、これまで日本で紹介された作品にも、傑作、秀作がいっぱいあります。この機会にぜひ、いろんなインド映画をご覧になっておくことをお勧めします。「すでにご存じかも、の大人気作」と「こちらもぜひ、のオススメ作」、2つのカテゴリーに分けてみましたので、お好きな作品を選んでみて下さい。
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