【レビュー】「隠居したい」体温低めなトップ声優・榎木淳弥34歳の、“マイペース”な進化
『東京リベンジャーズ』『呪術廻戦』など常にヒット作に出演し続ける声優・榎木淳弥さんの素顔に密着します。
2022年、舞台『千と千尋の神隠し』のハク役として一躍注目を浴びた舞台俳優・三浦宏規、24歳。デビュー以来舞台俳優としてキャリアを積み、ミュージカル『テニスの王子様3rdシーズン』やミュージカル『刀剣乱舞』など2.5次元ミュージカルで人気を博しました。2019年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に史上最年少で抜擢されると、以降ブロードウェイ作品を筆頭に話題作へのオファーが後を絶たず、すでに日本を代表する舞台俳優のひとりとなっています。
今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材するドキュメンタリー番組『Real Folder Season3 #013』では、大ヒット漫画「キングダム」の舞台版で主役の信役に抜擢された三浦宏規さんが、座長として全41公演を駆け抜けた裏側に密着します。
2023年2月。密着は、舞台『キングダム』公演開始から2週間後の帝国劇場から始まりました。三浦さんの控室では、公演中も連日細かな演出修正が入ります。この日も、殺陣シーンでの木刀の角度を微調整。しかし真剣な面持ちも束の間、階段から転げ落ちるアクションが日に日に上手くなっていると褒められると「よっしゃー!」と少年のように喜び、密着スタッフに気さくに階段落ちのコツを披露してくれます。
そして開演直前。自分でメイクを始めると、さっきまでの少年のような笑顔から一転、まさにスイッチを入れるかのように表情が変貌し、主人公・信の気迫みなぎる眼差しで舞台へと歩き出します。
以前舞台で共演して以来仲がいいお笑い芸人・シソンヌの2人は、そんな三浦さんを「スーパースターの部分とクソガキの部分しかない。真ん中がない」と語ります。舞台上で見せる華麗なパフォーマンスと、舞台裏の少年のような無邪気な姿、その極端なまでのスイッチが、三浦さんの中には確実に存在しているようです。
約3時間の上演に、三浦さんはほぼ出ずっぱりです。稽古で過呼吸になりかけたほどの激しいアクションをこなし、舞台終演後には荒い呼吸のまま控室のソファに倒れ込みます。それでも、上演が終わったときは「全員生きて怪我なく終わったときのカーテンコールが本当にうれしい」。自分だけでなくキャスト全員を背負った座長らしい言葉が頼もしく感じられます。
実は帝国劇場は、三浦さんのターニングポイントとなった『レ・ミゼラブル』上演の地でもあり、本人にとっては「全然ダメだった」苦い記憶が残る場所でした。「絶対に見返したいと思って毎日やっていたから、報われた感じはある」。強い想いを語ります。
2023年3月。ミュージカル『のだめカンタービレ』の製作発表に臨む三浦さん。大ヒットしたドラマ版の上野樹里さんが主人公・のだめを続演し、三浦さんは相手役である千秋真一役に抜擢され「(過去の作品を)なぞるのではなく、新しい景色を皆さんと創りたい」と意気込みます。一方で、役をどう切り替えるのかと尋ねると、「まだ先ですから。今はキングダム脳。下僕です」と即答。さまざまな役柄を演じられるのは、この集中力があってこそなのでしょう。
また、密着中に24歳を迎えて今年の目標を聞かれると、「日々やるべきことも考えも変わるから、目標は決められない。生き急いでると思うけど、休みがあっても何をしていいか分からないし、健康に、そのまま走り続けられたらと思います」。出演作が続々決まる多忙の中でも、未来に翻弄されず“今”を生きる三浦さんの生き様が垣間見えます。
実は熊川哲也さんに憧れて5歳でクラシックバレエを始めた頃から、「英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルになる」と目標を掲げていた三浦さん。ですが、多くの国内バレエコンクールで入賞し海外を見据えはじめた12歳の時に、ヒザのケガで夢を断たれてしまいました。
しかし、「今では舞台の道を選んでよかった」と三浦さんは言います。「バレエや踊りの要素がある舞台で、やってきたことが活きることがある。でも、そればかりやっていると、今度は踊りの要素がない『レ・ミゼラブル』とか、経験のないことで勝負したくなる。『キングダム』で演じる下僕出身の役ではバレエの所作が却って邪魔になったり、そういう挑戦ができるから、この仕事には向いていると思う。満足したら終わりだと思う」。三浦さんはそういう自分を天邪鬼と表現しますが、新しいことに挑戦し続ける姿勢こそがジャンルを超えて様々な作品からオファーが絶えない理由なのかもしれません。
2023年5月の札幌、『キングダム』大千秋楽のカーテンコール。三浦さんは、コロナの大打撃を受けて舞台公演もままならなかった時期を思い出し、感極まります。「久しぶりの舞台がこんなにアクションの多い作品で不安だった」と振り返りますが、座長として引っ張ってきた『キングダム』は、全公演ケガ人なしという“奇跡”とともに、大盛況に幕を閉じました。
束の間の休息を挟み、今度は歌の単独ライブに挑みます。歌唱力に定評がある三浦さんですが、バレエに熱中していた頃はクラシックしか聞かず、昔は本当に歌が嫌いだったと言います。「仕事でできないのが悔しくて練習するようになって、歌えるようになったら好きになった。今では音楽が人生の一部になっている」。ここにも三浦さんらしい挑戦の跡が見えます。
名曲『ニューヨークニューヨーク』を歌い上げる様は舞台の1シーンのようで、歌が嫌いだったというのが嘘のようです。そしてカーテンコールでファンに語り掛ける様子は、また無邪気な青年の姿に戻ります。このスイッチのオンとオフのふり幅がファンにとっては最大の魅力なのでしょう。
「『舞台で食っていく』はブレない。自分の軸は舞台役者。カーテンコールの瞬間が一番好きなんで」と舞台への情熱を語る三浦さん。これまで2.5次元、ミュージカル、アクション、歌、とジャンルを超えてさまざまな挑戦をしてきた24歳は、“生き急ぎ”ながらも次はどんなスイッチを入れていくのか——三浦さんの挑戦はまだまだ続きます。
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