一瞬で説得力を持たせてしまう俳優・鈴木亮平の厳選10作
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一瞬で説得力を持たせてしまう俳優・鈴木亮平の厳選10作

2024.05.17 18:00

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北条司による同名ロングセラーコミックの実写版『シティーハンター』の冴羽獠役で、改めて注目を集めている俳優・鈴木亮平。下ネタ連発で女子をはべらせる“軽み”とハードなアクションを次々と繰り出す“凄み”とを兼ね備えた振り幅のある演技で、超有名漫画のキャラクターを多くの者が納得する形で見事に具現化してみせた。

硬軟自在な演技力に加え、筋肉質な肉体美を誇り、その体で本格的なアクションを軽々とこなす。そして何より、役のためにハードな自己管理で体格さえもコントロールしてしまう役者魂の持ち主でもある彼は、日本を代表する実力派俳優として、その評価にゆるぎがない。

「役者になりたいという」夢を抱き、大学卒業後になんのつてもない事務所に自ら電話で売り込んで、芸能界に入ったという伝説的なサクセスストーリーも有名なところ。

ここでは、彼を一躍ブレイクさせた主演映画『HK 変態仮面』から、圧倒的な悪役演技で実力派の座を世に定着させた映画『孤狼の血 LEVEL2』、初の大河ドラマ主演を演じ切った『西郷どん』、救命救急医を熱く演じて映画化もされた連ドラ『TOKYO MER』ほか、ぜひ観ておきたい彼の出演作10本をセレクト。

作品ごとに違う顔を見せる、“カメレオン俳優”鈴木亮平にしかできない幅広すぎる役柄の数々を堪能して!

①『HK 変態仮面』(2013年)

HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス
© あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

パンツを被るとみなぎる変態パワーで正義の「変態仮面」に変身する男子高校生を、体を張って熱演した彼の出世作。原作の大ファンだという俳優・小栗旬が脚本協力を買って出て、監督・脚本をドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズや劇場版『銀魂』シリーズなど数々のコメディでヒットを飛ばす福田雄一が手掛けた。

鈴木は、盟友・小栗に「変態仮面を演じるなら他には考えられない」と見込まれてこの作品に主演。体重をわざわざ15kg増量してから削ぎ落とすという体作りをして役に臨み、見事に漫画から抜け出てきたような筋肉美キャラクターを造形した。以降、主演スターとしてのし上がる第一歩の作品に。

顔には女性用のパンティを被り、下半身のもっこりもあらわに繰り出すアクションに目が行きがちだが、その確かな演技力にも注目したい本作。恋に奥手で不器用な男子高校生の姿と、パンティをかぶって変身してからのヒーロー然とした声や立ち姿との演じ分けはお見事のひと言!バカバカしくもカッコいいビーロー像に、大笑いしながら喝采を浴びせたい快演ぶりだ。

人気を受けて2016年には続編『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』が公開された。

②『TOKYO TRIBE』(2014年)

TOKYO TRIBE
© 2014 INOUE SANTA /“TOKYO TRIBE” FILM PARTNERS

アニメ化もされた井上三太の同名漫画の2作目『TOKYO TRIBE 2』を原作に、『地獄でなぜ悪い』の園子温監督が映画化。5つのTRIBEがしのぎを削る近未来のトーキョーを舞台に、暴力で街を支配するTRIBE「ブクロWU-RONZ」のヘッド・メラと、ラブ&ピースを標榜するTRIBE「ムサシノSARU」との抗争を、出演者のラップをミュージカルのようにつないで、バイオレンス描写たっぷりに描き出す。

今作で鈴木が怪演したのは、金髪にグラサン、黒のファーコートにいかついネックレスを付けた、ブクロを仕切るマッチョマン・メラ。ダミ声でヤクを売りさばく登場シーンからして、度肝を抜くワルっぷりだ。

ボスの邸宅では黒の紐パン一丁で、ワイルドなラップを披露しながら、日本刀を手に政治家のおっさんたちをバッサバッサと叩き切る。

きっちり鍛え上げた黒光りボディで、ガチのアクションをぶちかますシーンの連続。鈴木の肉体美が好きな人は、絶対観るべし!

