人の内面は外からだけでは分からない──『笑うマトリョーシカ』橋本Pが込めた想いとは?
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人の内面は外からだけでは分からない──『笑うマトリョーシカ』橋本Pが込めた想いとは?

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TBSで放送中の金曜ドラマ『笑うマトリョーシカ』が、明日9月6日(金)よる10時からの放送で最終回を迎えます。早見和真の同名小説を原作に、主人公のジャーナリスト・道上香苗(水川あさみ)が、人気政治家・清家一郎(櫻井翔)を取り巻く黒い闇を追うヒューマン政治サスペンス。清家を裏で操る“ハヌッセン”の正体が浩子(高岡早紀)ではなかったこと、そしてBG株事件には、現首相・羽生(大鷹明良)までもが関与していたことが明らかとなった前回の10話。続く最終回では、清家からの突然の提案を受け入れた道上がなんと、清家の“ブレーン”に就任することに。そしてついに明かされる“ハヌッセン”の正体とは…。

注目の最終回を前に、本作のプロデューサー・橋本芙美さんに、本作に込めた想いをうかがいました。

──ここまでの作品作りで大変だったこと、苦労された部分はどんなところですか。

橋本:脚本作りにおいては、原作にある回想シーンをドラマのどのタイミングで入れるかに一番苦労しました。BG株事件などドラマ独自の要素を足した分、原作の本線と辻褄が合っているかを考えながら組み立てるのがすごく難しくて。

あとはハヌッセンが誰なのかをどう見せていくかという点。鈴木から美和子、美和子から浩子へ疑惑が移行していくところは、映像だからこそより怪しく見せられる部分で、そこが面白くもあり苦労した部分です。早見先生にも毎回原稿をお送りし、気になるところがないかを都度ご確認いただきました。清家が“首相公選制”という国民が直接投票で首相を選べる制度を導入しようとするところも原作にはなく、事前にご相談した上で取り入れさせていただいた要素。あれは政治監修の方のアイデアで。清家が最終的に権力を握っていく様子をより恐ろしく感じさせるためにどのような政策を打ち出すべきか相談した際、独裁的になる危険性をはらんだ政策として、この制度を教えていただいたんです。

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©TBS

調べたところ、過去に何度か実際に議論されたことがあり、たとえば平成14年の懇談会の資料を読んだりしました。これは、ドラマにおいても説明しやすいかつイメージしやすく、いいのではないかと。それで早見先生に、後半でそういう政策を打ち出してもいいかをご相談し、ご了承いただきました。

──清家たちの地元を愛媛にしたことも、原作をリスペクトしてのことでしょうか。

橋本:そうですね、愛媛県、特に外泊(そとどまり)での撮影は映像化の条件でもありました。炎天下での撮影でしたが、早見先生も現場まで来てくださって、みんなでたくさん写真を撮りました(笑)。地元・愛媛のフィルムコミッションの方が、蛇口からポンジュースが出る重いタンクをわざわざ石垣を登って運んできてくださり、キャストスタッフみんなで美味しく飲みました。地元の方々がお昼にそうめんを作ってくれたりもして。景色も美しい場所でしたが、地元の方々のあたたかいご協力にも心が癒されました。感謝です!!

──橋本さんが本作で伝えたかったメッセージはどんなことでしょうか。

橋本:この作品の企画者である監督の岩田がこのドラマに込めたテーマは「人の内面は外から見ただけでは分からない」ということ。人は一面だけでは捉えられないというのが大きなテーマであり、描きたかったことです。母親から特殊な育てられ方をした清家が“理想の人物を演じる”という特殊能力があるゆえに、人に所有欲を掻き立てさせ、最終的に国民の人気を得て権力を手にしてしまう。でも本当の彼はどんな人間なのか?彼の核にあるのは、はたしてどんな顔なのか?原作にも描かれている重要なテーマですが、ドラマ版ではさらに、清家を見続けてきた道上だからこその終わり方をするので、原作と合わせてぜひお楽しみに。

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©TBS

もうひとつ、原作には色々な親子が出てきます。清家と浩子、浩子とその母、鈴木と父、亜里沙と母。原作を読んで、それぞれが親からの「宿命」を背負っていると感じました。それを背負った上で、子たちがどんな生き方をしていくのか。その「親子」という部分をドラマ版ではさらに掘り下げたいと思い、道上の父、母、そして息子がいる設定を、早見先生に確認の上、加えさせていただきました。

道上にはBG株事件をスクープした元新聞記者である・父がいて、そして物語の冒頭で父が衝撃的な事故死を遂げるという宿命を背負わせました。その道上が、父の死、過去の汚職事件、そして清家一郎とどう対峙していくのか?母の復讐心を背負った浩子と、息子・一郎という全ての始まりである歪な親子の関係性と、道上の父から道上へ、そして息子へと代々伝わっていく思いを対照的に描くことで、道上だからこその浩子や清家との向き合い方、家族との向き合い方をドラマ版では肉付けできたらと思いました。

また、道上に息子がいる設定を加えたことで、私個人的には「仕事を持つ親」という側面も掘り下げたいと思うようになりました。なかなかドラマの中では描きづらい部分もありますが、使命を持って第一線で働きながら子供を育てる親の葛藤、悩み、家族との向き合い方、両方を完璧にできるわけないし、失敗もあるし正解はないですが、諦めずに全力で日々仕事のために子どものために奮闘している姿、ということも、このドラマのひとつの要素として描けたらと思いました。

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©TBS

この作品の本筋はもちろん政治サスペンスですが、ドラマ版は「ヒューマン」要素も色濃くした上で、様々なキャラクターが登場し、視聴者の皆さんにも誰かしらに自分のことを投影し、家族について思うきっかけになれたらいいなと思います。また、堅いことはあまり言いたくないのですが、裏の裏のテーマとして、見てくださった方々が選挙に行きたくなるといいね、と監督や作家陣と話していました(笑)。

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©TBS

──それでは最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。

10話まで、この怒涛の展開をハラハラドキドキしながら一緒に駆け抜けてくださった視聴者の皆さま、本当にありがとうございます!そしてついに、「ハヌッセンの正体は?」という答えが最終回で確実に分かりますので、視聴者の皆さんも最終回に向けて様々な考察をしてみていただくと楽しいと思います。そして道上と清家が“疑似遠距離恋愛”のような関係性の末にどんなラストを迎え、お互いにどんな言葉を投げかけあうのか。そこもすごく楽しみにしていただきたいです。


プロデューサー・橋本芙美さんが作品に込めた想いを語ったインタビューはこちら

<最終回(#11)あらすじ>

浩子(高岡早紀)は清家(櫻井翔)を操るハヌッセンではなかった。

そしてBG株事件には、前外務大臣の諸橋(矢島健一)だけでなく、総理大臣の羽生(大鷹明良)も関与していた──。

そんな衝撃の事実が次々と明らかになった矢先、清家から「僕のブレーンになってほしい」という突然の提案を受けた道上(水川あさみ)は、ブレーンとしてそばにいることで清家のハヌッセンを突き止められると考え、その提案を受け入れることに。

ことあるごとに道上に意見を求め、道上の考えをそのまま吸収して自分の言葉にする清家。そんな清家を目の当たりにし、道上はある種の充実感を抱き始めるのだった。

そんな中、山中(丸山智己)から一刻も早く羽生と諸橋がBG株事件に関与していた証拠を公開し、2人を失脚させるべきだと促された道上だが、政権と敵対すると清家のブレーンを降りることになると考えた道上は、悩み始め…。

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