韓国はもちろん、日本にもファンが多く、昨今はより一層ドラマや映画に引っ張りだこのカン・ハヌル。素朴な田舎の好青年から冷ややかな都会の青年まで、さまざまなキャラクターで観る者を映像世界に没入させる俳優のひとりだ。
2025年はNetflixの主演ドラマ『隠し味にはロマンス』で、最上級の味を追い求めるレシピハンターである御曹司ハン・ボム役を務めたカン・ハヌル。2019年の代表作『椿の花咲く頃』からドラマでは6年ぶりの本格ラブコメディとあって、ヒロインのモ・ヨンジュ(コ・ミンシ)との胸キュンシーンにドキドキさせられた女性は多いはずだ。
料理の師匠が日本人だったこともあり、北海道での日本ロケが行われ、カン・ハヌル、コ・ミンシ、ユ・ヨンソクで札幌の二条市場を散策したり、車中で「有名な店のたこ焼きだ」とたこ焼きを差し出すカン・ハヌルがなんだか少年のようだったり。横柄な御曹司が頑固なシェフと出会い、距離が近づいておたがいのバリアが解けていくさまは視聴者の心に刺さり、Netflix世界ランキングでも上位にランクインした。
そんなカン・ハヌルの主演作はもちろんのこと、重要なポジションとして出演している作品まで、あらためて注目したいドラマを紹介していこう。
豪華なキャストが集結したロマンチックなファンタジー時代劇。あらすじは、湖に落ちた子どもを助けようとして溺れてしまった化粧品販売員のコ・ハジン(IU)が、目覚めるとヘ・スという女性に魂が乗り移り、高麗時代にタイムスリップしていた。高麗の初代皇帝の宮廷で暮らすことになったハジンは、美麗な8人の皇子たちに出会う。
ある時、文武両道の知性派である第8皇子ワン・ウク(カン・ハヌル)は、刺客に狙われたヘ・スを助ける。ヘ・スは優しくて紳士的なウクに惹かれていき、彼もまた彼女に特別な想いを抱くようになっていく。ヘ・スは第4皇子ワン・ソ(イ・ジュンギ)や第10皇子ワン・ウン(ベクヒョン/EXO)、第13皇子ペガことワン・ウク(ナム・ジュヒョク)ほか、個性あふれる8人の皇子と王宮生活を送るのだった。
見どころは、とにかく優しいウクのスウィートな眼差しと、ヘ・スとのセンチメンタルな恋だろう。カン・ハヌルの凛々しい韓服姿に見入ってしまう女性は少なくないはずだが、ヒロインのIUがトラブルに遭う度に手をさしのべ、時には彼女のことをそっと陰ながら見守るなど、くっつきそうでくっつかない展開にムズムズすることもあるかもしれない。
もっともウクは、病弱だが聡明な妻がいる身。さらに王宮とあって、数々のしきたりや政略結婚があるなど、自分の想いだけで自由に動くことができない場所であり、時代である。ヘ・スは徐々に、冷徹に見えていたが非常に孤独で一途なソと心を通わせ始めて、後の第4代皇帝光宗だと知ることとなる。そんな激動の運命にのみこまれていく彼らの姿に見入ってしまうはずだ。カン・ハヌルは、本作でSBS演技大賞のファンタジードラマ部門の男性優秀演技賞を受賞している。
シングルマザーと熱血警察官の恋模様が綴られるヒューマンドラマ。住民全員が知り合いの小さな田舎町オンサンで、「カメリア」というスナックを経営するシングルマザーのオ・ドンベク(コン・ヒョジン)。美しいドンベクは町の男性たちに人気があるものの、未婚のまま幼い息子を育てていることをよく思わない町の女性たちは、ワケありの彼女に冷たくあたる。
一方、ソウルで警察官になったが問題を起こして左遷され、故郷オンサンに赴任したファン・ヨンシク(カン・ハヌル)。赴任早々に警察署で「知的で気品あふれる女性が僕の理想」と豪語し、町の書店で遭遇したドンベクに一目惚れ。何事にも実直すぎるヨンシクは、ドンベクへの好意を隠そうとしない。だが新しい恋にはまったく興味のないドンベクは、小さな田舎町ではどんなことでもすぐ噂になってしまうこともあって困惑するも、次第にふたりの距離は近くなっていく。
