どこまでも等身大な役者・二宮和也に魅了される厳選10選
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どこまでも等身大な役者・二宮和也に魅了される厳選10選

2024.06.19 18:00

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今夏、大ヒットした主演ドラマ『ブラック・ペアン』のシーズン2の放送が決定し、多くのドラマファンから期待を集めている二宮和也。

スーパーアイドルグループ・嵐の一員として、俳優だけでなくマルチな活動を続けてきた二宮だが、実は映像での本格的な俳優デビューは、嵐としてCDデビューする1年前の1998年。当時Jr.ブームの真っ只中にあって、演技の面で頭ひとつ抜けていた彼は、嵐でのデビュー直前である1999年4月クールに連ドラ『あぶない放課後』で渋谷すばると共にW主演も果たしている。

以来、その演技は、名うてのクリエイターたちを惹きつけることに。

単独初主演映画となった2003年の『青の炎』は、舞台演出家として超一流の蜷川幸雄が21年ぶりに映画を監督したことで話題になった作品。また、2006年の『硫黄島からの手紙』は、オーディションでハリウッドの大スターにして名監督・クリント・イーストウッドのお眼鏡にかない、俳優としてのキャリアを大きくステップアップさせた。2016年の山田洋次監督作『母と暮せば』では、第39回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞。直近では、福澤克雄が手掛けたドラマ『VIVANT』に重要な役柄でサプライズ出演して話題を呼んだ。

役者・二宮和也の魅力は、等身大の個性からくる共感性の高さと、ナチュラルでいながらも奥行きのある演技。一見、なんの変哲もない平凡な人間を演じているようで、その軽みの中に揺らめくように存在する、人の心の機微を表出するのが実に上手い。

だからこそ『GANTZ』のような突拍子もない設定の作品でも観る側に「自分の身に起こった」かのような恐怖を感じさせてしまうし、『ブラックペアン』のような非凡な人間を演じるときには、そのキャラクターを逆手に取って、まるでどこかに本当にいそうなアンチヒーロー像を作り上げてしまう。

ここでは、二宮が自身の個性を生かし切って演じた、さまざまなタイプの10作を厳選。どんな設定の作品も観る者に我がことのように感じさせてしまう、二宮ならではの“等身大マジック”に浸ろう!

①『青の炎』(2003年)

青の炎
©2003「青の炎」製作委員会

舞台の巨匠・蜷川幸雄が21年ぶりに映画のメガホンを取った本作で、二宮を主役に大抜擢。貴志祐介の同名小説を原作に、家族を守るために元継父を殺す完全犯罪を企んだ17歳の少年の顛末を追う青春サスペンスだ。

二宮にとって単独初主演映画となった作品で、彼が演じたのは湘南の海沿いの町に暮らす17歳の主人公・櫛森秀一。冒頭、自室のガレージで目覚めた遅刻常習者の高校生である秀一は、抱え込んだもやもやを突っ切るかのように「ロードレーサー」を走らせ、学校へ向かう。

セリフのないこの短いシークエンスだけで、一見フツーに見える少年の中にある孤独感と焦燥を体現してしまう若き二宮、恐るべし。

ストーリーが進むにつれ、秀一の鬱憤の原因が明らかになっていくのだが、二宮は過激な感情表現に走ることなく、静かな芝居の中で…例えば、その目に宿る怒りの表現だけで、不条理と対峙する主人公の心情をリアルに観る者に訴えかけてくる。

自身の犯行の記録をテープに録音する、秀一の中盤の長いモノローグも見事。淡々とした口調の中に秀一の強い決意がにじみ、怒りと抑圧の中で湧き上がる間違った正義感に、よくないこととはわかっていても、ついつい観る者は共感し、心を捉えられていく。

当時のトップアイドル・松浦亜弥が演じるヒロイン・紀子との初々しくもぎこちない、恋愛未満の関係も見どころのひとつ。

撮影当時20歳に満たない若き二宮の青く、みずみずしい演技に、その才能を改めて実感させられる1本だ。

②『硫黄島からの手紙』(2006年)

硫黄島からの手紙
©Warner Bros. Entertainment Inc. ©DreamWorks Films L.L.C.

