演劇「ハイキュー!!」から劇団「ハイキュー!!」へ!演出・須賀健太とキャスト4名が舞台への思いや感触を語る
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演劇「ハイキュー!!」から劇団「ハイキュー!!」へ!演出・須賀健太とキャスト4名が舞台への思いや感触を語る

「週刊少年ジャンプ」で連載された人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」。2.5次元舞台としても、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」としてシリーズ化されましたが、この度ついに新カンパニーが発足!日向翔陽役を演じた須賀健太さんが演出に初挑戦したこともあって大きな話題となりました。そんな劇団「ハイキュー!!」に、公演が後半戦へと差し掛かるタイミングでインタビューを敢行。加藤憲史郎さん、若林星弥さん、熊沢学さん、藤林泰也さんに須賀さんを加えた計5人に貴重なお話を聞くことができました。

若手中心の舞台、稽古~序盤戦はみな緊張でガチガチに

━━稽古から公演スタートまでを振り返り、気持ちに変化はありましたか?

加藤:稽古中に徐々に高まってきた団結感、一体感のようなものが、お客さまが入ったことでより固まった気がします。

若林:お客さまが入ると見られているという意識が強くなり、一挙手一投足を見せられるものにしなければという意識が高まりました。

熊沢:お客さまが入って初めて舞台は完成するんだと改めて思いました。

藤林:疲れより楽しさが勝つ、そんな舞台だと感じています。

須賀:いい意味で、稽古は手を抜いていたんじゃないかと感じてしまうほど、本番には躍動感があって。本番のマジックが存在し、そこにしかないエネルギーがあるのを改めて感じました。

━━舞台が完成した今の状態でオーディションを振り返ると、懐かしい気持ちになるのではないでしょうか。

須賀:人がこんなに緊張しているのを見たことがないって感じるくらい緊張してたよね?

加藤:オーディションでは何も考えられなかったし、セリフも噛んだし、どんな感じだったのかすら思い出せません。お腹を壊したことしか記憶になくて……(笑)。

若林:憲(加藤憲史郎)が日向役で胸ぐらを掴むというシーンをやったんですけど……。僕が急遽憲の胸ぐらをガッと掴んでしまって。あまりにもビックリしていたので、掴んだ後に「すみません」って思わず謝りました。そしたら憲も……。

加藤:「僕も驚きすぎて、すみません」みたいな感じで。

須賀:2人でペコペコしてたよね。

若林:謎にペコペコした状態がしばらく続きました。

熊沢:僕は、初めて見る生の健太さんに緊張していて。緊張しすぎておかしくなったのか、逆にガン見してやろうという気持ちになってずっと見ていました。健太さんのリアクションをずっと気にしていて、何かメモを書き込むたびに「俺のことかな?」って想像したり(笑)。健太さんを気にしていたことしか覚えていません。

藤林:僕は事務所の後輩の星弥からオーディションがあると聞いていて。前日の夜遅くまで練習に付き合いました。

須賀:いいエピソードじゃん!

藤林:電話で2、3時間読み合わせする日もあって。

若林:オーディション前も、稽古が始まる前も藤林くんと電話で稽古したり。事務所の空きスペースを借りて読み合わせに付き合ってもらいました。

須賀:美しい世界線の及川みたい(笑)。影山に優しい及川。

若林:あったかもしれない、もう一つの世界みたいな感じですね。

藤林:初舞台だったので、オーディションからガッチガチ。少しでもフォローできればと思っていました。些細なことだけど、できることはという気持ちで。

若林:お世話になりっぱなしです。ありがとうございました。

須賀:僕は受ける側でのオーディションは嫌いなんです。見られるのって嫌だからみんなの気持ちもわかります。でも、わかるからこそ全力で選ばないといけないと思っていたし、選ぶ側は初めての経験で、当たり前のことだけど、役者一人一人が持ってくるものはこんなに違うものかという驚きがありました。同時に選ぶ側、スタッフのみなさんの見抜く目は本当にすごいと思いました。メイクをして動く姿まで想像して選んでいて。すごく勉強になりました。

劇団「ハイキュー!!」_加藤憲史郎さん

━━実際にお客さまの前に立った時の気持ち、感じたことを教えてください。

加藤:僕に向けられる目の数が増えるので、すごくプレッシャーにもなるし緊張もするけど、より多くの人に観てもらいたいという気持ちに繋がっていきました。お客さまは必要不可欠な存在だと実感しました。

