【祝】イム・シワン主演『少年時代-恋と涙と青春と-』上陸!待ち続けた甲斐あった圧巻の青春アクションコメディ
血気盛んな男子高校生たちの勢力争いを描いた青春アクションコメディドラマ。見るからに虚弱体質なビョンテが喧嘩番長のフリをし続けるのには無理があり、「流石にもうバレる!」とハラハラするところでミラクルな出来事が発生する、そのめくるめく展開が爆笑モノの作品となっている。
韓国ドラマ・映画好きにとって、近年、無視できない存在がいる。それは、1986年生まれの俳優アン・ジェホンだ。
2009年に短編映画でデビューしたジェホンは、『1999,面会~サンシャイン・ボーイズ』(2012年)や『足球王』(2014年)で頭角を現し始め、2015年、オタクな浪人生を演じたドラマ『恋のスケッチ〜応答せよ1988〜』のヒットと共にその名を広く知らしめる。
以降、パク・ソジュン演じる夢追う若者の親友役(2017年ドラマ『サム、マイウェイ〜恋の一発逆転!〜』)や、イ・ソンギュン演じる王様と探偵コンビを組む新人史官役(2017年映画『王様の事件手帖』)など、スター俳優を際立たせつつも自身の印象もしっかりと残す演技で定評を得ていった。
そして2019年、ラブコメドラマ『恋愛体質〜30歳になれば大丈夫』で“メロも秀逸な俳優”と証明してからは、映画『シークレット・ジョブ』、『狩りの時間』やドラマ『キングダム』シーズン2など、話題作への出演が続く。
2021年、22年には出演作が公開されなかったが、その分、23年からは再び快進撃が始まる。実話ベースのスポ根映画『リバウンド』での新人監督、サスペンスドラマ『マスクガール』でのストーカー気質の会社員、人間がチキンに変わるシュールなドラマ『タッカンジョン』での歌手志望のインターンと、作品毎に全く異なる人物像をモノにしてヒットに貢献。
この勢いに乗っかって、映画『小公女』ぶりにイ・ソムと再び組んでレス夫婦を演じたコメディドラマ『LTNS』も日本で配信されてほしいところだ。今回はそんな、“韓国の宝”ジェホンのフィルモグラフィーの中から、必見の6作品を紹介したいと思う。
本作は、3月に公開された、カン・ハヌルとチョン・ソミン共演『ラブリセット 30日後、離婚します』が話題を呼んでいるナム・デジュン監督の長編デビュー作。「死ぬ前に童貞を捨てたい」という終末期のALS患者の高校生ゴファン(リュ・ドックァン)のため、幼馴染の親友ナムジュン(キム・ドンヨン)とガプドク(アン・ジェホン)が奔走する青春映画だ。
ゴファンの親友も両親も映画などに感化され、“偉大な願い”とは掠りもしない行動をして空回る様が愉快で、畳み掛けられるギャグは抱腹絶倒もの。また、予想に難くないと思うが、病院で全く身動きできない男子高生に筆下ろしをしてくれる女性を探すのは困難な道のりである。ナムジュンとガプドクは、同級生や先輩に声をかけるなど、高校生ででき得る最大限の努力は果たすが、逆に珍騒動を巻き起こしてしまう。
特に、余計な言動で火に油を注ぐタイプのガプドクは大勢の怒りを買い、後半にいくにつれてボロボロになっていく。そんなガプドクを、ジェホンはまさに“体当たり”で演じており、その姿が笑いを誘う。
チキン屋を隠れ蓑に麻薬捜査する刑事班を描いた映画『エクストリーム・ジョブ』や、謎の機械によってチキン化した娘を救おうとする父とその部下の奮闘ドラマ『タッカンジョン』など、何かと“チキン”に縁深いイ・ビョンホン監督が手がけたラブコメディ。(もちろん、本作でもチキンが美味しそうに登場している。)
主人公は、同じ家で暮らす学生時代からの親友3人組。破局と復縁を繰り返した7年来の恋人と別れ、有名作家のアシスタント業もクビになったドラマ脚本家志望のジンジュ(チョン・ウヒ)、ドキュメンタリー映画監督として成功を収めるも、最愛の恋人の死から立ち直れていないウンジョン(チョン・ヨビン)、そして、ドラマ制作会社に勤めながら8歳の息子を育てるシングルマザーのハンジュ(ハン・ジウン)だ。
日々、互いの悲喜こもごもを共有しつつ平穏な共同生活を送る彼女たちだったが、30歳を迎え、それぞれ人間関係や仕事などに変化が訪れる。交際経験も社会経験もある程度積んできた30歳独身女性のリアルな心情をユーモアたっぷりに描きながら、監督、脚本家、制作会社スタッフの苦楽も表現した、メタ要素も携えている傑作だ。
