俳優・櫻井翔の厳選7選。二面性のあるキャラクターで存在感を発揮
シェア

俳優・櫻井翔の厳選7選。二面性のあるキャラクターで存在感を発揮

2024.08.10 18:00

Edited by

今夏、大きな話題を呼んでいるドラマ『笑うマトリョーシカ』で、若き政治家・清家役がドハマリしている櫻井翔。自身のエリートにしてクリーンなイメージを逆手に取って、表向きでは非の打ちどころがない人物でありながら、その本音はまるで見えないキャラクターを絶妙な演技で体現している。

言わずと知れたスーパーアイドルグループ・嵐の一員でもある櫻井は、慶應義塾大学卒業の元祖・高学歴アイドルとしても注目を集めてきた。いまや日本テレビ系のニュース番組『news zero』のキャスターの座に定着し、アイドルの垣根を大きく広げて報道の世界でも大活躍中だ。

一方で、俳優としてもコンスタントに良作に出演し続けてきた実績も誇る彼。ここぞという時にヒット作を放つ彼の、役者としての最大の武器はその二面性のあるキャラクターだろう。

生真面目なエリート感がありながらも、完全なるヒーローではなく、同時にどこか可愛げのある、もしくは欠落感のあるキャラクターを背負わせるとピカイチ。圧倒的な華があるのに、どこか隣にいそうな親しみがあるところも、キャラクターに人間味を付加させる大きなファクターになっている。

彼が役者として最初に大きく注目された第一歩は、ドラマ『木更津キャッツアイ』でのバンビ役。「モテるのに童貞」という相反するキャラクターがピタリとハマった。

以降も、好青年であるがゆえに凡庸さに悩む美大生を演じた映画『ハチミツとクローバー』や、有能なのに毒舌&マイペースな執事を演じた『謎解きはディナーのあとで』などで、その二面性を生かした役柄を好演。近年も過去のあるポンコツ探偵役の『ネメシス』や前述の『笑うマトリョーシカ』で役者としての存在感を示し続けている。

その二面性はおそらく、彼自身の背景も含めて、アイドルかつキャスターにして俳優という、独特な立ち位置だからこそ生まれるもの。専業俳優ではなく、マルチな活動があってこそ使いこなせる武器なのかもしれない。

ここでは、そんな“俳優・櫻井翔”が作品ごとに見せたさまざまな顔を振り返る7作品を紹介! 

『木更津キャッツアイ』(2002年)

木更津キャッツアイ
©TBS

地方都市・千葉県木更津市を舞台に繰り広げられる、宮藤官九郎が脚本を手掛けた青春コメディの快作。

岡田准一扮する、余命半年を宣告されたぶっさんこと田淵公平を主人公に、昼は草野球チーム“木更津キャッツ”のメンバーで夜は強盗団“木更津キャッツアイ”として珍騒動を起こす若者5人組の姿を主にコミカルに、時に切なく描き出す。

嵐のデビューから3年目にして出演した本作で、櫻井はスカしたイヤなヤツと見せかけて、実は純情なハートを隠し持つバンビこと中込フトシ役で、俳優としての自身の存在を広く一般に知らしめることに。

木更津イチのイケメンでモテ男なのに、好きな女子・モー子には「重い!」と言われてなかなか振り向いてもらえない。そんなどこか抜けていて人間味のあるキャラクターを可愛げたっぷりに好演。岡田准一、佐藤隆太、塚本高史、岡田義徳、酒井若菜といった共演陣との化学反応も相まって、ぶっとんだ物語展開でありながらも、大いに当時の若者たち…特に地方民の共感を集めた。

バンビが“ミスター木更津”に選ばれて、地元の祭りの山車の上で泣きながら「やっさいもっさい」を踊るシーンは、ドラマ史に残る名珍場面!

