後輩に仕事を任せたはずが、つい口出しをしたり、「自分がやったほうが早い」と奪い取ったり、フォローのつもりがヒントを与えすぎたりと「託すこと」ができない瞬間がある。年齢や経験を重ねても、このバランス力を鍛えるのは難しい。そんな人もいるだろう。
日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)第4話は、「上司」や「先輩」として有能な徳重晃(松本潤)の姿があった。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
会社員の安城耕太(浜野謙太)は、糖尿病で通院中。食事管理を徹底し、毎回病院に付き添うも一向に良くならない現状に、とうとう妻・早智(倉科カナ)の堪忍袋の緒が切れた。「担当医・鹿山慶太(清水尋也)の指導が悪い」と病院にクレームを入れたのだ。
面倒ごとが大嫌いで、自分の評価も下げたくない鹿山は、総合診療科へ丸投げすることに。都合の良い言葉を並べる同期を不審がる滝野みずき(小芝風花)に対し、二つ返事で了承する徳重。しかし、鹿山の思惑とは裏腹に「耕太さんは鹿山先生が診る。奥さんの早智さんは滝野先生が診る。疾患と病。その両方から人は苦しむ」と、2人それぞれに役割を与えた。
ドラマ放送後、SNSでは、徳重について「理想の上司」「いい先輩」といったコメントがあったが、まさに彼は指導者としても優秀だった。この時点で、2人の後輩と患者の明るい未来が見えていたのかもしれない──。
徳重は、2人が意見をぶつけあう場面に遭遇しても、すぐには間に入らず、そっと立ち去る。逃げ癖のある鹿山が「患者さんに寄り添うとかできないです。今までずっと『効率重視。外来はさばいてなんぼ』って教えられてきた」、「これ以上、滝野と揉めるのもあいつに悪いんで」と投げ出そうとしても、まずは続けることを促す。そして「鹿山先生はいいお医者さんだと思っているよ」と医師として認める発言をした。
それらに加えて「見えないものを一歩引いて可視化する」をテーマに、夫妻それぞれが抱くモヤモヤを書き出してみよう、と助言する一幕も。一生懸命になるほど、視野が狭くなり、ミクロな視点で物事を捉えがちだが、そんなときこそ一歩引いてマクロで見る重要性を説く。森を意識しながら木を見る大切さを伝えたのだ。徳重の助言に目から鱗が落ちた鹿山と滝野は、早速実行に移してみることに。すると、新たなことが見えてきた。
その後は4人で診察。徳重もその場にいたものの、余計な口出しはせず「ただいるだけですので」と後輩の診察を見守った。そして、大事なところで手を差し伸べた。
「病気になったとき、気持ちや考え方は揺れ動きます。ご本人もご家族も。誰かと生きるから人はすれ違う。煩わしさも増える。けれど、誰かが隣にいてくれるからこそ感じる温もりがある。それが、ほんのわずかな温かさだとしても」
それまでは自分の気持ちを「言えなかった」耕太だが、徳重の言葉と、滝野の「話すことを諦めないでください。小さな積み重ねが、大きな変化につながっていきます……聞かせてください」という後押しに、ついに胸中を吐露。夫妻は病と向き合い、前に進むことができた。
後輩に託しながらも、自律的な成長を促す「気づき」を与えるのは難しい作業だ。仕事や部活で“先輩”を経験した人なら誰もがぶつかるところだろう。だが、徳重は悩まなかった。暗闇で見えない道に光を当て、進むべき方向を照らした。絶妙なバランスで前に立つこともあった。2人を最後まで信頼した。
視聴者の中には「こんな上司がいたら」と思うのと同時に、「自分が先輩だったらこうありたい」と学びを得た人も多いはずだ。
人生は難しいことの連続で、壁にぶつかることも多い。だが、本作を見ていると、「自分を見つめ直すきっかけを与えてくれていること」に気づかされる。もちろんすべてを真似る必要はないが、半分でも、小さじ一杯でも自分に取り入れるだけで、何かが変わるかもしれないと思える。今回は「リーダーとは何か」を学ぶ良い機会になった。また徳重先生に素敵なことを教えてもらった。
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