【11月映画ランキングTOP10】1位の『映画版 変な家』に加え、『あのコはだぁれ?』などホラーが上位
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クリストファー・ノーランという、世界で最も有名なヒットメーカーであり、世界で最も風変わりなフィルムメーカーを、どのように形容すれば良いのだろうか。
デジタルにはいっさい背を向ける、徹底したフィルム主義主義者。撮影に第二班を使わず、全てを自ら司るコントロール・フリーク。時系列を巧みに操る、時間操作の達人。難解なルール設定を施す、稀代のコンセプトメーカー。『インターステラー』(2014)や『TENET テネット』(2020)といったSF超大作を手がけていながら、実生活では携帯電話やメールアドレスも持っていないという、超アナログ人間でもある。
会社勤めをしながら地道に撮影を続けた長編第1作『フォロウィング』(1998)から、アカデミー賞で最多7冠に輝いた最新作『オッペンハイマー』(2023)まで、彼のスタイルはいささかも変わってはいない。そのクセの強い作風にも関わらず、ノーランが手がける映画は5億〜10億ドルを稼ぐメガヒット作品ばかり。ズバ抜けた興行成績を誇る。
世界最大級の映画データベースIMDbが公開している「Top 250 Movies」では、『ダークナイト』(2008)が3位、『インセプション』(2010)が14位、『プレステージ』(2006)が43位、『メメント』(2000)が58位、『ダークナイト ライジング』(2012)が71位、『オッペンハイマー』が89位と、100位以内にノーラン作品が6本もランクインしている(2024年3月25日現在)。彼がこれまでに発表してきた作品は全12本だから、フィルモグラフィーの半数に相当する数字だ。
『オッペンハイマー』で初のアカデミー監督賞に輝き、スティーブン・スピルバーグからオスカーを手渡されたクリストファー・ノーランは、間違いなく現行最強のキング・オブ・ハリウッド。ゼロ年代以降の映画シーンを俯瞰するうえで、決して避けては通れない存在だ。そんな彼の偉大な業績を紹介していこう。
10分間しか記憶を保てない男が、妻を殺害した犯人を探し出そうとするトリッキーなサスペンス。原案になったのは、弟のジョナサン・ノーランが執筆した「Memento Mori」というプロット。時系列が逆向きに進行するカラーパートと、時系列がそのまま進行するモノクロパートを交互に繋ぐ、頭の破裂しそうな構成がいかにもノーラン流。
キャリー=アン・モスとジョー・パントリアーノという、『マトリックス』出演組が二人も登場していることから、「実は全て主人公の夢のなかの話だった」という深読みもできたり。
「ダークナイト トリロジー」の記念すべき1作目。リーアム・ニーソン、ケン・ワタナベ、ゲイリー・オールドマンと、世界に名だたるイケオジ俳優を召集し、格調高いタッチでバットマンを再臨させた。全編に漂う陰鬱とした世界観は『ブレードランナー』(1982)をどこか想起させるが、まさしくノーランはスタッフを全員招いて『ブレードランナー』を鑑賞させたのだという(その敵役を演じたルトガー・ハウアーも『バットマン ビギンズ』に出演している)。
かつてティム・バートンが、架空都市ゴッサムシティを大々的なセットを組んで、『バットマン』(1989)を撮ったのとは対照的に、今作ではロンドン、ニューヨーク、シカゴの街並みをそのまま外観に利用。この世界が現実と地続きであることを印象付けた。
クリストファー・プリーストの原作をもとに、19世紀末のロンドンで腕を競い合う2人の奇術師を描いたミステリー・ドラマ。タイトルになっている「プレステージ」はラテン語で「幻想」を表す言葉から派生したもので、「トリック」という意味もあるんだとか。ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソンと豪華な面々が揃っているが、世界的発明家ニコラ・テスラをデヴィッド・ボウイに演じさせているのが、神キャスティング。
奇術によって人々を驚かせるというアウトラインは、昔ながらの撮影スタイルで観客を驚かせようとするノーランその人を表したものだろう。
