古豪が完全復活へ 台風の目となったフォレストは来季雪辱を果たせるか
数々の波乱により例年に増して激しい競争が見られた24/25シーズンのプレミアリーグ。その中でも最も大きなサプライズとして、ノッティンガム・フォレストの名前を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
中堅クラブとしての躍進をみせたブライトンだが、いまだ欧州の舞台には一歩及ばなかった。成熟した戦術と若手の台頭によって過去最高を目指した今季は、期待と現実の間で揺れ動く旅となった。
わずか31歳の若さで監督に就任したファビアン・ヒュルツェラーは、前任者ロベルト・デ・ゼルビが築いた戦術的基盤を踏襲しながらも、自らの色を徐々に打ち出していった。若き指揮官は既存のリスクを減らしながら、ゴールの再現性をより高くする取り組みを行った。攻撃時はCB2枚の間に中盤の選手が一人降りることで最終ラインで疑似的な3バックを形成し、一列前の2ボランチとの連携により安定してボールを前に運ぶルートを整備した。
また、センターフォワードの選手がポジションを下げて相手CBをつり出し、後方に空いたスペースに両翼の選手らが走りこむという、少ない工数でゴールに直結しうるパターンも多く見られるようになった。デ・ゼルビはポゼッション自体を目的化していた印象があった中、新指揮官はゴールという究極の目標を明確にし、そのためのボール保持という認識をチームに浸透させた。
その中で今季もチームの攻撃の核となったのは日本代表MF三笘薫だ。昨季の飛躍からさらに進化を遂げ、プレミアリーグで日本人初の二桁ゴールとなる10ゴール4アシストという成績を残した。特筆すべきは得点パターンの多様化だ。代名詞ともなった鮮やかなドリブル突破からのゴールやアシストはもちろん、巧みなポジショニングによるヘディングでの得点や、抜群のコントロールから少ないタッチ数で奪ったゴールなど、得点パターンの引き出しを確実に増やした。
左サイドを主戦場としながらも、試合状況に応じて中央や右サイドにも現れ、守備陣を混乱させる動きを見せた。一方で守備時には自陣深くまで懸命に戻りチームのピンチを救うなど、攻撃面以外での貢献も一層目立つようになった。シーズンを通してケガによる欠場はわずか2試合とコンスタントに稼働し、不動の存在として立場を確立した今季の貢献度の高さに疑いの余地はないだろう。
ブライトンの選手発掘能力は今季も健在だった。弱冠20歳のヤンクバ・ミンテは無尽蔵のスタミナと圧倒的なスピードを武器に、攻守の両局面で絶大な存在感を放った。21歳のカルロス・バレバも同様に目覚ましい成長を遂げた。無理が効く圧倒的なフィジカルを武器に中盤の底で的確なポジショニングと正確なパス配給を行い、攻守の要として31試合で先発出場を果たした。
その他、ヤシン・アヤリやジャック・ヒンシェルウッドらの若手もシーズンを通して2000分を超える出場時間を確保しており、大舞台での手ごたえを十分につかんでいる。継続的に若手が台頭する運営システムも、ブライトンという比較的小規模なクラブがプレミアリーグの舞台で近年安定した成績を残している大きな要因に数えられる。
一方で課題も浮き彫りになった。守備面では59失点と、降格した3チームを除けばワースト4となる数字を記録。特に試合終盤となる80分~90分台の失点は13で全体の22%を占めるなど、試合運びにおいて脆さを感じさせるスタッツとなっている。若さゆえの未熟さという見方もできるが、ウォルヴァーハンプトン戦やレスター戦などリードしていた試合で土壇場で追いつかれ勝ち点を落とした事例が少なくないことを鑑みると、この点は来季に向けた明確な改善点として捉えられる。
それでも来季への明るい材料は多い。ヒュルツェラー監督の戦術哲学が完全に浸透すれば、継続的に強豪チームを脅かす存在になる可能性は十分にある。若手の成長曲線も右肩上がりなのに加え、今夏の移籍市場でもさらなる若手を中心に積極的な補強姿勢を見せている。
ブライトンが目指す次のステージは明確だ。欧州カップ戦の舞台へと駒を進め、「中堅クラブの雄」から「強豪クラブ」への変貌を遂げること。その挑戦はすでに始まっている。
数々の波乱により例年に増して激しい競争が見られた24/25シーズンのプレミアリーグ。その中でも最も大きなサプライズとして、ノッティンガム・フォレストの名前を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
近年上位勢を脅かし続ける2チーム。ニューカッスルとアストン・ヴィラを分けたのはわずかに得失点差だった。
「大不幸中の幸い」。トッテナム・ホットスパーの24/25シーズンを描写するには、こんな表現がぴったりかもしれない。良い意味でも悪い意味でも、ノースロンドンの名門は歴史的なシーズンを駆け抜けた。
名門の没落はいつまで続くのか。マンチェスター・Uはまたしても暗く寒いトンネルの出口にたどり着くことはできなかった。
最終節終了後のピッチには歓喜の輪が広がった。名門にとって本来目指すべき場所にはまだ及ばない。それでも今季のチェルシーには来季に向けた期待が高まるような復活の兆しが確かにあった。