世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTでは、2025年8月3日(日本時間)開催の『UFCファイトナイト・ラスベガス108:平良 vs. パク』をライブ配信する。
フライ級6位の平良達郎と当初対戦予定だった、アミル・アルバジが欠場となり、急遽『ROAD TO UFC シーズン1』フライ級トーナメント王者でMMA通算10勝無敗を誇るパク・ヒャンソンとの、フライ級マッチ(メインイベント)が決定した。また、『ROAD TO UFC シーズン1』バンタム級トーナメント王者の中村倫也と、MMA通算9勝2敗のネイサン・フレッチャーの対戦も予定されている。
今回は、注目の一戦を控えた中村倫也のU-NEXT独占インタビューをお届けする。
「ポジティブなエネルギーを浴びながら学んできた」
──現在のコンディションはいかがですか?
中村:調子はすごく良いですね。いい準備ができてきたと思います。
──今回、セコンドに堀口恭司選手、ご兄弟、そしてマイク・ブラウンもつくそうですね。
中村:はい、そうですね。
──どういった経緯だったのでしょうか?
中村:4月からATTでトレーニングをさせてもらっていて、その中で試合が決まりました。ATTには色々なコーチがいるのですが、自分の強みを生かせるコーチは、一番はマイク・ブラウンだと感じたので、マイクにお願いしました。
──ATTでは、コーチを自分からリクエストできるシステムなのでしょうか?
中村:そうですね。たくさんのコーチがいる中で自分からリクエストして、コーチのスケジュールが合えばついてもらえる、という感じです。
──堀口選手にも、ご自身からセコンドをお願いしたのですか?
中村:はい、お願いしました。快く引き受けていただいて。ただ、恭司さんも現役の選手なので、少し気を使ってしまった部分はありましたが…(笑)恭司さんの方から「セコンドどうするの?」と声をかけていただいて、「…いいっすか!?」みたいな感じで(笑)。
──日本に帰らず、ATTで最終調整をして試合に臨むのは今回が初めてですか?
中村:そうです。初めてですね。
──これまでと比べて、どのような違いを感じますか?
中村:「ああ、北米というか世界最先端のジムは、こういう風に準備してるんだ」と感じました。日本ではある程度、自分で考えて組み立てる部分が多かったのですが、ATTでは「このシチュエーションではこれをやっちゃダメ」といった具体的なアドバイスがありました。それさえ守れば、あとは自由にやっていいというやりやすさもあって。相手が得意なシチュエーションやミスしやすい状況を分析してファイトキャンプを組み立ててくれるので、すごく楽しかったですし、心強く前向きに取り組めました。
──ATTに行って、ご自身で「変わったな」と思うことは何でしょうか?
中村:本格的に練習を積んだのは3ヶ月くらいなので、そこまで大きく変わったという部分は正直まだありません。まだまだ改善したいことがたくさん見つかってきている段階です。ただ、特に恭司さんとは毎日練習後にご飯に行ったり、一緒に過ごさせてもらう中で、戦いに向けての準備や、どうやって最高のパフォーマンスを出すかというコンディションの持っていき方など、気持ちの部分も含めて色々と吸収させていただいているなと思います。
──今回、特に堀口選手から受けたアドバイスはありますか?
中村:練習中に自分のミスや甘い部分が出た時には、その都度、毎日注意やアドバイスをもらっていました。試合に向けては、とにかく「自分を信じること、楽しむこと」だと。ここまでやってきたんだから、もうどうなってもいいでしょ、みたいな(笑)。そういうところですね。
──ATTの強みは、世界各国のトップ選手が集まっていることだと思います。今回の対戦相手、ネイサン・フレッチャー選手を想定して、どのような選手とトレーニングを積んできましたか?
中村:彼は寝技でのフィニッシュが多いので、そこに長けている選手を想定していました。そういう展開が得意な選手としっかり対策をして、危ないシチュエーションになった時の最悪のケースも想定して準備してきました。
──今おっしゃった「危ないシチュエーション」とは、具体的にどのような状況を想定していますか?
