アーニャの思いに涙…。アニメ『SPY×FAMILY』のグッとくる名言3選
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アーニャの思いに涙…。アニメ『SPY×FAMILY』のグッとくる名言3選

2023.12.23 10:00

この記事に関する写真(11枚)

  • 『SPY×FAMILY』ep01
  • 『SPY×FAMILY』ep01
  • 『SPY×FAMILY』ep01
  •  『SPY×FAMILY』ep4
  • 『SPY×FAMILY』ep04

Edited by

世界中で人気のアニメ『SPY×FAMILY』。12月22日からは『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の上映もスタートしています。

熾烈な情報戦が繰り広げられるなか戦争を防ぐために暗躍するスパイと、国のために手を汚す殺し屋、そして超能力少女という個性的すぎる3人(と、予知能力を持った犬1匹)という奇妙なかりそめの家族をめぐるコメディです。

そんな『SPY×FAMILY』の魅力が詰まった3つの名言を、その背景と共にご紹介します!

①「子どもが泣かない世界 それを作りたくて俺はスパイになったんだ」

ロイドが第1話「オペレーション〈梟〉」で、自分がスパイになったきっかけを思い出すシーンで語られた名言です。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

コードネーム<黄昏>は、緊張関係にある国同士の均衡を保つために暗躍するスパイです。様々な顔を使い分けるスパイに、プライベートというものはありません。人並みの幸せもとっくに諦め、平和のために奔走します。

しかし第1話「オペレーション〈梟〉」でくだされた新たな指令は皮肉にも、家族をつくれというものでした。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

平和を脅かす重要人物の子どもが通う名門校に自分の子どもを通わせて、その重要人物と“お近づき”になる必要があるからです。

新しくロイドという名前を与えられ、任務のために孤児院から引き取ったのが、実はエスパー能力を持っているアーニャでした。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

好奇心旺盛すぎるアーニャは、父の通信装置を勝手にいじったことで敵組織にさらわれてしまいます。偽物の子ども役の代わりはいくらでもいる。そう考えるロイドでしたが、リスクを犯してアーニャを救出することに。

震えて泣き叫ぶアーニャを抱きかかえて逃げながら、ロイドは苛立ちます。アーニャに、ではありません。アーニャに重なって見える、戦災孤児で無力だった頃を思い出し、心が騒めく自分に気付きます。

そしてロイドは、昔の自分が泣かないで済む世界を実現するためにスパイになったのだ、という初心を思い出します。『SPY×FAMILY』という作品における世界平和のビジョンを視聴者に示した瞬間であると同時に、主人公であるロイドの行動原理が語られた名言です(正確には言葉に出していないので独白ですが)。

②「100てんまんてんです ちちもははもおもしろくてだいすきです ずっといっしょがいいです」

第4話「名門校面接試験」でアーニャが面接官に対して語った名言です。

ロイドはアーニャと、実は殺し屋であるヨルとで、無事に偽装家族をつくりました。ヨルはヨルで、世間に怪しまれずに暗殺を続けるため、家族を隠れ蓑にしたいという思惑がありました。

お互いの素性を隠したまま、利害だけが一致して夫婦役を演じることになったロイドとヨル。そして2人の秘密を唯一知っているエスパーのアーニャ。

 『SPY×FAMILY』ep4
『SPY×FAMILY』 ©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

奇妙な偽物の家族ですが、第4話「名門校面接試験」ではとうとう標的の息子が通う名門・イーデン校入学のために面接を受けることに。

『SPY×FAMILY』ep04
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

そこで、面接官から両親の評価を点数で尋ねられたアーニャは言います。100点満点だ、と。一点の曇りもない目で答えるアーニャの「ずっといっしょがいいです」という台詞は軽んじられるべきではありません。

アーニャは大人たちよりも「思いは言葉にしないと伝わらない」とわかっている

このあと紹介するヨルの名言を含めて、実はアーニャ以外は独白となっています。あえて、独白を選んだわけではありません。

ロイドとヨルの2人はいつも頭では色々考えるのですが、職業柄なのか、思ったことを素直に口を出すことは実は少ないのです。その点、ピュアネスの象徴として描かれがちな“幼い子供”であるアーニャは饒舌です。その存在がやはり何重の意味でも本作の救いです。彼女は、自らの胸のうちをわざとらしいほど言葉にします(思ってもないことも、しょっちゅう口にしますが)。

思いは言葉にしないと伝わらないのだと、エスパーであるアーニャは大人たちよりもよくわかっているからです。孤児院を転々としてきたアーニャにとって、作戦の失敗、つまり家族の瓦解は、また孤児院に戻されることを意味します。

