「何かのために、自分を変えることはしない」ロマン・ドリッゼ、メインイベントでもいつも通りを貫く 「息子たちは格闘家になってほしくない」理由も明かす|UFCファイトナイト・ラスベガス109:ドリッゼ vs. ヘルナンデス
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「何かのために、自分を変えることはしない」ロマン・ドリッゼ、メインイベントでもいつも通りを貫く 「息子たちは格闘家になってほしくない」理由も明かす|UFCファイトナイト・ラスベガス109:ドリッゼ vs. ヘルナンデス

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世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTでは、2025年8月10日(日本時間)開催の『UFCファイトナイト・ラスベガス109:ドリッゼ vs. ヘルナンデス』(UFC APEX)をライブ配信する。

注目のメインイベントでは、ミドル級9位のロマン・ドリッゼ(ジョージア)と、同級10位のアンソニー・ヘルナンデス(アメリカ)が激突。バンタム級マッチでは、"アストロボーイ”ことスティーブ・エルセグ(オーストラリア)と"ザ・ジャマイカン・センセーション"ことオデー・オズボーン(ジャマイカ)が拳を交える。

また、日本の風間敏臣がMMA通算8勝1敗のエライジャ・スミス(アメリカ)とバンタム級マッチで対戦。風間は昨年のUFC初勝利となった一戦以来、これが1年ぶりの実戦となる。

ファイターたちは、週末の試合にどのような心境で臨むのか。ロマン・ドリッゼの試合前会見での意気込みをお届けする。

「勝とうが負けようが、そんなに深くは考えない」

──アンソニー・ヘルナンデスとの対戦が決まった経緯と、彼についての考えを教えてください。

ドリッゼ:数ヶ月間、ロバート・ウィテカーと戦うと聞かされていたんだ。でも、彼がデ・リダーと戦うと発表された次の日に、アンソニー・ヘルナンデスの名前が送られてきた。

正直、俺たち二人とも、もっとランキングが上の相手と戦う資格があると思う。でも、まあ仕方ない。UFCにはいずれにせよ感謝しているし、彼らがオファーする試合を受けるだけさ。

──お互いにもっと上位の相手と戦うべきだったとのことですが、この試合の勝者は、次戦でウィテカーのようなトップランカーと対戦することになると思いますか?

ドリッゼ:今の俺にとって、ウィテカーは……悪く聞こえたくないけど、俺のキャリアの未来にとって、それほど興味を惹かれる相手ではなくなったかな。だから、この試合に勝った後は、トップ5の誰かと戦いたい。

──ヘルナンデスのファイトスタイルについてはどう見ていますか?彼は対戦相手に合わせて戦い方を変えられる適応力の高さが光ります。

ドリッゼ:彼はすごくいい相手と戦ってきているし、とてもいいファイターだ。それに、人間的にも素晴らしい。昨日ホテルで会ったよ。確かに彼は良い相手と戦ってきたけど、俺みたいなグラップリングが強い相手とは一度も戦ったことがないはずだ。

みんな知っている通り、彼はスタミナがあって、グラウンドで相手をコントロールするのが好きだよな。でも、俺はグラウンドでめちゃくちゃアクティブなんだ。誰にも休む暇なんて与えない。

──ナッソージン・ イマボフ戦、マルビン・ヴェットーリ戦での敗戦から一転、現在は3連勝中です。特にヴェットーリとの再戦で勝利したことは大きな意味があったと思いますが、精神的にはどのような状態ですか?

ドリッゼ:戦いが俺の人生に影響することはない。戦いが俺という人間を変えることもない。だから、勝とうが負けようが、そんなに深くは考えないんだ。やるべきことをやるだけ。俺はいつだって同じ人間さ。戦いがどう自分に影響するのか、理解できないくらいだよ。だから精神的には、キャリアで何が起ころうと常に準備万端だ。

今回の試合に関して言えば、2回連続でのメインイベントで、2回連続の5ラウンドマッチになる。もちろん、相手が得意とする形とか、特定の状況に対しては少し多めに練習してきた。でも、それだけだ。特別なことは何もない。

──あなたの実力は誰もが知るところですが、なかにはケビン・ホランド戦の勝利などにケチをつけたがる人もいます。そういった懐疑的な人々に対して、何か証明したいという気持ちはありますか?

ドリッゼ:俺は誰にも、何も証明する必要はない。俺はただ自分の人生を生きているだけ。もし俺のことが嫌いなヤツがいるなら、それはとてもいいことだ。なぜなら、俺の人生がそいつらの人生に影響を与えているってことだからな。

──現在、ジョージアのMMAは非常に勢いがあります。メラブ・ドバリシビリとコーリー・サンドヘイゲンの対戦も決まりましたし、あなたが今週末勝利すれば、母国のMMAにおける地位をさらに高めることになります。ジョージアのMMAの現状をどう見ていますか?

