『無学 鶴の間』ゲストは街裏ぴんく!芸歴20年目にしてR-1優勝を果たした男の素顔は?
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『鶴の間』第26回のゲストは、タレント、司会者、映画評論家として長きにわたって活躍し、今年の4月で50周年を迎えた名物ラジオ番組「ありがとう浜村淳です」の平日レギュラー放送を完走させたばかり(土曜版の放送は継続中)の浜村淳が登場。現在89歳という年齢を感じさせない、小気味がよくユニークな浜村節はこの日も健在。つい最近までは週に6本のレギュラー番組を担当していたとのことで、鶴瓶も「うれしいですよね。俺もそれくらいの年までできるかもしれないということですから」と頼もしさを感じている様子だった。
そんな鶴瓶と対面し「“師匠”にはたびたび(番組に)ゲストに来てもらいました」と感慨深げに語る浜村だったが、「ちょっと待ってください。さっきからそれ(師匠)ばっかり。やめてください」と鶴瓶。「何をです?」とキョトンとした顔の浜村に対して、鶴瓶は「ここはうちの師匠(六代目笑福亭松鶴)の家ですから。お前がなんで師匠やねんと、おやっさんに怒られますよ」と苦笑い。だが浜村は「だって師匠やから」と意に介していない様子だった。
鶴瓶とは長い付き合いだと語る浜村は、鶴瓶のことに興味津々な様子で、「あなただけでなく、おたくのお姉さんも面白い」「お姉さんの影響はありますか?」などと矢継ぎ早に鶴瓶に質問を浴びせ続ける。すっかり浜村のペースに巻き込まれた鶴瓶は「浜村さんが来るといつも質問ばかりされる」と苦笑いだったが、「ラジオやテレビで何回も対談をさせていただきましたが、聞きたいことがたくさんあるんで、僕の方が聞いてばかりでしたね」と振り返った浜村。鶴瓶も「俺が聞きたいのに。何のために(浜村について調べた)このメモを持っているのか……」とボヤくなど、マイペースな浜村とのやり取りに、会場はドッと沸いた。
1973年から50年にわたって放送されたラジオ番組「ありがとう浜村淳です」に来場したゲストは1万人以上。その中には石原裕次郎、高倉健、吉永小百合など、そうそうたるスターも数多く来場したとのことで、まさに“芸能界の生き証人”ともいうべき存在である。「石原裕次郎さんはMBSの1日局長を快く引き受けてくれたことがあったんです。その時に放送中のスタジオにいきなり入ってきて『しばらくでした』と言うんです。それから電話が壊れるくらいに鳴ってましたね。『浜村、はよ放送をやめて、裕次郎と変われ』と。反対にひと言も言わないのが高倉健さん。黙って入ってきて、黙って自分の席に座るんですよ。それでポツリポツリと話をしてくれた。『世間ではストイックだとか言われますが、自分はそんな立派な人間じゃないです』と。それで僕はすかさず“浅草はるかな木曽(きそ)路の果てに、雪に血染めの唐獅子牡丹”と(前口上を)言ったらえらい喜んでくれましたね」。
これまでも7・5調の名調子の前口上で数々の歌謡曲の司会を行ってきたという浜村。この日もスラスラと口上をそらんじてみせて会場を驚かせたが、「でも、こういう7・5調の司会がまったく合わなかったのが笠置シヅ子さん」と朝ドラ「ブギウギ」のモデルになった名歌手について言及。「ホンマに面白い人でした。鶴瓶さんと似ていますよ。顔まで似ている」と冗談めかして会場を沸かせたが、実は鶴瓶自身は笠置シヅ子と不思議な縁があったという。「笠置さんがテレビで歌合戦の審査員をやられていたんで、テレビ局の廊下を歩いていたんです。その頃、俺も冗談で落語会の笠置シヅ子と言ってたから、ごあいさつしようかなと思ってたんですけど、ただただすごい人なので。(あいさつできずに)そのままになったんですよ」。
そして時は過ぎ、「(鶴瓶の)お母さんの最期をみとりました」と語る看護師に会ったという鶴瓶。そこから「どこの病院ですか」「あそこの厚生年金病院です」「そこには入っていないですよ」といったやり取りを経て、「どうやら俺のことを笠置シヅ子さんの子どもだと思ってたみたい」と語る鶴瓶に会場も大笑い。だがそれがまわりまわって「笠置さんの娘さんの、亀井エイ子さんからお聞きしたいんですがということで電話がかかってきて。(母親が)もうひとり産んでいるんちゃうかと思ったみたいで。それで一緒にご飯を食べに行って『違います』と。きっと笠置さんが冗談で話していたことがまわりまわって、そういう話になったのかもしれない」と笑いながら振り返る鶴瓶だが、「ホンマに違うんでしょ?」とあらためて念を押してみせた浜村の言葉に会場はドッと沸いた。
