涙は時として人に「覚悟」を与える。それは自分が強くなったのか、それとも自分を守るための防御なのかは分からない。ただ、たくさん泣いたあとにふたたび歩けることがある。
日曜劇場『19番目のカルテ』(TBS系)第6話は、初めて「終末期医療」の現場に立った滝野みずき(小芝風花)の成長が描かれた。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
滝野が担当したのは、肺がんステージⅣと診断された大工の半田辰(石橋蓮司)。映画好きの辰は会うなり「俺、かっこよく死にたいんです」という。
まだスタートしたばかりだが、終末期医療の壁にぶつかっていた滝野。そんな彼女に、徳重晃(松本潤)は「半田さんのために僕たちができること。それはまだ分からない。これから一緒に過ごす時間が答えになる。僕たちは半田さんの船に乗り合わせただけだから。たまたまね」と伝えた。
一方、赤池登(田中泯)は、患者の“これから”を願っているのに……と落ち込む彼女に「本当に終末期の患者には“これから”はないのかね。これからがどんなに短くても最後の瞬間まで人生は続く」と教えた。滝野は涙を流しつつも、師匠たちの言葉から“気づき”を得る。
ある日、滝野は辰の案内で彼のアトリエに向かった。アトリエには、辰がこれまで手がけた家の模型が多くあった。仕事のこと、他界した妻との出会いなどを教えてもらうなか、滝野は辰の思い出に入り込んでいく。徳重が診察でそうしてきたように。最後に辰は「これ(模型)見せたからにゃ、先生と俺はマブだ」と述べ、2人で笑いあった。
辰のために何かできることはないか。どうにか彼のストレスを取り除こうと奔走する滝野。思いが募る彼女を見た徳重は「滝野先生、つらいね」と声をかけた。ハッとした表情を見せた滝野は、辰からいろいろな話を聞いたと明かしつつ「こんなふうに患者さんと私はずっと話したかったから……つらいです。絶対にこんなこと言っちゃダメなんです。でも、悲しい。治したい。そのために私は医者になったんです」と涙を流した。
そんな彼女に「僕たちはみんな旅をしている。大きな海を」と徳重。「別に放っておいても船は進んでいく。けど、患者さんと一緒に行く先を見つめて必死に船を漕いで進むことも僕たちはできる。よりよい旅になるように。最後まで。せっかく同じ船に乗り合わせることができたんだから。大切に」と声をかけた。表現は違えど、赤池も徳重も「最後まで人生は続く」と教えてくれた。このころから滝野の表情が変わったように思う。
後日、辰の自宅で同僚や親戚を招いての食事会が開かれた。主催者の滝野は、頭を下げる辰に対して「私が会いたかったんです。辰さんが話してくれた人たちに」と笑顔で返した。辰の友人・横吹順一(六平直政)も言っていたが、幸せな空間なのに泣けてくるのはなぜだろうか。滝野の優しさが、周囲の人たちの明るさが、幸せしかない空間が泣けてくる。とても楽しいはずなのになぜだか泣けてくる。
その後、容態が急変。辰は帰らぬ人となった。そのころには、もうくよくよしていた“滝野先生”はいなかった。何度も流した涙を「覚悟」に変えて、医師の仕事をまっとうしていた。
辰を看取った帰り道、同行していた徳重は「船は見送った」とつぶやく。一方で滝野は、辰が建てた家が並ぶ町を見つめながら「でも辰さんはいるんです。この町のいろんな場所に。私のなかにも」と述べた。大きな出会いと別れを経験した滝野は、徳重や赤池の言葉を力にし、涙を覚悟に変えて、歩みを進めた。
SNSには、祖父の死を「怖い」と表現した孫や、滝野が命が消えかけても耳は聞こえると言ったこと、そして一番そばで見ていた次男の龍二(今野浩喜)が涙を流さずにいたことなど、特に辰が亡くなる直前のシーンに共感の声が多く「リアル」「同じ経験をした」「(親族が亡くなったことを)思い出す」とのコメントがあった。
『19番目のカルテ』はこうしたリアルさが随所に描かれていて、自分の人生を見つめ直す機会をくれる。だからこそ、こんなにも視聴者の心に刺さるのだろう。
次回は、夏休みを取った徳重が、離島の診療所で働く赤池のもとを訪ねる。2人の過去が明かされて……。
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