日丸屋秀和さんによる人気漫画『ヘタリア World★Stars』を原作とする、『ミュージカル「ヘタリア~The Fantastic World~」』が4月7日に開幕!「ヘタミュ」の通称で愛される本シリーズは2015年にスタートし、2018年に一度完結。2021年にキャスト続投で新シリーズが始動し、本作はその第2弾にあたります。
今回は、主人公・イタリアを演じる長江崚行さんと演出の吉谷晃太朗さんによるスペシャル対談をお届け。トータル8年にも及ぶ「ヘタミュ」の歴史を振り返りつつ、最新作の見どころについてたっぷり語ってもらいました。
—— 2015年に「ヘタミュ」シリーズがスタートした当時、長江さんはまだ高校生でしたね。主演に抜擢されたときはどんなお気持ちでしたか?
長江:正直、どうして僕が選ばれたんだろうという驚きが大きかったですね。まだ舞台経験も少なくて、「ヘタミュ」が3作目でしたし、どこで見つけてくださったのかと思っていました。だから当時は、嬉しさよりも緊張や不安が強かった気がします。わからないことだらけの中で、がむしゃらに突っ走っていた時期ですね。でも「ヘタミュ」以降、途切れることなくいろんな舞台に出演させていただいているので、僕の役者人生を変えてくれた作品だなと思っています。
—— 長江さんは「どうして僕が選ばれたのか」とのことですが、吉谷さんから見た、長江さんのイタリアらしい部分や魅力はどんなところでしょう?
吉谷:長江くんはオーディションじゃなかったんですよ。最初に会ったのはいつだっけ?
長江:ビジュアル撮影の日です。でもそのときは軽く挨拶させてもらっただけでしたね。
吉谷:制作メンバーから「イタリア役にぴったりの子らしい」というのは聞いていたけど、そのときはまだちゃんと話していなくて。稽古場で初めて読み合わせをしたときに、長江くんが最初のセリフを発した瞬間「うわ、イタリアだ」とみんながどよめいたのは覚えていますね。
長江:確か、世界会議の最初のところですね。
吉谷:それで……彼の魅力ですよね?
長江:なんて言ってくれるんだろう(笑)。
吉谷:今改めて高校生だったと聞いて、まだそんな年齢だったんだなって驚きました。17歳?
長江:17歳でしたね。
吉谷:僕も芸事を始めたのが17歳だったので、そんなときにこんな舞台で主演ができるなんて羨ましいなと思いつつ(笑)。
長江:いやいや(笑)。
吉谷:その若さや、まだ染まっていない感じがよかったんだと思います。長江くんって、賢くてセンスもあるんですよ。だけど、完璧でもない。ちょっと抜けているところや、背伸びしているところがあって、そういう浮遊感みたいなものがイタリアに合っているなと。それに、声もいいじゃないですか。どこか牧歌的な雰囲気があって、芯が定まっていない、ふわっとした感じがする。
長江:それって、ちゃんと褒められてます(笑)?
吉谷:いいことだよ。ロシア役の山沖(勇輝)くんもそれに近いんですが、ああいう柔らかい声質は意識的に作れるものじゃないんですよ。だから、長江くんが演じることで、舞台のイタリアも愛されるキャラクターになるだろうなと思いましたね。
長江:こういう話は稽古場じゃ聞けないので、嬉しいですね!
—— 2018年に一度シリーズは完結しましたが、2021年に『ミュージカル「ヘタリア~The world is wonderful~」』で新シリーズがスタートしました。3年ぶりに戻ってきたときのお気持ちはいかがでしたか?
長江:また同じメンバーで「ヘタミュ」をやりたい気持ちはずっとあったんですが、すごくきれいな形でいったん完結を迎えたので、再開するのが怖いという思いもありました。応援してくださるみなさんの熱量も感じましたし、期待値が上がるほど、そこに立ち向かうためにかなりのパワーが必要だなって。
でも、生放送でキャスト発表をして「イタリアとして帰ってきます」と口にした瞬間、信頼している仲間たちと最高の景色を見るために、誠心誠意走り抜けるぞという覚悟が決まりました。今でも正直、怖さはあるんですよ。でもそれは、旧シリーズを越えたい、常に前作を越える公演にしたいと思っているからこそ、消えない気持ちなのかなと思います。
—— この3年で2.5次元舞台の人気や知名度がさらに高まるなど、作品を取り巻く状況も変化する中で、キャスト続投での新シリーズというのはすごいことだなと思いました。
吉谷:本当によかったですね。一度完結したときも、もっとこうしたいという熱意を持っていましたし、お客さんからの「もっと観たい」という声も届いていたので、終わってしまうのがつらかったんです。それに正直なところ、再開できても、前のシリーズとは全然違ったプロジェクトになる可能性だってあったわけで。
変わってしまった元カノみたいな気持ちで、自分だけが引きずって、どういう気持ちで接したらいいかわからない存在になったかもしれない(笑)。キャストたちにしても、舞台以外の活動をやっている人たちもいて、パフォーマーとしていろんな道を進んでいる中で、みんなが戻ってきてくれたのは奇跡的なことだと思いましたね。
—— 新シリーズが始まった際に何か意識的に変えた部分はありますか?