ドラマ終了後、その人気を受けて『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』、『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』という2本の劇場版も制作された。

『ハチミツとクローバー』(2006年)

“全員が片思い”という切なすぎる設定で、2000年代の女子たちから絶大な支持を得た羽海野チカの同名コミックスを映画化。美大に通う男女5人の恋と青春の葛藤をみずみずしいタッチで描く。

主人公の竹本祐太を演じた櫻井翔はもちろん、花本はぐみ役の蒼井優、森田忍役の伊勢谷友介、真山巧役の加瀬亮、山田あゆみ役の関めぐみら、当時メキメキと頭角を現していた若手スターたちの共演も話題を呼んだ。

この作品で櫻井が演じたのは、パーカーまたはネルシャツに短パンが定番ルックの、およそ美大生には見えない青年・竹本。アーティスティックな俊英たちの中にあって、フツーすぎるがゆえに悩んでしまうキャラクターだ。

そんな竹本が恋をした相手は、才能の塊である油絵科の学生・はぐみ。「人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった」(By真山)というセリフも有名なあの名シーンの、まんまるな目ではぐみを見つめるピュアな表情がなんといっても印象に残る。

独特の個性を持つ蒼井、伊勢谷の2人が演じる才に走った若きアーティストの鮮烈さ、そして加瀬と関めぐみが繊細に演じる真山と山田の恋への執着が目に焼き付けられる一方で、森田から「青春くん」と呼ばれるほどの真っ直ぐな竹本を櫻井が等身大で演じるからこそ、この作品は我々凡人にも共感を呼ぶ。

はぐみ&森田のアートな感性のぶつかり合いや、真山&山田の切なすぎる一方通行の恋をしっかりと描きつつも、その傍らで“孤高に”デコボコ道を自転車で突っ走る竹本=櫻井の存在こそが、本作をキラキラまぶしい"青春”ラブストーリー足らしめているのかもしれない。

『神様のカルテ』(2011年) 

神様のカルテ
©2011 「神様のカルテ」製作委員会 ©2009 夏川草介/小学館

夏川草介によるベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマ。櫻井は、人を救うという医師の命題に真摯に向き合う青年医師・栗原一止に扮し、その妻・榛名を宮崎あおいが演じている。

本作で、当時アイドルとしての人気絶頂期だった櫻井が、カッコよさをかなぐり捨てて演じたのは、くるくるの天然パーマに銀縁メガネ、よれよれの白衣がトレードマークの内科医。おまけに文学オタク由来の堅苦しい口調でぶつぶつと独り言をつぶやく、変人そのもののキャラクターだ。

といっても変なのは外側だけ。医師としては非常に優秀で、地域の救急病院切ってのエースで、大学病院の医局からスカウトされるほどの腕の持ち主。日々の激務をこなす中で、患者のそばに付き添って見届ける道を選ぶか、最先端医療を研究して医学の進歩に貢献すべきかを真剣に悩む、内面はきっちりと男前な人物だ。

どんなによれよれの格好でもどこかに賢さと品が漂う櫻井ならではの佇まいは、働き詰めの医師というキャラにぴったり。生真面目でいてどこか不器用な二面性も生かして、悩める若き医師の姿を真っ直ぐに熱演し、共感を生み出すことに成功している。

舞台である長野の美しい山々の風景とも相まって、命に向き合う医師のひたむきな姿にしみじみと感動させられる佳作。信頼関係で結ばれた夫婦愛にもほっこり。

『謎解きはディナーのあとで』(2011年)

謎解きはディナーのあとで
写真は映画版『謎解きはディナーのあとで』より/©2013東川篤哉・小学館/「謎解きはディナーのあとで」製作委員会

2011年に本屋大賞を受賞した東川篤哉の同名ミステリー小説を、櫻井翔&北川景子の人気コンビでドラマ化。櫻井演じるデキる執事・影山が、北川扮するお嬢様刑事・麗子をサーブしながら謎を解くというエンタメ性たっぷりな設定と、2人のキャスティングがマッチして大ヒットを飛ばした。アメコミチックな演出も楽しさ満点。

黒の執事服に蝶ネクタイという執事・影山の装いが実に似合う櫻井は、紅茶を飲むポーズ一つでもさまになる!「主であるお嬢様を守ること」を信念に、バレないように常に近くで麗子を見守り、毒舌をかまして彼女をサポートする姿に笑いが漏れつつ、胸をキュンとさせた女子も多いはず。

やけにかっちりした櫻井ならではの口調も役にハマり、立て板に水のしゃべりで推理をするシーンも見どころのひとつだ。ニュースを解説するキャスターの仕事で培った説得力が、役にも生かされているようだ。

のちの映画『ラプラスの魔女』やドラマ『ネメシス』にも続く、ミステリーと櫻井の相性のよさも改めて堪能できる一作だ。

連続ドラマから2年後の2013年の夏、劇場版『映画 謎解きはディナーのあとで』も大ヒット。

『家族ゲーム』(2013年)

