人間の寿命は短いってわかっていたのに…『葬送のフリーレン』心に響く3つの名言
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人間の寿命は短いってわかっていたのに…『葬送のフリーレン』心に響く3つの名言

2023.12.22 12:00

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  • 『葬送のフリーレン』#1
  • 『葬送のフリーレン』EP06
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  • 『葬送のフリーレン』EP09
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国内だけではなく海外でも人気を集めている、現在放送中のアニメ『葬送のフリーレン』。2024年3月まで連続2クールで放送されることが決定しています。

魔王から世界を救った勇者一行の“その後”を、主人公であるフリーレンの立場から描いた本作。静謐な世界観の中で、生きることと死ぬことを見つめ直す作品となっています。

今回は作品の魅力が垣間見える3つの名言を、それが語られた背景の解説とともにご紹介します!

①「人間の寿命は短いってわかっていたのに…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」

『葬送のフリーレン』#1
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

『葬送のフリーレン』を代表する名言は、第1話の「冒険の終わり」でフリーレン自身が口にしたこの言葉でしょう。

フリーレンは、魔王を倒して世界を救った50年後、野暮用を思い出して仲間たちに会いに行きます。そこで、想像以上に衰えた仲間たちと出会い、驚きます。長命種のエルフであるフリーレンは、50年という歳月の長さを理解していませんでした。束の間の再会を楽しんだ後は、すでに寿命を迎えようとしていた仲間たちの最期を次々に看取ることに。

勇者ヒンメルの葬儀で、フリーレンは戸惑います。魔王を倒すための旅は、フリーレンにとって“たったの10年”という、人生のごく一部の出来事でした。そんな短い時間を共にしただけで、自分は仲間たちのことを何一つ知りませんでした。

ただ同じ時を無為に過ごしただけでは、その人の考えや胸の内を知ることはできません。そこでフリーレンは、今度こそ人間というものを知るために、今一度旅に出ることにします。このフリーレンの後悔と、気付きの瞬間に、強く引き込まれた人は多いはず。

②「僕はね、終わった後にくだらなかったって笑い飛ばせるような楽しい旅がしたいんだ」

『葬送のフリーレン』EP06
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

第6話「村の英雄」でヒンメルがアイゼンにかけた名言です。

フリーレンはかつての仲間の弟子たちと旅をしますが、寄り道だらけ。彼女には世界各地でくだらない魔法を収集するという趣味があるからです。そのためには、命をかけて魔物や竜にも戦いを挑みます。

『葬送のフリーレン』EP06
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

第6話では、戦士アイゼンの弟子・シュタルクが本来の力を発揮して竜を撃退。その後、彼はフリーレンが嬉々として竜の巣にあった魔導書を手に取る姿を見て、アイゼンの言葉を思い出します。「師匠はお前のせいで勇者一行の冒険がくだらない旅になったって言ってたぜ」と。そして「そうか」と返すフリーレンに「くだらなくてとても楽しい旅だったってよ」と続けました。

かつての勇者一行の旅は、世界を救うための命懸けのものでした。しかし、フリーレンもヒンメルもどこかのんびりとしています。道中、かき氷の出る魔法を手に入れてはしゃぐフリーレンを見て、アイゼンは「くだらん、こんなことをしていていいのか?」と呆れるばかり。

そこでヒンメルが発したのが、「僕はね、終わった後にくだらなかったって笑い飛ばせるような楽しい旅がしたいんだ」という名言です。「アイゼンは、辛く苦しい旅がしたいのかい?」。自分は、振り返ればくだらなくて楽しかったと思える旅をみんなとしたいのだ、と。

ヒンメルはいつも、先を見ていました。村人を助けた後、魔王を倒した後、そして自分が死んだ後──いずれ思い出すこの10年の旅が、自分たちにとって辛く苦しいものである必要はないと考えています。その旅が人生のゴールならそれでもいいでしょう。しかし、人生はフィクションとは違って、目的を遂げた後も続くものです。

やり遂げなければならない使命があったとしても、その道中は楽しんだっていい。なぜなら、いつか未来で振り返った時に楽しい思い出として残ったほうが、長く生きる甲斐があるというものだからです。このセリフには、ヒンメルのそんな思いが詰まっていると同時に、一番寂しい思いをすることになるフリーレンへの優しい眼差しがうかがえます。

