3季連続の2位もタイトルは遠く アーセナルは今季も「長年の課題」を克服できず
悲願のタイトルにはまた一歩届かなかった。プレミアリーグを3シーズン連続の2位で終えたアーセナルの成績は決して非難の対象となるものではない。しかしながらノースロンドンの名門にとって、過去3シーズンの中で優勝から最も遠い2位だった事実は否定できない。
競争力の高いプレミアリーグにおいて、シーズンを通して高いレベルで一貫性をキープすることは容易ではない。その意味で今季のリヴァプールのパフォーマンスは過去数シーズンの中でも傑出したものだったことがわかる。
月並みな表現ではあるものの、24/25シーズンは波乱のシーズンだった。近年覇権を独占してきたマンチェスター・Cが前半戦に調子を落としたのを皮切りに、一方で昨季残留争いを戦ったノッティンガム・フォレストが躍進。不本意なシーズンを経てチェルシーも元居た場所へと戻ってきた。ブライトンやブレントフォード、ボーンマスといった中堅とされるクラブも勝ち点を得るには容易な相手ではなく、特に熾烈を極めた欧州大会出場権争いは最終節にまでもつれ込んだ。
この文脈の中でひときわ異彩を放ったのが、アルネ・スロット監督就任初年度のリヴァプールだった。11月から最終節まで一度も首位の座を譲ることなく、4試合を残してリーグ優勝を決めて見せた。
特筆すべきは「一貫した高いパフォーマンス」だ。前述の通り、例年にも増して魔境と化した今季のプレミアリーグにおいて、前評判で上回っている相手にコンスタントに勝利を収めることはその響きよりも格段に難しいものだった。順当な勝利という表現に該当する試合を見つけてくる方が困難だろう。
事実、リヴァプールにも薄氷の勝利はいくつかあった。アウェイでのブレントフォード戦では後半アディショナルタイムの得点で辛うじて勝利し、最下位でシーズンを終えたサウサンプトン相手には2戦とも勝利を収めたものの、その両方で一時リードを許す難しい展開となった。
そんな中でリヴァプールが今季無得点に終わったのは第4節のノッティンガム・フォレスト戦のみ。加えてクリーンシート数は13と、攻守にわたり一貫して高い完成度を見せつけた。エースのモハメド・サラーや守備の要フィルジル・ファン・ダイクらがシーズンを通して大きなケガなくフル稼働を果たしたことも大きな要因の一つと言える。
これに関連して言及しなければいけない要因が「選手の稼働率の高さ」。今シーズンが始まる前、一年前の今の時期にはリヴァプールに対して少々懐疑的な見方もあったことは事実だ。夏の移籍市場での実質の補強は、ユヴェントスからフェデリコ・キエーザが加わったのみ。その上で登録メンバー数はアストン・ヴィラとアーセナルと並ぶリーグ最少の24人と、強度が高く日程も過酷なプレミアリーグにおいて、それを戦う選手層について懸念する声が聞かれた。
しかしふたを開ければ前述のサラーやファン・ダイクに加え、アレクシス・マクアリスターやライアン・フラーフェンベルク、ルイス・ディアスといった面々は無傷でシーズンを完走。その他にもケガで欠場した試合数はイブラヒマ・コナテが6試合、ドミニク・ソボスライが1試合、コーディ・ガクポが3試合と中心選手の離脱が少なかった。
ほぼ昨季と同じ既存のメンバーでリーグ制覇を成し遂げたことからは「ケガで離脱しないこと」の重要性がうかがえる。そしてU-NEXTのインタビュー内で遠藤航が言及していたことからも、チーム内にケガ予防に対する徹底した意識が存在することがわかった。
これらの要因が噛み合ったことが今季の躍進につながった一方で、今夏の移籍市場では去年とは全く異なる振る舞いを見せるリヴァプール。レアル・マドリーへと旅立ったトレント・アレクサンダー=アーノルドの代役として、レヴァークーゼンからジェレミー・フリンポンの加入がすでに決定した。さらに同じレヴァークーゼンで10番をつけるフロリアン・ヴィルツやボーンマスの左サイドバック、ミロシュ・ケルケズの獲得も噂されており、補強に対して積極的な姿勢が目立つ。
果たしてスロット監督の手腕と新戦力の合流がどんな化学反応を起こすのか。来季もリヴァプールは優勝争いの筆頭候補だ。
悲願のタイトルにはまた一歩届かなかった。プレミアリーグを3シーズン連続の2位で終えたアーセナルの成績は決して非難の対象となるものではない。しかしながらノースロンドンの名門にとって、過去3シーズンの中で優勝から最も遠い2位だった事実は否定できない。