ドリッゼ:ジョージアのMMAにとって、今が黄金時代なのは間違いない。ファイターたちは大きなことを成し遂げている。俺たちは未来の世代のために、偉大な歴史を築いているんだ。

でも同時に、俺たちは後進にとって非常に高いレベル、目標地点を設定してしまっている。今のジョージアでは、ただのUFCファイターであるだけじゃ誰も認めてくれない。トップファイターであることが求められるんだ。

だって、トップファイターがたくさんいるからな。ここ3年くらいかな、トップ3にはチャンピオンが2人いるし、ギガ(・チカゼ)も長い間トップファイターだった。まだまだ優れた選手がたくさんいる。全員の名前を挙げたいけど、多すぎるくらいさ。UFCに値する選手がたくさんいるんだよ。ジョージアMMAの未来は、とても明るいと思うよ。

──あなたやイリア・トプリア、メラブ・ドバリシビリ、ギガ・チカゼといった選手の活躍を見て、MMAを始めたいというジョージアの子どもたちは増えていますか?

ドリッゼ:俺はジョージアに住んでいるから、みんながどれだけMMAに夢中になっているかを肌で感じるよ。みんな、あらゆる試合を見ている。時には、俺が知らないような対戦相手のことまで詳しかったりするんだ。俺はそんなに試合を見ないからな(笑)。

ジョージアでは本当にMMAがビッグなんだ。もちろん、俺たちは彼らに正しい道を示している。目標を達成するために何をすべきか、チャンピオンになるために何をすべきかをね。正しい努力を、正しい時に、正しい場所で行えば、目標は達成可能だということも示しているのさ。

特にメラブを見てみるといい。彼がチャンピオンになるまでにどんな道を歩んできたか。昔はどこにいて、どうやってアメリカに渡り、格闘家になる前はどんな仕事をしていて、タイトルショットを得るためにどれだけ長く戦い、勝ち続けたか。その全てが、意志の力と自分を信じる心さえあれば、不可能なことなど何もないと証明しているんだ。

──あなたの試合の一週間後には、ミドル級のタイトルマッチが行われます。そのことは、今回の試合で大きなインパクトを残す上で、より重要になってきますか?

ドリッゼ:どんな試合も重要だ。さっきも言ったけど、何かのために、自分の何かを変えるなんてことはしない。これはただの試合。そこに行って、俺が何者であるかを見せて、勝つだけさ。

──ドリカス・デュ・プレシ対ハムザト・チマエフの勝敗はどう予想しますか?

ドリッゼ:俺にとっては、完全に50/50だね。チマエフはすごくハイレベルなアスリートで、誰でもフィニッシュできるし、誰でもテイクダウンできる。でも、2ラウンドを過ぎるといつも問題を抱える。そして、これは5ラウンドの試合だ。

ドリカスもまた非常にハイレベルなアスリートだと思う。バランスが取れていて、パワーも意志の強さもあるし、何よりタフだ。だから50/50だと言っているんだ。もしフィニッシュ決着なら、チマエフが1ラウンド、2ラウンド、あるいは3ラウンドの序盤で勝つと思う。もし判定になるなら、ドリカスが勝つんじゃないか?

──今回の試合はランキングトップ5の選手ではありませんが、タイトルマッチの直前のメインイベントという絶好のタイミングです。メインイベンターとしての責任や、自分がトップにふさわしいと証明する機会であることについて、どんな誇りを持っていますか?

ドリッゼ:UFCでも人生でも、誰も“ふさわしさ”なんて気にしないさ。忘れてはいけないのは、これはビジネスであり、ショーだということ。俺は多弁な男じゃない。真実と正しいことを語る人間だ。もちろん、俺にとっての正しいことだけね。

だから、プレッシャーなんて感じない。彼らが俺にチャンスをくれようがくれまいが、関係ないんだ。ただ自分がやりたいことをやり、生きたいように生きるだけさ。

そもそも、俺はハイレベルなアスリートになろうなんて一度も思ったことがないんだ。そこからして違う。MMAを始めたのもすごく遅かった。それでも、もう3年間もトップ10ファイターでい続けている。なぜ俺がこれをやっているかというと、自分の自由が好きだからだ。ここで稼ぐ金があるから、俺は自分の人生を自由に、俺が「自由だ」と思うやり方で生きることができるのさ。

──まだやるべきことはたくさんあると思いますが、これまでのMMAの道のりを振り返って、どのように感じていますか?