そこからは浜村が笠置シヅ子のイベントの司会を行った時の話に。「歯磨き粉を買うたら笠置シヅ子ショーに招待するという催しがあったんですよ。司会はわたしです。いよいよ舞台が始まる直前、いわゆる上品ではない若者が入ってきた。げたを履いて、舞台の袖でガタガタと言わせながら歩き回っていた。邪魔でしかたないけどみんな怖くて言えないんですよ。するとそこに笠置さんが出てきて、『ぼん、ちょっとこっちおいで。わての舞台観るためにぎょうさん行列をつくってはんねん、悪いけど行列の整理してくれるか』と。そしたら(笠置から直々に頼まれたということで)チンピラが喜んでね。外に出て押したらあかんと行列の整理を始めるんですよ。見事な粋ですよね」と興味深いエピソードを紹介。
浜村のもうひとつの顔といえば、映画評論家。あの名調子で、気付いたらネタバレも気にせずに、クライマックスまでしゃべってしまうこともしばしばだ。「番組でも、(鶴瓶が)まだ観てない映画についてしゃべるじゃないですか。ものすごいええ映画だなと思って泣いたんですけど……」という鶴瓶に、「(実際に)観たら案外しょうもなかった?」といたずらっぽく笑った浜村に会場は大爆笑。「それは鶴瓶さんがしゃべるのと一緒。一種の話芸ですから」と浜村流映画評論の神髄について解説。「あれは韓国の映画でした。めっちゃいいなと思ったけど、しゃべりの方がいいわと思って見に行かなかった」という鶴瓶に、「しゃべるのを聞いていると想像どんどん広がっていきます。だから本物の映画よりも面白く思えてくるんです」と語る浜村だった。
その流れで「鶴瓶師匠は間の取り方がうまい。若い芸人さんってあまり間をとらないですよね。ところが鶴瓶師匠はちゃんと間をとる。間をとるのがうまいから、鶴瓶話術が成立する。これが実にうまくて聞きほれますね。肩肘張らずに、雑談みたいな形で面白いですよ。見事ですね」とほれぼれと語る浜村。
「その話術はどこで見つけたんですか? ここ(無学)ですか?」と尋ねた浜村。「そんなあれじゃないですけど、今の噺家って日常にあったことを自然にしゃべることはないじゃないですか。小話とかひとつの形としてしゃべることはあるけど、でも自分はそれが嫌というか……」という鶴瓶に、浜村が「まとまった話をきちんとやるのが苦手なんでしょ」とピシャリとツッコんで会場は大笑い。「(ほめたのに)崖から突き落とすみたいに……」と脱力する鶴瓶。「悪気はないですよ」とケロリとした顔をした浜村は、しみじみと「これが芸ですよね」と語った。
「昔はいろいろと言われましたよ。でもこれしかできないし……。ネタを選ぶ時もお前、なんでそんな話をすんねん。もっと派手な話をすればいいじゃないかと言われました。でもそう言われても派手な話は好きじゃないんですよ」という鶴瓶に、我が意を得たりという具合に「“さりげなく”ということですね! そういう日常の話をしてウケるという芸能人はなかなかいないですよ」と浜村。
「『鶴瓶ばなし』も2時間くらい。こんなことあった、あんなことあったというのをずっとしゃべるんですけど。そういう意味では落語をしなかったことでこういう形を作り出した。これは正直なこというと、難しいんですよ。でも僕はわりとそっちが好きだから」という鶴瓶に、「“さりげなく”というのは一番難しいけど大事ですよ。武田鉄矢さんが山田洋次監督の『男はつらいよ』に出た時に言われたのが、面白いことをやろうとしてニヤニヤしていたら怒られたと。本人が、これから面白いことをやりますよとニヤニヤしていたらしらける。そうじゃなくて真剣にやりなさい。真剣にやってドジばかりやるから笑うんだと。それを聞いてあの人は、演技とはそんなもんかとはじめて目覚めたと言っていました。わたしも山田監督とは何度か対談させていただきましたが、あの監督はいつもそう。余計なことをせんでもいいと。それは一貫してますね」という浜村。だがそんな山田監督も鶴瓶に対しては怒ることはなく「それでいいんですよ」と言い続けていたという。
そこで浜村が「真剣にやってドジばかりやってお客さんを笑わせた名人はチャップリン。『サーカス』でも『モダン・タイムス』でもハラハラ、お客さんも危ない、危ないと手に汗握る。でもなかなかうまいことできずに失敗ばかりするんです。昔、チャップリン、今、笑福亭鶴瓶です」と名調子で褒めるとドッと沸いた会場内。鶴瓶も「怒られますよ、ありがたいですけど」と返すなど、この日は終始、浜村の名調子で会場を魅了し続けた。
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【『無学 鶴の間』(第26回)配信情報】
◆出演 笑福亭鶴瓶、浜村淳
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