SKY-HI、自身初アリーナツアーのタイトルに付けた「BOSSDOM」への思いや独自のボス像を語る
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SKY-HI、自身初アリーナツアーのタイトルに付けた「BOSSDOM」への思いや独自のボス像を語る

ラッパー、アーティスト、プロデュサーで2020年9月には自身がCEOを務めるマネジメント/レーベル「BMSG」を設立。アーティストが、自分らしく才能を開花させられるように、音楽業界の常識を覆す“仕組み”づくりに挑むSKY-HIさんは「新しいリーダー」として注目を集めています。

直近では、自身最大規模となるアリーナツアー「SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー」が東京と大阪で開催し、圧倒的な音楽パフォーマンスを披露しました。

今回は、SKY-HIさんにライブの見どころやアーティスト、プロデューサー、CEOの顔を持つ独自のボス理論について話を聞きました。

SKY-HIさん_アーティスト写真

BOSSDOMという言葉に自己定義を込めた

今回のアリーナツアーのタイトルには「BOSSDOM」という言葉が使われていました。過去の楽曲を振り返っても、所々にBOSSというキーワードが登場するなど、その言葉には特別な思い入れを感じます。SKY-HIさんにとって、この言葉にどんな印象を持っているのでしょうか。

SKY-HI:BOSSDOMというネーミングは「自己定義」も込めたものとして使っています。というのも、アーティストとして、精神的に波がなく活動を続けるのがなかなか難しかった十数年間だったからです。

その一番の原因が、AAAと並行してラッパー活動を始めた際にヒップホップの現場では「アイドルがラップしている」と言われ、逆にアイドルの現場では「深夜のクラブに毎日通っている不良」みたいに、ネガティブな側面で語られることが多かったこと。なのでしばらくは、そういったラベリングをされ続けながら、ずっと活動をしなくてはならない時期を過ごしていたんです。

それが2020年に起業した後は、周囲から「BMSGを作った人」としての認識を持たれ、自分もその実感を強く抱くようになった。鏡の前で「お前は誰だ」と言い続けると気が狂う、という話に近いことが、ずっと自分の中でも続いていたと思うんですけど、今はアーティストとしてもプロデューサーとしてもBMSGの社長という意味でも、“ボス”としての意識のみで、自己認識の型がつく。そして、その状態で仕事ができていて、かつプライベートも過ごすことができています。

もちろん時間的な忙しさもありますが、マインド的にはすごく充足感がありますね。アーティスト活動を十数年間やってきて、その状態を作れているのは、我ながら夢があるなと。20年越しにはなるけど、10代の頃に思い描いていた夢が、今まさに体現できていて、ようやくそこににたどり着けたと感じていて。なので、あらためてBMSGを立ち上げた一人の人間の物語として表現するために「BOSSDOM」という言葉を使いました。


映像として切り取られたときの「破壊力」を意識した

自身最大規模となるアリーナツアーは、“新たな歴史を創るライブ”と宣言していたSKY-HIさん。本公演の見どころについて、「どのシーンも映像として切り取ったときの絵面には、いつも以上にこだわっていて、映像作品として楽しめるものに仕上がっている」と語ります。

SKY-HI:毎回、ライブについては世界観や空間演出の作り込みはすごく力を入れてやっていて、音楽能力に自信があるからこそ、エンターテインすることを意識して作っています。

今回のアリーナツアーの具体的な見どころとして、透過性LEDで囲まれたステージの使い方や、ドローンカメラによるマルチアングルな視点でライブ視聴ができること。それが切り取られて映像になったときにものすごく破壊力が生まれると思っていて、それを意識ながら作り込みを行いました。配信や切り抜きの時代への対応もあります。

また、ライブの最初から最後までのストーリーづくりや曲間のギミックや間も細かく設定していて、その流れの中で丁寧かつ繊細にパフォーマンスするところと、パッションとエナジーに任せてパフォーマンスするところの濃淡があるのも、ぜひ見てほしいですね。

