【レビュー】「隠居したい」体温低めなトップ声優・榎木淳弥34歳の、“マイペース”な進化
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【レビュー】「隠居したい」体温低めなトップ声優・榎木淳弥34歳の、“マイペース”な進化

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TVアニメ『東京リベンジャーズ』乾青宗役や『呪術廻戦』虎杖悠仁役など、常にヒット作に出演し続ける声優・榎木淳弥、34歳。アニメのアフレコだけでなく、ナレーションやTVドラマ出演など、十数本の仕事を同時に抱え第一線をひた走る大人気声優です。

今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材するドキュメンタリー番組『Real Folder Season3 #014』では、新たに『め組の大吾 救国のオレンジ』の主人公役を演じるなど多忙を極めながらも、1つ1つの仕事に真摯に、そして“マイペース”に向き合う榎木淳弥さんの素顔に密着します。

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©MBS

「仕事してたい。もっとうまくなれそうだなって」

現場移動のタクシーで密着を始めると、榎木さんは「取材と撮影を3件終えて、これからアフレコとナレーションに向かいます。大体こんな感じ」とハードスケジュールを飄々と語ります。いつも十数本の作品が同時進行、しかも台本は収録直前に届くため、毎日寝るのは2時~3時。タクシーでうたた寝する榎木さんでしたが、TVアニメ『ニンジャラ』のアフレコ現場に入ると、熱気のこもった長いセリフを演じ切り、「一発OKでした」と笑顔を見せます。

「ワーカホリック気味。仕事してたい。もっとうまくなれそうだなって」。演じている時とは一転して淡々とした榎木さんの緩急ある語りが印象的です。

「疲れますよね、仕事って。隠居したい。海外とかで」

やりたいことを尋ねると、「楽な仕事ってないですかね。疲れますよね、仕事って。隠居したいです。海外とかで」と答える榎木さん。一方で、3年半前からボイストレーニングを欠かさず、商売道具の喉のケアと鍛錬には余念がありません。

そんな榎木さんは、新しいプロジェクトではテーマ曲の一部を歌唱担当するため、レコーディングスタジオに入りました。同じ部分を繰り返し歌い「難しい」と漏らしますが、楽曲スタッフからは「慣れない歌で難しいのに、すぐにフィードバックを返してくれて伸びしろいっぱいありますよ」と評価を受けて、ひと安心の様子です。

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©MBS

養成所時代、「実は課題を1回もまともにやらなかった」

久しぶりのオフ。榎木さんは小中学校の同級生が営む寿司バーを訪れました。同じ飲食店でアルバイトもした仲の幼馴染みは、「声優というか、“働く”ってことをよくできてるな。(学生時代は)すべてにやる気がなかった」と榎木さんの学生時代を振り返ります。

榎木さんは、既に声優として活動していた従姉妹の影響もあってこの世界に飛び込むことを決め、大学を中退して声優事務所の養成所に通いました。当時の講師でもある声優・愛河里花子さんは「いい加減そうだし、不機嫌そう」と榎木さんの当時の印象を話します。対して榎木さんからは「実は課題をまともにやったことが1回もなかった」と意外な告白。

若い頃を知る2人の証言で、榎木さんの “体温が低い感じ”の歴史が垣間見えました。

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©MBS

「アニメっぽく話さなきゃと思っていたけど、やっていいんだ」

事務所に所属した頃はオーディションになかなか通らず、落ち込んではパチンコに行く生活だったという榎木さん。しかしある時、「思うようにやってみれば?」と言う言葉をもらい、転機を迎えました。「求められてるものを出しちゃうというか、アニメっぽく話さなきゃと思っていたけど、(自由に)やっていいんだ」と気づいてから、オーディションに通るようになったそうです。

そして今の大活躍へと躍進を遂げましたが、榎木さんは「毎年辞めようと思ってます。やる気なくして持ち直しての繰り返し。仕事だからいろいろあるし、疲れたりもする」と、達観した様子です。

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©MBS

「アフレコで結果を出す。本職を一生懸命やるだけです」

『め組の大吾 救国のオレンジ』で主人公を演じることになった榎木さんは、作品の舞台でもある総務省消防庁とのコラボ撮影と、小池百合子東京都知事との対談に臨みます。

「人生で都知事と対談することってありますか?」と少々興奮気味の榎木さんでしたが、対談を終えると、「あんま会話得意じゃないんですよね」とこぼします。

でもそれに続けて、「その分アフレコで結果を出す。あくまでトークは付属。プラスでしかない。本職の方を一生懸命やるだけです」。いつも飄々として熱さを見せない榎木さんが、根底に持つ仕事へのポリシーを語ってくれました。

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©MBS

「もっと違う方向あるんじゃないかなって、探っていく」

芝居の表現力を鍛えるワークショップに参加する榎木さん。もっと上手くできると思っていたので「悔しさを感じました」と漏らしますが、アニメ声優と映像の芝居の違いを肌で感じ、刺激を受けたようです。

「いろんな仕事をやっていきたい気持ちにはなりましたね」。

2週間後、1年ぶりのドラマ出演の現場で、意欲的に芝居に挑む姿が見られました。

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©MBS

「みんなが右向いてるのに、左向いてる人がいたら、めっちゃ目立つじゃないですか。でも、なんでみんな右向いてるんだろう?っていう違和感もある人にはある。本当に左向きたかったら左向いてもいいと思うんですよね僕は。もっと違う方向あるんじゃないかなって探っていかないと、どんどん衰退していく気がします」。粛々と仕事をこなす職人のように見える榎木さんですが、常に表現を模索し磨こうとする視点がその原動力となっているようです。

後日『呪術廻戦』のアフレコ現場。いつも立って行うアフレコの現場で、地面に這いつくばって演技する榎木さんの姿がありました。映像の芝居のような動きも取り入れ、“もっと違う方向を探る”を体現しているようです。

すでに多くの人気作で主人公を演じるトップ声優の一人。それでも、榎木さんの“マイペースな”進化はまだまだ止まりません。

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