長江:何かあります?
吉谷:めちゃめちゃあるよ。普段はあんまり過去の作品を振り返ることはないんですが、新しいシリーズをやるにあたって、1作目から3作目を観返してみたら、なんだか色合いが暗いなと感じたんです。当時も明るく楽しい雰囲気にしたいと思っていたんですが、改めて観てみると舞台美術が暗いなと感じたので、意図的に明るくカラフルにしました。たぶん以前は、歴史というものを描く作品だから、そういった明るさが邪魔になると心配していた部分があったんです。でも、我々がこれまで作ってきた作品はそういうものに頼らなくてもいいと思えたので、明るく楽しいものを作るということに対して、もっと臆さずいこうと今は思っています。
—— センシティブな部分もある出来事にも触れる作品なので、難しさもあったんですね。
吉谷:そうなんですよ。旧シリーズでは、そのセンシティブな部分についてまだ手探りなところがあったんだと思います。自分としてはそれを飛び越えて明るいものを届けようと意識していたものの、振り返ってみるとまだちょっと怖がっていたのかなって。でも3年経って、自分もいろんな経験を重ねたからこそ、もっと振り切ってもいいと思えたんじゃないかな。
—— キャスト側からすると、何か変化を感じた部分はありますか?
長江:3年経って、丸くなった人もいれば逆に尖り出した人もいるんですが、家族のような雰囲気は変わらないですね。ただ新シリーズになってからは何と言うか……学級崩壊しかけているクラスみたいな雰囲気がありますね(笑)。
吉谷:待って、待って!(笑) どういうこと?
長江:以前よりも、キャスト一人ひとりがのびのび自由に振舞っている感じがするんですよ。だから稽古場で吉谷さんを見ていると、担任の先生みたいに思えるときがあって(笑)。
吉谷:みんなが好き勝手やっているクラスを、まとめているってこと?
長江:個人として楽しく自由にやりつつ、必要なときにはちゃんと輪になってまとまることもできるというか。それぞれに経験を積んだからこそ、自由度が増しているのかなと思います。
—— キャスト同士、そして吉谷さんへの信頼があるからこそ、みなさんが自由にやれているということでしょうか?
長江:そうですね。困ったときは先生が何とかしてくれるだろうと(笑)。
—— そんな先生からもぜひ一言お願いします。
吉谷:いや、確かに大変ですよ(笑)。でもこのシリーズはすごく独特なんですよ。例えば今作のあらすじをホームページで読んでもらっても、内容の見当がつかないじゃないですか。
長江:冒頭しかわからない(笑)。
吉谷:舞台として一本の筋はあるんですが、シーンごとにまったく別の色合いが入ったり、突発的な要素が入ったりする作品なんですよ。普通は、一本の作品として全体の流れを大事にするんですが、「ヘタミュ」はちょっと作り方が違っていて。台本に書かれた内容をただ真面目にやっていたら、原作の面白さやニュアンスが出せないと思うんです。
だから、演出の僕やキャストが遊びを入れて、それをいかにパフォーマンスとして成立させるかというセンスや工夫が試される。自由な発想でいろんなアプローチを試していくのが大事だとキャストたちが理解してくれた結果、のびのびした現場になっているのかな(笑)。
長江:本当に楽しい作品なんですよ。先日キャストで、前作のオーディオコメンタリーを録ったんですが、ストーリーはもちろん知っているのにすごく面白くて「プライベートで誰かの家に集まって観たいね」っていう話になったくらい(笑)。舞台上で常に面白いことが起きていて、ずっと楽しんで観ていられる作りになっているので、吉谷さんはやっぱりすごいなって。僕らの話、吉谷さんも聞いていましたよね?