しかし、アーニャには過去を嘆くような悲痛さはありません。打算なく、これから幸せで安心できる居場所がほしいという真っ直ぐな祈りが詰まった『SPY×FAMILY』屈指の名シーンでしょう。

③「私の平穏はいらない この手が血で汚れても構わない 早晩命を落とす生き方でも、フォージャー家を離れることになっても──きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 私は戦うことをやめないッ!」

第33話「船上の交響曲/姉のハーブティー」でのヨルの独白です。

謎多き組織・ガーデンの殺し屋として活動するヨル。母として振る舞いながら、殺し屋としての仕事も全うしなければなりません。

ヨルは、殺し屋としての自分の中に葛藤が生まれています。それは、スパイであるロイドが擬似家族と接する中で自身の変化に気付き、戸惑うのと同じ類の感情のようです。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

第33話「船上の交響曲/姉のハーブティー」では、第32話に続いて亡命するマフィアの娘とその子どもの護衛任務を遂行することに。

彼らを送り届けるために乗り込んだ豪華客船には、殺し屋が多数潜んでいました。そして何という偶然か、プライベートでロイドとアーニャも同じ船に乗っていました。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

ヨルは<いばら姫>と恐れられる、とんでもない身体能力と戦闘力を誇る凄腕の殺し屋です。しかし、殺し屋である自分と、偽装だとしても母である自分との間の亀裂が、彼女の動きを鈍らせます。言い訳ができないほどの傷を負ったら、フォージャー家にはいられなくなるからです。

第32話では、上司に迷いを見透かされ、「任務に集中なさい 全員死にますよ」と諌められる場面も。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

向こうも腕に覚えのある手練れです。それを何十人も相手にしなければなりません。多勢に無勢、ヨルたちはいよいよ追い詰められることになります。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

死を目前にして初めて、ヨルは久しぶりに思い出します。自分が何のために殺し屋をやっているのか。それはお金のためでもお国のためでもなく、ただ大切な家族の他愛ない暮らしを守りたかったからだ、と。

自分がこの手を汚さなければ、今まさに不条理に踏み躙られようとしている親子の命を守れない。それはロイドやアーニャの暮らしにも繋がるはずだと初心に立ち返ります。

そして「私の平穏はいらない この手が血で汚れても構わない 早晩命を落とす生き方でも、フォージャー家を離れることになっても──きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 私は戦うことをやめないッ!」と覚悟を決めたのです。

ともすると悲痛な考え方とも言えるでしょう。またこの考え方は、最初に紹介したロイドの独白と対を成しています。大義だなんだと言っても、始まりは自分や自分の家族を守るため、シンプルにそれだけなのです。きっと、倫理的には間違っているのでしょう。大切なものを守るために、悪人だったとしても誰かの大切な人かもしれない人間を手にかけるのは。

殺し屋として信念を貫くという腹を括っても、真っ先に出てくる言葉が「きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 」という、偽物の夫なら理解してくれるはずだという思いなのが切なくもあります。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

ロイドもまた、潔癖な正義の味方像ではありません。ロイドと殺し屋のヨルは平和を乱すものを標的にするという点で、やっていることはそう変わりません(ロイドもこれまで何人もの敵を始末してきました)。

大なり小なり、人は自分の大切なものを守るための闘争を続けているとも言えます。国のために不要なものを浄化するヨルたちの行いが本当に許されるべきなのかは、今後の物語の中で問われていくことでしょう。


『SPY×FAMILY』という作品は、世界の危機を防ぐために暗躍するスパイの父、祖国を守るために手を汚す暗殺者の母、お互いの秘密を唯一知っているエスパーの娘という、“情報の非対称性”を利用した絶妙な設定を導入しています。

ハードになりすぎずコメディ仕立てで語られながら、その実、民族紛争、差別、生体実験、戦災孤児といったモチーフが描かれています。

テンポが良すぎるのとキャラが愛くるしすぎて見落としがちですが、含蓄のある台詞や場面に着目してみると、作品の印象もまた変わってくるかもしれませんね。


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『SPY×FAMILY Season 2』

SPY×FAMILY Season 2
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

U-NEXT配信:土曜日23:30更新
放送:10月7日(土)23:00よりテレビ東京系列ほかにて放送

【あらすじ】
人はみな誰にも見せぬ自分を持っている――
世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代。東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)は、十数年間にわたる冷戦状態にあった。西国の情報局対東課〈WISE(ワイズ)〉所属である凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、東西平和を脅かす危険人物、東国の国家統一党総裁ドノバン・デズモンドの動向を探るため、ある極秘任務を課せられる。その名も、オペレーション〈梟(ストリクス)〉。内容は、“一週間以内に家族を作り、デズモンドの息子が通う名門校の懇親会に潜入せよ”。〈黄昏(たそがれ)〉は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。

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アーニャの思いに涙…。アニメ『SPY×FAMILY』のグッとくる名言3選

2023.12.23 10:00

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世界中で人気のアニメ『SPY×FAMILY』。12月22日からは『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の上映もスタートしています。

熾烈な情報戦が繰り広げられるなか戦争を防ぐために暗躍するスパイと、国のために手を汚す殺し屋、そして超能力少女という個性的すぎる3人(と、予知能力を持った犬1匹)という奇妙なかりそめの家族をめぐるコメディです。

そんな『SPY×FAMILY』の魅力が詰まった3つの名言を、その背景と共にご紹介します!

