テレ東が誇る人気経済ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』。ガイアの語源はギリシャ神話の大地の女神で、ノーベル賞作家のウィリアム・ゴールディングが地球をガイアと呼んだことから「ガイア=地球」という解釈が定着したそうです。
本番組は、地球規模で経済事象を捉え、「夜明け=ニッポンの再生」を目指して奮闘する経済人たちを追いかけるもの。ここでは2023年放送分から、チーフプロデューサーの鈴木嘉人さんが今年を代表する放送回を選定。2023年を振り返り、経済の現場から見えてくるものとは?
メディアの多様化で膨大な情報量に触れられるようになった昨今。「『ガイアの夜明け』は、情報の量ではなく厚さで勝負してきた番組です」と鈴木チーフプロデューサーは語ります。ニュースの舞台裏で何が起きてるのか?通常では見えないところを綿密な取材で明らかにし、ニッポンの経済再生へのヒントをたぐり寄せるのが番組の主旨。
「番組は21年続いてきましたが、その主旨が見えづらくなっているのではないか?という思いもあります。企業コンプライアンスの強化もあってカメラが企業の内部まで入り込んで取材することも難しくなっています。でも、だからこそ2023年は中身を重視した番組づくりを意識しました。メビウスの輪のように原点に戻りながら進化することが番組のテーマ。そんな想いを持って、これが『ガイアの夜明け』だ!と胸を張って言える放送回を挙げました」(鈴木チーフプロデューサー)。
「病院を再生せよ!〜医療崩壊の危機との闘い〜」 7月7日放送
「医療崩壊と言われる昨今、学閥の問題と看護師の離職問題という2つのテーマで医療業界の闇に踏み込んだ放送回です。『白い巨塔』のような問題をリアルな医療業界で取材するのは難しいのですが、ここでは医師の大量離職がニュースにもなった滋賀県の『大津市民病院』に密着。問題を受けて辞任した前院長に代わって新しく就任した院長の改革を追いかけ、大量離職の裏には京都大学と京都府立大学との学閥の存在があったという、表からは見えない大病院の構図に切り込んだ内容です。この回は視聴率もよかったのですが、オンエア後も医療界隈の人たちの間でネット上などで大きな話題になったようで配信の視聴者数も伸びたんです。反響が非常に大きい放送回でした」(鈴木チーフプロデューサー)
「エコリゾート大作戦〜鉄道が運ぶ!新たな日光〜」 7月14日放送
「『東武鉄道』が自社では33年ぶりとなる特急の新型車両『スペーシアX』を開発し、23年7月から運行をスタートしたんです。これは従来の車両よりCO2排出量を40%も減らしたエコな特急ということが売りになっています。なぜかというと、その行き先である栃木県の観光地・日光を“国際エコリゾート”にしようという戦略を掲げているから。その結果、今年の秋の日光は紅葉目当てのインバウンド客で大変な賑わいを見せていました。その先駆けとなった『東武鉄道』を独占取材した内容です」(鈴木チーフプロデューサー)
「独占!ドンキ"本気"の新戦略」 9月8日放送
「バラエティではやり尽くされている感もあるディスカウントストア『ドン・キホーテ』ですが、この回ではなかなかテレビに出ない安田隆夫創業会長を取材しました。ドンキが渋谷で展開する新プロジェクトを追った内容で、これは会長の夢だったもの。『街を作る』という構想のもと、渋谷に巨大な複合ビルを建てたんです。そこに新しく『道玄坂通』という商業施設を作り、その中にドンキがピープルブランドと称するプライベートブランド(=PB)『情熱価格』の商品に特化した新業態『ドミセ』を開いた。今、ドンキはPBでも非常に収益を上げていて、食品から日用品まで独自に新商品を開発しているんですね。その開発の舞台裏に迫りました。ドンキの本気の“情熱”に圧倒される、非常に面白い内容になっています」(鈴木チーフプロデューサー)
「独占!そごう・西武 ストの舞台裏~61年ぶりの決断に密着~」 9月15日放送
「ニュースでも取り上げられた『そごう・西武』のストライキを、労働組合側の視点から追った回です。ストをやるか、やらないかの瀬戸際の頃から内部に入り込み、最終的にセブン&アイからの売却先が決定するまで半年ほど密着しました。これも『ガイアの夜明け』だけの独自企画です。90年代までは一般的だったストライキですが、2000年代以降は、社会の変化で世の中から共感を得られなくなったことや、そもそもの労使関係が大きく変わったことからストライキの行使が極端に少なくなりました。今回の『そごう・西武』のストライキはそこに一石を投じる、現代の労使関係のあり方を問うようなものだったかと。取材先とのせめぎあいの中、長期取材の成果を見せられた放送回だと思います」(鈴木チーフプロデューサー)
「ワークマン新たなる挑戦!~100年勝つ闘い方~」 10月13日放送
