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- 森田幸成熱烈ボクシング応援団
12月17日、神戸ポートピアホテル開催された『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.9』は、日本王者・原優奈、WBOアジアパシフィック王者・山中竜也、日本王者・大内淳雅がそれぞれの初防衛戦を迎える三大タイトルマッチ。
獲得することより、守ることの方が難しいと言われるチャンピオンの座。特に初防衛戦は魔物が存在する鬼門。今回は、まさかのKO決着が連続した波乱の大会となった!
本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!
メインイベント 第7試合:10R/日本スーパーフェザー級タイトルマッチ
〇原優奈(真正)vs ×向山太尊(ハッピーBOX)1回TKO
原優奈は、豊富な手数と多彩なパンチで、打ち合いを好む好戦的なボクサーファイター。しかし、実戦から培った試合運びの上手さを合わせ持ち、心はホットに頭はクールに戦う試合巧者。今年4月に逆転KO勝利で手にした日本タイトルの初防衛戦に臨む。
挑戦者の向山太尊は、ノーガードで左右フックを振り回し、倒すか倒されるかの豪快なファイトスタイルが魅力的なサウスポー。極端な攻撃姿勢が仇となり、ここ2試合はTKOで連敗中だが、下剋上のチャンスを手に入れた。
KO必至の一戦は、わずか69秒で決着する!原は、サウスポーの向山に対しファーストインパクトのジャブ、右ストレートをクリーンヒット!一撃で大きくグラつかせると追い打ちの右でダウンを奪う。立ち上がった向山だが、反撃の糸口を見つけられないまま、再び右ストレートを被弾、レフェリーストップと同時に、再び倒れ込んだ。
今回、向山太尊選手の下剋上は達成されなかったが、原優奈選手は、サウスポーでパンチがある向山選手が、自分にとって一番危険な相手だったから挑戦を受けることにした、と語った。決して、勝てる相手だから戦ったわけではないという、リスペクトに溢れるコメントにスポーツマンシップを感じた!向山選手にとって大きな経験となったに違いない。
そして、圧倒的勝利で存在感を示した原優奈選手のボクシング、負けん気の強いキャラクターから目が離せない!
セミファイナル 第6試合:10R/WBOアジアパシフィック ライトフライ級タイトルマッチ
×山中竜也(真正)vs 〇ジェイソン・バイソン(比)2回TKO
元WBO世界ミニマム級王者、山中竜也の階級をライトフライ級に上げ獲得した、WBOアジアパシフィックタイトルの初防衛戦。再び世界タイトルに挑戦するため、内容も求められる一戦。対戦者のジェイソン・バイソンは、変則的な軌道とタイミングで放つ左右クロスが特徴的なフィリピンのファイターで、回転力あふれる手数が武器。
試合は、バイソンが積極的にジャブ、ワンツーで前に出る展開。しかし、山中は冷静に相手のパンチを空転させ軽いジャブを的確に当て応戦。ヒリヒリした駆け引きを繰り広げる。
そして2回、山中のジャブが増え始めリズムが出てきた瞬間、その山中のジャブに合わせた、バイソンの放った右アッパーがクリーンヒット!山中がリングに沈む。カウント9で何とか立ち上がるも、それで精一杯。リングでふらつき、レフェリーが試合を止めた。
支えがなければ立っていられないほど、深いダメージを負った山中竜也選手、まさかの王座陥落に会場の空気は凍り付いた。日本国内だけでも層の厚いライトフライ級戦線、一歩、二歩、後退したかもしれないが、山中竜也選手の巻き返しを信じている。
