かつて“伝説の交渉人”として名を馳せたシン社長。今はその肩書きを隠し、街角でチキン店を営む一見冴えない男として暮らしている。ある日、自殺未遂騒動に偶然出くわすが、警察に的確な指示を飛ばしてあっさり収めてしまう。一見平凡そうな外見をしているものの、その背後からは只者ならぬオーラがにじみ出ていた。
同じ頃、新米判事のチョ・フィリップは初出勤の日を迎えていた。尊敬する判事キム・サングンに同行した彼が向かった先は、シン社長の店。フィリップはそこで突然「ここで働け」と告げられる。正義感に燃える若き判事にとって、怪しげなチキン店で働くことなど到底納得できないが、サングンに強く迫られる。シン社長自身も不本意ながらフィリップを受け入れることに。
早速二人に課されたのは「塩辛組合訴訟」の仲裁だ。虫混入の報道が広がったせいで塩辛業者は廃業に追い込まれ、多くの人々が生活の糧を奪われていた。現場を訪れたフィリップは、怒りと悲嘆に暮れる組合の人々と出会い、理想だけでは救えない現実の厳しさを知る。市場は既に買い手がついており、背後で何らかの力が動いていることも明らかになる。
チキン店の配達員シオンの力も借りながら事件の解決のため奔走するなか、シン社長とフィリップは何者かに命を狙われ、列車に轢かれかける危機に直面。恐怖で震えるフィリップの横で、シン社長は怒りをはらんだ狂気の笑いを浮かべるのだった──。
本作の最大の魅力は、主人公シン社長というキャラクターにある。シン社長を演じるのは『浪漫ドクター キム・サブ』シリーズで、人情味あふれる天才医師を演じたことが記憶に新しいハン・ソッキュだ。
昼間はチキン店を営む、ごく普通の店主に見えるが、その裏の顔は“伝説の交渉人”。どこにでもいる中年男性のように振る舞いながらも、ひとたび交渉の場に立てば、瞬時にしてカリスマ的な存在感を放つ。
台詞の一部にハン・ソッキュが過去に出演した作品のオマージュが隠されており、ファンへのサービス精神にあふれた仕掛けも用意されている。平凡さとカリスマ性を自在に演じ分ける彼の演技は、本作の大きな見どころとなっている。
毎回繰り広げられる“交渉バトル”も見どころとして外せない。シン社長は暴力や権力に頼ることなく、言葉と知恵だけで相手を翻弄し、状況を解決へと導いていく。ときに意表を突く論理を繰り出し、ときに人情味あふれる一手を差し込む姿は、視聴者に「次はどう切り返すのか?」と期待を抱かせる。
その面白さを裏付けるかのように、初回放送時の視聴率は同時間帯1位を記録。その後も好成績を残している。展開は予測不能であり、最後の一言まで目が離せないスリルに満ちている。交渉という知的ゲームを物語の中心に据えている点こそが、本作ならではの面白さといえるだろう。
シン社長を支えるのは、若き判事チョ・フィリップや配達員イ・シオンといった個性豊かな仲間たちだ。フィリップを演じるのは、『組み立て式家族~僕らの恋の在処~』で主演を務めたペ・ヒョンソン。正義感に燃える真っ直ぐさと、現実に直面して揺れる繊細さを巧みに表現する。一方、シオンを演じるのは子役出身のイ・レ。庶民的で現実感のあるキャラクターに生命力を吹き込み、物語に温もりを添えている。
法律を重んじるフィリップと、街の現実に根ざすシオンという二人の存在が、物語に立体感をもたらしている。世代や立場を超えた衝突と協力を繰り返すなかで、次第に互いの強みを補い合うチームワークが生まれていく。経験と若さが融合するその姿は、単なる交渉ドラマを超えた深みと面白さを演出している。
チキン店の店長。一見どこにでもいる冴えない中年男性だが、実はかつて“伝説の交渉人”と呼ばれた交渉のプロ。その実力はFBIやインターポールが彼を必要としたほどである。様々な事件や紛争を解決してきた華々しい過去とは裏腹に、事件で息子を失った悲しい過去を持つ。事件の真相を明かすべく、現在も心神喪失状態の犯人への面会を続けている。
キャスト:ハン・ソッキュ
1964年生まれ。1990年代初頭に映画やドラマで頭角を現し、緻密な演技力で一躍注目を集める。映画『八月のクリスマス』では静かな余韻を残す名演で観客の心をつかみ、韓国映画界の転換点を飾る大ヒット作『シュリ』で主演を務め、国民的俳優の地位を確立した。ドラマでは『浪漫ドクター キム・サブ』シリーズで人情味あふれる天才医師を熱演。その圧倒的な表現力は韓国演技界を代表する存在として高く評価されている。
