『25時、赤坂で Season2』最終話 この先を描くようなふたりの約束 「また一緒にお芝居がしたい」
大成功の初日を終え、俳優としての想いをぶつけ合う白崎と羽山。その後ふたりは、白崎の誕生日を祝うために羽山が予約していたホテルへと向かう。

忍耐女と化石男の別れから始まった物語がついに完結。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)最終回では、元サヤに戻った勝男(竹内涼真)と鮎美(夏帆)がお互いのためにより良い道を2人で選び出す。勝男が鮎美に告げた最上級の愛の言葉に、切なさと温かさが胸に迫った。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
勝男の「やり直そう」に対する鮎美の返事は「うん」だった。別れた2人がそれぞれ成長した先で再び道が交わる、それが恋愛ドラマのセオリー。だが、勝男と鮎美の姿を通して世の中の“当たり前”を見つめ直してきた本作は、そんなセオリーを覆して2人にとっての最適解を導き出した。
元サヤに戻った2人の交際は、最初こそ順調に見えた。後輩へのパワハラ疑惑で出勤停止中の勝男が、自分の店を持つための第一歩として飲食店での職探しを始めた鮎美を手料理で支える。以前、付き合っていた頃の2人とは完全に立場が逆だ。鮎美は鮎美で、ちょっとしたことでも我慢するのではなく、自分の本音を伝えられるようになっていた。
だが、勝男が繰り返し口にする「困ったことがあったら言って」という言葉に少しずつ鮎美の表情が曇っていく。
飲食店で調理経験を積もうにも経験や資格がないために不採用が続く鮎美。そんな中、渚(サーヤ)の夫・太平(楽駆)のバーを間借りしてお店を開くことを思いつく。慣れないことに頭を悩ませながらも、鮎美は前向きに準備を進めていた。
そこに悪意なく水を差してしまうのが勝男だ。「家賃や生活費は俺が稼ぐから鮎美は心配しなくてもいい」という申し出こそ笑顔でスルーした鮎美だが、店舗開業にあたっての資金計算にまで「俺、得意だから」と言って嬉々と踏み込んでくる勝男との間に「これは自分でやりたい」と一線を引く。
そんな鮎美が、自分の世話を焼く母・陽子(池津祥子)に「一人で大丈夫になりたい」と告げた勝男の姿に重なった。
時を同じくして仕事に復帰した勝男だが、相変わらず後輩の柳沢(濱尾ノリタカ)とは仕事に対するスタンスの違いでぶつかってばかり。そんな2人の間に立ったのが、柳沢と同期の南川(杏花)だった。そのおかげで柳沢との関係がほぐれ、勝男がお礼を伝えると南川は「私、いつも海老原さんに励まされてきたんです」と明かす。
恋人が変わってくれないことに対して絶望した経験がある南川。彼女にとって、鮎美と別れてから不器用ながらも価値観をアップデートしていこうとしてきた勝男の姿はまさに”希望”だった。
このドラマを観ていると「人は変われる」ということを信じたい、信じようと思える。勝男だけではない。「女の子は赤色のランドセル」と決めつけず、孫の真鳥(鷲尾心陽)が好きな色のランドセルを買ってあげた陽子然り、一度座ったら梃子でも動かなかったところから、妻のおかわりご飯までよそってあげられるようになった勝(菅原大吉)然り、いくつになっても、その気になれば人は変われる。
でも、そのためには間違いを指摘してくれる誰かが必要で、勝男が変われたのは南川や白崎(前原瑞樹)のおかげだ。先輩・後輩というパワーバランスがある中で、2人が勇気を持って違和感を言葉にしてくれたからこそ、勝男はいつの間にか植えつけられていた“当たり前”を見つめ直すことができた。鮎美とはタイプが異なる女性で、かつ自分の合わせ鏡のような存在である椿(中条あやみ)との出会いも大きい。
料理一つとっても「女がするもの」と端から決めつけていた勝男。だけど、自分でやって観て初めてその大変さに気づき、鮎美に心から感謝すると同時に、上から目線でアドバイスしていたことを反省する。
そして、それは一つのきっかけに過ぎず、「もつ焼きにコークハイは合わない」「男同士で弁当交換は変」「男は泣いてはいけない」というガチガチの固定概念から次々と解放され、水を得た魚のように生き生きしていく勝男の姿が印象的だった。「我慢は他人のためならず」をこれほどまでに実感する作品もそうそうない。
