皮肉のこもったユーモアが痛快。「ブラックコメディ映画」4選
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皮肉のこもったユーモアが痛快。「ブラックコメディ映画」4選

2024.04.17 10:00

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  • コカイン・ベア
  • ヴィーガンズ・ハム
  • 逆転のトライアングル
  • サイコ・ゴアマン

なんだか気分が上がらないから、痛快で笑える映画でも観てスカッとしたい。そんなテンションのときにおすすめな「ブラックコメディ映画」を4作ご紹介します。

コカインを大量摂取したクマから逃げる話だったり、廃業寸前の精肉店がヴィーガンの人肉を販売し始めたら大盛況しちゃった話だったり……。現実だったら完全コンプラNGな内容だけど、ジョークのセンスが秀逸で、どれも思わず笑ってしまうはずです。

①『コカイン・ベア』

コカイン・ベア
© 2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

あらすじ

1985年、米ジョージア州のチャタフーチー国有林に、とある運び屋の男がヘリコプターから数百万ドル相当のコカインを投下した。男はコカインを回収するためヘリコプターから飛び降りたものの、落下中にパラシュートが開かず墜落死してしまう。

ニュースを知った運び屋のボス・シドは、自身の手下であるギャング2人にコカインを回収するよう命じる。また、シドの企みを聞きつけた警察官のボブも、ギャングを逮捕するためチャタフーチー国有林へ向かう。

時を同じくして、ジョージア州の田舎町で暮らす少女・ディーディーは母親に内緒で学校をサボり、友達のヘンリーとチャタフーチー国有林にある“秘密の滝”を目指して探検へ出かけていた。森の中を散策している途中で、コカインが入った小袋を見つけたディーディーとヘンリー。興味津々に中身を調べていると、後方から明らかに様子のおかしいクマがうめき声をあげながらやってくる。

クマをよく観察すると、口の周りが白い粉末だらけになっている。「こいつ、コカインを….?」そう。このクマは、森に投下されたコカインを大量に摂取し凶暴化してしまった“コカイン・ベア”なのだ。

危険を察知し、必死に逃げ惑う彼女たち。ディーディーの不在を知って駆けつけた母親、森林公園の警備員、ギャング、警察官が森へ一堂に会し、それぞれが自身の目的を果たしながら森からの脱出を試みる。果たして、彼女・彼らは全員無事にコカイン・ベアから逃げられるのだろうか……?

おもしろポイント

これぞザ・B級映画といったテーマですが、なんとこの『コカイン・ベア』はアメリカで1985年に起こった出来事をもとにして製作された映画なんです。実際の事件では、ジョージア州の森でコカインを大量に摂取したクマが亡くなった状態で発見されたのだとか。(凶暴化しなくてよかった……)

この映画で特にお気に入りなのが、登場人物の“死にっぷり”です。「こんな死に方はイヤだ」大喜利でもしてんのか? とツッコミを入れたくなるくらい、人々が多様な死に方でクマに殺されていきます。バイオレンス要素が多いため最初はびっくりしてしまいましたが、慣れてくると感覚がバグってしまい、「次はどんな死に様を見せてくれるんだ?」という視点で観ていたら1時間半があっという間に終わりました。

②『ヴィーガンズ・ハム』

ヴィーガンズ・ハム
© 2021 – Cinéfrance Studios – TF1 Studio – Apollo Films Distribution – TF1 Films Production – Chez Félix Cinéfrance SAS – Cinéfrance Plus – Cinéfrance 1888

あらすじ

フランスで廃業寸前の精肉店を営んでいるヴィンセントとソフィー夫婦。2人は結婚して30年になるが、仲は険悪だ。ある日精肉店の営業中に、過激なヴィーガン活動家が襲撃にやってきて、店内をめちゃくちゃにする。店の業績が悪いため銀行からの融資も受けられず、意気消沈する2人。

ある日、2人が友人宅から自宅へ車で帰宅している途中、活動家のひとりを偶然ミラー越しに見つける。ヴィンセントは「復讐だ」と、急ブレーキをかけ、背後にいた活動家に仕返しを試みる。しかし、当たりどころが悪くその活動家は死亡してしまった。

証拠隠滅のため、ヴィンセントは遺体をハムに加工し冷蔵庫に保存した。それを知らずにソフィーは死体をスライサーにかけ、あろうことか店に来た客に販売をしてしまう。焦るヴィンセントだが心配もつかの間、今朝“人肉ハム”を購入した常連客が「あんなに美味しいハムは初めて食べた」と追加でハムを購入しにやってきた。今までにない大盛況を経験した2人は、自分たちの店を救うためにヴィーガン狩りを計画するのであった———

おもしろポイント

設定がもう100点満点の面白さ! ヴィーガン肉の魅力を知ってからのヴィンセントとソフィーのサイコっぷりに笑ってしまいます。とにかく肉へのこだわりが異常なほど強いヴィンセントは、ヴィーガンはヴィーガンでも質の良いヴィーガン肉を探します。

若くて太っていて、ストレスフリー。理想を言うなら去勢したヴィーガン。倫理的に完全アウトなのですが、食べるのにふさわしいヴィーガンを求めて必死になる2人の姿はシュールそのものです。物語が進むにつれてどんどん2人のタガが外れていき、最初から最後まで飽きることがありませんでした。ただ、観たあと数日はハムやソーセージなどを食べようとするたびに謎の罪悪感が襲ってくるのでご注意を……(?)

