『夫の家庭を壊すまで』で注目の俳優・野村康太の感性豊かな7作品をピックアップ!
2024年は『パーフェクトプロポーズ』『あの子の子ども』『その着せ替え人形は恋をする』などドラマ・映画5作に出演
夏が近づき、背筋が涼しくなるような怖い映画が観たくなる季節ですね。
しかし、一言で「怖い」と言っても、みんなでワイワイ観たいスリリングなパーティームービーから耽美な世界観のゴシックホラーまで、その種類はいろいろ。
実は昨今この分野は、私たちの実生活と地続きにあるような社会的テーマをエンタメに昇華した作品が増えているジャンルでもあります。
今日はそんな社会派ホラー&スリラーをご紹介。観終わったあと、あなたの「社会の観かた」「人間の観かた」に大きな爪痕を残すはず。
なお、ゴアやスラッシャーすぎる映画は入れておりませんが、ホラー&スリラー映画ですので目を覆う場面がある作品もあります。また、精神的に「うわぁ…」となる作品は多めです。気力・体力に余裕がある時にご覧くださいね。
突然放り込まれたのは、床の真ん中に穴があいたアスファルトの部屋。実は塔のように細長い階層型の建物で、真ん中の上の階から順に食事が台に乗って運ばれてくるのです。つまり上の階はごちそう、下の階は残飯。しかもその階層は一定期間で無作為にシャッフルされて…。次は上になるのか下がるのか、なぜこんな状況におかれているのか、自力で這い上がることはできないのか。格差社会のあやうさ、グロテスクさ。その中で人はどう生きるか、他者とどう関わっていくのか。そして、人間の本質とは…。目をそむけたくなるシーンもありながら、人間の本質と人間社会を見事なシンボリズムで捉えた一本です。
自分に、そして自分の家族に、そのまんまそっくり瓜二つの人間たちが、じわじわと迫りくる恐怖を描く作品。ヒロインは幼い頃にも自分と同じ顔の少女に遭遇する、いわゆるドッペルゲンガー現象で大きな精神的ダメージを受けたトラウマを持っており、そのフラッシュバックと重なって、観ているほうもどんどん追い詰められていきます。クライマックスの凄惨な殺戮シーンを経て迎える衝撃のラストは秀逸。格差社会の構造と照らし合わせての考察が捗る作品です。監督は『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピール。
70年代のテキサスの農場。ポルノ映画の撮影クルーが、ロケのためにやってきたのは、いかにも陰気な老夫婦が所有する納屋。女優を目指してポルノの世界に足を踏み入れる若い女優と、実は殺人者である老婆、という女性ふたりのキャラクターのコントラストが見事で、徐々に明らかになる老婆の殺人動機は、本作がエイジズムやルッキズムの極点として読み解けそう。ミア・ゴスが一人でこの二役を演じているのも象徴的と言えるでしょう。ミアが老婆の若い頃を演じる前日譚『PEARL パール』が2023年7月7日劇場公開されました。
韓国産のアニメーションから1本。自分の外見に対しては強いコンプレックスを抱きながら、いわゆる“メイクさん”として美しくわがままなタレントたちにパワハラすれすれの扱いを受けながら献身する主人公。整形水という魔法のような美容水を手に入れた時から、彼女の狂気が暴走して…。外見で価値をはかられる「ルッキズム」。終わりのない、沼のような美への執着とプレッシャーが、息苦しいほどに容赦なく襲ってくる作品。予想の斜め上に跳躍する結末には、誰もがきっと驚くはず。
夫を亡くした主人公が心を癒すためにやってきた郊外の一軒家。静かで緑あふれる場所で、彼女の前に現れる男たちはみな同じ顔をしていて…。心に傷を持つ女性の目を通して見えてくる“男性優位”社会の脅威が、世代を越えて繰り返される強烈な映像表現をもって、観る者にそのグロテスクさを突き付けてきます。現実と幻想がないまぜとなった演出や、トンネルやりんごの実、舞い散る綿毛など随所に現れるシンボルからも、監督の強い意志が感じられる作品です。
玉の輿にのり、完璧な夫と誰もがうらやむような贅沢な暮らしを手に入れ、さらに待望の赤ちゃんをみごもった主人公。しかしある日彼女はガラス玉を飲みこんでみたいという衝動にかられます。そこからあらゆるものを口にし始めて…。昨今「マンスプレイニング」「ガスライティング」として顕在化してきた問題にも目くばせしつつ、家庭内での女性への抑圧や孤独感をスリリングに浮き彫りにしていきます。主人公と社会との距離感を象徴するように、寒色系に徹したカラーチャートの効果も出色です。