あとは僕がMCで「3年後くらいに東京ドームでライブをやろう」と宣言したこと。まさか、こんなことを言うとは思わなかったんですよ(笑)。パフォーマンス以外の部分も見どころが多いので、その辺りにも注目してライブ配信を見ていただけたらと思います。

SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー_04

BMSGファミリーに迎え入れる上で大切にしていること

今回のアリーナツアーでは、BMSGのTRAINEEがオープニング・アクトを披露。粒ぞろいのアーティストが集うBMSGですが、そのファミリーに迎い入れる上で意識していることをSKY-HIさんに聞きました。

SKY-HI:リスペクトや愛情、「創造性」に加えて、「スタイル」を持っているアートフォームが好きなので、それらを兼ね備えた人を迎え入れるように意識していますね。他方、グループにおいて危ういのは「変にラベリングしてしまう」こと。

その最たる例が従来のアイドル文化に見られる「いじられ役」や「お母さん的存在」などの“役決め”です。

人間はどうしても居場所がほしいと思う生き物なので、ある種「〇〇役」と決めてもらった方が楽かもしれません。

でも、それは本人がやりたいと望めばの話。

無理やり「役」を押しつけられ、それを背負いながらグループで活動すれば、自己認識の歪みにつながってしまいます。

BMSGでは、相互に影響が及ぼすようなラベリングは持たないように心掛けてもらっています。

また、SKY-HIさんは「リスペクトの循環」や「本当の自分を見せる大切さ」についても語りました。

SKY-HI:お互いリスペクトし合って、高みを目指していくためには、ありのままの自分を出した方がいいんですよ。BMSGという社名が「Be MySelf Group」に由来しているように、「自分を装飾するために、脚色しなくていい」と思っています。

例えばShota(Aile The Shota)の場合は、KAT-TUNのCDを初めて買ったこと、ドリカムがものすごく好きという事とHIPHOP、R&Bへの強い愛情と影響を同列で語れますし、Core(Novel Core)も海の向こうのアーティストだけでなく、近い距離にいる自分から受けた影響についても包み隠さず、てらいなく話してくれるんですよ。

そういう関係性だからこそ、僕自身も彼らから影響を受けていて、Coreがおしゃれにネイルを取り入れているのを見て、「自分もやってみよう」と思ってネイルをやってみたり。好きな音楽もCoreやShotaと共通する部分もあるので、彼らの解釈に対して「自分ならどう捉えるか」といった思考のヒントもいっぱいもらっています。

このように、お互いが架空の自分を作らず、本当の自分を見せ続けることで、ひいては信頼やリスペクトにつながっていくと考えています。自分は表で言うことも裏で所属アーティストに向かって言うことも接する態度も全く変わりませんから、そこで培った信頼や影響は多くあると思います。

SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー_01

アーティストと経営者ではマインドの切り替えをしない

SKY-HIさんはアーティストとしての「マイ・ボス」と、BMSG代表としての「会社を背負うボス」という異なる“ボス”の側面を持っています。そんなSKY-HIさんの考えるボスとは何か。「ヒップホップカルチャーに通底した独自のボス像」を語ってくれました。

SKY-HI:アーティストと経営者でマインドセットを変えないように決めています。映画監督なら映画、画家なら絵、作曲家なら音楽などアウトプットは様々ですが、アーティストは日常を生きている中で感じたこと、見たこと、考えたことがインプットになり、エンタメとして現れるべきだと思うんです。

かつての昭和や平成の時代においては、アーティストもオフの時間がありました。

でも今の時代はSNSは発達していて、24時間オンの状態。アーティスト、アイドルというある種、自分の生き様を仕事にしてしまっている人間は、マインドセットの切り替えなんて本質的には無理なんですよ。もともとヒップホップカルチャーに強く影響を受けているので、人間性と作品が通底しているということには重きを置いていて。逆にステージの表と裏で、全くキャラクターが違うという芸能に対して、自分はあまり魅力を感じないんです。

なので、自分は「ステージの表と裏で人間性が一致している」というのを大事にしています。ステージ上では経営に関することはできないわけですが、それ以外の時間では経営も音楽家業もマネジメントも同時にしているからこそ、1日24時間という限られた中で相当なマルチタスクにもなる。そんなところで、”この仕事の時間は他の仕事をしない、みたいにスイッチの切り替えなんてしていたら、全て回らなくなってしまうと思うんですよ。

SKY-Hさんが影響を受けた映画や本は......?