若林:ダイレクトに反応が伝わってくるので、『ハイキュー!!』の世界を届けようという気持ちがより強くなりました。緊張したけど、いい緊張感、楽しい緊張だったと思います。

熊沢:お客さまが楽しんでくれれば僕も楽しいし、僕が楽しければお客さまも楽しくなる。言い方が合っているのかは分からないけれど、お客さまと一緒に切磋琢磨しているような感覚になりました。歩き方、呼吸、動きの一つ一つ、細かいところまで、稽古中以上に気を配るようになりました。

藤林:今回の舞台では及川役以外にも兼役もしているんですが、その時にはお客さまが楽しんでいる様子を見られる場所に立つことができ、前のめりになって舞台を観ている人を見つけると、ボールを渡すだけの役でも自然とニコニコしちゃって。楽しみながら演じている自分に気づきました。

須賀:リアクションでやってきたことが正解だとわかるから、自信にもつながります。それを感じているキャストを見て「よかったな」って思ったりもします。親目線のような感じもあるし、「観たかった『ハイキュー!!』」というコメントを見ると、僕の好きな『ハイキュー!!』とズレがなくてよかったと純粋に思えます。

劇団「ハイキュー!!」_若林星弥さん

配信を観て感じてほしい、役作りへの課題やこだわり

━━今回の劇団「ハイキュー!!」への参加にあたって、自分に課していた課題はありましたか?その課題はクリアできたのかどうかも含めて教えてください。

藤林:僕は以前の及川役の映像を観ないと決めていました。理由は自分の及川を作りたいから。悩んだ時は「どんな風に演じていたのかな?」って観たい気持ちにもなるけれど(笑)、そんな時は漫画やアニメを参考にしてきました。公演が終わって、自分が作る及川を届けることができたら、ゆっくり以前の舞台での及川役を堪能しようと思います。

加藤:日向にならなきゃと思って、日向の真似をしました。日向の好きな卵かけご飯を食べたり、バレーボールを買って一人で練習したり。すでに役との共通点でもあるのですが、お腹を下すという経験も(笑)。日向がどんな気持ちで物事を受け止めるのかを考えながらの生活を意識していました。

━━どんな効果がありましたか?

加藤:一人で練習する意味を考えるきかっけになったし、何より卵かけご飯はおいしいことが分かりました(笑)。

藤林:素晴らしい気づき!

熊沢:僕はとにかく声を出すことを心がけていました。

須賀:稽古の時から声出てたよね。

熊沢:稽古場に入る時は誰よりも元気よく、大きな声で声を出していました。結果、喉が強くなりました!

須賀:一番いい効果が出たね。

熊沢:声が出しやすくなったので、やってよかったです。

若林:僕は、影山という役の魅力を潰さないことを課題にしていました。僕自身、作品そのものが大好きだから、その魅力をお客さまに伝えたいという気持ちがとても強かったので。

━━観客に伝わっている感じはありましたか?

若林:伝わっていると嬉しいなと思っています。そのために今の自分ができることは全てやっています。

須賀:キャストには「今、どんな気持ちで動いているのか」を訊くようにしていました。役者だからわかることってあると思うんです。役のことを考えるのは、役者が一番やらなきゃいけないこと。僕が演じている時に(演出家の)ウォーリーさんから言われたのは「役のことは自分たちで考えて。それ以外のことは全部僕たちがやるから」ということ。極論、何も演出をしなくても勝手に彼らが動き出してくれれば物語は成立すると思っていたので、どういう気持ちで動いているのかを尋ね、そういう気持ちならこう動いた方がいいというアドバイスするようにしていました。

━━役者だからこそわかる演出という印象です。

加藤:健太さんに「今、どういう気持ちで動いた?」と訊かれるのはちょっと怖かったけれど……。

須賀:アハハハハ。

加藤:僕がそう言われることが一番多かったので。でも、本当に何も気づかずに、無意識に動いてしまうこともあったので、立ち止まって理由を考える場を与えてくれたことはありがたかったです。

須賀:実りになってよかったです(笑)。

━━本作はU-NEXTでは、全景映像、スイッチング映像が配信されます。配信だからこそ楽しめる、「実はこんなことやっていました」というこだわりの動きなどがあれば教えてください。

須賀:映像だからこそわかるってやつか……、細かいところまで観られるよ(笑)。

藤林:階段から降りる時にはできるかぎり階段を見ないところ、かな。

須賀:素晴らしい!