①「子どもが泣かない世界 それを作りたくて俺はスパイになったんだ」

ロイドが第1話「オペレーション〈梟〉」で、自分がスパイになったきっかけを思い出すシーンで語られた名言です。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

コードネーム<黄昏>は、緊張関係にある国同士の均衡を保つために暗躍するスパイです。様々な顔を使い分けるスパイに、プライベートというものはありません。人並みの幸せもとっくに諦め、平和のために奔走します。

しかし第1話「オペレーション〈梟〉」でくだされた新たな指令は皮肉にも、家族をつくれというものでした。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

平和を脅かす重要人物の子どもが通う名門校に自分の子どもを通わせて、その重要人物と“お近づき”になる必要があるからです。

新しくロイドという名前を与えられ、任務のために孤児院から引き取ったのが、実はエスパー能力を持っているアーニャでした。

『SPY×FAMILY』ep01
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

好奇心旺盛すぎるアーニャは、父の通信装置を勝手にいじったことで敵組織にさらわれてしまいます。偽物の子ども役の代わりはいくらでもいる。そう考えるロイドでしたが、リスクを犯してアーニャを救出することに。

震えて泣き叫ぶアーニャを抱きかかえて逃げながら、ロイドは苛立ちます。アーニャに、ではありません。アーニャに重なって見える、戦災孤児で無力だった頃を思い出し、心が騒めく自分に気付きます。

そしてロイドは、昔の自分が泣かないで済む世界を実現するためにスパイになったのだ、という初心を思い出します。『SPY×FAMILY』という作品における世界平和のビジョンを視聴者に示した瞬間であると同時に、主人公であるロイドの行動原理が語られた名言です(正確には言葉に出していないので独白ですが)。

②「100てんまんてんです ちちもははもおもしろくてだいすきです ずっといっしょがいいです」

第4話「名門校面接試験」でアーニャが面接官に対して語った名言です。

ロイドはアーニャと、実は殺し屋であるヨルとで、無事に偽装家族をつくりました。ヨルはヨルで、世間に怪しまれずに暗殺を続けるため、家族を隠れ蓑にしたいという思惑がありました。

お互いの素性を隠したまま、利害だけが一致して夫婦役を演じることになったロイドとヨル。そして2人の秘密を唯一知っているエスパーのアーニャ。

 『SPY×FAMILY』ep4
『SPY×FAMILY』 ©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

奇妙な偽物の家族ですが、第4話「名門校面接試験」ではとうとう標的の息子が通う名門・イーデン校入学のために面接を受けることに。

『SPY×FAMILY』ep04
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

そこで、面接官から両親の評価を点数で尋ねられたアーニャは言います。100点満点だ、と。一点の曇りもない目で答えるアーニャの「ずっといっしょがいいです」という台詞は軽んじられるべきではありません。

アーニャは大人たちよりも「思いは言葉にしないと伝わらない」とわかっている

このあと紹介するヨルの名言を含めて、実はアーニャ以外は独白となっています。あえて、独白を選んだわけではありません。

ロイドとヨルの2人はいつも頭では色々考えるのですが、職業柄なのか、思ったことを素直に口を出すことは実は少ないのです。その点、ピュアネスの象徴として描かれがちな“幼い子供”であるアーニャは饒舌です。その存在がやはり何重の意味でも本作の救いです。彼女は、自らの胸のうちをわざとらしいほど言葉にします(思ってもないことも、しょっちゅう口にしますが)。

思いは言葉にしないと伝わらないのだと、エスパーであるアーニャは大人たちよりもよくわかっているからです。孤児院を転々としてきたアーニャにとって、作戦の失敗、つまり家族の瓦解は、また孤児院に戻されることを意味します。

しかし、アーニャには過去を嘆くような悲痛さはありません。打算なく、これから幸せで安心できる居場所がほしいという真っ直ぐな祈りが詰まった『SPY×FAMILY』屈指の名シーンでしょう。

③「私の平穏はいらない この手が血で汚れても構わない 早晩命を落とす生き方でも、フォージャー家を離れることになっても──きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 私は戦うことをやめないッ!」

