プレミア勢力図に変化を加える2チーム ニューカッスルとアストン・ヴィラにフォーカス
近年上位勢を脅かし続ける2チーム。ニューカッスルとアストン・ヴィラを分けたのはわずかに得失点差だった。
数々の波乱により例年に増して激しい競争が見られた24/25シーズンのプレミアリーグ。その中でも最も大きなサプライズとして、ノッティンガム・フォレストの名前を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
22/23シーズンにプレミアリーグへ昇格してからは苦しい時間を過ごしてきた。かつてのイングランドを代表する古豪は名物オーナーのもと、行き当たりばったりな補強を繰り返した末に一貫性を見出すことに苦労した。昇格チームの不振により辛うじて降格を免れた過去2シーズンは幸運だったという見方もできる。
今季開幕にあたっても、前評判は決して高くはなかった。個々を見れば能力の高い選手がそろう一方で、チームとしてのまとまりに欠ける点が指摘された。クラブは昨季半ばにチームを引き継いだヌーノ・エスピリト・サント監督を続投させ、人事の観点からも大きな改革は見られなかった。
だからこそ今季の大躍進に対する驚きは並のものではなかった。圧倒的な成績でプレミアリーグ優勝を果たしたリヴァプールに前半戦唯一土をつけた一戦は今季のファーストサプライズであり、古豪復活の合図だった。守護神マッツ・セルスとムリージョ&ニコラ・ミレンコヴィッチの不動のCBコンビを軸とした安定感のある守備陣は失点を抑え、堅実なスタイルで着実に勝ち点を積み上げていった。
攻撃陣の活躍にも注目が集まった。カラム・ハドソン=オドイやアンソニー・エランガなど、前所属チームでくすぶっていた選手たちが軒並み調子を上げたかと思えば、ベテランストライカーのクリス・ウッドが33歳にして本格ブレイク。チームをけん引する20ゴールの大活躍を見せ、一時は3位にまで浮上したチームの中核を担う役割を十二分に果たした。
それだけに、後半戦の停滞は悔いの残る部分だろう。チャンピオンズリーグ出場権争いも大詰めとなる終盤にかけて、レスターやエヴァートンといった下位チーム相手に勝ち点を稼げなかったことは、奇しくも悲劇的なフィナーレへの伏線となってしまった。
この表現は少々大げさかもしれない。3シーズン前に2部から昇格し過去2シーズンは残留争いに巻き込まれていたチームが欧州大会への出場権を獲得する7位でフィニッシュしたのだから、結果だけを見れば十分賞賛に値する内容の1年だったはずだ。しかしながらシーズンを終えた今、この見方に賛同する意見はさほど多くないと予想がつく。
最終節、チャンピオンズリーグ出場権争いのライバルであるチェルシーとの直接対決。望外のシーズンを有終の美で締めくくるチームを見届けようとホームに詰めかけたサポーターの目前で、今季最大の夢は無慈悲にも打ち砕かれた。1-0の緊迫した大一番を制し、試合後ピッチ上で歓喜の輪を形成したのはアウェイチームだった。
失意の後味が強く残る一方で、最高のシーズンの最後に辛酸をなめたことは来季に繋がる経験にもなりうる。古豪の完全復活に期待が高まる中、この心残りを来季に向けて上手く昇華することができるかに注目だ。
近年上位勢を脅かし続ける2チーム。ニューカッスルとアストン・ヴィラを分けたのはわずかに得失点差だった。
「大不幸中の幸い」。トッテナム・ホットスパーの24/25シーズンを描写するには、こんな表現がぴったりかもしれない。良い意味でも悪い意味でも、ノースロンドンの名門は歴史的なシーズンを駆け抜けた。
名門の没落はいつまで続くのか。マンチェスター・Uはまたしても暗く寒いトンネルの出口にたどり着くことはできなかった。
最終節終了後のピッチには歓喜の輪が広がった。名門にとって本来目指すべき場所にはまだ及ばない。それでも今季のチェルシーには来季に向けた期待が高まるような復活の兆しが確かにあった。
誰も予想だにしない失意のシーズンとなった。前年度王者が陥った極度の不振は、例年以上に波乱の多かった今季の中でも特に大きなサプライズのひとつに数えていいだろう。