【洋画】手を取り合う女性たち。シスターフッド映画10選
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【洋画】手を取り合う女性たち。シスターフッド映画10選

2024.07.10 12:00

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女性たちが、同じ目標や同じ道しるべを持つことから生まれる絆。そのような女性同士の関係“シスターフッド”を描いた傑作映画が増えています。

女性映画の中でもとりわけ女性の連帯が描かれるようになったのは、#metoo運動からの流れがあることは明白ですが、実はこの言葉や概念自体は、1960年代〜1980年代に誕生したものとのこと。実際、シスターフッド映画の金字塔と言われる『テルマ&ルイーズ』は1991年に公開されています。

今日はこの『テルマ&ルイーズ』から、#metoo運動をベースにした作品、また、普遍的な“青春シスターフッド”的な作品まで、おススメの作品を10タイトルご紹介します。

『テルマ&ルイーズ』(1991)

テルマ&ルイーズ
© 2004 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

シスターフッド映画の金字塔といえば、リドリー・スコット監督によるこの作品!

専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とダイナーでウェイトレスとして働いているルイーズ(スーザン・サランドン)は友人同士。珍しく週末のドライブ旅行に出かけることになり、せっかくの機会を楽しむ気満々のふたりですが、休憩を取ったバーの駐車場で、ルイーズが離れたあいだに、テルマは見知らぬ男にレイプされそうになってしまいます。それに気づいてとっさに護身用の銃で撃ち殺してしまったルイーズ。指名手配されたふたりは、メキシコ国境をめざして車を走らせるのですが…。

冒頭から、旅行への浮き立つ気分とともに描写されるのが、ふたりのキャラクターの違いと、置かれている生活環境。とりわけ抑圧的な夫のもとで生きてきたテルマの鬱屈は冒頭から明らかですが、道中で出会う男たちとのやり取りからはルイーズの抱える心の傷も徐々に詳らかになります。

“逃避行”という目的のために刹那的な悪事を働くようになるふたり。そのなかでお互いに予想外の行動にイラついたり、逆に助けられたりしながら、その内面は明らかに自分らしく、自由に、そして絆は強くなっていきます。

刹那的でまるでアメリカン・ニューシネマのようなクライマックスも美しい、90年代の新しい女性映画の傑作のひとつです。

『スキャンダル』(2019)

スキャンダル
©2020 Lions Gate Entertainment INC.All Rights Reserved.©2020 LUCITE DESK LLC AND LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

世界的な“#metoo”ムーブメントの先駆けとなった大きなセクハラ事件の映画化作品。最初の告発をおこなう、ベテランキャスターのグレッチェン(ニコール・キッドマン)、その告発を耳にし、自らも過去に受けた心の傷が痛む売れっ子キャスターのメーガン(シャーリーズ・セロン)、次のメインキャスターの椅子を狙う若手キャスターのケイラ(マーゴット・ロビー)。立場やキャリアの異なるこの3人の目線を通して描かれる、巨大メディア帝国の内情。3人の思惑は?立場を越えて連帯することができるのか?巧みな構成がスリリングで、目が離せない作品です。

『ハスラーズ』(2019)

ハスラーズ
©2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

安全圏にいるエリート男性たちと、彼らに消費され続けた女性たち。ストリップクラブで働く女性ダンサーたちが男性に媚びることをやめ、ウォール街の裕福なサラリーマンたちから大金を奪うべく詐欺チームを結成するクライム・エンターテイメント。リーマンショック後に実際にあった実話をベースにしています。

生活のためにストリップダンサーになったディスティニー(コンスタンス・ウー)と、店のトップダンサーとして彼女をサポートし、魅せるためのダンスを教え、やがて共に詐欺チームを率いていくラモーナ(ジェニファー・ロペス)。まさに姉妹のような、運命をともにしたふたり。マネーゲームで肥えた男性たちがストリップダンサーに篭絡されて大金を失ったことを隠そうとして見栄をはる姿は可笑しくもあり、もの悲しくもあり。そんな男性たちの心理を見越して「もう強者の好きにはさせない」とばかりに連帯していく姿は、少し危なっかいところもありますが、それでもパワーにあふれていて、応援せずにはいられません。

『サポート・ザ・ガールズ』(2018)

サポート・ザ・ガールズ
©2018 Support The Girls, LLC All Rights Reserved.

個人経営のスポーツバー。夜な夜な男性たちが酒を飲みながらモニターでスポーツの試合を観戦し、セクシーな制服を着た女性スタッフが華を添え、場を盛り上げています。主人公リサ(レジーナ・ホール)はその店長であり、高圧的な男性オーナーと若い女性スタッフたちの間に立って店を切り盛り。最近できた大型チェーンのスポーツバーに負けないよう、きめ細やかな顧客サービスや、女性スタッフたちへのケアに務めているのですが…。

いわゆる「日常ドラマ」でありながら、男性オーナーのミソジニー(女性嫌悪)や有色人種であることへのマイクロアグレッション、サービス提供者であることからのカスタマーハラスメント、ルッキズムやエイジズム…日々のさまざまな理不尽を丁寧にくみ上げる作品です。それらを吹き飛ばすように懸命に日々を生きるリサと、彼女が守る若い女性たち。爽快感のあるラストシーンは必見です。

『モロッコ、彼女たちの朝』(2019)

モロッコ、彼女たちの朝
©Ali n' Productions - Les Films du Nouveau Monde - Artemis Productions