ハリウッドの大スターにして名監督、クリント・イーストウッドが、太平洋戦争末期の硫黄島の戦いを日本側の視点から描いた作品。アメリカ側から太平洋戦争を捉えた前作『父親たちの星条旗』と対を成している。

嵐のブレイク前、「仕事がない」と悩んだ二宮は、この映画のオーディションをスタッフから勧められ、「クリント・イーストウッドに会えたら、7、8年くらいはトークのネタにできる」という理由で参加。しかし、現場に彼がいなかったことでやる気が消失したまま演技に臨んだところ、そこが逆に「戦う気持ちのない兵士」という役柄にハマって合格したという逸話が残る。

飲み水も十分にない孤島で、圧倒的な兵力の差があるアメリカ軍と36日間にも及ぶ歴史的な激戦を繰り広げた日本兵たちの壮絶な顛末を描く本作。

二宮が演じた硫黄島守備隊に属する陸軍一等兵・西郷は、表面上は「お国のために」と上官に従いながらも、心の奥底には戦争への反抗心を抱えている元パン屋の男だ。

キャラクターが心の奥に溜め込んだ鬱屈や反抗心を、あくまでもナチュラルに伝える等身大の演技は、二宮の真骨頂。厭戦感の強い日本兵の姿は、戦争を知らない現代人にも共感できる部分が多く、大きな力の前になすすべもない小さき者の葛藤が胸を打つ。

当時、嵐としてデビューはしていたものの一般的な知名度はまだまだ低かった二宮だが、このハリウッドでの成功で一躍、日本国内でも俳優として引く手あまたの存在に。

③『山田太郎ものがたり』(2007年)

山田太郎ものがたり
©森永あい/講談社 ©TBS

アイドルグループとしての嵐の人気が急上昇中の2007年に放送されたこのドラマ。今となっては貴重な櫻井翔とのW主演作で、ヒロイン役を本作が連ドラ初出演となった多部未華子が務める超豪華な布陣となっている。

森永あいによる同名少女漫画が原作で、お金持ち高校を舞台に容姿端麗、学業優秀、スポーツ万能だが、実はド貧乏の山田太郎をとりまく恋と友情の物語が展開する。青春ラブコメの王道たるドリーミングな設定が、当時の若き女子たちの心を鷲掴みに!

当時、二宮は24歳ながら、まだまだあどけないルックスで、制服姿もバッチリ似合う。体の弱いド天然の母(菊池桃子がハマり役)と幼き弟妹たちを食べさせるため、日々バイトに励む家族思いの太郎を、キラキラのアイドルパワー全開でひたすらピュアに演じ切っている。学校で居眠りするキュートな太郎の寝顔のどアップには、ヒロイン・池上隆子の「まさに天使!」という心の声にうなずく人も多いかも!?

華道の家元の跡取り息子で、太郎と友情を深めていく御村託也を演じる櫻井翔は、当時25歳。まだ若く、尖ったカッコよさのある櫻井とのキャラクターの対称性も見どころだ。

第1話からつるはしを持つ王子様というトンデモシチュエーションが登場するなど、頻繁に王子様コスプレが楽しめるのもファンには嬉しいポイント。第2話では、メイドさん姿の超貴重な二宮の姿も!

母性本能をくすぐる、二宮のアイドル性に幸せをもらえる1作。

④『流星の絆』(2008年)

流星の絆
©TBS ©東野圭吾「流星の絆」(講談社刊)

ベストセラー作家・東野圭吾による同名小説を、宮藤官九郎が脚本化した連続ドラマ。殺人事件の犯人探しにドキドキしつつ、宮藤官九郎ならではの小ネタでも笑わせられ、意外な2人の恋模様にもハラハラ。最終的には兄妹の絆と家族愛に涙が止まらなくなる、青春ミステリーの傑作だ。

ここで二宮が演じるのは、有明家の三兄妹の長男・功一。幼い頃、洋食店「アリアケ」を営む両親を惨殺された過去が原因で世をすねており、信じられるものは錦戸亮演じる弟・泰輔と、戸田恵梨香扮する血の繋がらない妹・静奈だけ。特に静奈に対しては強い責任感を抱いていて、彼女を守るために生きているといっても過言ではない。とにかく抱えるものが多いキャラクターだ。

普通に演じたらずしんと重たくなってしまいそうな役柄だが、二宮が演じるとどこか飄々とした佇まいとなり、グッと共感度がアップ。それでいて、時折見せる表情には深い悲しみや憤りが漂い、観る者の心をぐっと掴む。熱い復讐心をにじませるシーンでは、しっかり感情をゆさぶってくる。

錦戸、戸田との三兄妹の息の合った演技も見どころになっていて、特に三兄妹がなりわいとしている詐欺を働くシーンは、劇中劇のような面白さ。

衝撃的な事実が判明する最終回では、犯人を前に積年の思いを噴出させる功一を熱演した二宮。必見の名場面だ。

⑤『フリーター、家を買う』(2010年)

有川浩の同名小説を、『救命病棟24時』や『僕の生きる道』の橋部敦子が脚本化してドラマ化。

本作で二宮演じる主人公は、せっかく就職したメーカーをたった3カ月で退社し、家に引きこもってしまう主人公・武誠治。甘えが抜けきらず成熟しきれない誠治は、まさにどこにでもいそうなダメ人間像。等身大の演技を得意とする二宮には、うってつけの役柄だ。