ゼロ年代のハリウッド映画を代表する1本。タイトルに“バットマン”というワードが含まれていない最初のバットマン映画ということからも、単なる英雄譚ではないというノーランの覚悟が見える。正義と悪という二元論を根本から叩き壊し、バットマンという存在に懐疑の目を向ける、アンチ・ヒーロー映画。ジョーカーを演じたヒース・レジャーはアカデミー助演男優賞に輝き、故人としては2人目となる快挙となった。
それまでアカデミー作品賞のノミネート枠は5作品だったが、『ダークナイト』がノミネートから外れたことをきっかけに、翌年から最大10作品に改定されることになる。
アルゼンチン人作家ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集「伝奇集」に着想を得て製作した、奇想天外サスペンス・アクション。ドリーム・イン・ドリーム・イン・ドリーム・イン・ドリーム(以下略)という、夢の多重構造にクラクラする。設計士、偽装師、調合師という多種多様なメンバーと一致団結してミッションを遂行するという設定は、映画製作そのもののメタファーか。
なお、エディット・ピアフが歌う「Non, je ne regrette rien」が映画で重要なキーとなっているが、本作の主要キャストのひとりマリオン・コティヤールは、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』(2007)でエディット・ピアフその人を演じている(その演技でアカデミー主演女優賞を受賞)。
前作で肉体も精神も痛めつけられたバットマンが、ゴッサムシティの危機を救うため再び立ち上がる、「ダークナイト トリロジー」最終章。ノーランといえば、『プレステージ』といい『インセプション』といい、落下(縦の垂直移動)というモチーフに取り憑かれた映画作家だが、今作でも飛行機が空中分解するオープニング・シーンに、そのこだわりが見て取れる。
ヒース・レジャーのジョーカーがあまりにも強烈すぎたために見過ごされがちだが、トム・ハーディ演じる敵役ベインの存在感も素晴らしいので、忘れないであげてください。
当初はスティーブン・スピルバーグが監督する予定だったプロジェクトを、クリストファー・ノーランが引き継いで映画化。人類滅亡の危機を救うため、主人公たちが未曾有のミッションに挑む壮大なSFドラマ。ロジカル・モンスターに思われがちなノーランだが、“愛”という直球ど真ん中なテーマを描いたエモい作品でもある。アメリア博士(アン・ハサウェイ)が語る「愛には特別な意味がある」というセリフは、いつ観ても胸アツ。
本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めているのは、ノーベル物理学賞に輝いた理論物理学者キップ・ソーン。映画に登場するブラックホールの形状は、彼が導き出した方程式によるもの。
第2次世界大戦時、フランスのダンケルクで決行されたダイナモ作戦(連合軍の大規模な撤退作戦)の顛末を綴る戦争映画。20年前から構想を温めていた、クリストファー・ノーラン念願の企画。「陸地」で描かれる1週間、「海」で描かれる1日、「空」で描かれる1時間の物語が並行して描かれる。物凄い発想!
ダイナモ作戦をリサーチしているうち、当時の兵士たちが若く経験不足であったことを知り、ノーランはあえてフィン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニーなど、それほど名の知られていない若手俳優を主要キャストに選んだ。
時間が逆行した世界で「007」的なスパイ・アクションを展開させるという、ノーランしか作り得ない映画。武器商人セイターを演じたケネス・ブラナーは、ストーリーが複雑すぎるために何度もシナリオを読み直し、「クロスワードパズルを解くようなもの」と例えたという。実はタイトルの「TENET」自体が、前からも後ろからも読める回文になっていて、時間の逆行を示唆したものになっている。
本作が公開されたのは、新型コロナウイルスの影響で映画館が休業に追い込まれた2020年。新作映画がストリーミング配信に舵を切るなか、ノーランはあくまで劇場公開にこだわり続け、結果的に多くの観客を映画館に連れ戻した作品となった。
世界最強のヒットメーカー、クリストファー・ノーラン。スピルバーグから帝王の座を禅譲された男は、映画の最前線でエッジーな作品を作り続けることだろう。
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