4月から始まる連続ドラマ『トウキョウホリデイ』(テレビ東京系にて4月3日・深夜24時30分スタート)の予告映像の最後、バイクに2人乗りする男女の映像にかぶせた形で、主人公男性のこんな声が聞こえてくる。
「ニホン、オモシロイ。マイペンライ」
マイペンライは、タイ語で「大丈夫」「問題ない」といった意味。つまりこのドラマの男性主人公はタイ人ということになるのだが、映像を見て「誰?」と思った人も少なくないようだ(「もしかして平野紫耀!?」と一瞬色めきだったという声も聞こえてきたが、確かによく似ている!)。
しかし、たとえばかつての“韓流ブーム”の初期にほぼすべての日本人にとってヨン様が未知なる存在だったのとは違い、このタイ人俳優ガルフ・カナーウットは、すでに日本にも多くのファンを持つアジアンスター。
22年にはジャパンオフィシャルファンクラブが開設され、毎年ファンイベントを行ってきたほか、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEとのMV「All I Ever Wanted feat. GULF KANAWUT」に出演するなど、ガルフは日本と積極的な交流を重ねてきた。
そんなスターの存在をなぜ私は知らないんだろう……?と思っているアナタ、それは「タイBLドラマ」という目眩く魅惑の世界に、まだアナタが足を踏み入れていないからなのです!
2020年ごろから本格的に始まり、いまなおその熱狂が続いている“タイBLドラマブーム”。BLドラマはアジア各国で人気のジャンルだが、こと作品供給ということにおいて圧倒しているのはタイ。火付け役となったのはタイBLドラマの金字塔『2gether』(20)あたりだが、
この作品でタイBLの扉を開けた後、日本でも放送が始まった『TharnType/ターン×タイプ』(19〜20、20〜21年には続編も)を続けて視聴し、完全にタイBLの沼にハマった人も多いと聞く。
その『TharnType/ターン×タイプ』に主演し世界的ブレイク(インスタフォロワー数500万人超え!)を果たしたのがガルフなのだが、それにしても、まさか日本の、しかもBLではないドラマで主演する姿を拝めるとは!と驚いているファンも多いのではないだろうか。
ただ、その予兆はあった。テレビドラマを細かく視聴している人は感じていたことかと思うが、ここ1年ぐらいの動きだろうか、バラエティ番組やドラマでタイの俳優さんの姿を見ることが、じわじわと増えてきていたのである。
たとえば、タイから日本に活動の拠点を移したホリプロ所属のパース・ナクン(22年のタイBL「Kinn Porsche」などに出演)。バラエティ番組に始まり、ドラマ『スパイめし〜異国グルメ潜入記〜』(23)やミュージカル「新テニスの王子様」(23・24)などを経て、今年に入っての今クールなどは、『僕のあざとい元カノ from あざとくて何が悪いの?』『最高のオバハン 中島ハルコ〜マダム・イン・ちょこっとだけバンコク〜』の2本のドラマに出演(3月28日には1st写真集の発売も!)。
その『最高のオバハン』にはキーパーソンであるタイ財閥の御曹司役でタイの国民的俳優ジー・スッティラックもレギュラー出演していたほか、去年末の『オクトー 〜感情捜査官 心野朱梨〜 Season2』(24)に出演したグレイト(サポン・アッサワマンコーン/24年のタイBL『Wandee Goodday』主演)が謎めいた役で強い印象を残したことも忘れがたい。
また、こうした動きと並行して、日本人俳優がタイに赴いて作品に出演するケースも。昨年、Snow Manの向井康二がタイでBLもの2本(映画と連続ドラマ)に主演することが大きく報じられたが、
すでに田中圭は『おっさんずラブ』のタイリメイクドラマに本家・春田創一役でカメオ出演。他にも去年、日本でタイBL『Love in Air』(22)がリメイクされ話題になるなどさまざまな形でタイとの距離を縮めている現在。そんな状況のなかで制作されることになったのが、『トウキョウホリデイ』だといえるのである。
その『トウキョウホリデイ』でガルフが演じるのは、仕事に忙殺され大切なものを見失いかけているタイの人気俳優という役。そんな国民的スターが東京のレトロな甘味処「とき和」をたまたま訪れたことで、店を切り盛りする桜子(瀧本美織)と出会い恋に落ちていき──。という内容からもわかる通り、そう、『トウキョウホリデイ』は“現代日本版『ローマの休日』”なのである。予告で映されていたバイク2人乗りも、オードリー・ヘプバーン&グレゴリー・ペックのあの有名シーンのオマージュだったのかと腑に落ちる。
実は先日、このドラマの取材で生ガルフを拝見したのだが、彫りの深い顔立ちに185センチの長身をハイブランドで包んだ姿は、グッチのブランドアンバサダー就任も納得の、まさにグローバルスターなオーラ全開!だった。
ただ、口調はとてもソフトで、ときおりハニカむ感じは少年、もっといえば少女のようですらあり。圧倒的にきらびやかな華とともに柔らかな可憐さをも併せ持つガルフによるカッコイイとカワイイの波状攻撃で、ガルフの沼にハマる人も多いにちがいないと思った次第である。
そんなタイBLファン以外も虜にすること必至のガルフ主演ドラマのほかに、この春、日本で見ることができるお薦め作品も参考までに挙げておこう。
まずは、映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(17)の天才苦学生役で注目を浴びたチャーノン・サンティナトーンクン(BLドラマファンには23年『愛の香り』の、といった方が馴染深いだろうか)の主演映画『哭戦 オペレーション・アンデッド』(4月18日公開)。
生ける屍となった少年兵たちの悲しき運命を描いた……つまりはゾンビ映画ということで、チャーノンファンからゾンビ映画好きまでが幅広く楽しめそうだ。
また6月には、アジアのA24とも称され良質な作品を送り出しているGDH製作の最新作『おばあちゃんと僕の約束』(24)も公開される。
余命宣告された祖母と遺産目当てで介護を引き受けた孫のふれあいを描いたヒューマンドラマだが、この孫を演じているのが、BLドラマ『I Told Sunset About You〜僕の愛を君の心で訳して〜』などで人気のビウキン(プティポン・アサラタナグン)。姑息な考えでおばあちゃんに近づくものの、やがて徐々に心情を変化させていくちょっとサエないふつうの青年を演じるビウキンに、誰もが心動かされるはずだ。
お薦めといえば、もうひとつ。
「タイに来たらいいと思う」
タイの俳優らしきイケメン青年が、カタコトの日本語でそんなことを言いながら、タイの街を紹介していく微妙にどうかしているTikTok動画シリーズ。これは去年あたりから新作がアップされるたびにバスっているためすでにハマっている人も多いと思うが、これらを見れば、脱力笑いの果てにタイへの愛着が増すこと請け合い!
ちなみにそのイケメン、名はルーク・イシカワ・プラウデンといい、アメリカ生まれの日系アメリカ人ながら大学卒業後にタイに渡り、モデル・俳優(多くの人気俳優を抱えるGMMTVの所属だった!)として活躍中とのこと。動画は23年にルーク一人で始めたが、その後、24年9月からはタイ在住の日本人とタイ日のハーフの2人とともに結成したNipponboyzのアカウントで引き続き動画を展開している。これもまた、ガルフ他のタイ人俳優たちの活躍と同じように、日本とタイの立派な架け橋である──ということで、今後もその活動を見守っていきたいものである。
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