新チャンピオンのジェイソン・バイソン選手、パンチの回転力より、強さ重さでのKO勝利。ボクシングに絶対はない事を思い出させてくれた。
第5試合:10R/日本ライトフライ級タイトルマッチ
×大内淳雅(姫路木下)vs 〇川満俊輝(三迫)2回TKO
今年8月、5度目の挑戦で念願の日本タイトルを獲得した不屈の男、大内淳雅。今回は、そのタイトルの初防衛戦となる。挑戦者は、日本ライトフライ級1位のトップコンテンダーで、機関車のように突進しバッタバッタとなぎ倒すパワフルなファイター、川満俊輝。
試合開始ゴング直前のフェイスオフ、お互いの額をくっつけての睨み合いに、両者一歩も引かない、気合いと覚悟にボルテージが高まる!そしてゴングが鳴り1回、やはり前に出る川満は、右ストレートをボディに伸ばし隙を伺う。大内にしてみれば、川満が出てくることは織り込み済み。ガードを固め、ジャブに右ストレートを合わせ弾き返す。初回とはいえ、川満の先制攻撃をいなした大内が優勢に見えた。そして2回、ゴングと同時にダッシュでコーナーを飛び出して来る川満!挑戦者としてのアグレッシブな姿勢にあっぱれ!川満はさらにプレッシャーを強め、初回から出していた右ボディストレートで、大内の意識を下に持たせたところで、右のクロスが炸裂!大内は膝から崩れ落ち両手をつく。何とか立ち上がるが、足にダメージがきていることは明らか。再開後、川満の連打に反撃できずレフェリーストップ。大内は初防衛に失敗し、川満が新チャンピオンとなった。
悲願のタイトル奪取から4カ月、大内淳雅選手の“夢の続き”は、ひとまずお預けとなった。そして川満俊輝選手、勝利者インタビューで見せた、激しいボクシングスタイルとは正反対の、ゆっくりとした素朴な語り口にファンが増えることは間違いない!
第4試合:8R/スーパーフライ級
×スパーポン・ハンビチャチャイ(タイ)vs 〇田井宜広(RST)2回TKO
3度目の来日になるスパーポン・ハンビチャチャイは、2022年8月に矢代博斗、2023年3月には田中湧也と、共にサウスポーと対戦するがTKO負け。対戦する田井宜広は、およそアマチュア出身とは思えない、まるでナジーム・ハメドのような変則的なボクシング。ノーガードで自由にスイッチを繰り返し、想定外のパンチでKO勝利を連発するボクサーファイター。試合は、田井の独壇場となる!サウスポーかと思いきや、歩きながらスタンスが左右入れ替わり、いつの間にか右構えに。もはや、オーソドックス、サウスポーの概念が通用しない独創性。サウスポー時の右フック、オーソドックスでの左ボディは特に強く、ダメージを与える。ほとんどノーガードなのでヒヤヒヤするが、上体を柔らかく使い、スウェイバック、ウィービング、ヘッドスリップ、スリッピングアウェイを駆使し、スパーポンの攻撃を空回りさせる。試合が決まったのは2回、田井は、打ち合いの中で右カウンターでグラつかせると、がら空きになったボディに左を叩き込み、スパーポンから崩れ落ちるようなダウンを奪う。再開したものの、田井の集中打にレフェリーが割って入り試合終了!田井が圧巻のTKO勝利を収めた。
かつてナジーム・ハメドが全盛期だった20数年前、ハメドのような変則スタイルを模倣する選手も現れたが、成功した選手はほとんどいなかった。このボクシングは、サーカスをするような身体能力が全てで、教わって出来るものではない。今後も、田井宜広選手の挑戦を見届けていきたい!