じゃあ、どうして鮎美が何年も我慢し続けてしまったかと言えば、勝男に見放されるのが怖かったから。一人で生きていく自信がない鮎美は将来安泰な勝男と結婚し、安定した暮らしを手に入れるために、グッと言いたいことを呑み込んで理想の彼女を演じてきた。だけど、そのせいで自分が分からなくなってしまった鮎美は同棲していた家を勢いで飛び出した先で、渚や太平、そしてミナト(青木柚)など、自分の“好き”を大事にして生きる人たちと交わる。
最初は彼らの真似事だったかもしれない。でもそのおかげで鮎美もまた、たくさんの“好き”に出会うことができた。鮎美が作ろうとしているのは、そんな“好き”が詰まったお店であり、たとえ失敗したとしても自分一人でやり切りたかったのだ。
今まで鮎美に支えてきてもらったからこそ、今度は自分が支えてあげたいと思った勝男と、誰かに頼るのはやめて、今度こそ自分の力で立ちたい鮎美。それぞれ別の道で成長し、変わったからこそのすれ違いだった。
鮎美は「一人で立つことってこんなに怖いんだなって思う。何も考えずに誰かについていけたら楽なのになって。でも私は誰かの後ろじゃなくて、横に立てる自分でいたい」と素直な気持ちを勝男に伝える。それを受け、自分がやっていたことは鮎美の成長を妨げる善意の押し付けでしかなかったことを理解した勝男。
こんな風に一つひとつ話し合って、折り合いをつけていければいいのかもしれない。だけど、悲しいかな。勝男は鮎美がとにかく大好きだからこそ、支え合ってあげたくなってしまう。別れていた頃は鮎美にかっこ悪いところも晒け出せたのに、再び付き合った途端、仕事も愚痴すらも吐けなくなったのは無意識のうちに「自分がしっかりしなきゃ」と思ってしまったからだろう。
そんな勝男のぬるま湯のような優しさに、鮎美もつい浸かっていたくなってしまう。「前の俺だったら黒髪の鮎美が好きだったけど、今の鮎美が一番素敵!(中略)でも、そんな風に、そう思えたのは、俺が鮎美の彼氏じゃなくなったから」と語った勝男は、もう気づいたようだ。このまま一緒にいることは、お互いのためにならないと。
勝男は意を決したように、今度は自ら「終わりにしよう」と告げる。「長く交際したのだから男として責任を取るべき」という価値観に基づく一方的なプロポーズより、遥かに愛のある別れの言葉だった。
「俺は前に進む。鮎美を応援する。鮎美はどこまでだって行ける。大丈夫!」
目尻にキラリと光る涙を携えながら鮎美の背中を押した勝男と、勝男の言葉で今までで一番飾らない笑顔を見せた鮎美。そのどれもが切なく、美しく、尊い。お互いのために別々の道を進むという別れを前向きに捉えたラストに、SNS上では「切ないけど、いい別れ方だった」「どの火10よりも愛に溢れたハッピーエンドかもしれん」「勝男と鮎美の決意に号泣。苦しかった…けど、環境がいろいろ気付かせてくれたんだよね」「勝男と鮎美も今が一番素敵」「2人に幸あれ!」と2人の選択を支持し、新たな門出を祝福する声が上がった。
共感と学びがあるストーリーと、竹内涼真と夏帆をはじめ、「この人以外に考えられない」と思うほどにハマり役だったキャスト陣の好演により、新たなTBS火曜ドラマの看板作品となった『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。鮎美のお店はこの先も上手くいくのか、勝男と南川の関係は?など、まだまだ気になることもたくさんある。願わくば、1年に一度スペシャルドラマで2人の進捗を見せてほしい。
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大成功の初日を終え、俳優としての想いをぶつけ合う白崎と羽山。その後ふたりは、白崎の誕生日を祝うために羽山が予約していたホテルへと向かう。
第9話では、勝男と鮎美に最大の試練が訪れ、互いの存在に救われる。恋人同士だった頃よりも遥かに自然体で、楽しそうな2人の雰囲気に視聴者から感動の声が上がった。
勝男の母・陽子が大分から来襲。自分の世話を焼く陽子に、勝男がある思いを伝える。「男は外で稼ぎ、女は家庭を守る」という価値観の下で生きてきた親世代を否定せず、そのアップデートを描いたエピソードが視聴者から大きな反響を呼んだ。
物語も終盤に差しかかり、勝男と鮎美の復縁に関しては視聴者からもさまざまな意見が上がっている。
勝男に鮎美と復縁するチャンス到来!?と思いきや、また新たな関係で出会い直した2人の心温まるやりとりが反響を呼んだ。
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第9話では、勝男と鮎美に最大の試練が訪れ、互いの存在に救われる。恋人同士だった頃よりも遥かに自然体で、楽しそうな2人の雰囲気に視聴者から感動の声が上がった。