あらゆるジャンルで代表作をもつ俳優・松たか子。大きな秘密を抱えたまま結婚したミステリアスな妻を演じる新ドラマ『しあわせな結婚』では、疑惑に満ちた影を抱えながらも、随所に松さんだからこそ出せる演技力で、視聴者を惹きつけています。
今回、そんな松さんのチャーミングな演技が光る名作5作品を紹介します。個性的なヒロインから等身大の女性像まで、幅広い役柄で輝く松たか子の魅力にどっぷり浸かれること間違いなしです。
最後には、『しあわせな結婚』で夫婦役を演じる阿部サダヲさんと共演した異色のラブストーリーも番外編としてピックアップ。合わせてご注目ください。
運命の電撃婚と、妻の過去に隠された秘密とは?
原田幸太郎(阿部サダヲ)は、世間の注目を集める数々の裁判で無罪を勝ち取る敏腕弁護士で、テレビでも人気を博す多忙な日々を送っていた。50年間独身主義を貫いてきた幸太郎だったが、感情を見せないミステリアスな女性・鈴木ネルラ(松たか子)に出会い、その魅力に運命を感じ、電撃結婚。しあわせな新婚生活が始まったのだが、「妻は、何かがおかしい──」。実はネルラには、15年前に婚約者を殺害した疑惑があり、幸太郎との結婚を機に警察が再捜査を始めていた──。
ネルラを演じる松さんの不思議な魅力は、序盤から全開。行動や仕草がちょっと不思議で、個性的な寝相で夫をほっこりさせたかと思うと、ネルラの家族たちと囲む食卓で「幸太郎さんを好きよ。レンコンより好き」と少々独特で真っすぐな愛の告白を口にして家族を唖然とさせたり。その一方で、シリアスな眼差しで、自分にかけられた殺人の嫌疑を淡々と説明する様子には怖さも感じさせ…。
コミカルな魅力とミステリアスな一面をあわせ持ち、とにかく一挙手一投足が気になるネルラ像に、きっとあなたも惹きこまれます!
共感度絶大!大人のタイムトラベル・ラブストーリー
結婚して15年になる夫・駈(松村北斗)を事故で亡くした硯カンナ(松たか子)。夫の駈とはずっと前から倦怠期で、家庭内別居のような状態だった。夫の死から半年、カンナは第二の人生を歩もうとしていた矢先、タイムトラベルをする術を知り、自分と出会う直前の駈と再会する。やはり駈のことが好きだったと気づき、もう一度恋に落ちたカンナは、15年後に起こる事故から彼を救うことを決意するのだった──。
現在と過去、そして止まっていた夫婦の時間が交錯する、“大人に刺さる”珠玉のラブファンタジー。
カンナ役の松さんは、現在(45歳)と過去(29歳)の自分を行き来しながら、心情の変化を見事に演じ分けています。夫との愛情が冷めきり疲れきったような無表情が、タイムスリップ先で若い駈に再会し恋心が蘇ると、胸のときめきを隠せないキラキラした笑顔に一変──その振り幅と松さんのかわいさに思わず惹きこまれます。
さらに、同じタイミングにしか戻れないタイムスリップを繰り返すカンナのドタバタ奮闘シーンでは、松さんの体を張ったお茶目なコメディエンヌぶりに爆笑。シリアスとコメディを行き来する絶妙なバランスで、大人の女性の可愛らしさを存分に発揮した松さんの新境地ともいえる演技に注目です。
“家族の在り方”を描く、新時代のホームドラマ
鎌倉に暮らす渋谷家の3姉弟、葉子(松たか子)、都子(多部未華子)、潮(松坂桃李)。交通事故で両親と祖母を亡くした3人は身を寄せ合い助け合い生きてきたが、23回忌の帰り道の別れ際、都子が突然「韓国に行く。釜山に住むの」と海外移住宣言。この出来事をきっかけに、3人は今まで大切に守ってきた“3人いっしょの幸せ”から、それぞれの人生の分岐点に向き合い、“3人それぞれの幸せ”へと歩み出すことに。
鎌倉から韓国・釜山へと舞台を移しながら展開し、変わりゆく時代の中の家族の絆を描く、ハラハラしつつも最後には思いっきり笑顔になれるホームドラマ。
長女・葉子役で主演した松さんは、家族思いで責任感の強いお姉ちゃんを熱演しました。フリーの編集者として働きながら実家で弟妹を支えてきた葉子の深い愛情を、松さんは時に厳しく、時に優しい表情と言葉遣いで巧みに表現しています。お節介焼きなお姉ちゃんっぷりには思わずクスッとしつつ、その裏にある誰よりも家族を想う気持ちが伝わり、胸がじんと温かくなります。両親を亡くし動揺する弟妹をあたたかく諭すシーンは号泣必至。喜怒哀楽たっぷりの松さんの演技が家族のやり取りにリアリティを与え、説得力を高め、家族の物語に爽やかな輝きを与えています。
