2022年5月に活動を再開し、ミュージシャンとして、俳優として、精力的に活躍を続けているGACKTさん。そんなGACKTさんの最新ライブツアー『GACKT LAST SONGS 2024 feat. K』が、5月1日よりU-NEXTで独占ライブ配信されます。さらに、GACKTさんが主演を務めた大ヒット映画の続編『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』も同日よりレンタル配信されます。
お茶の間でも人気・知名度の高いGACKTさんは、今どんな想いを抱えているのか。多岐にわたり活躍するGACKTさんの表現における信念を垣間見た、貴重なインタビューをお届けします。
──2021年、2023年に続く3回目にして、過去最大規模となった『GACKT LAST SONGS 2024 feat. K』ですが、回を重ねてきたことで感じる手応えはありますか?
GACKT:『LAST SONGS』はコロナ禍をきっかけに、「声をあげなくても観られるライブをやろう」と始めたんだけど、やっと今回でまとまったというか、1つのパッケージとして観せることができたと思う。
ボクぐらいの年齢になると、多くの仲間や大切な人との別れを経験しているし、観にきてくれる人のなかにも、それを引きずって生きている人がいる。事が起きてから「もう前に進めない」となるのではなく、『LAST SONGS』で演奏される1曲1曲を通して、今そばにいる大切な人に何を届けなければならないのか、もし失った大切な人がいるなら、その事実とどう向きあって生きていくのか。「ライブを通して少しでも前に進めるきっかけになれたら」というのが、『LAST SONGS』の核となる部分なんだよ。
──終わりがあるからこそ、どう生きるのかと。昨年、約9ヵ月の療養期間を経て活動を再開された頃と比べて、ご自身のパフォーマンスについて変化や進化は感じますか?
GACKT:療養期間中に、ボクを待ってくれている人たちにどう応えるべきかを考えていたんだよ。ただ復活するのはボクらしくないし、とにかくボーカル力を上げて、「こんなにパワーアップして帰ってきたんだ」と思ってもらおうと。
そこからかなり練習して、自分のキーのレンジも上げて、少しずつ表現方法を広げていくなかで、アコースティックにボクが寄せるのではなく、アコースティックがボクのロックに寄ればいいと思った。ボクはあくまでもロックミュージシャンで、だからこそできるアコースティックの表現があるんじゃないかと思って。
──大阪公演の初日と、今回配信される横須賀公演の映像を観た時、その歌声に改めて圧倒されました。
GACKT:これはどのアーティストでもそうだと思うんだけど、既存のステージでは照明から何からすべてデジタルでリンクした演出になっている。でも、『LAST SONGS』はボクとピアノのKだけでなく、ストリングスも、照明も音響も含めて、全員が呼吸だけで合わせている。ボクの呼吸ひとつで間が全然変わるから、毎回違ったライブのように感じる。だから観ている人たちもドキドキするし、ボクが曲に入る瞬間の吐息すら漏れてはいけないような緊張感が、『LAST SONGS』の持つ独特の空気なんじゃないかな。アコースティックで、こんなにも緊張感のあるライブは他にないし。
──2018年の『GACKT's -45th Birthday Concert- LAST SONGS』での共演をきっかけに始まったKさんとの縁ですが、『LAST SONGS』のパートナーにKさんを選んだ理由や、Kさんの魅力についてお聞かせください。
GACKT:あのバースデーライブにはいろんなアーティストが参加してくれたんだけど、初めてKの演奏で歌ったリハーサルで、「こいつはすごいな」とあからさまに感じたのがひとつ。ピアノ伴奏で歌ったことのあるボーカリストならわかると思うんだけど、うまいピアニストはいても、ボーカルの呼吸に合わせてくれるピアニストは本当に少なくて。Kはボーカリストでもあるから歌心がわかっているし、ボクの欲しいところで入ってくれて、間が欲しいタイミングで待てるんだよ。
Kの演奏で歌うとどれだけ気持ちがいいか…そのリハが終わった後、スタッフに「Kと2人だけでライブをするのもいいよね」と話していたぐらいなので。もちろん彼はピアノの技術も高くて、ジャジーなアプローチにも強いから、ちょっとしたところでいい雰囲気のフレーズを入れてくれるんだよ。
──ピアニストがたくさんいるなかで、なぜKさんなのかがわかりました。GACKTさんの今の言葉を聞いたら、Kさんも喜ぶでしょうね。
