世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTがライブ配信した『UFCファイトナイト・ラスベガス108:平良 vs. パク』(2025年8月3日(日本時間))では、『ROAD TO UFC シーズン1』バンタム級トーナメント王者の中村倫也とネイサン・フレッチャーが対戦。中村が「1R 1分2秒 KO勝ち」で快勝し、前回のプロ初黒星から見事な立ち直りを見せた。
U-NEXTによる試合後インタビュー、そして試合後会見で中村が語った言葉をまとめてお届けする。
試合後インタビュー
──試合を終えた今の率直な気持ちを教えてください。
中村:いや、自分もちょっとびっくりしてます。びっくりなんで、嬉しさ半分って感じです。
──あのフィニッシュにつながった蹴りですが、アメリカン・トップチーム(ATT)での練習の成果が大きく影響しているのでしょうか?
中村:特にやってきたことは、自分のレスリングを活かすっていうことだったんで。活かして、MMAファイターとして完成度を上げていくってことをやっていたので、それが出たわけではないんですけど。でも力の抜き方とか、そういうのはギリギリまで恭司さんのアドバイスを聞きながら調整できたんで、その辺の緩急が効いたのかなと思ってます。
──では、蹴りでの決着は狙っていたわけではなかった?
中村:全然。むしろ前回の試合の方が蹴りで倒そうと思ってましたね。
──構えからして以前とは変わっていて、相手からすればパンチが来るのか、タックルが来るのか、あるいは蹴りが来るのか、的が絞りづらかったと思います。そのあたりも、ATTで重点的に調整してきた部分でしょうか。
中村:それがまさに、やりたい動きでした。同じ動きでパンチ、蹴り、タックルって散らせるようにと、すごいアドバイスをいただいたんで。
──まさにその通りの戦い方で見事な完勝でした。今後がますます楽しみになりますね。
中村:すぐ決まるといいですね。
──セコンドの堀口選手、これ以上ない最高の勝ち方だったのではないでしょうか?
堀口:そうですね。よかったです。
──試合前、中村選手にはどのような言葉をかけたのですか?
堀口:今までやってたこと、自分を信じて、楽しんでいけって感じでしたね。
──あのような打撃でのKOも、やはりレスリングという土台があるからこそ、という見方でいいのでしょうか。
堀口:そうですね。でもやっぱり打撃も伸びてきてますし、今日見せたように打撃でも倒せるものがあるんで、本当にオールラウンダーなんじゃないかなと思いますね。
──相手が倒れた後のパウンドは、もはや必要ないくらいのダメージだったように見えました。
中村:どうですかね。効いたとはいえ、これ行って大丈夫かなっていう迷いがあったんですけど、「行け、行け、行け!」って言われたんで、「よし行くか!」ってなりました。
──ATTのコーチであるマイク・ブラウンとの関係性も、直接指導を願い出たことで大きく変わったと伺いました。
中村:はい、そうですね。試合のセコンドをお願いするようになってから、引き出しや相手の研究、それに合わせた動きも含めて、対策をしっかり積み重ねて。毎週のようにサーキットをやってもらったりもしました。
──少し話は変わりますが、以前、台湾で武術の修行をされた経験について、そこで得た一番の学びは何でしたか?
中村:いろんなことがあったんですけど、「自分は格闘技を極めたいんだな」っていう原点に立ち返った、いい時間になりましたね。
──ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
中村:応援ありがとうございました。無事勝つことができました。まだまだ見せたかった成果が出たわけではないので、今後も楽しみにしてくださると嬉しいです。引き続き応援よろしくお願いします。
試合後会見
──見事なKO勝利、おめでとうございます。今のお気持ちはいかがですか?
中村:すごく嬉しいです。 ただ、嬉しい気持ちと驚きが半分半分ですね。 この試合はもっとスクランブル、つまりグラップリング(組み技)の展開になると思っていたんです。 そのための準備をずっとしてきたので。でも、実際にはそうならなかったので、少し驚いている感じです。
──ご自身のパフォーマンス、そしてKOシーンを振り返っていかがですか?
中村:レバーショットでのKOは初めてです。 相手のレバーを蹴ってKOしようと狙っていたわけではないのですが、お腹ががら空きなのが見えたんです。 相手が前に出てこようとしたところに、僕が足を振り上げたタイミングがちょうど合いました。
──1月の試合でキャリア初黒星を喫して、精神的にどのような影響がありましたか?