③『逆転のトライアングル』

逆転のトライアングル

あらすじ

思うように仕事が獲得できずくすぶっているカールは、人気モデルでインフルエンサーのヤヤと交際している。収入差があるのにもかかわらず「男だから」という理由で毎回食事代を負担させるヤヤに対しカールは密かに不満を抱いていた。

話し合いの末に関係を修復した2人は、招待された豪華客船クルーズの旅に参加する。客船にはひと癖もふた癖もある富裕層たちが参加し、乗務員たちはそんな彼らから高額のチップを獲得するために無茶な要求にも笑顔で対応する。順調に客船の旅が進んでいたのもつかの間、荒波の影響で船がコントロール不可能になり、乗客は無人島へ漂着してしまう。

食料も水もない状況の中、生き残るために必要なのはサバイバル能力ただひとつのみ。それまでは優雅にクルーズを楽しんでいたセレブたちだが、ここでは現金やSNSのフォロワー数はなんの意味も持たない。

ピンチに追い込まれ混乱する彼らを横目に、食材の調達や火起こし、調理などのスキルを持った船のトイレ清掃員の女が場の主導権を握る。食材を分けてもらうため、なんとか彼女に気に入られようとあの手この手で策を練るセレブたち。豪華客船の状況と完全に立場が逆転したこの旅は、どんな終焉を迎えるのか。

おもしろポイント

前半と後半で雰囲気がガラッと変わるので、1回の視聴で2度楽しめるのがおいしいポイントです。

前半では綺麗ごとだけではない、モデルやインフルエンサーのリアルが垣間見えます。例えば、ブランドごとのモデルの表情の違い。ファストファッションブランドの広告では笑顔を見せるのに対し、ハイブランドでは「顧客を見下す」ため、モデルたちはニコリとも笑いません。このシーン、消費者に見せてはいけない業界の顔が皮肉たっぷりに表現されていて、思わず笑ってしまいました。

前半のシーンでは従業員を見下すセレブたちがわがまま放題をする様子がたっぷりと描かれるのですが、後半で見事に全部ひっくり返されるのがスカッとします。サバイバル生活の中で無双モードに入ったトイレ清掃員の女を見て、「結局この世で一番大事なのは地位でも権力でもなくフィジカルの強さだ……」と実感しました。

④『サイコ・ゴアマン』

サイコ・ゴアマン
© 2020 Crazy Ball Inc.

あらすじ

自宅の庭でボール遊びをしていた少女のミミとその兄・ルーク。勝負に勝ったミミは、ルークを庭に埋めるため、人ひとりが入れるほどの巨大な穴掘りをルークに命じた。穴掘りの最中、2人は紅く輝く宝石が埋め込まれた謎の石碑を見つける。

興味本位で宝石を取り出したミミだが、なんとその行為によって太古から封印されていた残虐なモンスターをこの世に放出してしまった。それは銀河の宇宙人が「悪魔」と恐れるほど極悪非道のモンスターで、この世のすべてを破壊する力を持っていた。

しかし、ミミが手にした宝石の魔力によってその力が奪われ、ミミの命令に絶対服従するしかなくなってしまったモンスター。ミミはモンスターを「サイコ・ゴアマン」と名付け、あろうことか自身の遊び相手としておもちゃ同然に扱う。

一方その頃「サイコ・ゴアマン」を今度こそ抹殺するため、最強の宇宙怪人・パンドラが宇宙から地球へとやってきた。銀河を守るため画策するパンドラと、世界の滅亡を企むサイコ・ゴアマン、そして壮絶な戦いが繰り広げられるなかでもお構いなしに自身のわがままを押し通すミミ。果たしてこの宇宙はどうなってしまうのか———

おもしろポイント

宇宙レベルの最強怪人がさまざま登場するなか、恐れる様子を一切見せず血も涙もない極悪非道っぷりを見せつけるミミ。どんな怪獣よりも、少女ミミがいっちばんの悪者として描かれるシュールさに笑ってしまいます。

全編通してどう考えても倫理的にアウトな残虐シーンたっぷりなのですが、ミミを含めたすべての登場人物がクレイジーなので、恐怖を感じるポイントが1ミリもなく、ただただ映画の面白さを全身で楽しめます。

ちなみに、このミミを演じた子役のニタ = ジョゼ・ハンナ(当時12歳)はなんと本作が初出演にして初主演。オーディションで才能を見出され、本人に当て書きする形でミミのキャラクターがつくりあげられたそうです。生意気な悪ガキそのものですが、どこか憎めずキュートで、映画を見終わる頃にはミミのすべてに虜になってしまいます。


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