ドリッゼ:自分の運命に、とても感謝している。人生で手に入れた全てのものに感謝しているし、UFCにも本当に感謝している。UFCがなかったら、俺はどこにいただろう? いつも言っているんだが、たとえどこで何をしていようと、俺はその分野でベストになっていただろうけどな。今は格闘技をやっているから、格闘技でベストになりたいのさ。

「息子たちにファイターになってほしいかどうか、だろ? 答えは、断じてノーだ」

──UFCで成功したことで得られたものの一つに、家族と旅行に行けるような機会があると思います。数ヶ月前にジョージアに帰省していましたが、家族と母国で過ごす時間はどれほど特別なものでしたか?

ドリッゼ:もちろんだ。俺の人生は子どもたちの中にあり、俺の未来も子どもたちの中にある。俺がやっていること全て、彼らのためにやっているんだ。

俺には3人の息子がいるから、「子どもたちと一緒に時間を過ごせなくて、後悔しているんじゃないか」って思う人もいるかもしれない。一番下の子なんて生後数ヶ月で、その貴重な時間を見逃しているわけだからな。

でも、俺はそうは思わない。なぜ自分がこれら全てをやっているのか、はっきりと理解している。全ては彼らのため、彼らの未来のためなんだ。そしてそれが、彼らを本物の男に育てる助けになると信じている。だから、これは仕事の一部だと受け止めている。家に帰って、彼らとの時間を楽しむ。人生は素晴らしいよ。

ロマン・ドリッゼ

──父親になったことで、自分自身について最も学んだことは何ですか?

ドリッゼ:俺はもともと自己中心的ではなかったけど、父親になると「今日は金がないからお前たちにご飯を食べさせられない」なんて言って、家に帰ることはできないだろ?不可能だ。子どもを養うためなら何でもするだろう。

俺は自分のためだけに生きているんじゃない。彼らを見つめながら生きているんだ。まず、俺を育ててくれた祖先、祖父、父のことを考える。俺がジョージアに住んでいるのは、俺が自分の父親をどうリスペクトしているかを、子どもたちに見せるためでもあるのさ。年長者をどう敬うかを見せるためであり、文化を教えるためだ。

──息子さんたちはあなたの試合を見ますか?

ドリッゼ:彼らが俺の試合を見るのは好きじゃない。まず、そこからだ。でも、もちろん長男はもうそういうことができる年齢だから、こっそり見つける方法を知っている。

次の質問は、息子たちにファイターになってほしいかどうか、だろ? 答えは、断じてノーだ。彼らには戦ってほしくない。しっかりとした教育を受けさせたいんだ。時が来れば、彼らが自分の人生で何をしたいかを決めるだろう。でも俺から、格闘技を人生の目標として彼らにやらせることはない。

俺は大学で教育を受けるために8年間ウクライナに住んでいて、格闘家としてのキャリアはそこで始まった。22歳でグラップリングを始めて、プロのMMAファイターとしてデビューしたのは28歳の時だ。その8年間、俺は指導もしていた。自分のMMAジムを持っていてね。そこで、人生の他の選択肢を考えずにファイターになろうとする若者をたくさん見てきたんだ。そして彼らは、何も残らないまま去っていった。

格闘技という世界は、世界レベルのファイターになるためには、多くの異なる要因が噛み合わないといけない。まず、将来何が起こるか分からないし、どんな怪我をするかも分からないのさ。たとえば22歳で格闘技を始めて、26歳で何もできなくなるような大怪我をしたらどうする?人生、他に何がある?

もう一つ、運も非常に重要だと思う。UFCまであと一歩というところでチャンスを掴めないヤツらも大勢いる。負けたり、何か問題が起きたりしてね。

そして一番大事なことだけど、みんなUFCに出場すれば、あるいは頂点に立てば安泰だと思っている。ここラスベガスでも、たくさんの選手を見てきたよ。母国ではヒーローだった男たち、彼らはUFCにやって来て、自分が次のコナー・マクレガーにでもなったかのように、頂点に立ったつもりでいる。でも、数試合戦った後、彼らが国に帰っていく姿を俺は見てきた。

それが、俺たちの仕事の現実なんだ。もし別の人生への準備ができていなければ、自分の人生そのものを失うことになる。

だからといって、UFCという組織が、成功を掴んだ人々に対して、とてつもなく大きなサポートと助け、そして人生の機会を与えているという事実への感謝が変わることはない。ただし、それは「成功を掴んだ」人々に対してだけなんだ。

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