「“私たちの歌”を、あなたと」今井美樹ライブレビュー&インタビュー
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「“私たちの歌”を、あなたと」今井美樹ライブレビュー&インタビュー

今井美樹の全国ツアー「今井美樹 CONCERT TOUR 2023 “Our Songs!!”」のファイナル公演が、12月30日(土)に配信されます。今井にとって5年ぶりとなった全国ホールツアーに、彼女はどんな思いを込めて臨んだのでしょうか。

「いろいろなことがあったけれど、お互い、ここまで一生懸命頑張ってきたよね」

12月30日19時から「今井美樹 CONCERT TOUR 2023 “Our Songs!!”」がU-NEXTにて配信される。これは今井美樹が2023年10月から全国12ヶ所を回った全国ツアーの最終日、12月1日の東京・TACHIKAWA STAGE GARDENの模様を収めたものだ。タイトルの“Our Songs!!”には5年ぶりのツアーに込めた今井の思いが表されている。

今井:ツアーに足を運んでくださった皆さんも、私自身も、「いろいろなことがあったけれど、お互い、ここまで一生懸命頑張ってきたよね!?」という思いがありました。私の楽曲が皆さんの様々な思い出にリンクしているというお便りを、いつもたくさんいただきます。皆さんが長年、私の楽曲を愛してくださるからこそ、私は今も、こうして皆さんの前で歌うことが出来る。だから“My Songs!!”(=私の歌)ではなく“Our Songs!!”(=私たちの歌!!)と銘打ち、私から皆さんへ心からの感謝を伝えるツアーにしたいと思いました。

スタイリッシュなカフェを模したステージセットにも、セットリストにも、「久々に会う気のおけない友人たちとの同窓会」というコンセプトが反映されている。

今井:久々に語らい合いながら、笑ったり涙ぐんだり慰め合ったりして、いつまでも話が尽きない。でも、気付いたらいろいろなことがどんどん浄化されている。そんなライブになればと、1曲目は『幸せになりたい』を、敢えてオリジナルよりもキーを下げてリラックスした感じで歌いました。そこからの『彼女とTIP ON DUO』、『SATELLITE HOUR』の3曲が、かつての友だち同士を、つまりは皆さんと私をもう一度繋ぐ役割になればと思いました。

昔からの今井美樹ファンのなかには、今回のセットリストに“意外さ”や“新鮮味”を感じる場面もあるだろう。

今井美樹さん_02

昔よりも精神的な重心がとれるようになった

今井:以前の私なら、この流れでここに「Goodbye Yesterday」と「愛の詩」を続けることはまず無かったです。同じ熱と重量感がある曲なので、どちらかしか選べなかった。でも、『愛の詩』も、今回どうしても歌いたかった曲の一つでした。若い頃とは身体も声も違うかもしれないけれど、昔よりも精神的な重心がとれるようになったことで、敢えてあの2曲を続けようと思った。きっと皆さんも涙を隠して懸命に歩く時もあったんじゃないか、心の灯火が隙間風に揺れていた事もあったんじゃないか、これは「私たちの曲だ」と思ったんです。私とずっと一緒に同じ時代を駆け抜けてきた同世代のみなさんへ向けてイメージした選曲だったので、きっと届くと思っていました。何より、それをあんなに気持ちよく形にしてくれたバンドメンバーのみんなには感謝しかないですね。

実際、この日のバンドは本当に素晴らしかった。キーボード/バンマスの河野圭、ドラムの鶴谷智生という今井のライブではお馴染みのベテランに、これまでも今井と度々共演してきたベースのなかむらしょーこ、そして今回が初共演となるギターの真壁陽平の4人が奏でるサウンドは、この上なく豊潤でモダンだ。まるで飛行機がのびやかに離陸するような抜けのいいイントロと綺麗な着地の奥深い余韻のアウトロの繰り返しが、入念に練られたセットリストの楽曲をひとつに繋ぎ、一遍のタペストリーのような情景をオーディエンスへと提示して見せる。

今井:河野君と鶴谷君の表現力の素晴らしさは言わずもがな。河野君はバンマスとしてのアレンジ力も素晴らしく、鶴谷君は繊細なテクニックで曲の世界を鮮やかに彩ってくれる。そこにこれまでも度々ご一緒してきたしょーこちゃんのグルーヴと真壁君の大胆なアプローチと世界観の描き方が交わることで、特に80’sの曲はよりモダンな解釈のサウンドになったと思います。

今井美樹さん_03

「ああ、何ていい時間だったろう!」と心から感じられるライブに

終始、力強いボーカルを聴かせる今井の表情は、終始、笑顔だ。

今井:今回は笑おうって思っていたんです。それは無理に笑うという意味じゃなくて。みんなに感謝を伝えに来ているんだから笑顔で会いたい。ステージ上の大変さは相変わらずだし、水面下で足を掻いている水鳥のように自分ではジタバタしています。でも、笑顔には笑顔が返ってくる。これは本当にそうなんですよね。4月に60歳を迎えた日から、コロナ禍や体調の変化のためにかかっていた靄がぱっと晴れた。歳を重ねることは楽しいし、『これが今の私です』と胸を張って歌える自分がいました。

ファン垂涎のナンバーが並んだ中盤からグルーヴィーなダンステリアのような終盤までの構成も心地よい。「彼女とTIP ON DUO」、「MISS YOU」、「瞳がほほえむから」、「PRIDE」、「PIECE OF MY WISH」といった世間に広く知られる今井美樹の代表曲とその他の楽曲が理想的な形で融合し、特に2015年のアルバム『Colour』以降に彼女が標榜してきた「大人のための踊れる音楽」、「私たち世代のためのグッドミュージック」として具現化されている。

今井:「結果的に」なんですが、岩里祐穂/上田知華コンビ曲、川江美奈子さんの曲、布袋さんの曲、そしてKANちゃんの曲というバランスが奇跡的だった。それぞれが私にとって大切な宝物のような曲ですから。今後、この選曲を超えるのはちょっと難しいかもしれない(苦笑)。

「いまの今井美樹のベストなライブ」。そう言って彼女は笑顔を見せた。

今井:それは「私がよかった」という意味ではなく、この映像を通して、改めてバンドやスタッフのみんなの反応、お客さまの反応を客観視することで、初めて『ああ、何ていい時間だったろう!』と心から感じられたから。一生懸命にやった結果だと思えたし、幸せだった証。すごく気持ちの良いキャッチボールしていましたよ、私たち、会場中で。もうねえ、本当にいいライブでした!(笑)。私たち世代の同窓会、ぜひとも多くのかたにご覧いただけたらうれしいです。

見逃し配信は2023年1月13日23:59まで。師走から新春のひととき、今井のファンはもちろん、多くの音楽ファンにチェックしてほしい。

今井美樹 CONCERT TOUR 2023 “Our Songs!!” thumbnail (6)
配信開始前、または配信終了しています。

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