月並みな表現ではあるものの、波乱に満ちた展開を見せたプレミアリーグの24/25シーズン。予想を裏切るいくつものサプライズがリーグを彩ったが、一方で降格した3クラブは1年を通して蚊帳の外だったと言わざるを得ない。
大きな期待に胸を膨らませプレミアリーグに凱旋したレスター、イプスウィッチ、そしてサウサンプトンの淡い希望は、並みいる強豪たちによって木端微塵に粉砕された。3クラブはそろって勝利数二桁に届かず、さらに失点は80を超えるなど弁明の余地のないパフォーマンスに終始。この結果、前年度昇格を果たした3クラブがそのまま降格したのは、昨シーズンに引き続き2シーズン連続となった。
3クラブの中で最も健闘したレスターが獲得した勝ち点は「25」。1992年にプレミアリーグが創設されて以来、この勝ち点で残留を果たしたクラブは存在しない。最下位となったサウサンプトンが稼いだ勝ち点「12」に至っては、07/08シーズンのダービーが残した「11」に次ぐ、プレミアリーグ史上ワースト2の記録となった。
チャンピオンシップはプレミアリーグを超える魔境かもしれない。リーグ戦を戦う24チームの中で昇格の切符を掴めるのはわずか3チーム。世界的にみても2部リーグの中では非常にレベルが高く、全カテゴリーをまたいで開催されるカップ戦ではプレミアリーグのチームを打ち負かすことも珍しくはない。
そんな厳しい環境を勝ち抜いたチームでさえも、プレミアリーグは一筋縄ではいかないことをこの2シーズンは強く物語る。2部時代からの既存の選手でプレミアリーグ残留を果たすことができれば理想だが、やはり世界最高峰の舞台で対等に戦うためには「補強」がキーワードになる。
この3クラブがまったくの無策だったわけではない。レスターはプレミアリーグでの経験が豊富なジョルダン・アイェウやボビー・デコードヴァ=リードといったベテランを中心に、オドソンヌ・エドゥアールやファクンド・ブオナノッテら活躍の期待できる選手もローンでチームに加えていた。サウサンプトンが獲得したアーロン・ラムズデールもプレミアリーグのトップレベルを知る守護神として申し分ない補強だった。
しかしながら答え合わせの終わった現在、それだけでは不十分だったという結論が出た。初めてプレミアリーグを経験する選手を多く抱える3チームは大舞台で圧倒される局面が多く、トップリーグの洗礼を受けた。
昇格組にとって最大の目標は残留。その上で数シーズンに渡ってプレミアリーグに定着することが理想だが、その実現は至難の業だ。限られた予算の中でトップクラブと対等に渡り合うためには、正攻法だけではない、ある意味「奇策」が求められるのが現状だろう。
昇格以来プレミアリーグに定着したクラブには、定型はないもののそれぞれの「武器」がある。ブライトンはオーナーであるトニー・ブルームを中心とした画期的なリクルーティングシステムを展開し、安価で獲得した無名の選手をトップレベルにまで引き上げた。ブレントフォードは今夏トッテナム・ホットスパーへ加わったトーマス・フランク前監督のもと、無名選手を多く抱えるスカッドならではの割り切ったゲームプランを徹底し、一定の成績を残し続けてきた。
このように「他にはない何か」を見つけられない限り、昇格チームにとって残留もしくはそれ以上の成績を残すことは難しい。それが何かを見つけるために残された時間は、あとわずか1か月。来たる25/26シーズンから加わるリーズ、バーンリー、そしてサンダーランドには2シーズン続く昇格チームのジンクスを打ち破ることに期待したい。
低調なシーズンを過ごしたウェストハム。22/23シーズンにヨーロッパリーグ優勝を果たしたその面影は見られず、一年を通して特筆して好調な時期も訪れなかった。
エヴァートンのスタイルは明快だ。堅守を一番の強みに失点を抑え、引き分けや1点差での勝利で勝ち点を積み上げる。決して華があるとは言えないフットボールだが、それでも強豪ひしめくプレミアリーグにおいて、自分たちのできることを徹底する割り切ったスタイルは一定の成果を挙げてきた。
最悪の事態も頭をよぎるほどの開幕序盤の絶不調。FAカップ決勝でマンチェスター・Cを下して手にした初の主要タイトル。クリスタル・パレスの24-25シーズンは話題に事欠かないイベントフルな1年だった。
22-23シーズンの昇格以来、プレミアリーグに定着し中堅クラブの代表格となったフラム。今季も15勝9分14敗、54得点54失点の得失点差「0」という成績で、11位でシーズンを終えた。