世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTでは、2025年8月17日(日本時間)開催の『UFC 319:デュ・プレシ vs. チマエフ』(ユナイテッド・センター)をライブ配信する。
注目のメインイベントは、王座2度防衛中のミドル級王者ドリカス・デュ・プレシ(南アフリカ)に、同級3位でキャリア無敗、UFC8連勝中のハムザト・チマエフ(アラブ首長国連邦)が挑むミドル級タイトルマッチ。また、フライ級15位の朝倉 海がティム・エリオット(アメリカ)と戦うフライ級マッチも予定されている。
朝倉は昨年12月、『UFC 310』で異例の“UFCデビュー戦タイトルマッチ”となったアレシャンドレ・パントージャ(ブラジル)戦に挑むも、2R一本負けを喫した。再起を図る今回の相手は、同級11位のエリオット。王座戦経験もある38歳のベテラン相手に、念願のUFC初勝利となるか。
以下、朝倉と拳を交えるエリオットの、試合前メディアデーでの言葉をお届けする。
「勝ちたいとか、そういうことじゃない。俺は戦いが好きなんだよ」
──シカゴでのファイトウィークはいかがですか?SNSでは素敵な景色を楽しんでいる様子が投稿されていました。
エリオット:ああ、最高だよ。シカゴにはあまり来たことがなかったけど、最初の数日はウィッカーパークに滞在したんだ。すごくクールな場所だったね。食べ物も美味しかったし、人々もすごく親切だった。正直、これ以上ないってくらいだよ。UFCのイベントは毎回どんどん良くなっていると感じるね。
──あなたは長くこの競技に携わっており、数々の大きな大会で戦ってきました。そういった経験から、注目を浴びるのは慣れているかと思います。一方、対戦相手の朝倉海は熱狂的なファンがいて、以前から大きな期待を寄せられている選手です。このマッチアップが決まったときの気持ちは?
エリオット:このマッチアップはすごく嬉しいね。大きな舞台も小さな舞台も経験してきたけど、正直、朝倉海と戦うことでPPV(ペイ・パー・ビュー)のある本戦に出られるチャンスを得たんだ。だから、その点では彼に少し感謝しないとね。ここにいられて興奮しているし、こういう機会は大好きさ。長いことやってきて、PPVカードで戦えることは滅多にないからね。これはすべて彼の実績のおかげだよ。
──あなたはUFC以外のMMAもチェックしているように見えます。彼がUFCと契約する前から、彼のことは知っていましたか?
エリオット:彼のことは少し知っていたよ。友人の(扇久保)博正と対戦したことがあるしね。それに、俺の親友で、デメトリアス・ジョンソン戦でもセコンドについてくれたフアン・アーチュレッタとも戦っている。
でも、最近は対戦相手の映像をあまり見ないようにしているんだ。相手の映像を見ると、その選手の得意な部分ばかりが目についてしまう。逆に自分の映像を見ると、悪いところばかり見てしまうんだ。だからキャリアのこの段階では、そういう分析はコーチに任せているのさ。試合を見るのは好きだけど、分析はしないようにしているんだよ。
俺は考える人間じゃない。行動する人間なんだ。考えすぎてしまうと、動きが鈍ってしまうからね。彼が素晴らしいアスリートで、偉大なファイターであることは知っているけど、正直、彼の試合はあまり見ていないんだ。
──朝倉の前戦であるパントージャとの試合は見ましたか?彼は「リングでの戦いには慣れているが、ケージには慣れていなかった」と語っていました。一度経験した今、ファンは前回とは違う朝倉海を期待していいものでしょうか?
エリオット:ああ、それは全く違うだろうね。もし俺がリングで戦うことになったら、同じように感じると思うよ。彼が最高の状態で来ることは期待しているよ。
でも、戦う場所がどこであろうと、それが勝敗を分けるほどの違いを生むことはない。どちらかがそれによって勝ったり、負けたりすることはないんだ。それに、彼はギロチンで一本負けしたんだろ?ケージがそれと何の関係があるのかは分からないね。
──アメリカ人選手が、朝倉海のように日本で非常に人気のある選手と戦う場合、SNSのDMなどには声が多く届くかと思います。例えばあなたがムハンマド・モカエフと戦った時は、多くのロシア人ファンから連絡があったのではないでしょうか。今回の試合に向けて、日本のMMAファンはあなたにどのように接してきていますか?
