あのツラい過去があったから今がある。恋人に翻弄された経験がある人に観てほしい恋愛映画3選
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あのツラい過去があったから今がある。恋人に翻弄された経験がある人に観てほしい恋愛映画3選

2024.04.26 09:00

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  • 『もっと超越した所へ。』
  • 『手』
  • 『わたし達はおとな』

恋愛において、失敗はつきものです。なかでも、恋人に翻弄され自分自身が傷ついてしまった経験がある方は少なくないはず。今回は、そんな過去を持つ人であれば共感できるであろう恋愛映画を3作ご紹介します。

「ダメな恋人にハマってしまう4人の女性」の話や「元同僚と名前のない関係を続けてしまうおじさん好きの女性」の話、「大人になりきれない恋人同士のいざこざ」を描いた話まで。思いっきり感傷に浸りたい気分のときにぴったりの映画を選びました。

①『もっと超越した所へ。』

『もっと超越した所へ。』
©2022「もっと超越した所へ。」製作委員会

あらすじ

4組のカップルにスポットを当てて展開される恋愛群像劇。衣装デザイナーの真知子は、SNSで偶然中学時代の同級生・怜人を発見する。真知子は怜人へ連絡し、2人は十数年ぶりに再会した。怜人は真知子に会うやいなや彼女の家へ押しかけ、そのまま体の関係を持つ。怜人は「真知子の精神状態が心配だ」とそれっぽい理由をつけ、真知子の家に転がり込む形で同棲を開始する。

強引な怜人に押され2人は一緒に生活をするものの、定職を持たない怜人の収入源に真知子は疑問を抱く。そんなある日、真知子は怜人の口座に毎月とある女性からお金が振り込まれている事実を知ってしまう。

ショップ店員の美和は、フリーターの恋人・泰造と同棲している。 頼りがいはないものの、ノリが良く常に明るい泰造と楽しく暮らしていた。ある日、美和は体調不良のため寝込んでしまう。

最初は風邪かと思われたものの、生理の遅れと嘔吐に苦しむ美和を見て泰造は妊娠を疑い明らかに動揺する。泰造には恋人を妊娠させ、そのまま恋人のもとから逃げるように離れてしまった過去があったのだ。不安な気持ちを抱え、ひとりで産婦人科へ行く美和。病院から帰宅し、結果を伝えたときの泰造が見せた態度があまりにも自分本位で……。

このほか、売れていないがプライドの高い役者・慎太郎を相手にする風俗嬢の七瀬と女性に一切興味がないお坊ちゃまの富と一緒に暮らす元子役のタレント鈴が登場する。4人の共通点は「ダメ男に惹かれてしまう」ところ。彼女たちはどんな“ハッピーエンド”を迎えるのか。

ポイント

劇作家の根本宗子氏が脚本・演出を担当した同名舞台を映画化した作品で、上映当初から話題を集めていた映画です。登場する女性たちが交際しているのは、どれも「性格に難あり」な恋人たち。

観ていると自分自身の過去の恋愛と共通点を感じ、「ウッ……」と苦い気持ちになってきます。最初は4組のストーリーがそれぞれ交互に独立して進んでいくのですが、徐々にお互いの関係性が紐解かれていき、最後には思わぬ形で物語が着地します。

舞台の作品を映画化したというだけあって、今までの映画では考えられないような仕掛けと、最後まで結末が読めない展開が魅力的です。普段観ている映画とはまた違った映像体験を楽しみたい方にもおすすめしたい映画です。

②『手』

『手』
©2022日活

あらすじ

25歳のさわ子は大のおじさん好きで、今まで付き合ってきた恋人も年の離れた男性ばかり。時間を見つけては街中のおじさんを撮影し、アルバムに保存するのが密かな楽しみだった。どんなおじさんの姿を見ても「かわいい」に変換する才能を持っていた。

そんなさわ子だが、実の父親との関係は良好とは言えない。父親は高校生の妹ばかりをかわいがり、さわ子には無関心な様子だ。あるとき、出版関係の会社で働くさわ子は、同僚の森からアプローチを受ける。森の転職をきっかけに、2人の距離はグッと近くなり、ついに肉体関係へと発展した。

森に好意を抱くさわ子だったが、「好き」と伝えても森の反応はハッキリとしない。たびたび森の家で行為に及ぶ2人だったが、なんと森にはさわ子とは別に交際相手がいた。「恋人と結婚する」と告げられ、森に別れを切り出されるさわ子。さわ子は森、おじさんたち、そして父親との関係をどのように清算するのだろうか。

ポイント

恋愛のツラい経験だけではなく、良好でない家族関係をどのように克服するかまでも描いていて、最後の結末には心が温まりました。「若い女性に下心で近づくおじさん」は社会的に疎まれがちですが、この作品ではさわ子のフィルターを通して「愛おしい存在」として描かれています。

さわ子がおじさんを好きになるきっかけとなった出来事は、多くの女性にとって「あるある」とされる経験ですが、視点が違うとこうも感じ方が違うのかと、新しい考えに触れた気持ちになりました。

感情のオンオフを得意とするさわ子が、同僚の森をきっかけに自分自身の心の変化を感じる部分は、観ていて心苦しく、そのツラさに共感してしまいます。自分だったらさわ子以上に森に恋をしてしまうので、「会社の同僚に森がいなくてよかった……」と無意味な安心をしてしまいました。

③『わたし達はおとな』

『わたし達はおとな』
© 2022「わたし達はおとな」製作委員会

あらすじ

デザインを学ぶ大学生の優実は、知人の紹介をきっかけに他大学の演劇サークルに所属する直哉と交際し、半同棲生活を送っている。あるとき優実は体調の違和感を感じ、検査をしたところ妊娠が発覚した。

しかし優実は、お腹の子の相手が直哉かどうか確信を持てずにいた。実は優実と直哉の交際には空白期間があり、その間に肉体関係を持った男性がいたからだ。直哉へ正直に過去を打ち明ける優実だったが、直哉は素直に事実が受け入れられず、2人の関係に溝が生まれてしまう。

直哉は考えに考えた末、優実に出産を提案する。しかし決断の背景には、直哉が中絶させた以前の恋人が関係していた。怒りっぽく自己中心的な直哉の態度に前々から不安を感じていた優実は、直哉の提案に賛同できず、2人はさらにぎくしゃくしてしまう。

自分の思いを遠回りで伝えてしまいがちな優実と、常に自分本位で相手への思いやりがない思いやりがない直哉。ついにお互いの不満が爆発し、引き返せないレベルにまでこじれてしまうのであった———

ポイント

「重い映画を観て、思いっきりどんよりしたい」なんて方にはぜひもってこいの映画です。幸せなシーンと暗いシーンの対比がとてつもなく、観ているだけで胃がキリキリしてしまうはず。

まだ内面が未熟で大人になりきれない「おとな」な優実と直哉。自分がかわいいばかりに、無自覚に相手を傷つけてしまう……。そんな2人のやり取りがものすごくリアルで、もはや他人事とは思えません。

映画に登場する優実の元カレも友人たちも、2人と同じようにどこか自分勝手な部分があり、「誰かによって問題が解決する」なんて生ぬるい展開がないのも、すごく現実味を感じます。あまりにも重すぎる経験を乗り越え、優実は大人になっていくのか……と想像すると、自分自身が直面しているツラい現実も、いつかは過ぎ去っていくのだと思えるかもしれません。

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  • 『もっと超越した所へ。』
  • 『手』
  • 『わたし達はおとな』

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