③『俺物語!!』(2015年)

俺物語!!
©アルコ・河原和音/集英社 ©2015映画「俺物語!!」製作委員会

原作・河原和音、作画・アルコによる同名少女漫画を、鈴木&永野芽郁の共演で映画化。巨漢だが心はまっすぐな男の中の男・剛田猛男と、天然でピュアな女子高生・大和凜子との不器用な恋を描いた異色のラブコメディだ。

漫画の世界にしか存在できなさそうなデフォルメされたキャラクターを実写の世界にしっかりと降臨させるのは、鈴木の得意技。

この作品でも、でっぷりした体躯に顎までのびたもみあげ、黒ぐろとした太い眉毛という、おじさんにしか見えない男子高校生・猛男を、きっちりとその肉体で具現化してみせている。

しかも、そのなりきりぶりはビジュアルだけではない。子どもが川で溺れていれば後先考えずにダイブするような熱血漢で、柔道をさせれば相手をすさまじいパワーで投げ飛ばす。そんな役柄の持つ性格や能力までをも説得力たっぷりに、かつコミカルに表現してしまう。ロマンス面でもしっかり観る者を引き付けるところも、鈴木の演技のすごさ。凜子に恋する不器用な姿に、男子は共感するであろうし、女子は母性本能をくすぐられ、どんどんかわいく見えてきてしまうはず。

ちなみに、すらりと細面で女性にもモテモテの親友・砂川誠役を演じた坂口健太郎との対象的な見え方もこの作品の面白さだ。

本作の公開と同年には、朝ドラ「花子とアン」で吉高由里子演じる主人公・花子の夫となる花岡役を優しい雰囲気で好演し、全国的な知名度を上げた彼。本作とのあまりものギャップに驚かされた人も多いはず。カメレオン俳優としての評価をぐんと上げた作品の一つになった。

④『西郷どん』(2018年)

西郷どん
©NHK

林真理子の同名小説を原作に、鈴木も出演した『花子とアン』などを手掛けた中園ミホが脚本化。江戸幕末から明治初期にかけて日本の中枢で活躍し、近代日本の礎を築いた薩摩藩出身の偉人・西郷隆盛の半生を描く大河ドラマ。

公式コメントによると、タイトルロールを演じた鈴木は「女にも男にもめっぽうモテた」という稀代の人物を「“共感力”と“行動力”を大切にしながら演じた」という。国家の要人でありながらも、ふとした時の人なつこい笑顔が愛嬌たっぷりのその演技は、まさに誰からも愛される人物像。

仲間のためにまっすぐに突き進んだ青年期から、不遇な状況にあえぐこともありつつ、日本の未来のために奔走した壮年期 そして薩摩藩の侍魂を背負う覚悟で生き切った最晩年まで、西郷の波乱万丈な人生を演じ抜いた本作。

1年という長いスパンで、はつらつとして若々しい姿から徐々に貫禄が付いていく、時間の経過を感じさせる役作りも見事なもの。最終的には、100kg近くまで増量して晩年の“西郷どん”を体現したそうだから驚き!

大物俳優としての存在感をさらに増した節目となる作品に。

⑤『テセウスの船』(2020年)

テセウスの船
©東元俊哉/講談社 (C)大映テレビ/TBS

竹内涼真が、31年前に無差別毒殺事件の犯人として逮捕された警察官の父・佐野文吾の無実を晴らそうと、平成元年にタイムスリップした主人公の青年・田村心を演じるサスペンス・ミステリー。文吾は本当に冤罪なのか? だとすれば真犯人は誰なのか? 二転三転する展開と過去と未来を行き来する設定の妙で謎が謎を呼び、リアルタイムの放送時には犯人当ての推理でSNSを大いに賑わせた。