しかし、そんな誠治のだらしない日々も、浅野温子演じる母・寿美子が重度のうつ病にかかっていることが判明することで終わりを告げる。ショックを受けた誠治は、現状を打破しようと、給料のいい土木工事現場でバイトを開始。そこで香里奈扮する建設会社の社員として生き生きと働く女性・千葉真奈美と出会い、彼女に感化されて「家を買う」ことを目標に立て、労働への意義を見出していく。

夢もやる気もなかった人物が、逃げられない家族の問題にとまどいながらも、次第に活力を取り戻していく姿を、二宮らしい共感度の高さで演じ切ったこの作品。どこか世の中を舐めていた青年の変化を巧みに表現し、観る者を清々しい気持ちにさせてくれる。なかでも、恋人・真奈美との恋愛シークエンスは大きな見どころに。

最終話、和歌山に2年間研修に行くことになった真奈美を高速バス乗り場に見送りに来た誠治が照れながらも思いを告げるシーンは、二宮にしては珍しくストレートに甘々なセリフ。その初々しい姿に胸がキュンとさせられる。

⑥『GANTZ』(2011年)

GANTZ
©︎奥浩哉/集英社 ©︎2011「GANTZ」FILM PARTNERS

幼なじみの加藤勝とともに電車に轢かれて死んだはずの大学生・玄野計。

目覚めた空間にあった謎の黒い球体・GANTZからの司令により、彼は同じ目的で集められた人々とともに地球に住む未知の星人と戦わざるを得なくなる。

星人に勝利し、得点を重ねて100点になれば、「記憶を消されて解放される」か「好きな人間を生き返らせる」かを選ぶことができるというスリリングな設定だ。

奥浩哉の同名漫画を映画化したSFアクションで二宮が演じたのは、主人公の玄野。就活中だがそこまでやる気はなく、社会への少しの不満を抱えながらダラダラ生きているフツーの大学生を、二宮は得意のナチュラルな演技で体現する。

しかし、そんな玄野は、理不尽にも渋々と死地に赴くことを強いられ、追い詰められるたびに戦いに意義を見出していく。

漫画原作ならではの“ありえない”設定は、実写化することで、ともすれば一気にリアリティを失いかねないのだが、二宮が体現する実にリアリティのある“フツーの男”の身の上に降りかかることで、「自分もこんな目にあったらどうしよう!」という臨場感ある危機感を与えることに成功している。

フツーの人間が覚悟を決めて確変していくさまは、二宮ならではの等身大のキャラだからこそ、ドラマチックに輝くのだ。

玄野は見事、100点を獲得して解放されるのか!?“フツーの男”の覚悟を決めた血みどろの死闘に、一瞬たりとも目が離せない!

続編の『GANTZ PERFECT ANSWER』も同年に公開された。

⑦『母と暮せば』(2015年)

母と暮せば
©2015「母と暮せば」製作委員会

大女優・吉永小百合と主演の名を連ねた本作で、第39回日本アカデミー賞主演男優賞を受賞。俳優としてまたひとつ、格を上げることになった。

故・井上ひさしが未完のまま残した原案を『男はつらいよ』などを手掛けた日本を代表する巨匠・山田洋次が引き継いだ本作の舞台は、終戦後の長崎。吉永演じる母・福原伸子の前に、二宮扮する3年前の原爆投下で被爆死した息子・浩二が亡霊となって現れるというストーリーだ。

あまりにも悲惨な亡くなり方をしていながらも、母の前に現れる浩二=二宮には、そこまで大きな悲壮感はない。亡くなったことへの恨みつらみは一切なく、残された母が心配なあまり、見守るために現れた、という雰囲気で、母と子の久々の再会のシーンはどこかほっこりとした気持ちにさせられる。

一方、切なくさせられるのは、黒木華が演じる恋人・町子に対する思いを浩二=二宮がにじませる場面だ。大げさな感情表現は一切ないが、リアリティにこだわる名匠・山田の演出とも相まって、二宮の静かな演技からは十分にその未練が伝わり、心に刺さる。

二宮らしい、さりげなくも奥行きのある演技があってこそ、戦争が奪う日常の大切さを改めて感じさせられる一作だ。

⑧『ブラックペアン』(2018年)