GACKT:あんまり褒めると調子に乗るから言わないんだけど(笑)。
──バラード&ミディアム曲を中心に構成される『LAST SONGS』ですが、今やMCもその醍醐味のひとつと言っても過言ではないんじゃないでしょうか。歌の迫力とざっくばらんなMCとの緊張と緩和が、まるでジェットコースターのようで(笑)。
GACKT:普段のライブではだいたいMCは1回しかやらないけど、『LAST SONGS』では曲が終わるたびに、本当に台本も何もなくアドリブでずっとしゃべっているからね(笑)。
──緊張するKさんの持ち歌の披露前に、笑いのピークを持っていくGACKTさんのトークスキルには震えました(笑)。お2人のやり取りは本当に楽しそうで、演奏にも会話にも信頼関係を感じます。
GACKT:Kをボーカリストとしても尊敬しているので、療養中に彼の曲を改めて聴き直して、どうやったらこういうミックスボイスが出せるのか練習するようになって。そのおかげで繊細な表現もできるようになったし、今回のツアーからそこをさらに追求するようになった。
──ツアー中にもどんどんブラッシュアップされる照明や映像の巧みな演出も、ライブの没入感を高めていますね。
GACKT:詰め込もうとすればするほど届けたいものがわからなくなるから、「よりシンプルに、歌を後押しする演出であってほしい」とチームには話していて。だから今回から、自分が歌ったりしゃべったりする場面をスクリーンに表示させる、サービス映像をやめた。歌に引き込もうとしているのに、観なきゃいけないところが2つ3つ増えるのは、ボクが求めていることとは違うから。だったら、歌一点に集中できる、そんなライブでありたいって。横須賀には倖田來未ちゃんも観にきてくれたんだけど、その辺がちゃんと伝わったんだなとわかる長文のメッセージがライブ後に届いたのもうれしかった。
──ライブを観終わった後の感覚は、まるで1本の映画のようでもありました。
GACKT:すべての流れがあっての話だけど、最後の曲が終わった時、みんなが何を思うのか。そして、何を心に持って帰れるのかが『LAST SONGS』の一番のポイントじゃないかな。あと、今回からオープニングとエンディングに映像を付けたんだけど、非常に抽象的で。でも、その物語が次回、また次回と続いていく。それを少しずつ紐解いて、観にきてくれた人たちにとっての謎解きになったら面白いかな。
──「LAST」には「最後の」、また「続く」という意味もありますが、『LAST SONGS』というツアータイトルに込めた思いとは?
GACKT:元々は「人生の最後に聴きたい曲」というところから始まったんだけど、今のボクのなかでは、そういう意味の『LAST SONGS』ではなくなって。「最後の瞬間を迎えるために、どういう思いであるべきなのかを導いてくれる歌」、そんなイメージ。
──横須賀公演では、「この3年間座りっぱなしだったもんね。待たせたな、もうすぐ立たせてやるぞ!」というGACKTさんのMCに会場が大いに沸きました。今後のGACKTさんのビジョンを聞かせてください。
GACKT:やっと体が元に戻ったというより、パワーアップしていると思うから、ここからどこまでやれるかチャレンジしたいんだよ。「まだまだ成長できるんだ」と思えることがうれしいし、今のボクだからできることを全力でやりたい。それに背中を押される人もいれば、もっとがんばろうと思う人、諦めちゃダメだと思う人もいるはずだから。
ボクらはすごく特殊な立場にいて、かなりの数の人の背中を押すことができる。ところが、キャリアが長くなるとそれを忘れてしまって、活動が流れ作業みたいになってしまうアーティストもいる。ボクも療養期間前は、「いつ引退しようか…」と頭をよぎっていたから。でも、自分の体が治ったタイミングで、「自分が生きている間、動ける間は、とにかく人の背中を押せるだけ押していこう。これが自分に与えられた使命なんだ」と気付けたんだ。
──そして『LAST SONGS』と同時に、映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』も配信開始されます。1作目も最高でしたが、2度目の奇跡が起きましたね。
GACKT:そう言ってもらえると救われるよ。ただ、若い世代の子どもたちと会った時、無邪気に埼玉ポーズをされると、考えさせられるものがあるよ(笑)。
──愛されている作品ですね(笑)。
GACKT:だよね(笑)。映画にしかできないことがやっぱりあるから。
──自ら総指揮を執る音楽活動とは異なり、映画には監督や脚本家がいるなかで、俳優としてのGACKTさんの考え方・モットーはありますか?