エリオット:日本のファンは全く違うね。ロシアのファンは俺のことがあまり好きじゃないみたいだけど、日本のファンはなんていうか、純粋に戦いのファンなんだ。それが、格闘技に対する新たな興奮を与えてくれたよ。彼らは他のことは気にしない。ただ、俺たちが戦うこと、戦いたいという意志、そして良い試合を見せることだけを求めているのさ。
多くの人々は、「髪型がどうだ」とか「スタイルがつまらない」とか、あらゆることを細かく批判する。でも日本のファンからは、そういうのが一切ないんだ。それだけじゃなくて、彼らのおかげで日本を訪れて、この目で見てみたいと強く思うようになったよ。
実はこの試合の後に、日本で朝倉海と相撲マッチができないか、本気で画策したんだ。俺にはビーチレスリングの経験があるからね。ビーチレスリングの全米チャンピオンなんだ。相撲とは少し似ている部分があるからさ。
とにかく、純粋に戦いが好きなファンに会えるのはクールなことだよ。他のことは関係ない。俺たちがやっているのは、結局のところ戦い。それだけなんだから。
──メインイベントについて、デュ・プレシとチマエフの勝者予想をお願いします。
エリオット:うーん、正直に言うと、考えが行ったり来たりしているよ(笑)。チマエフはとてつもなく大きくて、誰にも止められないように見える。だから、チマエフかな。
俺は彼のファンでもあるんだ。試合数はまだ多くないけど、彼が戦うとなるといつもワクワクする。でも、厳しい試合になるだろうね。非常に興味深くて、エキサイティングな一戦だ。もし賭けるとしたら…いや、分からないな。でも、チマエフにするよ。彼の方がデカくて強いと思う。
──あなたはUFCで20戦を経験しています。その中でフライ級は大きく変わったと思いますが、その変化をどう見ていますか?そして、あなた自身はどう変化に対応してきましたか?
エリオット:長い間、この階級は廃止されると言われていた。階級全体で4、5人しか選手がいなかった時期を覚えているよ。でも俺は常に踏みとどまって、ここに残り続けようと努力してきた。135ポンド(バンタム級)で戦うこともできたけど、俺はジョン・ドッドソンやイアン・マッコールといった選手たちと一緒に、UFCのフライ級の道を切り開いてきた一人だと感じているんだ。
けど今はもう違う。ヤバい奴らがたくさんいる。昔からエキサイティングな階級ではあったけど、今ではスター選手もいるし、絶対王者だった“マイティ・マウス”(デメトリアス・ジョンソン)からパントージャへとベルトも動いた。誰がチャンピオンになるか全く分からない、完全にオープンな状況だよ。
俺が出たTUF(The Ultimate Fighter)のシーズンでも、世界中からヤバい奴らが集まっていたからね。この階級にこだわり続けて良かったよ。俺のレガシーが最高のものになるとは言えないかもしれないけど、この階級の存続に貢献した男の一人として、常に記憶されるだろうね。
──あなたの最後の試合は2023年12月でした。いわゆるリングラスト(試合勘の鈍り)については心配していますか?
エリオット:心配事はたくさんあるけど、リングラストはその一つじゃないな。この地球上で俺が自信を持ってできることはそう多くないけど、たとえ死の淵にいたとしても、15分間戦うことはできると思う。たとえそれを支えるスタミナがなくても、ケージに入れば何があっても良いパフォーマンスを見せられるさ。
確かに歳はとってきているし、年齢を感じ始めてはいる。でも、戦いたいという意欲や欲求は消えないんだ。チャンピオンになりたいとか、勝ちたいとか、そういうことじゃない。俺は戦うことが好きなんだよ。もしUFCで稼いでなけりゃ、デニーズの駐車場でケンカしてるね。好きなことで生計を立てられる幸運な人間の一人だよ。
──現在もランキング11位です。もし土曜日に朝倉海に勝てば、トップ10で戦いたい相手はいますか?
エリオット:(11位なんて)クレイジーだろ?もう600日くらい戦ってないのにさ(笑)。他のランカーは何をやってるんだ?
戦いたい相手はたくさんいるよ。みんな“ゲートキーパー”みたいな役割を軽視するけど、俺にとってはそれが公平な評価だと思う。フライ級でティム・エリオットに勝てないなら、UFCにいるべきじゃない。俺はそれで構わないのさ。
ただ、今回の試合で問題なのは、朝倉海がパントージャと戦って、すぐに俺と戦わなければならないこと。立て続けにタフな相手と戦うことになる。彼がそこから再起できないとは言わないけど、連敗は彼にとって大きな痛手になるだろうね。
俺はUFCチャンピオンになるような男じゃない。たとえそうなったとしても、それは俺がいる場所にたどり着こうとしている若いヤツから、何かを奪うことになる。いま俺がやりたいのは、エキサイティングな試合をして、やっていることを楽しんで、金を稼ぐことだけさ。でも、トップ10には戦いたい相手がたくさんいるよ。
──いまご自身ではUFCチャンピオンにはなれないとおっしゃいましたか?
エリオット:そう思っていないわけじゃない。ただ、世界のチャンピオンになることは俺のゴールじゃないんだ。それは俺にとってはどうでもいいこと。もらえるファイトマネーは同じだからね。
俺はただ良いパフォーマンスをして、エキサイティングな試合をして、2010年から続けてきたこの仕事で家族を養いたいだけなんだ。この仕事はいろんな場所に連れて行ってくれたけど、一番大事なのは、娘とたくさんの時間を過ごせたことさ。ベビーシッターを雇う必要もなかった。UFCがそれを可能にしてくれたんだ。