◆代表作:『浪漫ドクター キム・サブ』『根の深い木 -世宗大王の誓い-』『八月のクリスマス』
端正な容姿と真面目な雰囲気を持つ若き判事。几帳面で、学業でも常にトップを維持してきた努力家だ。判事に任命された直後にチキン店に配属されて衝撃を受けるも、シン社長やシオンと行動を共にするうちに、世の中には法の及ばない問題があることを学んでいく。シオンに勉強を教えているうちに、飾らない彼女に惹かれていく。
キャスト:ペ・ヒョンソン
1999年生。2018年に『キム秘書はいったい、なぜ?』で俳優デビュー。同年に出演したウェブドラマ『恋愛プレイリスト』シリーズへの出演で脚光を浴びる。以降、『賢い医師生活』や『愛は一本橋で』など話題作に次々に出演しており、登場シーンの長さに関係なく視聴者に印象を残してきた。『組み立て式家族~僕らの恋の在処~』では主演を務め、清潔感と誠実さを武器に着実にキャリアを重ねており、次世代を担う実力派として期待されている。
◆代表作:『組み立て式家族~僕らの恋の在処~』『賢い医師生活』『Dear.M』
チキン店の配達員。祖母と妹と3人で暮らしており、アルバイトで家計を支えている。ときには有能な助手としてシン社長を手助けする。早くから社会に出て働いているため、大人びており現実主義者。高校を中退したため、昼は働きながら夜は勉学に励んでいる。勉強を教えてもらうことになったフィリップのことが気になっている。
キャスト:イ・レ
2006年生。幼少期から子役として活躍している。幼女暴行事件を描いた2013年の映画『ソウォン/願い』では、主人公の少女を演じ、第4回北京国際映画祭で助演女優賞を受賞するなど高い評価を得た。2017年には大ヒットアニメ『君の名は。』の韓国語吹き替えで宮水四葉役を担当。清純さと芯の強さを併せ持つ演技で、多彩な作品に欠かせない若手女優のひとりとなっている。
◆代表作:『ホームタウン-消される過去-』『新感染半島 ファイナル・ステージ』『ソウォン/願い』
シン社長の協力者である刑事。警察の動員や情報提供を通じて、シン社長の問題解決を支援している。シン社長の息子ジュンの人質事件の際に現場にかけつけた刑事であり、ジュンを救えなかったことに深い後悔を抱いている。事件には首謀者が別にいると考え、独自に捜査を続けている。
キャスト:キム・ソンオ
1978年生。2000年に演劇でデビューし、以降、数多くの映画とドラマに出演している。2010年の映画『アジョシ』ではサイコパスを演じ、その圧倒的な迫力で高い評価を獲得。一方、同年のドラマ『シークレット・ガーデン』では一転してコミカルな秘書役を演じ、シリアスからユーモアまで幅広くこなせる実力を証明した。作品ごとに全く異なる顔を見せる名バイプレイヤーとして欠かせない存在となっている。
ソウル中央地方裁判所の部長判事。判事という立場でありながらも、すべてを訴訟で解決しようとせず、示談をすすめるなど紛争が最適なかたちで解決するよう立ち回ることも。周囲からは人格者だと尊敬されている。シン社長の古くからの知人であり、息子の事件以降引きこもっていたシン社長にトラブル解決の仕事を依頼した。シン社長のことを常に気にかけている。
キャスト:キム・サンホ
1970年生。1994年に演劇でデビュー。若い頃は金銭的に困窮しており、収入が安定しない俳優業を辞めてラーメン屋を開いた過去を持つ。出演作が非常に多く、毎年複数のドラマへの出演を続けている。近年では『Sweet Home -俺と世界の絶望-』や『誘拐の日』など話題作でも安定した存在感を発揮。温厚さと威厳、そしてユーモアを自在に使い分ける演技が持ち味であり、作品の脇を支える重要な俳優として不可欠な存在となっている。
◆代表作:『禁酒をお願い』『目撃者』『あなた、そこにいてくれますか』
作品名:『シン社長プロジェクト』
原題:신사장 프로젝트
製作年/制作国:2025年/韓国
ジャンル:ヒューマン
夢を追うヨンレ(キム・ダミ)と、勝気で芯の強いジョンヒ(シン・イェウン)。家庭にそれぞれ事情を抱えながらも、互いを気遣い支え合う二人の姿には、自然と胸が熱くなり、涙を誘われる
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