10代でアーティストデビューして以来、第一線を走ってきたSKY-HIさんにとって、自身の活動に影響を与えたコンテンツはどのようなものがあるのか?映画と本の中からそれぞれピックアップしてもらいました。

SKY-HI:まず映画に関してはヒップホップカルチャーに興味を持つ人がだいたいチェックするアルパチーノもの、『ゴッドファーザー』『スカーフェイス』『カリートの道』といった作品ですね。ですが自分にとって本質的な意味でHIPHOP的な観点や社会意識を育ててくれたのはスパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライト・シング』ですね。また、ラッパーとしてリスペクトしていたJay-Zのドキュメンタリー映画「Fade To Black」も影響を受けています。ドキュメンタリーはすごく好きでHIPHOPに関わるものはとにかくたくさん観ました。

本については、ラッセル・シモンズの著書「ラッセル・シモンズの成功哲学―ヒップホップ精神で成功を引き寄せる12の法則」や、村上龍の小説「愛と幻想のファシズム」に関しては夢を見てしまうほど、自分にとって印象深い作品でした。

世界のエンタメの中心地・アメリカの企業に真っ向から勝負を挑む物語で、主人公・トウジが政治結社「狩猟社」を立ち上げ、参謀とともに巨大権力へ立ち向かう描写が、とても心を揺さぶられて。トウジが演説するシーンがあるんですが、それが自分の中でものすごく感化される内容で。

いっとき、気持ちを奮い立たせ、言葉の「重み」を感じる意味で、ライブの本番前にその演説を読んでからステージに上がるようにしていたのを覚えています。

SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー_03

いつかはクライマックスを迎えるとしても、今が一番いいとき

最後に、今後の活動や目標を聞くと、SKY-HIさんは次のように語ってくれました。

SKY-HI:起業した時に比べて、着実に夢へと近づいている手応えがあります。

それは数字的な成功よりも、周りの環境や空気感の変化から感じ取ることができている。

来年やその先に向けて、まだまだやりたいことはたくさんあるんです。

10代で見ていた夢を20代で失いかけ、それでも30代で実現できた。

着実に自己成長を実感できているわけですが、今のようなスタイルを50-60代でもできるかと言われると、そうではないと思うんです。相当体力を使うスタイルのライブをしていますから。

いつかはクライマックスを迎えるとわかっているものの、今が一番いいときなので、まだライブは辞めれないなと。そう感じていますね。

アリーナツアーでは東京ドームでライブをやると宣言してしまったので、まずはそれを有言実行できるように行動していこうと思っています。また、引き続きBMSGも社長として、会社を成長させていきたい。


SKY-HI ARENA TOUR 2023 ーBOSSDOMー

アリーナ規模にショウアップされたステージ演出を新たな武器に強烈なメッセージを強く優しく刻み込む、テーマパーク超えの120分間!

配信開始前、または配信終了しています。


(プロフィール)

SKY-HI

1986年12月12日生まれ。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期から「SKY-HI」としてソロ活動を開始。2020年にマネージメント/レーベル「BMSG」を設立して代表取締役CEOに就任。同年ボーイズグループオーディション「THE FIRST」を主催し、翌年には自身がプロデュースを手掛けるボーイズグループBE:FIRSTを輩出。 2023年には2組目のボーイズグループMAZZELがデビュー。次世代のリーダーとしてビジネスパーソンとしても注目を集めており、『マネジメントのはなし。』も発売中。

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