バツ3独身ヒロインのドタバタ・ロマンティック・コメディ
大豆田とわ子(松たか子)は、中学生の娘とふたり暮らしで、建設会社しろくまハウジングの社長を務めるバツ3独身女性。母として社長として日々を過ごすとわ子だが、元夫が設定したらしいパソコンのパスワードを聞くために、3人の元夫たちと再会する羽目に。なんでも否定から入るイケメン弁護士・中村(岡田将生)、器が小さいファッションカメラマン・佐藤(角田晃広)、ナチュラルにモテすぎるレストラン経営者・田中(松田龍平)。この連絡をきっかけに、図らずも彼らとの交流が再燃し、やがて4人+娘で食事会をするなど奇妙な縁が続いていく──。
キャラクターもとわ子との関係性もバラバラの離婚相手3人との掛け合いは、それぞれテンポよくコミカルで、くすくす笑いが止まりません。そして時に笑いながらもホロリとさせられるエピソード満載の作品です。主人公・とわ子を演じる松さんは、“等身大でちょっとドジ”な女性をチャーミングに体現しました。結婚式の最中に口内炎に気づいたり、外してしまった網戸をベランダから落としたり、工事現場で穴に落っこちたり…。小さな不運が押し寄せるとわ子の仕草をユーモラスかつ愛らしく演じ、抜けているけど憎めない彼女に次第に共感し、「がんばれ、とわ子!」と思わず応援したくなります。
大人4人のゆるくも濃密な音楽と秘密の物語
カラオケボックスで偶然(?)出会った真紀(松たか子)、すずめ(満島ひかり)、諭高(高橋一生)、司(松田龍平)の4人。全員が弦楽器奏者だと知った彼らは弦楽四重奏団「カルテット ドーナツホール」を結成し、軽井沢の別荘で共同生活を送りながら音楽の夢を追うことに。美しい弦楽のアンサンブルを奏で、ほのぼのと結束を深めていく4人だが、実は彼らの出会いには大きな秘密が隠されていた──。30代で音楽を志す苦みや、大人の男女が魅せる恋愛模様、徐々に明かされる謎、それぞれが抱える過去が絡み合っていく“甘くほろ苦い大人のラブサスペンス”。
松さんが演じる巻真紀(まきまき)は、上品でおっとりしたヴァイオリニスト。いつも小声で話す控えめな様子かと思えば、お茶目ないたずらを仕掛ける一面をのぞかせたり、真顔で核心を突くひと言を放ったりと、不思議な魅力を醸しだします。悲しい秘密を抱える真紀ですが、松さんの演技によって温かみとユーモアが加わり、ミステリアスなのに親近感がある、まさに松さんならではのチャーミングな主人公ができあがっています。
阿部サダヲとの夫婦共演が光るスリリングな愛憎劇
里子(松たか子)と貫也(阿部サダヲ)は、東京の下町で仲睦まじく小料理店を営んでいたものの、店が火災で全焼しすべてを失ってしまう…。失意のまま酒に溺れる貫也が思わず店の元常連客の女性と一夜を共にしたことをきっかけに、里子は「女性の寂しさに付け込んで金をだまし取ろう」と、夫婦で結婚詐欺をするという驚きの提案をする。
優しく人当たりの良い板前の夫が次々と女性を誘惑し、女将の妻が裏で糸を引くという型破りな手口で金を集める2人。しかし嘘に嘘を重ねる生活の中で、次第に夫婦の歯車は狂い始め…。騙された女性たちの心情、そして詐欺を共犯する夫婦の愛憎がヒリヒリと描かれる、異色のラブストーリー。
里子役の松たか子さんは、一見おとなしく献身的な妻が内に秘めたしたたかさと嫉妬心を巧みに演じます。最愛の夫との人生のために詐欺を思いつくという大胆さを見せつつ、夫が他の女性をだまし続けるうちに芽生える嫉妬や罪悪感といった複雑な感情を繊細に表現しています。当初は同じ方向を向いていた夫婦が次第にすれ違っていく様子は痛々しいほどリアルで、松さんの葛藤に揺れる表情と阿部サダヲさんの人たらしな演技がぶつかり合うシーンは圧巻です。
コミカルな役柄で見せるチャーミングさとはひと味違う松さんの迫真の演技が堪能できる1本で、『しあわせな結婚』のふたりの掛け合いが好きな方はぜひ注目ください。
いかがでしたか?『しあわせな結婚』で松たか子さんに興味を持った方も、これらの作品を通して彼女の多彩な魅力をもっと発見できるはずです。チャーミングで芯のある松たか子さんならではの演技が光る名作の数々をぜひお楽しみください。
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