夫を亡くし、ちいさなパン屋を営みながらひとりで幼い娘を育てるアブラ(ルブナ・アザバル)が出会った、臨月の若い女性サミア(ニスリン・エラディ)。サミアは未婚で、仕事も住む場所もなく、カサブランカの街をさまよっていた女性です。イスラム教の社会では未婚の母はタブーとされているそう。それでもアブラはサミアを家に招き入れ、ともにパンを焼き、心を通わせていきます。幼い娘と3人、まるで疑似家族のように暮らしている中、いよいよサミアに陣痛が…。

モロッコでの慎ましくも美しい暮らしぶりの描写も魅力的なのですが、彼女たちを取り巻く環境は決して楽観できるものではありません。ふたりがこの出会いによって得たもの、選んだそれぞれの人生の先に幸せがあるように、願わずにはいられない作品です。

『オーシャンズ8』(2018)

オーシャンズ8
© 2018 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

一転してド派手でゴージャスなこちら。華やかに女性たちが活躍する作品ならこの作品!

セレブリティが一堂に会するメットガラ(ニューヨーク市メトロポリタン美術館で行われるファッションの祭典)を舞台に、8人の個性的な“犯罪のプロ”たちが宝石を狙うクライム・エンターテイメントです。『オーシャンズ11』のスピンオフで、サンドラ・ブロックが演じる主人公デビーは『オーシャンズ11』の主人公ダニー・オーシャンの妹という設定。

とにかく8人それぞれのキャラが魅力的で、チームの息もぴったり。演じているのはサンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、オークワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム=カーターという超豪華な組み合わせ。

ジェンダーバイアスを乗り越えてとにかく全員女性、そしてもちろん全員強くてスマート、痛快なラストで鑑賞後は気分爽快な作品です!

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2020)

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY
BIRDS OF PREY TM & © DC. Birds of Prey and the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn © 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

アメコミ映画にもシスターフッド映画が増えています!特に、DCエクステンデッド・ユニバースの第8作品である本作。主演でプロデューサーでもあるマーゴット・ロビー、脚本のクリスティーナ・ホドソン、そして監督はDC映画を監督した2人目の女性であり、初めてのアジア人女性であるキャシー・ヤン。女性による女性映画ともいえる作品です。

ジョーカーと破局したハーレイ・クインが、同じくDCのヒロインであるハントレス(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)、ブラックキャナリー(ジャーニー・スモレット=ベル)、レニー・モントーヤ(ロージー・ペレス)とともに、ダイヤを盗んで悪党に追われることになった少女カサンドラ(エラ・ジェイ・バスコ)を守ることに。

ジョーカーから自由になったハーレイ・クインの弾ける“自分らしさ”と、強い女性たちの連帯が、カラフルでポップな映像な世界観で描かれています。

『お嬢さん 劇場公開版』(2016)

お嬢さん 劇場公開版
© 2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED

アジアからはパク・チャヌク監督作を。1939年、日本統治下の朝鮮半島。日系の華族の屋敷を舞台に、その家の令嬢・秀子(キム・ミニ)と、詐欺師の手下として屋敷に入り込んだスッキ(キム・テリ)の物語。徐々に秀子と心を通わせるようになるスッキは、秀子を騙していることを苦しく思うようになるのですが…。

屋敷の奥深くに秘められていたある事実と、ラストにむけた思いがけない展開。策略と情愛のあいだで揺れ動くふたりの女性たちの関係の移ろいは変化球ではありますが、シスターフッドのひとつのかたちに違いありません。

『旅するジーンズと16歳の夏』(2005)

旅するジーンズと16歳の夏
©Dungaree Productions, LLC

爽やかな青春シスターフッドならこちら。ティビー、カルメン、ブリジット、リーナは幼馴染みの少女たち4人組。16歳の夏休みをそれぞれの場所、それぞれの過ごし方で迎えることになった彼女たちの友情と固い絆が、「なぜか全員にフィットする魔法のジーンズ」に象徴されています。不器用に恋をしたり、家族関係に悩んだりの、等身大の10代の青春。大人が観ると懐かしく、同年代にはきっと誰かに共感してしまうはず。

4人を演じるのはアンバー・タンブリン、アレクシス・ブレデル、アメリカ・フェレーラ、ブレイク・ライヴリー。ブレイク前の彼女たちのフレッシュな輝きも見どころ。続編『旅するジーンズと19歳の旅立ち』では大学生になった彼女たちの姿が観られます。

『スケート・キッチン』(2018)

スケート・キッチン

ひとりぼっちの女の子が、スケートボードを通して世界を広げていく物語。そこには、同じものを愛する女の子同志の連帯が確かにあります。

ニューヨーク郊外に暮らすカミーユ(ラシェル・ヴィンバーグ)はいつもひとり。スケ―トボードだけが楽しみなのに、ケガをしたことをきっかけに「女の子なのだから」と母親に禁止されてしまいます。親の目を逃れ、ローワー・イーストサイドのパークまで足を延ばしてみると、そこには個性豊かなガールズスケーターたちが…。

家族との関係や恋や友だち関係に悩む10代らしいナイーブさ。そして、何があっても仲間と一緒にスケートをすれば乗り越えられる、そのことに大きな説得力をもたせる迫力のスケートシーン!滑走する彼女たちの活き活きした表情をみているだけで、こちらも元気になってしまいます。

いかがでしたか?

ひと昔前には「女性の友情は脆い」「女のコミュニケーションは表面的」なんていう謎の言説があったりもしましたが、連帯した女性たちは映画でも現実でも強くてしなやか。

そして映画においても良作がたくさんあります。

下記の特集にまとめてありますので、10作品以外の映画も、ぜひお楽しみください!

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