吉谷:いやあ、こっぱずかしいなと思って聞いていましたけど(笑)。他の舞台ではなかなかできないようなことにも、チャレンジできたらいいよねとは思っているので。いろんな表情を出せるというか、作品の懐が深いのでいろんなチャレンジをさせてもらえるのが、すごく素敵だなと思うんです。だからこそ、ハジけてみせないと目指している作品性が表現できないという難しさもありますが、そこは大きなやりがいでもありますね。
—— 4月7日には最新作『ミュージカル「ヘタリア~The Fantastic World~」』が幕を開けました。U-NEXTでは大千秋楽を含む5公演の独占ライブ配信していますが、公演の見どころや、配信ならではの楽しみ方について一言お願いします。
吉谷:配信で全景が観られるのはいいですよね。僕の舞台って「全体の画角でこういうことをやりたい」と考えて作っている部分があるので、全景を観て楽しんでもらえるのはすごく嬉しいんですよ。
しかも、カメラを切り替えられるんですよね。アンサンブルの動きなどを全景で観てほしいシーンもあるけど、ずっとそれだと役者の表情がわかりませんから。そのシステムだと作品を何倍も楽しめると思うので、好きに切り替えつつ出来れば2回以上は観てほしいですね。
長江:すごい時代になったんですね……(笑)。でも、劇場で観られないものを楽しめるのが、配信のいいところですよね。
吉谷:僕なんて、本番は後ろのほうで観ていますから。遠くからではわからない役者の表情や汗なんかも、スイッチング映像で楽しんでもらえたら。
長江:吉谷さんが配信の話をしてくださったので、僕は今回の内容について話したいんですが、ラスト15分を特に楽しみにしていてください。稽古場で吉谷さんがそのシーンの説明をしてくれたとき、「マジか、すごい!」って衝撃を受けたんですよ。詳しくは観てのお楽しみなんですが、そのシーンのわくわくや興奮は絶対に配信でも伝わるはずです。
観たお客様はきっと大きなパワーを受け取ってくれると思いますし、僕らキャストにとってもこの景色を実現することが公演を走り切るモチベーションになると思っています。ぜひ劇場や、配信で楽しんでください。
長江崚行
1998年8月26日生まれ 大阪府出身。
2007年にavexのタレントオーディションに合格し、9歳より芸能活動を始める。2009年から2012年までの4年間、NHK「天才てれびくんMAX / 大!天才てれびくん」にレギュラー出演。その後、ダンス&ボーカルグループの活動でダンスと歌唱の実力を身につけ、2015年にはミュージカル「ヘタリア」に17歳ながら主演に抜擢。その後もシリーズ全てで主演を務めている。
吉谷晃太朗
高校在学中より、劇団ひまわり大阪俳優養成所に入所。その後、男性演劇ユニット「Axle(アクサル)」脚本家、演出家、俳優として参加。以降、ミュージカル『ヘタリア』やミュージカル「スタミュ」シリーズなど、数々の漫画やアニメ原作の作品を舞台化している。
【配信公演】
①2023年4月9日(日)12:30 大阪公演
②2023年4月9日(日)17:30 大阪公演
③2023年4月10日(月)13:00 大阪公演<大阪千秋楽>
④2023年4月23日(日)11:30 東京公演
⑤2023年4月23日(日)16:00 東京公演<大千秋楽>
【回替わり特典映像】
①4/9 大阪公演 昼
イタリア役:長江崚行、ドイツ役:上田悠介
日本役:植田圭輔、アメリカ役:磯貝龍乎
イギリス役:廣瀬大介によるコメント映像
②4/9 大阪公演 夜
フランス役:寿里、中国役:杉江大志
スペイン役:山田ジェームス武、プロイセン役:高本学
オランダ役:磯野亨によるコメント映像
③4/10 大阪公演 昼(大阪千秋楽)
稽古場ぷちメイキング映像
④4/23 東京公演 昼
キャストぷち座談会映像
⑤4/23 東京公演 夜(大千秋楽)
キャスト“生”コメント映像
(当日リアルタイムで舞台裏からお届けいたします)
【配信形態】
マルチアングル配信
CH1:スイッチング映像
CH2:全景映像
※スイッチング映像と全景映像の2つの画面をご自身で切り替えながら視聴可能
【視聴料】
<ライブ配信+見逃し配信付き>
各3,700円(税込)
<5公演通しチケット(通しチケット特典ブロマイドセット付き)>
14,800円(税込)
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