今までに何度も描かれてきた透明人間のモチーフが、初めて女性の目線での物語に。ドメスティック・バイオレンスそのものへの恐怖、ガスライティングによる抑圧、周囲の無理解や潜在的女性軽視による精神的苦痛などをしっかり描きこまれており、そのまさに“見えない(透明な)”圧力や暴力と主人公が対峙し戦うという構図にしたことで、フェミニズム映画としての高い評価を得ることになった1本です。『ソウ』の脚本家、リー・ワネルが監督を務めています。
明るいホラーとして話題をさらった1本。北欧のとある小さな村で行われる、夏至の盛大なお祭りが舞台です。華やかで爽やかなルックからは想像できないような衝撃的かつ絶望的な展開もさることながら、じわじわと恐ろしいのは、この村の住民たちに通底する白人至上主義的イデオロギー、そして小さなコミュニティの中での全体主義。この物語を個人的な失恋の経験から練り上げていったという俊英アリ・アスター監督の話術が光ります。
ジョーダン・ピールの長編デビュー作は、ホラー映画に社会へのメッセージをしのばせて新機軸を打ち出した記念碑的作品でもあります。表面的には人種差別はなくなり、リベラル思想がメインストリームになったように見える世間の風潮に対して、「あくまで体裁上であり、表面的なもの」として糾弾する鋭さと、数々の伏線をはったエンターテイメント性をあわせもつ作品。アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞にもノミネートされ、脚本賞を受賞しています。
綿花プランテーションで奴隷として過酷な労働と女性として搾取を強いられているエデン。一方、現代において人種差別研究の第一人者であり、優しい夫とと可愛い娘とともに暮らす社会学者ヴェロニカ。このふたりの女性の物語が別々に進行し、ある瞬間に強烈な衝撃をもって交錯します。構成の面でも、物語がはらむテーマの面でも、出来る限り事前情報なしに観て衝撃を受けていただきたい一作です。
いかがでしたか?
ホラーやスリラーというジャンル映画としての娯楽性を持たせつつクリエイターが持つ課題意識や社会へのメッセージを内包する映画は、鑑賞する側にもパワーが求められる部分があります。が、間違いなく「今」の時代性を切り取った、ぜひ「今」観たい作品群です。
ぜひ体力・気力がある時に、ご覧ください!
夏が近づき、背筋が涼しくなるような怖い映画が観たくなる季節ですね。
しかし、一言で「怖い」と言っても、みんなでワイワイ観たいスリリングなパーティームービーから耽美な世界観のゴシックホラーまで、その種類はいろいろ。
実は昨今この分野は、私たちの実生活と地続きにあるような社会的テーマをエンタメに昇華した作品が増えているジャンルでもあります。
今日はそんな社会派ホラー&スリラーをご紹介。観終わったあと、あなたの「社会の観かた」「人間の観かた」に大きな爪痕を残すはず。
なお、ゴアやスラッシャーすぎる映画は入れておりませんが、ホラー&スリラー映画ですので目を覆う場面がある作品もあります。また、精神的に「うわぁ…」となる作品は多めです。気力・体力に余裕がある時にご覧くださいね。
突然放り込まれたのは、床の真ん中に穴があいたアスファルトの部屋。実は塔のように細長い階層型の建物で、真ん中の上の階から順に食事が台に乗って運ばれてくるのです。つまり上の階はごちそう、下の階は残飯。しかもその階層は一定期間で無作為にシャッフルされて…。次は上になるのか下がるのか、なぜこんな状況におかれているのか、自力で這い上がることはできないのか。格差社会のあやうさ、グロテスクさ。その中で人はどう生きるか、他者とどう関わっていくのか。そして、人間の本質とは…。目をそむけたくなるシーンもありながら、人間の本質と人間社会を見事なシンボリズムで捉えた一本です。
自分に、そして自分の家族に、そのまんまそっくり瓜二つの人間たちが、じわじわと迫りくる恐怖を描く作品。ヒロインは幼い頃にも自分と同じ顔の少女に遭遇する、いわゆるドッペルゲンガー現象で大きな精神的ダメージを受けたトラウマを持っており、そのフラッシュバックと重なって、観ているほうもどんどん追い詰められていきます。クライマックスの凄惨な殺戮シーンを経て迎える衝撃のラストは秀逸。格差社会の構造と照らし合わせての考察が捗る作品です。監督は『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピール。
