日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)第3話は、徳重晃(松本潤)の恩師・赤池登(田中泯)とのシーンや、キャスターの堀田義和(津田健次郎)とのシーンなど、どこを切り抜いても名シーンの連続だった。なかでも「向き合うこと」の大切さを教えてくれた徳重と東郷康二郎(新田真剣佑)のやりとりが頭から離れない。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
喉に違和感を覚えた堀田に、下咽頭がんの診断を下した康二郎。今手術をすれば命に別条はないが、後遺症で職場復帰できない可能性があると説明した。
すると、堀田はセカンドオピニオンとして、総合診療科の受診を希望した。
康二郎から話を聞いた徳重は、手術かそれ以外の方法か、様々な道を探ろうとする。しかし、「あなたに依頼するのは、対話ではなく説得です」と康二郎。迅速に手術をするのが、彼の目的だった。
診察中、徳重は無理に手術を勧めなかった。「一刻も早く手術をすることが、完治への近道」という康二郎と、そんな彼の意見を尊重しつつも「どの治療においても必要なのは納得」という徳重の想いが対立するかたちとなった。
カンファレンスでは再び、2人の意見がぶつかった。「理想だけで人を救えるほど、医者という仕事は甘くない」という康二郎に「お互い様だと思います」と徳重。「確かに耳障りのいい理想だけを言う医者は甘いのかもしれません。ですが、患者さんの声を聞かず、正しい現実を押し付ける医者もまた甘い」と述べた。
カンファレンス終了後、徳重は休憩中の康二郎のもとへ。そこで「あのときの言葉に嘘はない。なので、ありがとうございます。こうして本音で康二郎先生とお話しできて良かった」と感謝を伝えた。徳重は続ける。
「意見を押し通して病巣を切り取っても、本当の意味で病気を治したとは言い切れない。それは悔しいじゃないですか。医者も患者も納得し、一つの道を選ぶ。面倒かもしれませんが、それが命と向き合う医者の責任だと僕は思います」
徳重の言葉に、康二郎はあることを思い出した。医者を志したとき、父・陸郎(池田成志)にも似たことを言われたのだ。2人の方針はまったく違うのに、徳重も陸郎も同じ命の話をしている……。徳重は双方の納得のため「手術をし、責任を負うのは外科医。それはよく分かっています。だからこそ堀田さんにも康二郎先生にも恐れずに言葉を交わしてほしい」と願う。2人は、再び堀田と対峙してーー。
康二郎を「患者の声を無視する冷徹な医者」とくくるのは簡単だ。確かに最初はそんな印象もあった。でも、彼だって命を救いたい。助けたいのだ。そんな彼の想いを誰も否定することはできない。
結果的に納得して手術の選択をした堀田が「先生、噓がないから」と康二郎を評していたが、これは康二郎が真摯に患者を診てきたからこそ出た言葉だと思う。ここに「双方の納得」が抜けていたら、堀田も不信感を拭えなかったし、康二郎の想いも素直に受け止められなかっただろう。
その裏には、徳重の支えがあった。徳重が康二郎との衝突を恐れず、本音でぶつかったからこそ、「双方の納得」に目を向けられた。
人間は衝突を恐れて、本音を隠してしまうときがある。ただ、胸に抱いた違和感を放置すると、やがて黒い塊となって亀裂や憎悪へと変化する。そうなれば、取り返しがつかない。やはり、意見を交わさなければ、前には進めないのだ。
歯車が合わないときは、しっかりと話し合い、お互い納得して進むことが重要である。向き合うことは疲弊するし、リスクも伴うが、相手の想いが明確になって、こちら側としてもラクになることが多い。それに、ひざを突き合わせて話してみれば、意外と似たことを考えていて、一気に距離が縮まることだってある。
もちろん現実はドラマのようにうまくいかない。それでも「向き合うこと」で何かが変わると信じたい。今回も、患者だけでなく、同僚の医者とも向き合う徳重の姿から大切なことを学んだ。
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