ブレントフォードは興味深いチームだ。フットボールにおいて費やした金額がそのまま結果に反映されるとは限らないものの、プレミアリーグのような日常的に莫大な金額が動くリーグで戦うためには、最低限の投資が必要と考えるのが一般的なセオリーだ。そんな中でブレントフォードは比較的予算が限られているにもかかわらず、2021-22シーズンの昇格以来4シーズン連続で危なげなく残留を果たしている。個々の選手はビッグクラブと比較すれば無名である一方で、組織化された戦術はチームとしての一体感を強め、他クラブに引けを取らないスタッツを記録している。
所属選手の平均市場価値は1380万ユーロであり、これは当然プレミアリーグの平均である2002万ユーロを大きく下回る。また、この数字はエヴァートンやウェストハムよりも小さく、それぞれのクラブが13位と14位で今季を終えたことを考慮すると、ブレントフォードの「コストパフォーマンス」の高さが自然と際立つ。
さらに所属選手の平均年齢は25.2歳と、チェルシーの23.1歳に次ぐリーグ2位の若さを誇る。これらの数字から浮かび上がるのは、若く無名の選手たちを組織として機能させる優れた指導者の存在だ。
トーマス・フランクの戦術は効率重視とも表現できる。流れの中では人数をかけて固めた守備から、ヨアン・ウィッサとブライアン・エンベウモの黄金コンビによるカウンターを狙う。セットプレーではペナルティーエリア内にボールを送り、ゴール前でシンプルな競り合いを演出。さらには敵陣深くで得たスローインの機会では積極的にロングスローを採用するなど、昨今進化を続ける最先端のポゼッションフットボールの真逆に分類されるような戦術が多く見られた。
時代遅れとも言えるようなこの戦術をトーマス・フランクが長年にわたって採用し続けてきたのは、それによって一定の成績を収めることができたからだ。事実、今季のブレントフォードの得点数はブライトンと並んでリーグ5位となる「66」をマーク。中でも前述のウィッサは19得点、エンベウモは20得点を記録し、チーム総得点の約60パーセントをたった二人で稼いだことで大きな存在感を見せた。
しかしながら4シーズン前の昇格以来すっかりプレミアリーグの常連となったブレントフォードは、今夏大きな転換点を迎えている。2018年よりチームを率いたトーマス・フランクはトッテナム・ホットスパーへ新天地を求め、大エースのエンベウモにもマンチェスター・Uをはじめとするビッグクラブからの関心が強く報じられている。
戦術や数字を見れば、監督を含めた絶対的な個の存在に依存してきたブレントフォード。夏の移籍期間の間にチームを再編成し、万全の状態で新シーズンに臨むことができるか。さもなければ、近年見せた安定したパフォーマンスとはかけ離れた苦しい1年が待っているかもしれない。
中堅クラブとしての躍進を魅せたブライトンだが、いまだ欧州の舞台には一歩及ばなかった。成熟した戦術と若手の台頭によって過去最高を目指した今季は、期待と現実の間で揺れ動く旅となった。
数々の波乱により例年に増して激しい競争が見られた24/25シーズンのプレミアリーグ。その中でも最も大きなサプライズとして、ノッティンガム・フォレストの名前を思い浮かべる人は少なくないはずだ。
近年上位勢を脅かし続ける2チーム。ニューカッスルとアストン・ヴィラを分けたのはわずかに得失点差だった。
「大不幸中の幸い」。トッテナム・ホットスパーの24/25シーズンを描写するには、こんな表現がぴったりかもしれない。良い意味でも悪い意味でも、ノースロンドンの名門は歴史的なシーズンを駆け抜けた。