『やぶさかではございません』第3話 婚活と元カレに傷つく松村沙友理“麻衣”を癒すのは突然のキス?
サイレントカフェ「アサガオ」で働く不思議麻衣(松村沙友理)。同僚の上下亮(駒木根葵汰)から、互いに観察し、ダメなところを指摘し合おうと提案されたことで、急激に距離が近づいていく。 ただ、麻衣は気がついていないようだが、上下は麻衣に想いを寄せており……。
『夫を社会的に抹殺する5つの方法』『夫の家庭を壊すまで』と、ねじれた夫婦の愛憎劇で話題を呼んできたテレ東の “全夫が震える” シリーズ第3弾となる『夫よ、死んでくれないか』。
安達祐実、相武紗季、磯山さやかのトリプル主演で、夫との関係にそれぞれ問題を抱える女性たちが起こす騒動を描き出す。ミステリー仕立てのストーリー展開がスリリングだ。
安達が演じるシゴデキ女子・甲本麻矢は、竹財輝之助演じる夫・光博が不倫した上に失踪してしまうという境遇。そして相武扮するフリーライターの加賀美璃子は、高橋光臣扮する束縛夫・弘毅に心底うんざりしている。また、磯山さやかが演じる専業主婦の榊友里香は、塚本高史演じるデリカシーのないモラハラ夫・哲也に「死んでくれ」と願う日々だ。
女性3人の問題ありな夫婦関係を、それぞれあぶり出した初回。光博の失踪、哲也の記憶喪失という大事件も勃発する、波乱含みのドラマ第1回をレビュー!
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
物騒なタイトルが、放送開始前から各所で物議を醸したこのドラマ。かなり刺激の強い言葉であるが、実はこのタイトルは原作どおり。2011年のデビュー作『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』が草彅剛主演でドラマ化されたことでも有名な作家・丸山正樹が手掛けた同名のミステリー小説を原作としている。
ドラマの始まりのシーンは、厳かな教会。白いベールを被った花嫁は、安達祐実が演じるヒロイン、甲本麻矢である。そして、向かい合って立つのは、竹財輝之助扮する新郎・光博。
共に人生を歩む誓いの場である結婚式。白いベールの中で、麻矢は幸せそうに微笑む。
しかし、その白いベールのイメージは、いつしか棺に供えられる白い百合の花へと取って代わり、モノローグは安達、磯山、相武のリレー方式でこう続くのだ。
「誓いは幸福となり、やがていつからか幸福は後悔へと変わり」(安達)
「後悔は絶望となり」(磯山)
「そして、こう願うようになっていた…」(相武)
このタイミングで映像は引きのカットになり、そこが火葬場であることが判明。3人の妻が棺を炉の中に送り出すと、その戸が閉まった瞬間に主演3人の声が重なってタイトルコールへと繋がる。
「夫よ、死んでくれないか」
怖いけどカッコいい。何より、これからどんなドラマが始まるのか、めっちゃワクワクしてしまうオープニングである。
主題歌が終わると、シーンはファミリー向けの案件をプレゼンする麻矢の姿へと切り替わった。彼女が勤務するのはデベロッパー。麻矢は大きなプロジェクトのリーダー候補にもなるような“シゴデキ女性”であるらしい。
しかし、そんな彼女は上司・立花瑤子(遊井亮子)の夫が働く妻に協力的だという部下の話を聞いて、にわかに顔を曇らせる。その様子から、夫・光博との関係がうまくいっていないことが観る者にさり気なく伝わってくる。
さて、そんな麻矢には親友が2人いる。
一人は、フリーライターの加賀美璃子。相武紗季が演じているだけあって、スラリとしたスタイルの美女である璃子だが、言動はいわゆるサバサバ系女子っぽい。そして、もう一人は眼鏡にニットという、見るからに所帯じみたファッションの専業主夫・榊友里香。こちらは磯山さやかが化粧っ気なしで演じて、見事なハマりっぷりだ。
3人は大学時代からの仲とのことで、ここで大学時代と思しき彼女らが湖畔で何かに喜んでいる回想シーンが挟まれる。…のだが、気になるのはここでの麻矢のモノローグ。
「同じ正義で結ばれた、切っても切れない関係」
ん?“同じ正義”ってどういう意味?過去に“正義”にまつわる何かがあったの?しかし、その答えは明かされないまま、それぞれの夫についての3人の会話へと場面は流れていってしまう。