同時に、フリーレンがますます“くだらない”魔法集めにこだわることになった背景にもなっています。

③「ヒンメルはもういないじゃない」「そうか。よかった。やっぱりお前達魔族は化け物だ。容赦なく殺せる」

『葬送のフリーレン』EP09
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

なぜ?と思うかもしれませんが、第9話「断頭台のアウラ」でのこのフリーレンとアウラのやりとりが、最も『葬送のフリーレン』という作品を象徴していると言っても過言ではありません。

魔王を倒した後も、世界は完全に平和になったわけではありません。魔族たちは今も、各地で人々を脅かしています。その筆頭が、かつて七崩賢(しちほうけん)と呼ばれた魔王の幹部の残党です。断頭台のアウラもその一人で、自分より魔力の小さい者を言いなりにする「服従の天秤」という強力な魔法を使う厄介な魔族です。アウラは服従させた者たちの首を切り落とし、不死の軍勢として意のままに操っていました。

『葬送のフリーレン』EP09
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

かつてフリーレンはヒンメルたちと一度はアウラを退けたものの、ヒンメルの死後にアウラが再び活動を始めたのです。当時フリーレンはその強力な魔力で不死の軍勢を次々に吹き飛ばしていきました。しかし今回の戦いでは、わざわざ余計な魔力を消費してまで、服従の魔法を解くという方法で立ち向かっていました。

不思議に思ったアウラが尋ねたところ、「(不死の軍勢を吹き飛ばしていたら)後でヒンメルに怒られたからだよ」と答えたフリーレン。アウラは「なら、益々こんなことする必要ないでしょ?ヒンメルはもういないじゃない」と口にします。するとフリーレンは「そうか。よかった。やっぱりお前達魔族は化け物だ。容赦なく殺せる」と静かに激怒したのです。

フリーレンは、旅の中でヒンメルの言葉を度々思い出します。自分が死んでも世界は続きます。前述の通り、ヒンメルは自分の死後、残された人たちのことをいつも考えていました。むしろ生きて死ぬこととは、その後に何を遺せるかという問いでもあると、ヒンメルの思い出はフリーレンに語りかけていました。

フリーレンの旅の本質は、まさにそこにあります。仲間たちの思いや記憶の痕跡をつぶさに辿ることで、彼らがこの世界に何を遺したいと考えて実際に何を遺せたのかを目撃する”生き証人”としての歩みを進めているのです。

即物的で感情を持たない魔族には、死んだ先にあるものという感覚は皆目見当もつきません。彼らにとって、自分が死んだら世界は終わるのです。本作『葬送のフリーレン』において、そのテーマが描く理から最もかけ離れた存在である魔族は、その点では非常に憐れでもあります。

ヒンメルの思いを汲み、その考えを今からでも知るためにこそ旅を続けるフリーレンは、死んだらそれで何も無くなるのだというアウラのこの冷徹な言葉が許せなかったのです。

本作のテーマ、フリーレンの気付きと魔族の無頓着さが前景化したこのやりとりは非常に象徴的でした。

『葬送のフリーレン』というタイトルにある通り、本作は、仲間の死を看取るという異色の物語です。いかに生きるか、ということは、いかに死ぬかということと表裏一体です。

生と死の足跡を辿るフリーレンたちの旅は、静かに、しかし力強く、自らのあり方を視聴者にも問いかけます。

世界中でフリーレンたちのセリフや名場面がインターネットミームになっているのも、そんなところに理由があるのかもしれません。


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『葬送のフリーレン』

『葬送のフリーレン』
© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

U-NEXT配信:毎週土曜午前0時、最新話を順次配信中
放送:毎週金曜よる11時、日本テレビ系全国30局ネット「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」にて放送中

【あらすじ】
勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらした魔法使いフリーレン。千年以上生きるエルフである彼女は、ヒンメルたちと再会の約束をし、独り旅に出る。それから50年後、フリーレンはヒンメルのもとを訪ねるが、50年前と変わらぬ彼女に対し、ヒンメルは老い、人生は残りわずかだった。その後、死を迎えたヒンメルを目の当たりにし、これまで“人を知る”ことをしてこなかった自分を痛感し、それを悔いるフリーレンは、“人を知るため”の旅に出る。その旅路には、さまざまな人との出会い、さまざまな出来事が待っていた―。

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