第33話「船上の交響曲/姉のハーブティー」でのヨルの独白です。

謎多き組織・ガーデンの殺し屋として活動するヨル。母として振る舞いながら、殺し屋としての仕事も全うしなければなりません。

ヨルは、殺し屋としての自分の中に葛藤が生まれています。それは、スパイであるロイドが擬似家族と接する中で自身の変化に気付き、戸惑うのと同じ類の感情のようです。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

第33話「船上の交響曲/姉のハーブティー」では、第32話に続いて亡命するマフィアの娘とその子どもの護衛任務を遂行することに。

彼らを送り届けるために乗り込んだ豪華客船には、殺し屋が多数潜んでいました。そして何という偶然か、プライベートでロイドとアーニャも同じ船に乗っていました。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

ヨルは<いばら姫>と恐れられる、とんでもない身体能力と戦闘力を誇る凄腕の殺し屋です。しかし、殺し屋である自分と、偽装だとしても母である自分との間の亀裂が、彼女の動きを鈍らせます。言い訳ができないほどの傷を負ったら、フォージャー家にはいられなくなるからです。

第32話では、上司に迷いを見透かされ、「任務に集中なさい 全員死にますよ」と諌められる場面も。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

向こうも腕に覚えのある手練れです。それを何十人も相手にしなければなりません。多勢に無勢、ヨルたちはいよいよ追い詰められることになります。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

死を目前にして初めて、ヨルは久しぶりに思い出します。自分が何のために殺し屋をやっているのか。それはお金のためでもお国のためでもなく、ただ大切な家族の他愛ない暮らしを守りたかったからだ、と。

自分がこの手を汚さなければ、今まさに不条理に踏み躙られようとしている親子の命を守れない。それはロイドやアーニャの暮らしにも繋がるはずだと初心に立ち返ります。

そして「私の平穏はいらない この手が血で汚れても構わない 早晩命を落とす生き方でも、フォージャー家を離れることになっても──きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 私は戦うことをやめないッ!」と覚悟を決めたのです。

ともすると悲痛な考え方とも言えるでしょう。またこの考え方は、最初に紹介したロイドの独白と対を成しています。大義だなんだと言っても、始まりは自分や自分の家族を守るため、シンプルにそれだけなのです。きっと、倫理的には間違っているのでしょう。大切なものを守るために、悪人だったとしても誰かの大切な人かもしれない人間を手にかけるのは。

殺し屋として信念を貫くという腹を括っても、真っ先に出てくる言葉が「きっとロイドさんは認めてくれる 許してくれる 」という、偽物の夫なら理解してくれるはずだという思いなのが切なくもあります。

『SPY×FAMILY Season 2』ep33
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

ロイドもまた、潔癖な正義の味方像ではありません。ロイドと殺し屋のヨルは平和を乱すものを標的にするという点で、やっていることはそう変わりません(ロイドもこれまで何人もの敵を始末してきました)。

大なり小なり、人は自分の大切なものを守るための闘争を続けているとも言えます。国のために不要なものを浄化するヨルたちの行いが本当に許されるべきなのかは、今後の物語の中で問われていくことでしょう。


『SPY×FAMILY』という作品は、世界の危機を防ぐために暗躍するスパイの父、祖国を守るために手を汚す暗殺者の母、お互いの秘密を唯一知っているエスパーの娘という、“情報の非対称性”を利用した絶妙な設定を導入しています。

ハードになりすぎずコメディ仕立てで語られながら、その実、民族紛争、差別、生体実験、戦災孤児といったモチーフが描かれています。

テンポが良すぎるのとキャラが愛くるしすぎて見落としがちですが、含蓄のある台詞や場面に着目してみると、作品の印象もまた変わってくるかもしれませんね。


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『SPY×FAMILY Season 2』

SPY×FAMILY Season 2
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会

U-NEXT配信:土曜日23:30更新
放送:10月7日(土)23:00よりテレビ東京系列ほかにて放送

【あらすじ】
人はみな誰にも見せぬ自分を持っている――
世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代。東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)は、十数年間にわたる冷戦状態にあった。西国の情報局対東課〈WISE(ワイズ)〉所属である凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、東西平和を脅かす危険人物、東国の国家統一党総裁ドノバン・デズモンドの動向を探るため、ある極秘任務を課せられる。その名も、オペレーション〈梟(ストリクス)〉。内容は、“一週間以内に家族を作り、デズモンドの息子が通う名門校の懇親会に潜入せよ”。〈黄昏(たそがれ)〉は、精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作ることに。だが、彼が出会った娘・アーニャは心を読むことができる超能力者、妻・ヨルは殺し屋だった!3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された――。

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