「恋の駆け引きとか計算は苦手だ」と堂々と言い放つヨンシクは、恋愛に不器用ながら、恋する気持ちを素直に表現。普段カン・ハヌルは“美談製造機”と韓国で言われているように、本人と同じくいい人のヨンシク。ピュアで誠実なキャラクターだからこそ、落ち込むドンベクに「あなたは誰よりも強くてすばらしい人です」と言葉を尽くして励まし、「すごく好きだ」と愛を届ける。恋愛といえば駆け引きやらなんやらで小難しく考えがちなところ、そういった複雑さをすっ飛ばして、どストレートに表現するヨンシクの言動にグッときてしまう。
本作はロマコメに加えて、未解決連続殺人事件が絡んでくるため、サスペンスの要素もあって多角的に楽しめるストーリー。本作でカン・ハヌルは、KBS演技大賞の男子最優秀賞、ネチズン賞、コン・ヒョジンとのベストカップル賞、そのうえ百想芸術大賞のTV部門で男性最優秀演技賞を受賞し、代表作となった。ちなみにバイプレイヤーとして名高いオ・ジョンセは本作でも存在感を発揮している。以前別の作品でインタビューした際、彼に職人的な印象を持ったのだが、本作で夫婦役を演じた同じく職人気質のヨム・ヘランとベストカップル賞を受賞したのも面白い。
さまざまな事情を抱えた男女が、大みそかに遭遇する奇跡を描く群像劇。クリスマスと新年を祝うホリデームードにあふれた高級ホテル「エムロス」に、5年連続で公務員試験に落ち、恋人にもフラれた就活生ジェヨン(カン・ハヌル)が宿泊する。そして15年間も男友達へ片思いをしているホテルのマネジャー・ソジン(ハン・ジミン)や、すべての数字を偶数で終わらせたい強迫症を持つCEOヨンジン(イ・ドンウク)、ミュージカル女優を目指す新米ハウスキーパー・イヨン(ウォン・ジナ)、モーニングコール担当スヨン(ユナ/少女時代)らが働いている。
それぞれに個人的な事情を持つ人たちが、数時間後にニューイヤーが迫った「エムロス」に集結。ジェヨンは、何をやってもうまくいかない現実を嘆き、人生に疲れてホテルに滞在し、何度も遺書を書き直しながら自殺しようと決意していたのだった。しかし、部屋の操作を間違えてスヨンに電話がつながり、モーニングコールを依頼することに。毎回出されるクイズや世間話をするようになり、サプライズイベントが当選するなど、嬉しい出来事が続くようになる。
本作はもともと14人の登場人物たちが織り成す人生の悲喜交々を描いた映画を、未公開部分を含めてドラマシリーズとして再編成された作品だ。カン・ハヌル演じる不幸続きのジェヨンは、夢に向かって努力しているのに、なかなか実を結ばない。絶望のなか「エムロス」に泊まるものの、嘆きながらもホテルのベッドの心地よさにほんのり嬉しくなったり、偶然かけた電話の相手イヨンに新たな感情が芽生えたりする。
しかし、ジェヨンが書き損じた遺書をイヨンが発見してホテル側が自殺防止のためにハッピーサプライズを用意するが、それも本人にばれて屋上から飛び降りようとするのだった。空回りするジェヨンのジェットコースターのような感情の起伏を、見事に表現し切っているカン・ハヌル。そしてどんなお客様にも最高のサービスをすることが信条のヨンジン役イ・ドンウクはスマートなCEO役が似合っている。観た後に幸せな気持ちになれる本作は、たくさんの人に観てほしい心あたたまる作品だ。
司法修習生が復讐のために裏社会でのし上がっていくアクションサスペンス。優秀な司法修習生のキム・ヨハン(カン・ハヌル)は、亡き父の同僚だった信頼する上長の指示により、賭場への潜入捜査をしていたが難航。そのうえ、より危険な刑務所へ潜入することとなり、ヨハンは暴力団が集まる部屋に入ってほかの収監者たちから洗礼を受けることとなる。
