庄司浩平さんの話がしたい
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庄司浩平さんの話がしたい

2025.03.07 18:00

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(画像:X「庄司浩平」TOPページより引用)

大きなスーツケースを転がしながら移動する海外からの旅行客、制服を着た修学旅行の一団、故郷への帰省や国内各地への観光。様々な目的で日々多くの人が行き交うJR東京駅の地下にある仮面ライダーグッズの専門店「仮面ライダーストア東京」では、こんな注意書きが店内に貼られていた。

「仮面ライダーヴラムのグッズはおひとり様1点までとさせて頂きます」。

ちなみにこれは少し前のことで、この記事を執筆するためにストアにまだ同じ状況なのか問い合わせたところ、「現在、ヴラムくんの全てのグッズが完売しているため、そもそもお一人様1点すら販売できない。もし今後入荷したとしても、ヴラムくんのグッズは同じように購入制限をしての販売になるだろう」とのことだった。(関係ないがスタッフの方がヴラムを「くん」付けで呼んでいるのがカワイイ)

これほどまでに大人気を博している仮面ライダーヴラムだが、このキャラクターはなんと作品の主人公ではない。現在放送中の『仮面ライダーガヴ』に登場する、最近主人公のガヴと行動を共にするようになった3人目の仮面ライダーがヴラムなのだ。ヴラムがここまで人気者になった要因としては作品内でのキャラクターの描かれ方や彼に関するエピソードの秀逸さ、一度見たら忘れ難い印象的なデザイン、アクションのカッコ良さなどが挙げられるが、ヴラムに変身するラキア・アマルガを演じる俳優・庄司浩平さんの存在が欠かせないのは間違いないだろう。

庄司浩平さん。1999年東京生まれの25歳。

高校3年生の時、バイト帰りの満員電車の中でスカウトを受けるという一風変わった形で芸能界入りを果たし、オスカープロモーションに入所。2020年『魔進戦隊キラメイジャー』の6番目の戦士、キラメイシルバーに変身するクリスタリア・宝路役で俳優デビュー。新型コロナウイルスの流行を受け、庄司さんが撮影に加わった直後に撮影が中止になり、放送も5週間ほど休止になるという前代未聞のピンチを乗り越え、体内に埋め込まれたキメライストーンなる神秘のアイテムにより、見た目はハタチそこそこの若者だが、実年齢は49歳のワンダーな快男児という唯一無二の個性を持った宝路役を好演、日本全国にシャイニングなきらめきを届けてくれた。

キラメイジャー_最終話
©東映

『キラメイジャー』終了後の2022年には<Yohji Yamamoto PURE HOMME22-23 A/W COLLECTION>にてパリコレクションデビュー。

その後、特技の英会話を生かして一人ヨーロッパへ飛び、アポイントメントを取るところから自力でパリ、ミラノコレクションに挑戦。現在も庄司さんの公式インスラグラムのリールに渡欧中の動画が残っているが、筆者も当時、動画が更新される度に遠い異国の地で頑張る庄司さんにスマホ越しにエールを送ったものだ。結果的に単身でパリ、ミラノコレクションにモデルとして立つというチャレンジはこの時は叶わなかったものの、スーパー戦隊を卒業した翌年というある意味最も世間からの注目度が高い期間に敢えて海外に飛び出し、自らの可能性を様々な方向から探ろうとしていた庄司さんの勇姿は今でも強く記憶に残っている。

先述した通り、英語が堪能な庄司さんだが、渡欧をきっかけにフランス語や中国語も習得するなど、とにかく「学び」に対して貪欲であり、帰国後の2023年から「高校講座 数学A」、2024年からは「NHK俳句」にもレギュラー出演されるなど、知的な分野での活躍も目覚ましい。また、庄司さんは大変な読書家でもあり、自身のnote上ではオリジナルの短編小説も執筆されている。この短編小説がまた独特な寂寥感とユーモアにあふれた素敵な作品ばかりなので、もしまだ彼の小説を読んでいないという方がいたら是非おすすめしたい。ただし、庄司さんご自身がグルメなのか、たいてい文中には美味しそうな料理が出てくるのでお腹が空いている時には要注意だ。また、彼のインスタグラムには読んだ本の情報なども投稿されているので、読書が好きな方はそのラインナップに目を通して見るのも楽しいだろう。

