『五十嵐夫妻は偽装他人』第2話、夫婦の過去が判明。四角関係も勃発!?
夫婦であることを隠す2人は、部署の飲み会もどうにか乗り越える。お互いを気にしていながら素直になれない真尋と直人。そんな中、直人は積極的なあざと女子の美羽と、真尋はマイペースに見えて頼れる翠と距離を詰めることに…。
2012年にテレビ東京の深夜枠でひっそりと放送され、気がつけば10年以上続く人気ドラマとなった『孤独のグルメ』。1月10日からは、全国の映画館で『劇映画 孤独のグルメ』も公開中だ。
個人で貿易商を営む中年男性・井之頭五郎が、たったひとり店に入って、「うん、いいぞいいぞ」とか「これだよこれ」とか心の声をつぶやくだけの、異端のグルメドラマ。なぜこの作品は、長年にわたって人気を博し続けているのか?本稿では、その秘密に迫っていきたい。
ひとくちにグルメドラマといっても、そのバリエーションはさまざまだ。『王様のレストラン』(1995年/フジテレビ系)や『グランメゾン東京』(2019年/TBS系)のように、有名レストランを目指して従業員たちが奮闘する作品もあれば、『天皇の料理番』(2015年/TBS系)や『Chef〜三ツ星の給食〜』(2016年/フジテレビ系)のように、ある料理人の成長や葛藤にスポットを当てた作品もある。
そのなかでも『孤独のグルメ』は、独特すぎるグルメドラマだ。まずこの作品は、主人公の周りに起きた事件や出会った登場人物が、経験として積み重なっていく「ストーリードラマ」ではない。『サザエさん』や『ドラえもん』のように、経験が毎話ごとリセットされる一話完結型の「レギュラードラマ」だ。
『孤独のグルメ』はこれまでに10シーズンを数え、その他にもスペシャルドラマ、配信オリジナル、特別編(『それぞれの孤独のグルメ』)など巨大なアーカイヴを誇っているが、視聴者は前後を気にすることなく、どのエピソードからでも気軽にアクセスすることができる。作品ごとの関連付けが多すぎるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とは、アプローチが全く異なるのだ。
またこの作品は、深夜帯に放送されたことから、いわゆる“夜食テロドラマ”にカテゴライズされることが多いが、おそらくその先駆けとなったのは、2009年からTBS系で放送された『深夜食堂』だろう。
新宿ゴールデン街の片隅にひっそりと佇む食堂に、常連客・新規客さまざまな人々がやってきて、マスター(小林薫)がつくる一品に心が満たされていく物語。好評を受けて第四部からはNetflixで配信され、2015年と2016年には映画版も公開されている。
だが『孤独のグルメ』は、『深夜食堂』で描かれるような人情小咄ではない。『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS系)みたいに、常連客と仲良くなったりすることもない。中年男が料理と本気で対峙する、孤高でハードボイルドなグルメドラマなのだ(そう考えると、原作漫画の作画を担当しているのが、ハードボイルドを中心に活躍した谷口ジローであることは納得である)。
一話完結型の「レギュラードラマ」は総じてその傾向が強いのだが、『孤独のグルメ』も基本的な構成はどのエピソードも一緒である。
クライアントと打ち合わせする
腹が減る
野生の勘で店を探す
店に入ってひたすら食べる
劇的な展開は何もナシ。中年のおじさんがたらふく飯を食べる様子を、ただ眺め続ける。このアンチドラマ的、アンチカタルシス的な作りが、革命的だったのである。
アンチドラマ的、アンチカタルシス的な夜食テロドラマは、『孤独のグルメ』のヒットを契機として爆発的に増えていく。
『めしばな刑事タチバナ』(2013年/テレビ東京系)
『背徳の夜食』(2019年/フジテレビ系)
『ワカコ酒』(2015年/BSテレビ東京系)
『忘却のサチコ』(2018年/テレビ東京系)
『ひとりキャンプで食って寝る』(2019年/テレビ東京系)
『絶メシロード』(2020年/テレビ東京系)