櫻井翔演じる変人の家庭教師・吉本荒野が、いじめられっ子の落ちこぼれ生徒・沼田茂之を非常識なやり方で指導し、さらに沼田家の家族関係をかき回していく連続ドラマ。

原作は、本間洋平作の同名小説。1982年に松田優作主演で映画化され、1983年には長渕剛主演で連続ドラマ化もされ、いずれも大ヒットを飛ばした作品を、キャストを一新してリメイクしたものだが、後半はオリジナルなストーリーに改変。その展開の衝撃度も話題になった。

本作での櫻井は、それまでの好青年イメージを覆した熱演が大きな話題に。鋭い目つきで相手を「いいねぇ」と見下し、時に暴君のようにふるまい、時に策士としてあざとい手も使いながら、生徒を奮い立たせようとする過激な家庭教師像を体を張って演じ切った。

後半部分のストーリーは原作にはないもので、吉本の意外な正体が明かされていく展開は、櫻井の多面性を大いに生かした設定に。その最後の最後、吉本「だった」櫻井の演技もまた、このリメイク版ならではの名場面になっている。

『ネメシス』(2023年)

広瀬すず演じる“天才すぎる”助手と櫻井翔扮するポンコツ探偵が、さまざまな事件を解決していくサスペンス・ミステリー。映画『SR サイタマノラッパー』やドラマ『天魔さんがゆく』などを手掛けた入江悠監督とのタッグも話題に。

本作では、天才的な推理力で難事件を解決すると評判の探偵・風真尚希役を演じた櫻井。でも、実は風真は謎解きの才能は皆無で、彼の裏で実際に謎を解いているのは、広瀬すず演じる天才的な助手・美神アンナというカラクリがこの作品の面白さだ。

櫻井は、オーバーアクションでキザな探偵・風真を得意の仰々しいコミカルな演技で体現。決めゼリフ「この世に晴れない霧がないように、解けない謎もいつかは解ける。解いてみせましょう。この謎を。さあ、真相解明の時間です!」と告げてから、アンナの指示通りに謎解きする風真の“実はポンコツ”という設定が、櫻井の二面性にピタリとハマる。

一方で、アンナの父親探しに焦点が当てられた後半戦は、シリアスな表情も増える風真。なぜ、いちいちアンナを介して名探偵を演じ続けていたのか?その答えがわかった時、抑えていた感情をあらわにした風真の表情にグッと心を掴まれるはず。ポンコツという愛嬌だけではなく、飄々として見えても中身は熱い。そんなある二面性も櫻井ならではの持ち味なのだ。

同年に劇場版『ネメシス 黄金螺旋の謎』も公開された。

配信開始前、または配信終了しています。

『笑うマトリョーシカ』(2024年)

笑うマトリョーシカ_01
©早見和真/文藝春秋 ©共同テレビジョン/TBS

若くして国民的人気を誇る政治家・清家と、その秘書・鈴木。2人の不思議な関係性に目をつけた新聞記者・道上は、彼らの周りで連続して怪死事件が起こっていることを突き止める…。

謎が謎を呼ぶスピーディなストーリー展開で、記者・道上が怪しさいっぱいの政治家・清家の人物像に迫るさまが見どころの連続ドラマ。清家を演じる櫻井を筆頭に、道上役の主演・水川あさみや秘書役の鈴木もまた役にぴたりとハマり、そのキャスティングの妙にも唸らせられる。

本作で櫻井が演じているのは、一見、なんの曇りもない理想の政治家に見えて、実は裏で危険思想のある人物にコントロールされている疑いのある清家という人物。まるでマトリョーシカのように真意が見えないキャラクターを、まさにその二面性のある魅力を駆使して、絶妙な表情の演技で好演している。

現在放送中のこのドラマ。清家は、秘書の鈴木の手のひらの上で動いていた…と見せかけて、実はその背後には高岡早紀演じる母親の浩子がいた!というところまでが描かれている。

官房長官になった清家が張り付いたような爽やかな笑顔かつ流れるようなセリフ回しで、長年自身を支えてきた鈴木を冷徹に切るシーンでは、圧巻の演技で「怖すぎる!」とSNSをざわつかせた櫻井。

しかし、開けても開けても違う人形が出てくる“マトリョーシカ”のように、おそらくは清家の本当の正体がわかるのはまだまだこれから。この先の彼の怪演にも期待大!


いかがでしたか?その他の櫻井翔さんの出演作はこちらでご確認ください。

この記事をシェア

Edited by

日本ドラマ 特集の記事一覧

もっと見る