中村:相手がやりたいことは、おそらくバックを取って首を絞めてくることだと思うので、特にそのポジションに入られた時の準備をしてきました。ただ、ATTの寝技が強い選手といっても、みんな打撃もレスリングもできた上で寝技が強いだけなので、当然ストライキングも磨いてきましたし、そこもバッチリ出せるかなと思っています。
──前回のムイン・ガフロフ戦での敗戦から学んだことと、今回への課題を教えてください。
中村:あの負けから学んだことはすごく多いです。技術的な部分で言えば、自分のMMAの土台として育ててきたレスリングを、まさか信じないで試合に上がってしまった。そこがまず大きな、根本的なミスでした。なので、まずはそこをしっかり作り直すというか、世界のトップジムでたくさん練習して、また自信を取り戻してきたので、もう大丈夫です。
メンタル的な部分でも、本当にそこにつながってくるんですけど、自分を信じきれなかった部分を、アメリカのポジティブなエネルギーを浴びながら学んできたかなと思います。
──アメリカでの生活は、ご自身に合っていると感じますか?
中村:最初は食事の面で戸惑いました。日本でもかなり気をつけてきた方なので、食事が大雑把になった感じがして、体調を崩したりもしました。でも、順応してからは心身ともに良い状態で作り上げてこれたので、今はめちゃくちゃ合っているなという実感がありますね。
──ちなみに、現在はどこに滞在されているのですか?
中村:ATTのジムの2階が寮のようになっていて、1番から13番ぐらいまで部屋があるんですけど、僕はそこの5番の部屋に住んでいます(笑)。
──この試合を終えた後も、当面はアメリカを拠点に?
中村:はい。日本で少し休んだら、またすぐにアメリカに戻って練習を続けるつもりです。ここで作り上げていけたら間違いないなと思うし、そうしていきたいなと思っています。
──対戦相手のネイサン・フレッチャー選手には、どのような印象を持っていますか?
中村:顔がハリー・ポッターみたいだなと(笑)。そういうことじゃないですよね。
もちろんUFCで戦っている選手なので、全体的にバランスが良くて、諦めが悪いというか、やり抜く力を持っている選手だなと思っています。
──そのフレッチャー選手を相手に、どのような試合を見せたいですか?
中村:彼が感じたことのないようなスピード感やレスリング力を体感させる準備はしてきました。そして、それを見ている皆さんにもお伝えできればなと思っています。ただ、彼も攻撃的な選手なので、結構噛み合って面白い試合になるんじゃないかなと期待しています。
──今回試合が行われるUFC APEXのオクタゴンは少し小さいですが、戦いやすさという点ではいかがですか?
中村:サイズのことを考えると、彼は相手を捕まえたいタイプの選手なので、どちらかと言えば狭い方が好きなのかなとは思います。でも、自分も同じで、どんどんコンタクトして制していくスタイルが大好きなので。お互い好きなんじゃないですかね。だから結局、広くても狭くてもあまり変わらないのかなと思っています。
──今回のメインイベントは、平良達郎選手と、中村選手が交流のあるパク・ヒャンソン選手というカードです。この試合については、どのように思われますか?
中村:ちょっと複雑な思いはありつつも、ROAD TO UFCのシーズン1からメインに抜擢されたヒャンソン選手に対して「おめでとう」という気持ちもありますし、もちろん日本人として平良くんに頑張ってほしい気持ちもあります。でも、やっぱり自分の心は日本にあるので、日本勢に頑張ってもらって、一緒に勝ちたいなという想いの方が強いですね。
──平良選手とは何か言葉を交わしましたか?
中村:「調子どう?」とか、「ここから逆襲を始めようぜ」みたいな、そんな感じの話はしました。
──ご自身や堀口選手、平良選手など、UFCのフライ級に日本人選手が増えてきている現状をどう感じていますか?
中村:日本でもUFCがすごく注目されるイベントになってきたなと、だんだん感じることが多くなりました。日本でもう一度UFCが開催されてほしいですし、そこでパフォーマンスをすることが僕の夢なので、その機は熟してきているなという嬉しさもあります。何より、僕個人としては、こうやって改めて恭司さんに面倒を見てもらうようになったことで、恭司さんと一緒に同じ舞台で戦える喜びがすごく大きいです。一緒に背負って戦いたいという気持ちがあります。
──最後に、日本のファンへ向けてメッセージをお願いします。
中村:いつも応援ありがとうございます。前回はうまくパフォーマンスすることができずにがっかりさせてしまった方も多いかと思いますが、その敗戦からしっかり学び、今回はいい準備を積み重ねてきました。皆さんを興奮させられるような試合ができると思っています。試合当日は少し朝早いですが、皆さんの目がバチっと覚めて、いい日曜日が過ごせるような試合にしたいと思っていますので、応援のほどよろしくお願いします。