そんなスリリングなストーリーの中、鈴木は事件前までは警官として村人たちに厚い信頼を寄せられていた実直な文吾をさわやかな演技で好演。未来の心と出会ってからは、愛する家族を守るために事件の真相を追う姿を緊迫感たっぷりに演じてみせた。

死刑囚として長年収監され、しょぼくれた31年後の文吾を演じるシーンでは、特殊メイクで老いた姿に変身。鈴木自身の顔を3Dプリンターでモデリングしてベースを作る技術を使って、60代になった文吾の顔貌を作り上げたそう。

⑥『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021年)

TOKYO MER〜走る緊急救命室〜
©TBS

最新の医療機器とオペ室を搭載した緊急車両“ERカー”で事件や事故、災害の現場に駆けつけ、救命医療を施す「TOKYO MER」の活躍を描く医療ドラマ。チームを率いる凄腕の救命救急医・喜多見が、知事と対立する政府、厚労省の妨害にも負けず、人命を守るために奔走する。

大ヒット作を連発するTBSの「日曜劇場」で初の主演を任された鈴木は、「待っているだけじゃ、救えない命がある」をモットーに救急医療に熱意を傾ける医師・喜多見役を、まっすぐな演技で好演した。

凄惨な事故や災害の現場に、驚異的な救命技術を持つスーパー医師が自ら乗り込んでいくというドラマならではの架空の設定に、リアリティをもたせるのが役者の力。第1話の冒頭、鈴木扮する喜多見が軽々と懸垂をこなすシーンからこのドラマは始まるが、そのほんの数秒の肉体表現で、救命医として現場で働き続けてきたタフな喜多見の生き様をしっかりと伝えるところはさすが。

危険な現場で冷静にテキパキと指示を出す姿も、高い技術を要する手術でスピーディーにメスを振るう姿も、さらには後半で人間的な弱さを見せる部分も、すべてにおいてリアリティのある演技で、観る者をどんどんドラマの世界へと引き込んでいく。スリリングな展開とも相まって、全11話があっという間だ。

喜多見は鈴木の当たり役となり、2023年には映画化、スペシャルドラマ化もされた。

⑦『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)

孤狼の血 LEVEL2
©2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

柚月裕子の『孤狼の血』シリーズを白石和彌監督が映像化し、大ヒットを飛ばしたバイオレンス映画の続編。広島県の架空の都市・呉原という舞台はそのままに、映画オリジナルの展開を見せる本作で、鈴木は新キャラである暴力組織の組長・上林役で熱演。

背中に紋々を背負った上林の登場シーンは、さすがの肉体美。殊勝な様子で刑務所を出所するが…そこからが恐ろしい。刑務所時代に恨みを抱いた看守の妹を容赦なく惨殺。暴力を振るうことに一切躊躇がない、「悪魔」と形容される上林という人物をほんの数分で強烈に印象付けた。

警察と暴力組織との攻防戦を描く本作。松坂桃李演じる裏社会の治安を守る刑事・日岡と対峙するシーンにも見どころが多い。

まずは、出会いの場面。ただ残忍なだけでなく極道なりの仁義を通そうとする上林と、前作でその上林の“父”である恩人・五十子が死ぬきっかけとなった日岡との、狐と狸の化かし合いのような会話のシーンでは、本音を隠したスリリングなやりとりを繰り広げ、その演技合戦は直接的な暴力描写がなくても手に汗握る。

もちろん、後半に怒涛のごとく展開する2人のバイオレンスシーンもど迫力。鈴木扮する上林は、夢に出てきてうなされそうなほどの残忍さを発揮する一方、世を恨む暗い眼差しや人間味ある悲哀の表情など、絶妙なさじ加減の演技も挟まれ、心を奪われる。

第45回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞の受賞も文句なしの怪演だ。

⑧『エルピス—希望、あるいは災い—』(2022年)

エルピス—希望、あるいは災い—
©カンテレ

長澤まさみが冤罪事件の真相を追う女子アナウンサー・浅川恵那を演じた社会派ドラマ。巨大権力とそこに忖度するテレビ局報道との関係性が現実の社会問題と重なり、放送当時は大きな反響を呼んだ。NHKの朝ドラ『カーネーション』(2011-2012年)などを手掛けた脚本家・渡辺あやが、民放の連ドラで初執筆し、『モテキ』(2010年)の監督・大根仁が演出を務めている。