GACKT:自分がこの作品に出ると決めた以上は、監督が求めたことにその場その場で応えるのが俳優のありようだし、そこはアーティストとはちょっと違うところ。他の俳優の方と自分の絶妙な化学変化が面白いシーンを作り出すから、相手との関係性も大事だし。団体行動の苦手なボクにとっては、修行の場ではあるよ(笑)。
目の前ですごい演技を観せられるとがんばろうと思うし、「すごいなこの人」と思える人がいるのは、生きていてよかったと思える瞬間のひとつで。年齢を重ねると、いい意味でも悪い意味でも感情にブレがなくなってくる。若い頃ならもっと感動していただろうことでも、自分の心がなかなか動かなくなっていることに気づく。そんな自分の心が揺れているのを感じた時、俳優ってすごいなと思うし、表現するのは非常に面白いことだよ。それはビジネスの世界でもどの分野でもあることで、表現を追求し続けられる人生でありたいと、改めて思った。
──さまざまなコンテンツが網羅されたU-NEXTですが、映画・ドラマ・アニメ・マンガなど、GACKTさんのエンタメライフ、お気に入りの作品があればお聞かせください。
GACKT:ボクは完全にアニオタだし、マンガも大好きで。好きな作品もいっぱいあるんだけど、それこそ昔はアニメ=子どもが観るものというのが世間の認識で。それが今では、世界中の人たちの心を動かす文化になっている。そのきっかけを作った日本の代表的なエンターテイメントだし、海外だと日本よりも圧倒的に大きなコミュニティが存在しているから、もっと誇りを持つべきなんじゃないかな。先日、鳥山明さんが亡くなった時も、世界中の人たちが悲しみを抱いて、「自分の青春の1つが幕を閉じた」みたいなことを言っていたのを目の当たりにしたけど、1人の日本の漫画家が世界中に影響を与えるなんて誰が想像できたか。本当にすごい文化だよ。
──最後に、このインタビューを読んで興味を持っていただけた読者の方や、GACKTさんのライブや映画を観ることを楽しみにしているユーザーにメッセージがあれば。
GACKT:今はストリーミングサービスの普及によって、いろんな作品を見つけられる時代になったから、ストリーミングで完結するのではなく、「こんなアーティストがいるんだ、ちょっとライブに行ってみよう」と足を運ぶきっかけにしてもらえたらうれしい。ボクはそう願っている。なぜなら、生でしか伝わらないものが絶対にあるから。全然知らない人たちが周りにいて何か落ち着かないところもあるのに、その知らない人たちと感動を共有した瞬間、その感動がぐんと倍増することがある。集まったことによって生まれる、そこでしか感じられない生のエネルギーがある。それはボクのライブなら、なおさら感じてもらえる。だから足を運んでもらいたい、ストリーミングをきっかけにね。
(プロフィール)
GACKT
1973年7月4日生まれ、沖縄県出身。バンド活動を経て、1999年にソロ活動を開始。男性ソロアーティスト・シングルTOP10獲得数は歴代1位を誇る。音楽以外にも、俳優としてハリウッド映画、日本映画、TVドラマで活躍。声優では、映画、アニメ、ゲームにも多数出演。二階堂ふみとW主演の映画『翔んで埼玉』(2019)は空前の大ヒットとなり、第43回日本アカデミー賞にて優秀主演男優賞を受賞、映画としても最多12部門で優秀賞に輝いた。2021年9月に活動休止、2022年5月に再始動。ヨーロッパ、アジア全域、アメリカの多くのファンにも支持されるなど、世界中で活動を続けている。
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