藤林:階段を見ながら動くと姿勢も悪くなってしまうし、まっすぐに伝わらないことも出てきます。及川はとにかくかっこいいので、極論(足元は)見なくてもいいくらいの気持ちで、ばみりすら意識しないように動いていました。

熊沢:森行成は日に日に声が出ています。

須賀:森行成には毎日ダメ出しがあります。

藤林:森行成の言い方って日替わりだよね。

須賀:そう!いつだったかな、勝手にスターティングオーダーまでやってたから、さすがにガン詰めしました(笑)。何を勝手に変えているんだと。僕の(演出した)森行成を返せって。

熊沢:思っていた以上に森行成の存在が大事なことに気づきました(笑)。

加藤:観て欲しいのは2年生が素晴らしいってところです。僕はいつも成田(一仁)役の柊斗くんを見ています。大好きなんです。

須賀:アハハハ。純粋に好きだから、配信で観て欲しいのか、それもいいね!

加藤:場面転換の時でもめっちゃ姿勢良く待っていたりして……。観れば観るほど成田を好きになると思います。

若林:僕も柊斗くん繋がりだけど……。客席まで行ってジャンプサーブをする時に、成田からボールをもらってサーブを打つシーンがあります。そこで僕は「あざっす」って言いながらボールをもらっています。

藤林:それ、マイクにも音声入ってないと思う。

加藤:気づいたことない!

若林:口の動きで「あざっす!」って言っているところを気づいてほしいです。多分、今のところ近くのお客さまにしか聞こえていないと思うので……。

劇団「ハイキュー!!」_藤林泰也さん

キャスト陣も思わず目で追ってしまう、心強い須賀の存在感

━━須賀さんの演出の感想も伺いたいです。

加藤:役者全員のことを理解してくださるのがすごくありがたいです。戸惑っているとすぐに解決してくれるし。

熊沢:本当にすごいよね。

加藤:僕の語彙力がないから、すごいとしか言えないけれど、本当にすごいんです!

熊沢:僕の中では健太さんの存在感は特別なものになっています。例えば稽古場で笑ってくれたらすごく嬉しくて。

藤林:めっちゃ健太さんの反応を見てるもんね。

須賀:割とみんな僕の反応見るよね、芝居の時。

熊沢:オートマで追っちゃうんですよ。目に行くな、見るなと伝えられても勝手に見ちゃうから僕の目が(笑)。

藤林:自分のシーンが終わった瞬間に健太さんの方を見てたもんね。

熊沢:この人には何がウケるんだろうって常に研究していたから……。

須賀:俺に向けてやってどーすんの!

劇団「ハイキュー!!」_熊沢学さん

━━須賀さんは「ハイキュー!!」の最大のファンでもあるから、反応を見るのは間違いないかもしれないですよね。

藤林:健太さん、笑い声が大きいんです。

須賀:うるさいくらいだよね。

藤林:でも、あれはあえてですよね?

須賀:そうそう。聞こえたらいいなと思ってやってるところもある。

熊沢:そうだったんですか?

藤林:そりゃそうでしょ。気持ちを盛り上げてくれるというか。

須賀:もちろん、面白いから笑っているというのが大前提だけどね。

藤林:ゲネの時の声もデカかった(笑)。

須賀:うるさかったよね。でも、ゲネって初めて本番と同じ場所でやるわけじゃない? 稽古場でやってきたことが、本当に正しいのかどうか疑ってしまう瞬間だから、リアクションってすごく大事。大丈夫だよっていう意味も込めての笑い声だったんだけどね。

藤林:今のコメントこそが役者さんだなって思います。役者だからわかること、という意味で僕が言いたかったことです。このコメントを(僕のところで)そのまま使ってください。

須賀:お前の手柄みたいになるじゃん!

若林:でも本当に。そばにいてくれる感じが心強かったです。

加藤:演出で健太さんが実際に演じて説明してくれるのがすごく嬉しくて。初めて見た時は「日向だ!」って感動しちゃって。

須賀:星弥なんて謎に影山にまで感動してたよね。俺、影山役やったことないのに「影山だ!」って(笑)。

若林:いやー、芝居が上手いから、影山役さえも本人に見えちゃって。健太さんが演じながら指導してくれると、「すげーっ!」ってファンの気持ちに戻っちゃいます。

須賀:まあ、そう言ってもらえるのは嬉しいかな。とりあえず、ありがとう(笑)。

━━本舞台に参加したからこそわかる、劇団「ハイキュー!!」に必要な要素はありますか?