中村:「自分は人生で何をしたいのか?何を成し遂げたいのか?」と、ひたすら自問自答を繰り返しました。 そして、「UFCチャンピオンになって、自分の愛と調和を示したい」という結論に至りました。
その想いが、フロリダにあるアメリカン・トップチーム(ATT)へ移籍する決断につながりました。 ATTは世界でも最高レベルのジムの一つで、そこで練習を重ねることで、自信を取り戻すことができました。 今日の結果が、その証明になったと思います。
──ケージの中でも少し話していましたが、あなたはエリートレベルのレスラーです。それなのに、なぜ1月の試合ではレスリングを使わなかったのでしょうか?
中村:実は、その前のUFC 298の試合でレスリングやグラウンドでのトップコントロールを多用したら、観客からブーイングを浴びてしまって…(笑)。 それが結構ショックだったんです。 「自分のスタイルを考え直さないといけない」と、相手をKOすることに固執しすぎてしまいました。 それが、前回の試合で良いパフォーマンスができなかった理由ですね。
──では、ATTではどのようなアドバイスを?
中村:主にマイク・ブラウンをはじめ、多くのATTのコーチから「君はもっとレスリングを使うべきだ。レスリングをフェイクに使えば、打撃も活きてくる」と言われました。 もっとエキサイティングな試合をしたいという気持ちはあったのですが、前回はそれが上手くいきませんでした。 だから、今はその練習に取り組んでいるところです。
──今はフロリダに住んでいるのですか?
中村:はい。ただ、実はアメリカのビザが9月で切れてしまうんです。 なので、一度日本に帰って数週間休んでから、できるだけ早くフロリダに戻りたいと思っています。 UFCには、新しいビザを早く発行してくれるようお願いしたいですね(笑)。
──そういった状況も踏まえて、次戦はいつ頃を希望しますか?
中村:年内にもう一試合したいです。 MMAのスキルにはまだ修正すべき点がたくさんあるので、準備期間を考えると11月か12月がベストなタイミングだと思います。
──現在のUFCにいる日本人選手の才能を考えれば、日本大会の開催は可能だと思いますか?
中村:はい、間違いなくそう思います。実現したら素晴らしいですね。特にさいたまスーパーアリーナで戦うことは、僕の人生における最大の夢の一つです。
子どもの頃、PRIDEの数々の大会をさいたまスーパーアリーナで観てきたからです。 アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、エメリヤーエンコ・ヒョードル、ケビン・ランデルマン…僕が憧れてきた多くのファイターたちが、あのリングで戦っていました。 だから、僕にとってあそこは本当に特別な場所なんです。
──そもそも、なぜレスリングを始めようと思ったのですか?多くの場合、柔道などを選ぶことが多いですが。
中村:ご存知かもしれませんが、山本“KID”徳郁さんのお姉さんである山本美憂さんが、僕の家の近くに住んでいたんです。 彼女がレスリング選手を引退した後にレスリングスクールを開くことになって、僕を誘ってくれたのがきっかけです。本当にラッキーでした(笑)。
──今夜は敗戦からの復帰戦でした。連勝記録が途切れたことで、逆にプレッシャーから解放された感覚はありましたか?それとも、やはり緊張はありましたか?
中村:正直、かなり緊張していました。 キャリアにとって大きなダメージになると思っていたので、連敗だけはしたくなかった。でも、セコンドについてくれた堀口恭司さんが、僕の顔がこわばっているのに気づいて「緊張しないで、楽しんで、楽しんで」と声をかけてくれたんです。あの言葉が一番心強かったですね。 彼が僕の緊張を外に追い出してくれました。
──ATTには堀口選手もいますし、素晴らしいチームメイトに囲まれていますね。
中村:本当にそうです。ジムには素晴らしいキャリアを持つ偉大なファイターがたくさんいます。 彼らは試合に向けてどういうマインドセットを作ればいいかを知り尽くしているので、本当に助けられています。
──この勝利は、どのように祝いますか?
中村:うーん…この街で僕が知っている唯一のお祝いの方法は、ギャンブルなんです。すみません(笑)。