ブラックペアン
©TBS ©海堂尊/講談社

凄腕外科医としてのスキルと引き換えに大金をせしめる“オペ室の悪魔”こと渡海征司郎を演じ、真意の全く読めない巧みなキャラクターで見事に物語を牽引した二宮。

人を冷たく突き放し、ふてぶてしく傲慢に周囲を振り回す渡海のあまりの横暴ぶりに「なんだこいつ!」とイラッとさせられたら、それは二宮の術中にハマったということ。

そんな渡海=二宮が、倍賞美津子演じる母・春江や内野聖陽扮する教授・佐伯の前でふっとその感情を垣間見せるだけで、「あれ、もしかしていい人?」とその正体に俄然、興味が湧いてしまうのだ。

ダークな面の奥底にそこはかとなく人間味を醸し出す、その塩梅のうまさが彼ならでは。

その渡海への興味に加えて、日本外科学会の次期理事長の座をめぐる東城大学VSライバルの帝華大学との権力闘争や、渡海の父と佐伯の因縁をめぐるミステリー要素もあって、最終話である第10話まで目が離せない展開に。ぐいぐいと物語に引き込まれた最後の最後、佐伯=内野との関係性も含めて、すべての答えが明かされてからの渡海=二宮の最後の表情には、グッと胸を掴まれるはずだ。

今夏のシーズン2では、同じ東城大を舞台にしながら、渡海とは全く違うキャラクターの天才外科医・天城雪彦を演じることになるそう。今度はどんなキャラクター造形を見せてくれるのか、期待大!

⑨『VIVANT』(2023年)

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『半沢直樹』や『下町ロケット』など、日曜劇場でヒットを連打している福澤克雄が原作と演出を手掛けた話題作。

二宮は、第1話の終盤、遊牧民のような白装束で馬を走らせるシーンで初登場する。放送当時は、それまで彼の出演は伏せられていたこともあって、「いったいどんなキャラクターなのか?」とSNS上が騒然となったのも記憶に新しい。

彼が演じたのは、架空の国・バルカ共和国で活動する謎のテロ集団・テントのNo.2で、リーダー、ノゴーン・ベキと行動をともにするノコル役。堺雅人演じる商社マンの主人公・乃木憂助とは、驚愕の関係性にあることがのちに判明する重要な役回りだ。

異国語を操りながらも日本語も流暢で、組織のためなら残酷な行為も厭わないミステリアスなキャラクターを、その空気感だけで醸し出すのは二宮の真骨頂。テロ集団の一員だからと、わかりやすく厳ついキャラクター造形にするのではなく、能面のような表情の奥に得体のしれない凄みを垣間見せる。一見してテロリストには見えない自身の個性を熟知した上で、役柄が背負うものをさりげなく表出する役作りが絶妙だ。

さらに、追従するノゴーン・ベキに寄せる深い想いがゆえの憂助に対する複雑な心境や、恵まれない子どもたちに向ける心根のピュアさといったノコルの繊細な内面も巧みに表現し、ドラマ後半の人間関係の見どころをさらっていく。

最後の最後、ノコルが憂助に告げたひと言にグッと来た人も多いはず!

⑩『アナログ』(2023年)

アナログ
©2023「アナログ」製作委員会 ©T.N GON Co., Ltd.

好きになった相手は、今どき携帯も持っていない“アナログ”な女性。「毎週木曜日、来れる時だけ同じ店で待ち合わせをしましょう」という約束だけで繋がっているカップルの、予想外の恋の行方を描くラブストーリー。

大人の恋を描くこの作品で二宮が演じるのは、仕事にはこだわりがある職人気質な空間デザイナー・水島悟。性格はお人好しで、仙人のような欲のなさ。どこかぽやぽや、ふわふわした雰囲気を身にまとう。

二宮の持ち味であるキュートな部分を、久々に目一杯生かした役回りだ。

悟が一人、朝食を食べるシーンからこの映画は始まるが、この一連の一人芝居が実に二宮らしい自然な演技。パクついた瞬間、声に出さずとも「おいしい!」と顔に出る悟。もぐもぐとおいしそうに朝ごはんを頬張る姿は、とにかく平和だ。小さな幸せにいちいち感動しながら生きているであろう悟の、「ザ・善人」とでも言いたくなる空気感を二宮はこの演技でしっかりと伝え、観る者は皆、なんとなく悟に好感を持ってしまう。

そして、波瑠が扮する価値観の合う美女・みゆきと出会ってからの悟は、さらにほわほわ度がアップ。わかりやすく恋に舞い上がり、しかし、器用に立ち回れないでいるその姿に、自然と彼を応援する気持ちになってしまうはず。

後半からの展開は、ミステリアスだったみゆきの正体をめぐって衝撃の展開に。

泣きのシーンも多いが、そこは二宮。いわゆる「クサイ芝居」にはならず、実にナチュラルな涙の演技で観る者の感情を揺らしてくる。繊細な心のゆらぎが、切なくも心地いい。


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