藤林:キャラクターに対する愛です。自分が演じるキャラクターを一番愛して知ることは本当に大事だと思っています。

熊沢:足の筋肉です。とにかく体を使う舞台です。お客さまを楽しませるためにベストな状態の筋肉、特に足の筋肉を中心に毎日のケアを考えていました。

若林:根性論になっちゃうけれど、やっぱり根性かな。覚えなきゃいけないことはたくさんあるし、動きもセリフもダンスもあるから、毎日やることがどんどん増えていきます。中途半端な気持ちでは乗り越えられない舞台だから、根性と覚悟は大事だと実感しました。

加藤:パンクしそうになったこともあるけれど、諦めたらそこで終わり。根性とやる気がなかったらやっぱりダメだなと僕自身も思いました。かなり気合を入れて挑んだつもりだったけど、思っていた以上に根性もやる気も必要だと実感しています。やる気と愛と元気がないと、絶対走りきれないと断言できます。

藤林:メインの2人は根性できましたね(笑)。

須賀:素晴らしいことだと思います。すごく大事なことだから。憲史郎はパンクしそうにもなったって言ってたけれど、実際にパンクすることはなかったよね。しそうでちゃんと止まってた。同じ役を演じた僕から演出されるという立場は特別大変だったと思うけど、かつて自分が演じた役を手取り足取り共有して託すことはすごく楽しいことだったし、憲史郎にしか見えていないものを僕も感じとることができて、すごく素敵な経験をさせてもらったと思っています。嬉しい時もきつい時もわかるからこそ、口を出す裁量には気をつけていたつもり。憲史郎が思う日向をゼロにしないように心がけていました。

━━須賀さんが初演出で得たもの、鍛えられたことを教えてください。

須賀:想像力です。準備期間は1年半くらいあって。その間に練ってきたものが一瞬で崩れる瞬間もあったりします。再構築しなきゃいけないこともあったけれど、マイナスの感情はなかったです。考えていたものと違う形で役者が一瞬で塗り替えてくれる瞬間は、喜びでもあったので、いろいろな方向から舞台の「ハイキュー!!」を考えることができたのは、本当に貴重で素晴らしい体験でした。

劇団「ハイキュー!!」_須賀健太さん
配信開始前、または配信終了しています。
配信開始前、または配信終了しています。
配信開始前、または配信終了しています。
配信開始前、または配信終了しています。
劇団「ハイキュー!!」_4S

PROFILE

加藤憲史郎
7月19日生まれ、神奈川県出身。劇団ひまわり所属。俳優として舞台やドラマ、CMなど多方面で活躍中。主な出演作は、大河ドラマ『西郷どん』村田新八(幼少期)役、舞台『るろうに剣心』明神弥彦役など。実兄は同じく俳優の加藤清史郎。

若林星弥
12月3日生まれ、大阪府出身。TRUSTAR所属。『恋する♥週末ホームステイ』出演で注目を集め、その後も俳優として『ホスト相続しちゃいました』SEIYA役、『ケーキの切れない非行少年たち』鈴木淳役など務める。本公演が舞台初挑戦となる。

熊沢学
12月21日生まれ、東京都出身。ジャパン・ミュージックエンターテインメント所属。舞台を中心に活動し、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン橘桔平役、ちびまる子ちゃん THE STAGE『はいすくーるでいず』杉山さとし役などを務める。

藤林泰也
2月20日生まれ、京都府出身。TRUSTAR所属。『仮面ライダーガッチャード』黒鋼スパナ役、2.5次元ダンスライブ「VAZZROCK STAGE」久慈川悠人役など、俳優としてマルチに活躍。7人組アーティストグループ・S/TEAM BLOODの一員としても活動中。

須賀健太
10月19日生まれ、東京都出身。ホリプロ所属。俳優として多数のドラマや映画、舞台などに出演し、本舞台の前身となるハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」では日向翔陽役を担当。今回が演出初挑戦となる。

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  • 劇団「ハイキュー!!」_加藤憲史郎さん
  • 劇団「ハイキュー!!」_若林星弥さん
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