鈴木が演じたのは、恵那が務める「大洋テレビ」報道局のエース記者にして恵那の元恋人・斎藤。パリッとしたスーツを着こなし、いかにも“デキる男”のたたずまい。報道番組で活躍していた恵那が落ち目になったきっかけとなる“路チュー”の相手だったという設定も納得だ。

当初は、恵那と、そして共に事件を追う眞栄田郷敦演じる若手ディレクター、拓朗とのよき相談相手に見えたが実は…という裏のある役柄でもあり、善悪だけではくくれない複雑な人間像を鈴木はリアルな演技で体現する。

最終回、組織に生きる自身の思いを打ち明けつつ、恵那と交渉するシーンは大きな見せ場に!

⑨『エゴイスト』(2023年)

エゴイスト
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

エッセイスト・高山真による同名の自伝的小説を、『トイレのピエタ』『ハナレイ・ベイ』の松永大司監督が映画化。本作で鈴木が演じたのは、宮沢氷魚演じるパーソナルトレーナー・龍太と愛し合うようになるファッション編集者・浩輔。

浩輔は、14歳で母親をなくし、ゲイであることを隠して過ごした田舎町を大人になってから飛び出したという設定。バリバリ働くことで自己実現を果たす仕事場と、仲間内でつるむことで安心感を共有するゲイコミュニティとを行き来することで、満ち足りない人生のバランスを取っているような人物だ。

それを表現する具体的な表情やセリフがあるわけではないが、まるでドキュメンタリーを見ているように、孤独な男の様相が生々しく迫ってくるのは、鈴木の緻密でリアルすぎる人物造形があってこそ。仕草や言葉遣い、体つきまでもをリアルに一人の人間像として具現化させ、浩輔を「隣りにいそうな誰か」のように観る者に感じさせる。

そんな男が、恋人・龍太との出会いで変わっていく。

ゲイという設定ではあるが、恋愛を通して見える世界が変わっていくあの感覚は、恋をしたことがある人であれば誰しもが共感できるものだろう。

孤独と抑圧が愛によって解放されるさまを、鈴木が浩輔として生き生きとした演技で体現するからこそ、後半の展開が観る者に刺さる。

不条理に満ちた世界の中で、愛し合うことの意味とは?そして、人のために生きることの意味とは?という命題を問いかけてくる佳作。

⑩『下剋上球児』(2023年)

下剋上球児_第5話_01
©TBSスパークル/TBS

「日曜劇場」での2度目の主演作となった本作。自身も高校球児だった教師・南雲が弱小高校の野球部を率いることになるが、南雲には大きな秘密があり…!?  『MIU404』『アンナチュラル』など多くのヒットドラマを手掛けた新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督とのタッグで、波乱の道のりを経て甲子園を目指す弱小高校の姿を描き出す人間ドラマ。『西郷どん』で鈴木とは夫婦役を演じた黒木華が、野球部の熱血コーチ・山住役に扮する。

本作で鈴木が演じたのは、教育にかける熱意は人一倍ありながらも、ある秘密を抱える教師・南雲の姿。見るからに好青年の南雲が、実はとんでもないことをしでかしているという設定を、きわきわのラインで視聴者に共感させてしまう、鈴木の人間らしさ溢れる演技力には脱帽だ。

教え子たちを温かく見守る、父性のかたまりのような優しい眼差しも印象的。リアルな関係性をドラマに映すべく、現場でも本当の先生のように生徒役の若手俳優を見守っていたというエピソードも残る。劇中に登場する指導ノートも、実際に鈴木自身が手書きしたものだというから驚き!

最終回のスピーチは、葛藤を乗り越えて生徒たちと真摯に向き合ってきた南雲だからこその名シーン。その万感の思いが伝わる鈴木の熱演に見入ってしまう。


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