今回、徳重晃(松本潤)が対峙したのは患者ではなく、同僚の心臓血管外科医・茶屋坂心(ファーストサマーウイカ)だった。総合診療科に来る人たちとは違って、一筋縄ではいかないようで……。日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)第5話を振り返る。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
「総合診療医。いや、あなたみたいな医者に今までの自分の医療を否定される。そう感じる人もいるんじゃない?」
茶屋坂が徳重に向けて放った言葉だ。さらに彼女は、徳重がまいた“相手を安心させる”心理テクニックをすべて見抜き「計算ずくの寄り添い。まがいものの優しさ」と切り捨てた。
……あの徳重が動揺する!そう思ったのも束の間、徳重は目を見開いて「正解です!」、「なかなか見抜いてくる人いないんですよ!」と笑顔で拍手した。
そんな時、茶屋坂の母・愛(朝加真由美)が、魚虎総合病院に救急搬送された。家族の執刀は倫理的に認められていないが、茶屋坂が手術を担当。それ以降、彼女の様子に異変が起きていた。心身にダメージを受けているのに、それを見ようとしない茶屋坂。徳重は院長・北野栄吉(生瀬勝久)からの命を受けて彼女と向き合うことに。
話をするなかで、母をひとりにさせるのは心配。だが彼女には彼女にしかできない業務がある。徳重はそんな茶屋坂の想いに触れつつ「医師としての自分、娘としての自分、あなたは今どちらかを選択しなければならない。先延ばしにしても問題は解決しません」とぶつけた。
それまで冷静だった茶屋坂が「そんなことは分かってる」と感情を露わにした。徳重と向き合いつつ、子どもの頃から厳しかった母や過去の自分と対峙する彼女。「どうして言われたとおりにできないの?」、「あなたのためなのよ」、「あなたって本当に私の行ってほしくない方向にばかり進む」……脳裏にこびりついている母からの言葉がリフレインする。
そんな苦しみに溺れる彼女を徳重が救い出した。
「親子だから、血が繋がっているから通じ合える。それは幻想かもしれません。家族だとしても、共に生きていくのが正しいとは限らない」
「お母様はお母様の大変さがあったのかもしれませんね。でもそれは彼女の事情です。あなたがそれをすべて背負い込むことはありません。それに誰かのためにここまで心を傷めるあなたはとても優しい人です」
「一度離れてみることで見えてくるものがあります。もしもまた近づきたいと思ったのなら近づくこともできるはずです」
「好きな人を見たとき胸は高鳴り、誰かに傷つけられたとき瞳は潤む。あなたと私。その間に心は生まれると僕は思っています」
徳重の言葉は患者にとって財産だ。ずっと胸にしまっておける大切な財産──。その財産があるから肩の荷が降りたり、呪縛から解放されたり、心が晴れたりする。今回も、徳重の言葉で茶屋坂の心を縛っていた鎖が解かれた。
徳重は、悩みや苦しみに白黒つけず、羅針盤となって進むべき方向を示してくれる。「こちらにも道がありますよ」と案内してくれる。それは彼がいなかったら見つけられなかった抜け道だ。今回も茶屋坂にひとりでは辿り着きそうで辿り着けない道を教え、彼女の背中をポンと押した。
ラストシーンでは、憑きものが取れたように晴ればれとした表情をしていた茶屋坂。徳重と対話をしていくなかで、気持ちが変化していく彼女を、ファーストサマーウイカが見事に演じていたように思う。「目は口ほどに物を言う」というが、まさに演技や表情で心の移ろいを表現していたのだ。
一方で、松本潤の演技も圧巻だった。あまりにも自然すぎて、5話目にしてようやく気づいたのだが、徳重は対話する人によって目の動きや輝きが変わる。表情そのものが変わる。それはそうだ。患者には患者の、茶屋坂には茶屋坂の事情や苦しみがある。単に優しく接するのではなく、その人に合わせた言葉、表情、目で対話していく。だからこんなにも心が揺さぶられるのか。ようやく合点がいった。
毎週日曜の夜、私たちに心の羅針盤を与えてくれる徳重先生。そして、演技で感動を与えてくれるキャスト陣。このドラマが、多くの人の人生にとっての「転機」となる作品であることは間違いない。
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