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我々はいま、河合優実の時代に生きている。天下のキネマ旬報が2024年9月号 で、「河合優実の時代はもう、はじまっていたんだ。」という特集を組んでいるくらいだから、間違いないことは間違いない。
相手を射抜くような鋭い眼差し。だが必要とあらば、彼女はその瞳を伏せて自らを消し去り、まるでセーターを着替えるみたいに、あらゆる役に移り変わる。映画作りに明け暮れるSFオタク(『サマーフィルムにのって』)、古本屋の店主にいきなり求婚する女子高生(『愛なのに』)、クールな探偵事務所の調査員(『RoOT / ルート』)、ドラッグに溺れてしまう少女(『あんのこと』)。筆者はかなり早い段階から彼女をスクリーンで観ていたが、カメレオンのようにキャラクターを変化させるものだから、最初は同一人物であることに気が付かなかった(面目ない)。
女子高生の無軌道青春ムービー『あみこ』に衝撃を受け、舞台挨拶に登壇していた山中瑶子監督と話をしていたら、その様子を見ていた芝山健太監督から出演依頼のDMが来て、『よどみなく、やまない』に出演するという、映画みたいな俳優デビュー。気がつけば、松居大悟、城定秀夫、阪本順治、石川慶など、日本を代表するフィルムメーカーの作品を飾る、トップ・アクトレスになっていた。
今年だけに絞ってみても、映画では『四月になれば彼女は』(9月25日配信開始)、『あんのこと』(6月7日公開)、『ナミビアの砂漠』(9月6日公開)、『八犬伝』(10月26日公開)、TVドラマでは『不適切にもほどがある!』、『RoOT / ルート』に出演し、声優としてアニメ『ルックバック』(6月28日公開)にも参加している。破竹の勢いとはこのことだ。
繰り返すが、我々はいま、河合優実の時代に生きている。2019年のデビューからわずか5年にして、映画・ドラマの出演作はすでに40作品を超えている。その華麗なるフィルモグラフィの中から、特に推しな作品を紹介しよう。
強い信念を持って、女子高生いじめ自殺事件を追い続けるドキュメンタリーディレクターの由宇子(瀧内公美)が、やがて驚愕の真実を知り、迷い苦しむ社会派ドラマ。当時18歳だった河合優実は物語のキーとなる女子高生役を演じ、ヨコハマ映画祭、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テンなどで新人賞をさらった。まるで世界にひとりぼっちで生きているような、孤独な少女が少しずつ由宇子に心を開いていく繊細な芝居に圧倒される。
元ダンサーの照生(池松壮亮)、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)の6年間におよぶ恋の軌跡を、1年ずつ遡っていくちょっと不思議なラブストーリー。クリープハイプのフロントマン尾崎世界観が、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』にインスパイアを受けて曲を作り、松居大悟監督がその曲にインスパイアを受けて本作を撮りあげた。
河合優実が演じるのは、密かに照生に想いを寄せるダンサーの泉美役。ダンスが表現のルーツと語る彼女にふさわしい役柄といえる。せっかく照生といい感じなのに、話に割り込んでくるバーの常連客(成田凌)に「お前誰だよ!」と言い放つ、半分冗談・半分本気な言い方が良き。ちなみに伊藤沙莉はNHKの朝ドラ『虎に翼』のヒロイン役で話題沸騰中だが、2025年放送の『あんぱん』には河合優実も出演予定。楽しみです。
今泉力哉と城定秀夫という、日本映画界で最も注目される2人のフィルムメーカーがタッグを組んだ話題作。河合優実は、古本屋の店主・浩司(瀬戸康史)に一目惚れして、「結婚してください」と告白してしまう女子高生役。彼女が演じると、突拍子がない奇特キャラではなく、真っ直ぐな純情ガールに見えてくるから不思議。
75歳を迎えると自分の生死を選択できるという、安楽死制度が施行されている近未来を舞台にしたドラマ。河合優実は、死を選んだ高齢者をサポートするコールセンター職員を熱演。本作の主人公ミチ(倍賞千恵子)との交流を通して、彼女が死にゆく運命にあることにやりきれなさを感じていく。決して出演時間は多くないが、“システマティックな行政手続きではなく、血の通った人間として死と対峙している女性”を見事に表現していて、強烈な印象を残す。
朝井リョウの同名小説が原作。廃校直前の2日間を描く、高校生たちの青春群像劇。小野莉奈(『アルプススタンドのはしの方』)、小宮山莉渚(『違国日記』)、中井友望(『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』)といったライジング・スターたちが並ぶなか、河合優実は同級生の彼氏と卒業後は離れ離れになってしまう女の子を演じている。校舎を全力疾走する彼女を、スローモーションかつワンシーン・ワンカットで描く場面が鮮烈。
岸田奈美の自伝的エッセイを元に、『勝手にふるえてろ』や『私をくいとめて』で知られる大九明子が演出を手がけた連続ドラマ。高校では目立たなかった自称・三軍女子が、ニューヨークで大道芸人を目指す!という夢を掲げ、地元の大学に進学し、ひょんなことからブログが大バズりして、作家になり…という、破天荒な主人公・七実を河合優実が演じている。マジで七実の人間力、ヤバいっす。第1話のバットぐるぐるするシーン、可愛いっす(個人的感想です)。
映画ファンを中心に知る人ぞ知る存在だった河合優実が、一気に知名度を高めた人気ドラマ。1986年から2024年にタイムスリップした昭和親父が、コンプライアンスに凝り固まった令和に物申す、宮藤官九郎脚本の抱腹絶倒コメディ。河合優実は、タバコは吸うしお酒も飲む不良女子高校生(でも根は純情)役。髪型は当時流行っていた聖子ちゃんカットだが、雰囲気はむしろ山口百恵っぽいのが面白い。
河合優実の魅力とはなんなのだろう。筆者はなんとかそれを言語化しようと務めているのだが、いまだに補足することができない。言語化できたと思った瞬間に、その手をするりと抜けて別の顔を覗かせるものだから、永遠に正体を掴みきれないのである。
あえて言うなら、陰と陽が真っ二つに分かれているのではなく、両方のニュアンスをハイブリッドに出力する能力に長けている、とでも言おうか。人とのコミュニケーションに依存しすぎていない感じ、自分が“異者”であることをナチュラルに受け入れている感じを醸し出しつつ、家族や仲間の前では屈託のない笑顔を浮かべて、世界に溶け込んでいる姿も見せたりする。陰陽配分を「0:100」「100:0」にするのではなく、場面ごとに「30:70」「60:40」と絶妙にブレンド。キャラクターが宿している多層性・重層性を、そのしなやかな身体に、射抜くような瞳に、存在感のある声に感じてしまうのだ。
彼女の時代はすでに始まっている。きっと、これから何十年も続く。大事なことだからもう一度繰り返そう。我々はいま、河合優実の時代に生きている。
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