世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTでは、2025年8月22日(日本時間)開催の『ROAD TO UFCシーズン4準決勝』をライブ配信する。
アジアの新鋭ファイターたちがUFC行きを懸けて競う『ROAD TO UFC』。シーズン4は、UFCパフォーマンス・インスティチュート上海でいよいよセミファイナルを迎える。世界最高峰への登竜門として注目を集める舞台に、日本の中村京一郎が勝ち上がってきた。決勝進出、そしてUFC契約へとつながるリー・カイウェン(中国)との大一番を前に、U-NEXTのインタビューでコンディションの仕上がり、対戦相手の印象、勝負どころのイメージまでを率直に語った。
──会場にはいつ入られましたか?
中村:18日月曜の朝ですね。
──前回に続いて二度目の上海になりますが、特に緊張はないですか?
中村:まあそうですね。ホテルの周りの飯屋が前回よりねえなっていうぐらいの感じですね。
──減量含めコンディションはどうですか?
中村:いい感じです。減量もぼちぼち進んでますね。
──今回セコンドに髙谷(裕之)さんと岡見(勇信)さん、中村倫也選手も入ると聞いていますが、いつもメンバーはどう決めていますか?
中村:倫也さんも含めてアメリカにずっといるんで、ちょうど試合前にどっちか帰ってきてくれると。タイミングがめちゃくちゃ良くて。まあその二人もバリバリ動けるんで、アップとかもしてもらう感じでお願いしちゃいました。今(すぐそばに)倫也さんいます。
──倫也選手の前回のフレッチャー戦をご覧になったかと思いますが、三日月蹴りからあのパウンドでの勝利。刺激を受けましたか?
中村:いやー、もう僕が(自分を)ストライカーって言っていいかわかんなくなっちゃいましたね。まあちょっとそれは冗談なんですけど(笑)、本当にむこうで準備して向き合ってトレーニングしてたものが、なんかもう賜物だなと。(堀口)恭司さんいるとかも含めて、すげえいい刺激もらって。新しい中村倫也ができてるなっていう感じはしました。
KOっていう結果以上に、動きの良さや体の大きさも含めて、やっぱりいい環境なんだなと思いましたね。本当にいい刺激をもらいました。
──今回の対戦相手のカイウェン選手の分析も、倫也選手などと一緒にしてきましたか?
中村:そうですね。一緒に試合見たりとか。岡見さんも髙谷さんも見てくれてると思うんですけど、まあ調整しながらの感じです。
──前回のパク・オジン戦の、緩急をつけるような左右の打撃を見せるシーンがありました。試合では戦略的に、左を最終的に当てるようなイメージでしたか?
中村:うーん、まあ左が当たればいいし、右当ててもいいしっていう感じで。基本的にはテイクダウンを警戒していたんで、そこをケアしながらでしたね。足もローとかで削ってという感じでした。ローとか蹴りの判断は試合中だったんですけど、基本は距離とパンチの精度でしたね。
──左の膝が入った時について、「無意識でオートな状態で」とお話されていました。
中村:ちょっとイメージしてほしいんですけど、たとえばご飯食べてて、ここは中国なので、真ん中にシュウマイとかギョーザあるとするじゃないですか。食べようと思って箸を伸ばす、取って食べる時に、箸の持ち方気にしてます?
──してないですね。
中村:その状態が「オート」なんですよ。無意識の中の意識みたいな感じで考えると、これ箸ってこんな持ち方だっけ?とか多分なると思うんですよ。ペンで書くのもそうで。
なんかそういう感覚で、たまたま出しただけで、形とか力感とかはこだわってない。それが一番近い表現なのかなとは思います。むずいっすね。
──練習で積み重ねたものが体に身についていく。
中村:日頃のちょっとしたことの積み重ねしか、あの場で出ないと思うんですよ。それ以上のものが出たりとかはなくて、基本は練習の部分までしか出ないですよ。
それ以上って、やっぱり日頃のができてないと起こらないんで。日頃のちょっとした集中力、「これはこうする」っていう使い方とか。その日だけ、あるいは1ヶ月だけとかでもならない。どこでどう出るかはわかんないですけど、とにかく日々の鍛錬かなとは思うんですね。
──今回のカイウェン戦も、その「オート」な動きが出てきそうという感じはありますか?
中村:まあ「オート」って、狙ったらもう「オート」じゃないんで。あくまで対策した動きっていうのは常に自分の中にあって、どっかでなんか起きると思うし、それは僕自身もわかってないんで。
どういうKOするのかは僕自身も楽しみだし、みんなと一緒で「どんなKOを見せてくれるんだろう」っていうのは、自分も楽しみなんですよ。皆さんは外から中村京一郎の試合を見てるじゃないですか。俺もそういう感覚なんです。今回は何で倒すんだろうって、シークレットな部分を楽しみながら試合してるんです。みんなと一緒にね。
今回は何で行くんだろうなっていうのを、楽しみながら試合しようかなと思ったんです。なんか自分のことを自分が喋ってるみたいで嫌ですね(笑)。
──前回の勝利はご自身の対レスラー、グラップラーへの対処能力に関して、自分に自信を与えてくれたという感覚もありますか?