70年代のテキサスの農場。ポルノ映画の撮影クルーが、ロケのためにやってきたのは、いかにも陰気な老夫婦が所有する納屋。女優を目指してポルノの世界に足を踏み入れる若い女優と、実は殺人者である老婆、という女性ふたりのキャラクターのコントラストが見事で、徐々に明らかになる老婆の殺人動機は、本作がエイジズムやルッキズムの極点として読み解けそう。ミア・ゴスが一人でこの二役を演じているのも象徴的と言えるでしょう。ミアが老婆の若い頃を演じる前日譚『PEARL パール』が2023年7月7日劇場公開されました。
韓国産のアニメーションから1本。自分の外見に対しては強いコンプレックスを抱きながら、いわゆる“メイクさん”として美しくわがままなタレントたちにパワハラすれすれの扱いを受けながら献身する主人公。整形水という魔法のような美容水を手に入れた時から、彼女の狂気が暴走して…。外見で価値をはかられる「ルッキズム」。終わりのない、沼のような美への執着とプレッシャーが、息苦しいほどに容赦なく襲ってくる作品。予想の斜め上に跳躍する結末には、誰もがきっと驚くはず。
夫を亡くした主人公が心を癒すためにやってきた郊外の一軒家。静かで緑あふれる場所で、彼女の前に現れる男たちはみな同じ顔をしていて…。心に傷を持つ女性の目を通して見えてくる“男性優位”社会の脅威が、世代を越えて繰り返される強烈な映像表現をもって、観る者にそのグロテスクさを突き付けてきます。現実と幻想がないまぜとなった演出や、トンネルやりんごの実、舞い散る綿毛など随所に現れるシンボルからも、監督の強い意志が感じられる作品です。
玉の輿にのり、完璧な夫と誰もがうらやむような贅沢な暮らしを手に入れ、さらに待望の赤ちゃんをみごもった主人公。しかしある日彼女はガラス玉を飲みこんでみたいという衝動にかられます。そこからあらゆるものを口にし始めて…。昨今「マンスプレイニング」「ガスライティング」として顕在化してきた問題にも目くばせしつつ、家庭内での女性への抑圧や孤独感をスリリングに浮き彫りにしていきます。主人公と社会との距離感を象徴するように、寒色系に徹したカラーチャートの効果も出色です。
今までに何度も描かれてきた透明人間のモチーフが、初めて女性の目線での物語に。ドメスティック・バイオレンスそのものへの恐怖、ガスライティングによる抑圧、周囲の無理解や潜在的女性軽視による精神的苦痛などをしっかり描きこまれており、そのまさに“見えない(透明な)”圧力や暴力と主人公が対峙し戦うという構図にしたことで、フェミニズム映画としての高い評価を得ることになった1本です。『ソウ』の脚本家、リー・ワネルが監督を務めています。
明るいホラーとして話題をさらった1本。北欧のとある小さな村で行われる、夏至の盛大なお祭りが舞台です。華やかで爽やかなルックからは想像できないような衝撃的かつ絶望的な展開もさることながら、じわじわと恐ろしいのは、この村の住民たちに通底する白人至上主義的イデオロギー、そして小さなコミュニティの中での全体主義。この物語を個人的な失恋の経験から練り上げていったという俊英アリ・アスター監督の話術が光ります。
ジョーダン・ピールの長編デビュー作は、ホラー映画に社会へのメッセージをしのばせて新機軸を打ち出した記念碑的作品でもあります。表面的には人種差別はなくなり、リベラル思想がメインストリームになったように見える世間の風潮に対して、「あくまで体裁上であり、表面的なもの」として糾弾する鋭さと、数々の伏線をはったエンターテイメント性をあわせもつ作品。アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞にもノミネートされ、脚本賞を受賞しています。
綿花プランテーションで奴隷として過酷な労働と女性として搾取を強いられているエデン。一方、現代において人種差別研究の第一人者であり、優しい夫とと可愛い娘とともに暮らす社会学者ヴェロニカ。このふたりの女性の物語が別々に進行し、ある瞬間に強烈な衝撃をもって交錯します。構成の面でも、物語がはらむテーマの面でも、出来る限り事前情報なしに観て衝撃を受けていただきたい一作です。
いかがでしたか?
ホラーやスリラーというジャンル映画としての娯楽性を持たせつつクリエイターが持つ課題意識や社会へのメッセージを内包する映画は、鑑賞する側にもパワーが求められる部分があります。が、間違いなく「今」の時代性を切り取った、ぜひ「今」観たい作品群です。
ぜひ体力・気力がある時に、ご覧ください!
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