『#居酒屋新幹線』(2021年/TBS系)
『晩酌の流儀』(2022年/テレビ東京系)
やっぱりというかさすがというか、本家本元のテレビ東京「ドラマ25」枠の作品が圧倒的に多い。また『ワカコ酒』はシーズン8、『絶メシロード』はシーズン2、『晩酌の流儀』はシーズン3と、長期シリーズ化しているのも特徴的。おそらく、一話完結型の「レギュラードラマ」であること、低予算で制作できること、一定のファン層を獲得しやすいことから、継続的に作られているのだろう。「予算がないぶん企画力で勝負」がモットーのテレビ東京らしい戦略だ。
もともと『孤独のグルメ』の原作漫画は、巷に溢れすぎていたグルメ漫画へのカウンターとして構想された。当然ドラマ版もサブカルな匂いが濃厚だったが、思いがけないヒットによって、それ自体がジャンルとして認知され、一気にメジャー化してしまったのである。
中年男性同士のワチャワチャ恋愛要素をまぶした『きのう何食べた?』(2019年/テレビ東京系)、ミステリ要素をまぶした『シェフは名探偵』(2021年/テレビ東京系)は、この系譜をあえて外した作品といえるかもしれない。
『孤独のグルメ』ヒット要因のひとつとして、やはり松重豊のキャスティングを挙げない訳にはいかないだろう。
190センチの長身、強面のルックス、ボソボソした話し声。筆者が初めて彼に遭遇したのは、黒沢清監督のホラー映画『地獄の警備員』(1992年)。片っ端から殺人を繰り返す正体不明のサイコ警備員を演じていて、『帝都物語』(1988年)で加藤保憲を演じた嶋田久作以来の衝撃を受けたのだが、同時に「今後、役が限定されちゃうかもなあ」という懸念も感じていた。
そんな不安もどこ吹く風、今では映画/ドラマに欠かせないバイプレイヤーとして確固たる地位を築き、音楽番組『おげんさんのサブスク堂』(NHK)では、星野源と楽しそうに音楽トークに花を咲かせている。『HERO』の第2シリーズ(2014年/フジテレビ系)や『アンナチュラル』(2018年/TBS系)のような、どこかオトボケ感のある優しい上司役を演じさせたら、もはやこの人の右に出る者はいない。
キャリア初期はダークなイメージが強かった松重豊だが、『孤独のグルメ』は彼のサニーサイドを十二分に引き出した画期的なドラマとなった。高い身長をもてあますようにちょこんと席に座っている姿は妙に可笑しみがあるし、下戸なものだからいつもウーロン茶を注文しているのも可愛らしい。
ちなみに原作者の久住昌之は、2010年2月4日にTwitter(現X)で
『K独のグルメ』のテレビドラマ化の話が来たが、主演が長嶋一茂ということなので、丁重にお断りする。長嶋一茂は嫌いではありませんが、ちょっと
と投稿している。ひょっとしたら、井之頭五郎=長嶋一茂という世界線もあり得たのだ。だがどこか不器用そうな感じ、おじさん特有の哀愁と可愛らしさは、松重豊だからこそ体現できたのではないか。
そもそも井之頭というキャラクター自体が、世のサラリーマンが憧憬を抱くような人物。彼は組織には属さず、一匹狼のような生き方を全うする。出世街道をひた走り、幾多ものラブアフェアを繰り返す島耕作が憧れだったのは遠い昔。現代のヒーローは、ゴロー・イノガシラなのだ。金曜の深夜にダラ見して、ドスンと夜食テロを食らい、井之頭の生き方に羨ましさを感じながら、週末を過ごす。これこそが『孤独のグルメ』を鑑賞するにあたって、最も適切で正しい態度なのである。たぶん。
夫婦であることを隠す2人は、部署の飲み会もどうにか乗り越える。お互いを気にしていながら素直になれない真尋と直人。そんな中、直人は積極的なあざと女子の美羽と、真尋はマイペースに見えて頼れる翠と距離を詰めることに…。
お互いに相手に告げずに転職した先で、偶然に同じ部署で働くことになった真尋と直人の姿を描く第1話。夫婦であることを隠さなければならなくなるてん末がスリリング!
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