2024年にはTVドラマ『君とゆきて咲く ~新選組青春録〜』に斎藤一役として出演。同作のオーディションは『人生が変わる、シン・時代劇オーディション「真剣 SHINKEN」~新選組への道~』というドキュメンタリー番組としても展開され、放送前から話題となっていた作品であった。

歴史に名高い新選組三番隊組長であり、剣の達人というハードルの高い役だったが、難しい殺陣も反復練習を繰り返し、常に余裕のある雰囲気を目指したという庄司さんの真摯な役作りの甲斐あって、戦闘シーンではアッと驚くほどの華麗でパワフルな殺陣を披露しつつ、普段は寡黙で色香漂うオトナな先輩という魅力的な斎藤一像を見事に作り上げた。

斎藤は新選組副長土方の右腕として活躍する一方、不器用ながらも後輩たちの力になってやろうとする一面もあるのだが、同年夏に開催された『君とゆきて咲く ~新選組青春録〜』ファンミーティング「君とゆきて咲く~夏の宴~」でも、オープニングアクトの後に草履を履き忘れてしまい、慌てて舞台上に戻ってきた沖田総司役の藤岡真威人さんに額に汗が流れているのを見て、そっと舞台袖のスタッフに汗拭き用のペーパータオルを持ってくるよう頼むなど庄司さんの面倒見の良さはカメラの外でも健在で、Xなどに投稿していた私物のカメラで撮影したオフショット写真などからは、共に約3ヶ月間に渡る京都での撮影を共にした仲間たちとの仲の良さも窺えた。

君とゆきて咲く ~新選組青春録〜
©手塚プロダクション/テレビ朝日・東映

そして2024年末、『仮面ライダーガヴ』第12話に怪人ラーゲ9の「声」として初出演を果たした庄司さん。あまりに突然のヒーローOBの登場に、「まさか庄司さんが新たなライダーになるのでは」というファンたちの期待が高まる中、15話でついにラーゲ9の人間態としてご出演。続く17話で仮面ライダーヴラムに初変身。当初は主人公のガウに変身するショウマと敵対していたが、後にとある目的のためラーゲ9という偽名を使って敵組織に潜入していることが明らかになり、20話からは本名の「ラキア・アマルガ」としてショウマと共に戦っていくことになる。

ラキアは「だる」が口癖のダウナーな青年だが、元々弟思いの優しい心根の持ち主のため、末っ子気質のショウマがどうしても放っておけず、彼の頼れる兄貴分として活躍する場面も徐々に増えてきた。そんなラキアを演じる庄司さんのアンニュイさと甘さの入り混じった絶妙なバランスの面持ちや仕草こそが老若男女問わず多くの人の心を惹きつける最大の理由ではないだろうか。

先日、よみうりランド遊園地で開催された仮面ライダーガヴショーに出かけたのだが、ヴラムが登場するシーンでは『キラメイジャー』の小ネタがところどころに使われており、庄司さんが演じたクリスタリア・宝路の口癖「ワンダー」に引っ掛けて、会場の子どもたちからもらう「がんばれー!」の声援が「ワンダーがんばれー!」にアレンジされるなど、戦隊ヒーローとしてデビューし、様々な経験を積んで再び仮面ライダーになって子どもたちやファンの前にカムバックしてくれた庄司さんへのあたたかい「おかえり」の気持ちを強く感じることができた。

芝居、アクション、スポーツ、語学、小説、写真など豊かな才能に溢れ、それらを絶え間ない学びや努力によって更に眩しく磨き上げ続ける庄司浩平さん。そんな彼の挑戦と成長を是非過去作を通じて見返してみてはいかがだろうか。

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  • キラメイジャー_最終話
  • 君とゆきて咲く ~新選組青春録〜

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