「『ワークマン』は定期的に取材している企業ですが、23年の9月末に1000店舗を達成したことを機にまた取り上げました。この回では、その戦略をもって『ワークマン』を躍進させた立役者といわれる土屋哲雄専務に密着。『ワークマンプラス』や『ワークマン女子』、『ワークマンプロ』といった多くの業態がある中、新たに銀座に立ち上げた新業態『ワークマンカラーズ』のオープンまでを追いかけています。
また、『ワークマン』の店長は平均で年収が1000万円を超し、ノルマもなしと言われています。フランチャイズを疲弊させないそのやり方を彼らは“ホワイトフランチャイズ”と呼んでいるのですが、その上でなぜここまで業績を伸ばしているのか。その裏側にも踏み込みました」(鈴木チーフプロデューサー)
「“サントリー”を継ぐ者たち」 11月17日放送
「サントリーは今年、中堅価格帯の『サントリー生ビール』という商品を爆発的にヒットさせました。さらに『タコハイ』や『ビアボール』などの新商品も連発しています。その舞台裏に迫るとともに、歴代トップを創業家が担ってきたサントリーを“継ぐ者たち”ということで、創業者の曾孫でホールディングスの現副社長・鳥井信宏さんに密着し、その歴史にも迫っています。
サントリーでは創業期の精神を受け継ぐことで、30年先を見越したウイスキーやワイン造りの世界で高品質な商品を生産し続けてきました。次期社長といわれる副社長をはじめ、現在の社内のプロが、そのDNAをどう引き継いでいるのか。そこに迫った放送回です」(鈴木チーフプロデューサー)
「東京大改造~世界一の都市へ~」 11月24日放送
「不動産大手の『森ビル』が11月24日に開業した『麻布台ヒルズ』のオープンの裏側に密着しました。最初の『アークヒルズ』の時には長年の大変な交渉があり、そこに残った地権者はかなり少なかったそうです。その後、『六本木ヒルズ』の成功もあって、今回の『麻布台ヒルズ』では9割の地権者が残ることになったといいます。
そこには地権者ごと巻き込んで地域で街を作ろうという、先代社長・森稔さんの精神がありました。現社長の辻慎吾さんが、要人しか入れない森ビルのラボで東京のポテンシャルを熱く語る場面も見どころです。三井不動産や三菱地所もそこに学んだといわれる、森ビルの先見性がある歴史と戦略がよくわかる内容になっています」(鈴木チーフプロデューサー)
そんな『ガイアの夜明け』も参加する、テレ東の経済番組横断で実施される「テレ東経済WEEK」。今年で3回目を迎える本企画は、全経済番組が同じテーマのもと企画を展開します。今年のテーマは「ミライへ挑む!〜ニッポンの闘い方〜」。『ガイアの夜明け』では海外の巨大市場を狙う2企業を追った90分SPを1週目に、ふるさと納税の今に迫る内容を2週目に放送予定。それぞれの見どころも鈴木チーフプロデューサーにコメントをいただきました。
●「次なる巨大市場を開け!~今こそ日本式で海外へ~」90分SP
12月8日(金)夜10時〜放送
「世界の巨大市場を開拓する日本の2企業に注目しました。まずは、人口2.7億人で急成長が見込まれるインドネシアを舞台に、初進出から約10年の今にして一気に1000店舗に増やす計画をぶち上げた『ローソン』。『一気にインドネシアを取るぞ!』というその戦略を追っています。一方で、中国での新規投資をやめて、戸建ての着工件数世界一を誇るアメリカで新しい試みに挑んでいる『積水ハウス』にも密着。なぜそこへ進出したのか。その真意に迫ります」(鈴木チーフプロデューサー)
●「激化する『ふるさと納税』 返礼品合戦の “光”と“影”(仮)」
12月15日(金)夜10時〜放送
「今年のふるさと納税の返礼品には顕著なことがあって、それは中国による輸入禁止のあおりを受けた北海道の海産物を『納税で応援しよう』という傾向です。返礼品の内容だけで選ぶ時代じゃなくなっているんですね。そんな中、ふるさと納税から除外され、税収が前年より40%も減った宮崎県の都農町という存在もある。ここでは名産品をアピールしてふるさと納税への復帰を目指す自治体の姿を追いかけました。一方で、逆に8年連続で関東1位という成功を収めている茨城県の境町という自治体もある。闇と光の両者を追うことで、ふるさと納税とは何かを考える回になっています」(鈴木チーフプロデューサー)
●テレ東経済WEEK 公式ホームページ
●「ガイアの夜明け」公式ホームページ
経済番組『カンブリア宮殿』の2023年の放送回から「この変革の時代、いかに成功を掴むか」という視点で5つの回をご紹介いただきました。
有田さんと小峠さんに番組の楽しみ方や、見返してほしい過去回をインタビューしました!
サバンナ・高橋茂雄さん、藤田ニコルさん、小関裕太さん、神部美咲さんが自分自身の経験を重ねて見てしまうシーンとは?