でも、この”同じ正義”という3人の絆は、次回以降もストーリーに絡んできそうである。覚えておこう。
続くシーンの3人の会話で明らかになったのは、友里香の夫のあだ名が「ガーべ」であること。生ゴミの英訳garbageの省略だというから、なんとも辛辣だ。しかも、夫の口の臭さを訴えた友里香は、璃子から「生ゴミって性格の悪さからじゃなくて、口の臭さから来てたの?」と聞かれて、「どっちも」と答えるなど夫への憎悪を隠そうともしない。
「あの人が口開いたあとは、2人からもらったお香皿でお香炊いて空気を浄化している」という友里香。
そんな友里香にツッコミを入れながら楽しんでいる様子の璃子に、「璃子のところはいいよね。エリートでイケメンで、愛妻家なんてうらやましいよ」とぼやく友里香。しかし、璃子は璃子でそんなう友里香の言葉どおりの幸せな夫婦関係ではなさそうなのだ。
何せ、さっきから彼女のスマホのバイブが終始ビービー音を立てているのである。絶対に何かある!
ここで璃子は、おもむろに「3人で写真撮ろう!」とスマホでスリーショットを自撮り。実は、この行為が璃子と夫との関係に大きく絡んでいることがのちに判明するのである。
何より恐ろしかったのは、この会話の締めくくりに、友里香がぽそっと呟いたひと言…。
「一番の幸せは、夫がお金を残して死んでくれること」
だいぶ過激な発言だが、友里香は心底そう思っている様子、さらに、それを聞いた麻矢は「めちゃくちゃひどいこと言ってるけど、ちょっとわかっちゃうな〜」と友里香に共感を寄せる。
実際、友里香ほど深刻に思い詰めてはいないにしても、麻矢くらいの共感性を持ってこの言葉を受け止める女性、案外多いのでは?
そう思うと、余計に恐ろしく感じてしまう。
と、ここで急に久保田悠来が演じる謎のイケオジがカットイン。妻の本音をぺちゃくちゃとしゃべる3人の様子を、遠くからうかがい見ているようだ。彼は誰?そこで何をしているの?
しかし、こちらも初回では明かされず。物語にどんな絡み方をしてくるのか、次回以降に期待したい!
さて、場面は女子会が終わって帰宅した麻矢の家。夫の光博はパソコンに張り付いて、どうやらずっとゲームをしていたようだ。キッチンのシンクには、彼が一人で食べた夕食の汚れた食器が放置されたまま。
それを見て、文句の一つも言わずに皿洗いを始める麻矢。この様子だけで、夫に対して完全に諦めきった麻矢の思いや冷え切った夫婦仲が伝わってくる。さらに、麻矢が実家で法事があると告げるも、光博は「無理かも」と、家族としての役目も放棄している模様。
そんな光博を演じるのは、大ヒット不倫ホラー『夫の家庭を壊すまで』で不倫クズ夫をめっちゃムカつく演技で体現した竹財輝之助である。
今回もまたクズ夫の役であるのだが、光博は『夫の家庭を壊すまで』の裏切り系クズ男とは一転、おどおどした陰キャで、部屋着姿はダサダサでだらしない。
ここからの回想シーンでわかるのだが、麻矢との恋愛、結婚も彼女にリードされていた理系の草食系男子なのであった。同じクズ夫でもガラッと違うキャラクター。さすが、竹財の演技力が光っている。
一方、麻矢は恋人時代の光博とのときめきを思い出してこう思う。
「あの頃は、一人でいても2人でいる気がした。それが今は、2人でいても一人でいる気がする」
これもまた、大いに共感した人が多そうなつぶやきである。「2人でいても孤独」というのは、どこかの歌のフレーズにありそうなほど、普遍的な倦怠期の悩みですよね…。
さて、今回は初回ということで、麻矢、友里香、璃子、それぞれの夫との関係性を順番に描いていく構成になっている。
ここからは友里香のターン。
友里香が帰宅すると、何やら電話口で通話相手にペコペコ謝る夫・哲也。電話を切ると、さっきまでの態度とは一転、めっちゃ偉そうに友里香を責め立てる。
「美味かったか?俺の稼いだ金で飲む酒は」
そして、自分が風呂に入っている間に「ビールとつまみを用意しとけ」と言い放つと、あろうことか脱いだばかりの靴下で友里香の頭を叩くのである。
完全なモラハラ夫。友里香が気の毒過ぎる!!! 夫が去ると、友里香はお香炊きまくり、頭に煙をかけまくりである。そりゃ「死んでくれ」と恨まれるのも仕方ない…か?