そこに刑務所を牛耳る“学長”と呼ばれるチャン・ソンオ(カン・ヨンソク)が現れる。博打(ばくち)の天才でもあるソンオは刑務所を牛耳り、彼によって賭場となっていたのだった。当初は苦戦しながらも、本来持つ頭脳明晰さで、じわじわと博打のノウハウを吸収していくヨハン。しかし、ある日突然、残してきた祖母の訃報が入る。
葬儀に駆けつけるも、関わったであろう同僚に蔑まれ、祖母を守ると約束したはずの人間に裏切られ、人生のどん底を這うこととなり、ヨハンは復讐を決意する。キリッとした司法修習生が、刑務所で復讐の鬼と化すさまは、カン・ハヌルだからこその変貌の演技を発揮。思いがけない出来事が重なり、命懸けの賭けをするなかで、刑務所のトップへと上り詰めていくヨハンだった。
ロマンス作品でうっとりするような眼差しを見せた時とは打って変わって、悲痛で顔を歪め、復讐を誓うダーティーな顔を見せるカン・ハヌル。さらには、華麗なアクションシーンも見どころだ。誰を信じればいいのか、敵か味方かがわからないスリリングさと、強靭なメンタリティで下剋上を果たしていく彼のクールさにも注目したい。
グローバルヒットを放つ『イカゲーム』シリーズの最終章。膨大な借金や深刻なトラブルにより人生を諦めかけた456人が、人生の一発逆転を狙って、456億ウォンという莫大な賞金が懸かったゲームに参加したことから始まった“負けたら即死”の恐怖のゲーム。これまで勝ち抜いてきた“456番”ことソン・ギフン(イ・ジョンジェ)は、新たな決意を胸に、凄惨なサバイバルバトルだとわかっていながら、最終ゲームへと挑む。
そこでは新たに提示される残酷なゲームの数々、倒すべき宿敵の存在、フロントマンとの最後の対決が幕を開ける。シーズン2から3に続いて参加したのは、お調子者の元海兵隊員“388番”ことカン・デホ(カン・ハヌル)や、“222番”こと妊婦のジュニ(チョ・ユリ)、ジュニの元恋人で、ジュニの子の父親“333番”ことミョンギ(イム・シワン)、親子で参加となった“007番”こと息子のヨンシク(ヤン・ドングン) と“149 番”こと母親のクムジャ(カン・エシム)などのプレイヤーたち。果たして、勝者は誰になるのか?
Netflix週間グローバルTOP10(非英語)で1位を獲得し、日本をはじめ各国でも週間TOP10の1位を記録したうえ、シーズン1と2の視聴数も再び上昇し、非英語番組トップ3のすべてを「イカゲーム」シリーズが独占した。快挙を成し遂げた本作は、若手からベテランまで演技派の役者がずらりと揃い、人間の愚かさと悲哀を痛いほど見せつけてくる。
カン・ハヌル演じるデホは、人がよさそうに見えながらも、臆病で卑怯さが際立つ人物だ。死のバトルを繰り広げているプレイヤーたちをよそに、対立するギフンとデホ。強い信念を持ってゲームに再び参加するギフンと、逃げまどうデホは相容れない。鬼気迫る言動で釘付けにさせるカン・ハヌルはもちろん、凄みしかないイ・ジョンジェの存在感と鋭さに圧倒される。驚きのラストを迎える本作は、観たことのないカン・ハヌルを目撃できるし、彼は1には出演していないものの、ぜひ全シーズンを通して視聴することをおすすめしたい。
ラブコメからサスペンスまで幅広いジャンルを演じ分けるカン・ハヌルは、今後もスケジュールがいっぱいだ。7月18日からはNetflixスリラー映画『84m²』が配信され、7月27日には東京・せたがやイーグレットホール(世田谷区民会館)でファンミーティングを開催、9月26日にはデジタルスリラー映画『殺人配信』が日本公開される。これからも多彩な顔を見せるカン・ハヌルから目が離せない。
カン・ハヌルのその他の出演作もあわせてチェック!
前回に続いて、韓国ドラマの“時代劇”を厳選。現代ではなく、韓国の時代劇というレアな設定ながら、「ときめく気持ちは時代を超える!」ということで、韓ドラ時代劇のラブストーリーをお届けします。
『プロット 殺人設計者』公開や『北極星(原題)』配信によってドンウォンの虜になる方に向けて、おすすめ映画5作品をご紹介!