第3試合:8R/スーパーフライ級
〇長嶺竜久(平仲)vs ×東泰誠(TOUGH BOY)3-0判定
長嶺竜久は、これまで7勝のうち6つがKO勝利という高い決定力が魅力。しかし、力任せになぎ倒すファイターではなく、スピードとタイミングで綺麗に倒すKOアーティスト。対するベテラン、東泰誠はアウトボクシング主体のサウスポー。オーソドックス相手に左ストレートを打ち込みポイントを積み重ねてきた。
注目の試合は、長嶺の意表を突く作戦で動き出す。お互いに攻めあぐねていた2回、長嶺がいつものオーソドックススタイルからサウスポーにスイッチすると、左ストレートを当て始める。本来、東がやりたい攻撃を長嶺が行い先手を取る。スタンスの右と左が変わると、それだけでパンチの出どころ、軌道が変わり、まるでボクシングが変わってしまうもの。長嶺は自分がサウスポーになることで、懐深い東との距離を縮め、ストレートパンチをクリーンヒット。もちろん慣れないサウスポーでは、自分も被弾するリスクはあるが、長嶺の表情からは、そのスリルを楽しんでいる喜びの色が溢れていた。東も果敢に手数で応戦するが、サウスポーはサウスポーが苦手なもので、ペースを変えられず、長嶺が有効打を重ねる。
そして6回、東がサウスポーの攻撃に慣れてきたところで、長嶺が再びスイッチ!本来のオーソドックスに戻すと、得意の強い右ストレート、右フックがヒット。7回、長嶺は、攻めあぐむ東に渾身の右ストレートを打ち抜きダウンを奪うと、その後も攻勢を貫き試合終了。3-0判定で長嶺が勝利した。
まずは、長嶺竜久選手陣営のファイトプランに驚いた!サウスポーの東泰誠選手の左ストレート対策としてのスイッチ。これは、東泰誠選手を最大限リスペクトしての作戦だったに違いない。序盤、中盤、終盤と流れが変わり、ドラマがあった興味深い試合だった!
第2試合:4R/50.0㎏契約(ライトフライ級超)
×嶋田来生輝(JM加古川)vs 〇前田凪貴(RST)0-3判定
嶋田来生輝は、デビューから4戦勝ち星なしも、ここ3試合で2勝1敗と上昇基調。パンチのスピードとキレ、手数のある攻撃型。一方、前田凪貴は中間距離で左ストレートを打ち込むサウスポー。戦う距離感が違う両者の対戦は、前田のジャブ、左ストレートが際だった。
嶋田は、序盤から接近戦に持ち込もうと果敢にアタックを繰り返すが、前田のジャブが邪魔となり距離を詰められない。2回には前田の左ストレートを被弾し、弾き飛ばされ膝が折れかけるが、強い足腰で踏ん張り立て直す。これはハードなトレーニングを積んでいることの証。前田も簡単な相手ではないことを感じたのでは。左ストレートが有効な前田は、正面からくる嶋田の突進を右回りで回避、打たせずに打つボクシングを実践するが、最終4回は、嶋田のプレッシャーと連打に押し込まれた。判定は0-3で前田凪貴の勝利!
中間距離をキープし続けた前田凪貴選手は技巧派として新人王を目指して欲しい。
嶋田来生輝選手は連勝ならず、しかしガッツとタフネスは証明した。
第1試合:4R/56.4㎏契約(スーパーバンタム級超)
×千本耕也(畠山)vs 〇山中勇樹(真正)0-2判定
今年9月のデビュー戦では、ボディを叩きあう消耗戦を判定で落とした千本耕也。そして、これがデビュー戦の山中勇樹は、元WBO世界ミニマム級王者で、現WBOアジアパシフィックライトフライ級王者の山中竜也の実弟。くしくも兄と同じ日、同じリングでのデビューとなり、初勝利をかけて両者が対決する。
サウスポーの山中はテンポの良いボクシングで、左ストレートを中心に、返しの右フック、右アッパーをクリーンヒットさせ序盤のペースを掴む。しかし千本は、手数とプレッシャーで食い下がり左右フックを返して反撃、どうやらスタミナを強化してきた様子。最終4回まで、お互いに手数の多い接戦となり勝敗は判定へ委ねられた。
結果は、ジャッジ1名が引き分けの2-0で、山中勇樹がデビュー戦を勝利で飾った。別のジャッジは、フルマークで山中勇樹選手を支持する採点もあったが、3回、4回は千本耕也選手の攻勢が光っていた試合。自身の試合の直前に会場で見守っていた兄、山中竜也選手も自分の事以上にヒヤヒヤしていたに違いない。
今回は、第4試合からメインの第7試合までKOが連続する怒涛の展開!しかも、第1、第2ラウンドでのスピード決着!この会場で巻き起こった、“流れ”に乗った挑戦者が下剋上を演じ、歓声とどよめきが渦巻いた。つくづく、初防衛の難しさとレベルの高さを実感させられた神戸大会。何が起こるかわからない、ボクシングの醍醐味を堪能できた!
U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.9』を2024年1月16日まで配信中!
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