そして、今度は璃子のターン。イケメン夫・弘毅は、一心不乱にルームランナーで走り込みをしている。そこへ璃子が帰宅すると、彼は汗だくのままスマホを取り出し、さっき璃子が撮った麻矢、友里香との3ショットを示すとこう言い出す。
「なんで1枚だけなの?10分ごとに送ってって言ったよね」
やはり。単なる一途なイケメン夫ではなさそうである。
「無理だって」と当たり前の返事をする璃子に、「ホントに麻矢さんと友里香さんと3人で飲んでたの?」と、璃子を疑いはじめる弘毅。
そう、彼は尋常じゃないほどの束縛夫なのであった!
しかも、汗だらけの体で璃子に近づくと、頬に触れたのちにハグをするのである!
自己中心的すぎるよ!せめて汗吹けよ!愛してる人にすることじゃないよ!
見てるこっちも不快度MAX!どんだけイケメンでも無理!いくら甘い声で「愛してるよ」と言われても、こんなノンデリカシーすぎる行動では、璃子は内心ドン引きするしかない。しかも、この夫、GPSで璃子の行動をいちいち監視していることものちに明らかになるのである。ヤバすぎる!
それにつけても、麻矢の皿洗いのシーンにしても、弘毅の汗まみれハグにしても、ほんのちょっとのシーンで「ああ…、そうなのね」と観る者にその夫婦関係の歪さを見せつける描写が素晴らしい。
さらにここからは、麻矢の両親の夫婦関係もサラッと描かれる。全ての家事は妻任せ。自分がつまみ食いして食べこぼしたあとすらほったらかしの父と、それを何も言わずにフォローして、「長く暮らしていると夫のことなんてどうでもよくなる」と諦めきった母。しかし、夫へのモヤモヤが内心に立ち込めていることはビシビシに伝わってくる。
そして、どうやら麻矢には兄か弟らしき存在がいて、引きこもりであるようなのだ。
「私は女として、母のようにはなりたくはない」
麻矢はそう思ってはいるが、現状、光博に対する麻矢の態度は母とほぼ変わらない。それに無自覚なのがなんとも切ないではないか…。
ここで、そんな麻矢の気持ちを大きく揺り動かす事件が2つ起こる。まずは夫の不倫疑惑だ。
法事から帰って夫婦のベッドに寝転がった麻矢は、枕に香水の匂いを感じたのだ。
光博は浮気していた?しかも、あろうことか夫婦のベッドで!?
どうもこの夫婦の仲がこじれたのは、仕事が大事で子どもが作りたくない麻矢と、子どもが欲しい光博のすれ違いが原因であるらしい。もしやセックスレスもこじれの原因なのか?