中村:膝蹴りで勝ったのはたまたまで、そこまでにちゃんとテイクダウン切ったっていうのが、練習してきたのが間違ってないと感じられました。「俺つええ」じゃなくて、間違ってなかったっていう自信にはなりました。そこが今回にどうつながるとかはないですね。
──カイウェン選手はレスリングがバックボーンにありますが、あの膝蹴りがあったことで「安易にタックルにはいけない」というプレッシャーを与えられたと感じますか?
中村:僕自身は思ってないですけど、そう思ってくれたら最高だし、「あいつ左ストレートじゃなくて左膝もあるのか」って研究してくれたらそれはそれでいいし。それすらも研究してカバーしてくるのが試合だと思うんで。
「あの膝あるけど、どうやってテイクダウンする?」って、やっぱ作戦って変わっていくと思うんですよ。そうなってくれないと、いい試合にはならないかなとも思うし。プレッシャーになってるなら、それはそれでいいしっていう感じですね。
まあ変な話、あれで勝っちゃうってことは、自分の武器を見せてるようなものなんで。馬鹿と鋏は使いようってことですね。本当に僕の膝も、たまたま当たってKOしたけど、僕が逆に膝を狙いすぎて顔をもらうとか、全然ありえる展開だと思うんで。僕自身があんまり意識しないのがキーかなとは思ってますね。
──カイウェン選手はレスリングの実績がある一方で、非常にアグレッシブな打撃戦を好みます。京一郎選手は、カイウェン選手をレスラーとして見ているのか、それともストライカーとして見ているのか。その二面性をどう捉えていますか?
中村:それらも含めて、リー・カイウェンって感じです。やるのはMMAなんで。レスリングも強いし、実績もあると思うんですけど、結局触ってないところからのスタートだし、打撃から始まると思うんで。まあタックル来てもいいし、スタンド来てもいいし、準備はもちろんしてきました。
なので、一人のMMA選手としてしか見てないですよね。レスラーのカイウェンを知らないんで。
──カイウェン選手、最近の試合では慎重な動きも見せていますよね。そこは弱みと捉えていますか?
中村:まあでも結局ピークの火力っていうか、スピードとか回転はあると思うんで、それが劣ったっていう感じではないと思うんですよ。だから慎重だとしても、どっかでそれは出てくると思うし。
彼もたぶんMMA長いんですよね。だからこそ経験値で慎重になっていく。ベテランになっていくとそうなる選手が多いと思うんです。まあ慎重になったらなったで、こっちもそれにアジャストしてやるし、ガンガン1ラウンド目から来てもこっちはアジャストするんで。何が来てもいいかなって感じです。
──京一郎選手は『ROAD TO UFC』で唯一残った日本人選手になります。それがプレッシャーになっていますか?
中村:なってないです。契約してUFCに入って、ベルトを取りにガンガン戦っていく過程の中で、結局フェザー級だけ見たら僕一人だし、その日本人一人っていうのはあんまり変わってないのかなとも思うんですね。
──今回はどのような試合を見せたいと思ってますか?
中村:フィニッシュはもちろん狙ってるし、フィニッシュになっちゃうでしょっていう感覚はあるんですけど。もちろんカイウェンが打撃の選手なんで、良い打撃ストライカー同士の試合にはなるし、そこで打ち抜いてKOできたらいいなって思ってます。
向こうがレスリングで来ても、まあどっかでサブミッションもあると思うし。僕も楽しみです。何でフィニッシュするのか、その時の自分に委ねます。
──今回勝って決勝にも勝ってUFCと契約した時に、フェザー級は修羅の階級だと思いますが、やっていけるという自信はありますか?
中村:いやもう、UFC全部修羅っすよ。フライも修羅だしバンタムも修羅だし。修羅ってみんな捉えると思うんですけど、勝っていけばね、それがそうじゃないっていう証明にもなると思うんで。まあ逆に世界の頂点、世界のトップがUFCなんで、修羅じゃなきゃ困るし。そういう気持ちでやってますね。そういう高い山であってほしい。
──やっぱり倫也選手の勝利は、一つ心強さを感じますか?
中村:なんかほんと見せてくれたなっていう。俺もそこまで気負ってはないんですけど。いやー、なんかすごくいい繋ぎ方をしてくれたなと思ってます。僕もいい勝ち方して、次の仲間にバトンを渡すじゃないけど、こうやってつないでいく感じにしたいなと思ってるし。
日本人を応援してくれる方もやっぱ増えてきて、UFCを認知してくれる人も増えてきたんで。そういう人の人生にとって、少しでもいいパワーになってくれたなっていう気持ちでやってますね。