【レビュー】「とにかく自信が1個もない」ダウ90000が挑む本多劇場公演と、リーダー蓮見さんが見つめる今と未来
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【レビュー】「とにかく自信が1個もない」ダウ90000が挑む本多劇場公演と、リーダー蓮見さんが見つめる今と未来

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結成4年目にして、演劇界の直木賞と呼ばれる岸田國士戯曲賞にノミネート、舞台のチケットは即完売、M-1グランプリでは準々決勝まで進出と、飛ぶ鳥を落とす勢いの8人組、ダウ90000。『週刊ダウ通信』や『ダウってポン』などの冠番組がスタート、リーダー蓮見さんはラジオにレギュラー出演するなど、ひっきりなしに仕事のオファーがやってきます。

それでもなお、「ちょっともまだ売れてない」というダウ90000。今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材したドキュメンタリー番組『Real Folder』は、演劇界の聖地とも言われる下北沢本多劇場で初開催されたダウ90000『第5回演劇公演「また点滅に戻るだけ」』の制作から千秋楽までに密着します。

作品作りは、創作の疲れがにじむ蓮見さんと、楽しそうに台本を読むメンバーとでスタート

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©MBS

公演に向けた稽古場で、蓮見さんが途中まで書きあげた台本がメンバーにLINEで配られます。スマホやタブレットで読むメンバーが笑顔になっていき、まるで観客のように台本にのめり込んでいく一方、台本執筆に疲れ切っているのか大あくびの蓮見さん。読み合わせが終わると、道上さんがやはり観客のように「これ観たいな、私」とうれしそうに語ります。対して蓮見さんは、「さぁ覚えてねみんな。こっからはもうみんなのターンだよ。俺もう知らないから」。脚本・演出・主演を務める蓮見さんと7人のメンバーの作品作りはこうして始まります。

「とにかく自信が1個もないんですよ」(蓮見)

ダウ90000にとって最大キャパシティの本多劇場での公演、しかもスタッフも増え、責任感を持たないといけないと感じ、「仕事だと思いすぎていた」と言う蓮見さん。ですが、昔自分が書いた長編の台本を読み返し、「これやってる時、1ミリも仕事だと思ってなかった」と振り返ります。テレビでは言えないような言葉も含め「マジでなんでも言える」のが舞台だと思い出し、一気に今回の台本を書き上げました。

「とにかく自信が1個もないんですよね。俺が自分から何かを選んで何かをやることの恥ずかしさが培われていて、俯瞰で決める癖が抜けない。俯瞰で見てるっていう事実を隠して見栄張っていかなきゃいけないタイミングにもうさしかかっているのかな」。仕事として大きくなっていく演劇に対し、自身の変化を語ります。

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©MBS

「今は、蓮見が操縦する飛行機にみんなでぶら下がっている」(園田)

公演初日まで1週間。台本を完成させて稽古を早めに終え「一番楽しいけど一番つらい作業が終わり、今日が最高」と蓮見さん。酒飲んで寝ますと言う一方で、「今年は賞レース出られるだけ出ようと決めた。今後の集客のためにはテレビで結果出すのは絶対大事」と展望を語ります。

実際、メンバーたちはドラマや舞台への個人出演も増え、活躍の幅が広がっています。ドラマの撮影の合間、園田さんは「今は蓮見が操縦する飛行機にみんなでぶら下がっている状態。蓮見が誰も落とさないように操縦してくれているけど、そろそろ一人ずつがどうしたら前に進むかを考える時期に来てるのかな」。メンバーもまた、ダウ90000の成長を模索しているようです。

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「まだ完璧にできたことが1回もない」直前までのブラッシュアップ

本番2日前、劇場での稽古が始まります。「俺が字で書いただけのものがこんなことになりますか」(蓮見)。「おばあちゃんが福岡からくるんです」(中島)。完成しつつある舞台を目の当たりにし、本多劇場で公演することを実感し興奮するメンバーたちですが、控室に集まると円になって読み合わせを繰り返します。セリフ一言一言への蓮見さんの厳しい演出が続きます。

「まだ完璧にできたことが1回もない」忽那さんは、本番初日の朝にも蓮見さんに稽古を依頼していました。一つのセリフを繰り返し、最終的にセリフの変更が決定。本番直前までブラッシュアップは続きます。

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「本気で一笑いもない可能性があるって本気で思ってる」(蓮見)

いよいよ開幕。出演シーンを待つ中、舞台の様子をモニターで確認する蓮見さん。メンバーの芝居に頷く、観客の反応に一瞬顔をほころばせる、上手くいったセリフに微笑む、ほんの数秒間にそんな表情をころころと浮かばせます。「ここウケるなら大丈夫かな」。手応えを感じられたようです。

初回公演終了後の舞台裏。「よくやったなマジで」蓮見さんの一言からメンバーたちが安堵の笑みを浮かべます。「本気で一笑いもない可能性があるって本気で思ってることを誰も信じてくれないけど、めちゃくちゃ怖い」と公演前の想いを語る蓮見さん。「本当によかった。怖かった」とラジオの現場に向かっていきました。

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©MBS

「ダウは蓮見と言われてるけど、対等でいたい」(道上)

2023年5月21日千秋楽。本多劇場での5日間9公演が終了。

「今までで一番嬉しいかも。はじめてじゃないかな、千秋楽が一番良かったの」(蓮見)

「僕が一番ウケてた」(園田)

「蓮見さんに良かったと言われて良かった」(忽那)

「ここで終わっちゃうのは嫌だ。これからもっと頑張らなきゃ」(中島)

「楽しいと思って始めたことのまま、本多劇場までこれた、やれたってことが、尊い」(飯原)

「ダウは蓮見と言われてるけど、怯まないというか、対等でいたい」(道上)

「一般の人と業界関係者のダウへの認識に明らかに差があると思っていて、一人一人が知られていかないとその差が開いていく気がする」(上原)

「正当な評価を受けたい。名前だけ薄目で、ああ若いやつねって見られてるけど、その視点を変えられたらいいな」(吉原)

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©MBS

そして、公演終了直後、興奮気味に語っていた蓮見さんが、一息ついた後のインタビューでは、「8人としての目標は、5年後に全国ツアーをしていたい。10年後、その規模が縮小していない。個人で言ったら、俺よりも有名な作品を作りたい。作品タイトルが世に出てて、脚本蓮見なんだ、と後から分かるぐらいの」と落ち着いて話します。そしてまた、蓮見さんは休む間もなく次の作業に向かっていきます。

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