浮気を知った麻矢は、涙を流して夫を責める。
それに対して、泣きそうな顔の光博は「ごめん…俺」と何か言いたげだが…。
そこに鳴り響いたのは、麻矢のスマホ。
電話口にいたのは友里香で、なんと「夫を殺しちゃった!」と言って震えている!第2の事件の勃発である。
初回にしてタイトル回収か?と観る者がハラハラする中、友里香の家に集まった麻矢と璃子。救急車を呼ぼうとする麻矢を必死で止めた友里香は、彼が死んだのは自分が哲也を押して頭を打ったせいだと告白する。自分が警察に捕まってしまったら、娘と引き離される。それだけは避けたいというのだ。
そして、ここからは思わぬ展開に!
「殺らなきゃ。殺って隠さなきゃ」と言い出す友里香に。璃子も「急いで、朝までに終わらせよう」と同調。麻矢は止めるが「友里香一人だけでやらせるの?」と璃子は、殺っちゃう気満々なのである。
ここで意味深に再び登場するのは、例の大学時代の3人の“正義の絆”のシーン。ここでこの回想シーンが挟まるのには、何か意味があるのか?
結果、3人で力を合わせて哲也の手足をガムテープでぐるぐる巻きにし、身動きを取れないようにすると、あとは殺すだけ…というところで、なんと哲也がパチッと目を開ける!
悲鳴を上げる3人。しかし、目覚めた彼は記憶を亡くしていた。もちろん、友里香に転ばされたこともすっかり忘れている…。
友里香の家からの帰り道、「殺さなくてよかった」と日常会話の延長のように話す麻矢。それも怖いけれど、電車の走り抜ける騒音に紛れて「もし、私が夫を殺すって言ったら手伝ってくれる?」と言い出す璃子はもっと怖い…。汗。
さらには、そんな璃子にも秘密があることが続くシーンで匂わせられる。夫に隠してスマホをもう一台持つ璃子は、どうやら誰かと不倫しているようなのだ。
一方、麻矢は、夫の会社から「今日、出社していない」という電話を受けて、光博が行方不明になったことを知る。ここで麻矢が思うことは、「いつから夫はこの家にいないのだろう?」という疑問。
つまり麻矢は、夫が消えたことに全く気づかずに一夜を過ごしていたのである。夫もクズかもしれないが、麻矢もまた妻として完全に夫に無関心なクズ妻だったのである。
さらに友里香の騒動で家を出る直前、実は麻矢は光博にある言葉を叫んでいた。
「あんたなんか死ねばいいのに!」
その言葉を受けての光博の失踪なのか?そして、彼はどこへ消えたのか?真相が早く知りたい!
ミステリーの要素も多く、先の展開が楽しみになる初回放送であった。
そして、不倫、モラハラといったわかりやすい事象だけでなく、パートナーと理解し合えない孤独感、働く女性の生きづらさなど、現代の夫婦が抱えがちな問題をこれでもかと詰め込んだストーリーも、現代社会の縮図すぎてエグすぎる。
“全夫が震える” シリーズとはいえど、男女問わず身につまされた人も多かったのでは?次回も震えて待て!
第1話はこちらから
第2話予告編はこちらから
公式サイトはこちらから
サイレントカフェ「アサガオ」で働く不思議麻衣(松村沙友理)。同僚の上下亮(駒木根葵汰)から、互いに観察し、ダメなところを指摘し合おうと提案されたことで、急激に距離が近づいていく。 ただ、麻衣は気がついていないようだが、上下は麻衣に想いを寄せており……。
第2話では、ディーン・フジオカ演じる育休中のエリート官僚パパ・中谷が登場した。中谷の「専業主婦は贅沢」「旦那さんがかわいそう」発言に詩穂はモヤモヤ。そんな詩穂に夫の虎朗がかけた言葉が「めちゃくちゃ良い旦那」と視聴者から絶賛されている。
サイレントカフェ「アサガオ」で働き始めた不思議麻衣。そこで出会った同僚で年下男子の上下亮の提案で、互いに観察しダメなところを指摘しあう関係に。 真面目な麻衣は言われたとおりに上下の観察をスタートさせるが、全くと言っていいほど欠点が見つからず……。
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