ジェホンが演じるのは、ジンジュの脚本『30歳になれば大丈夫』に興味を抱く、テレビ局の看板ドラマ監督ボムス。白黒ハッキリした性格で、意見を貫くために子どもじみた態度をとることもあり、その振る舞いがジンジュを惹きつける。ナルシストでこだわりの強いボムスは、偏屈屋のジンジュと好相性。妙に波長の合う2人が恋に落ちる様子を、ウヒとジェホンが素晴らしいケミストリーをもって表現している。
有名法律事務所の見習い弁護士であるテスに、大出世できるチャンスが舞い込む。そのために与えられたミッションは、廃業寸前の動物園「ドンサンパーク」の経営をわずか3ヶ月で立て直すこと。新園長に就任したテスは、客も動物もほとんど残っていない動物園を救うための打開策として、スタッフを動物に扮装させて勤務させる奇想天外な案を思いつくー。
『恋愛体質〜30歳になれば大丈夫』紹介文の冒頭で触れた映画『エクストリーム・ジョブ』の制作会社が、同作の次に手がけたヒット作がこちら。あらすじ通りであり、起承転結が明確で大きな捻りはないのだがそれがまた良く、アイディアの勝利を感じる一作だ。
ジェホンが演じるのは、主人公のテス。園や動物への愛情はないが出世には燃えており、動物役のスタッフたちを厳しく指導・管理していく人物だ。しかし、前園長の体調不良でホッキョクグマの代打を務めた時、喉の渇きに抗えず、うっかりお客さんの前でコーラを飲んでしまう。そんな隙のあるキャラクターが、親しみやすい雰囲気のジェホンにぴったりである。
“コーラを飲むクマ”というだけでも最高に面白いが、他の動物人間たちの仕草もユニーク。お客さんの位置に合わせて向きを微調整するライオン、恋敵の職場を荒らしに行くゴリラ、隙さえあればスマホで文字を打つナマケモノ、常に倉庫の奥にいて横向きが定位置のキリンなど……。百聞は一見にしかず、あらすじで惹かれたのならぜひご視聴を。
オタク、真面目、もしくは冴えない役柄の印象が強いジェホンが、これまでのイメージを覆す金髪&ピアス姿の不良青年役に挑んだのが、クライムスリラー映画『狩りの時間』だ。
本作の舞台は近未来、経済破綻してスラム化した韓国。3年の刑期を終えて出所したジュンソクは、親友ギフンやチャンホと再会し、故郷を捨てて南国暮らしをしようと持ちかける。そのために計画・実行に移すのが、知人コンスの働く賭博場での強盗だった。無事に成功するが、証拠隠滅のためにハードディスクも一緒に盗んだのが運の尽き。そこには監視カメラの映像や資金洗浄の記録が収められており、お偉方は殺し屋ハンに4人の始末を依頼。彼らは、冷酷なハンに追い詰められていく。
本作は、イ・ジェフン(『建築学概論』『模範タクシー』など)が主役ジュンソクを務め、その親友役のギフンとチャンホをチェ・ウシク(『パラサイト 半地下の家族』『その年、私たちは』など)とジェホンが、仲間となるコンス役をパク・ジョンミン(『ただ悪より救いたまえ』『地獄が呼んでいる』など)が演じている。
第一線で活躍する若手俳優たちが一堂に介し、ベテラン中年男性たちが演技合戦を繰り広げることが多い韓国ノワール映画に挑んだ、という点でも観る価値ありだ。終始緊張感が漂うが、友人たちから“構ってちゃん”認定されているチャンホ(ジェホン)の存在に、時折和まされる。退廃的な世界観、そして感情を全く読み取れぬ不気味な殺し屋像を構築したパク・ヘス(『刑務所のルールブック』『イカゲーム』など)も素晴らしい。
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『マスクガール』は、同名ウェブトゥーンが原作のブラックコメディ&スリラーだ。主人公は、容姿にコンプレックスのある会社員キム・モミ。夜な夜な仮面を着けてオンラインでライブ配信し、「マスクガール」という名で覆面タレント活動をしている。しかし、恋焦がれた上司に失恋し、泥酔状態で配信をしてからすべてが悪い方向へと転じていってしまう。
本作は、3人の役者(イ・ハンビョル、ナナ、コ・ヒョンジュン)が交代で主人公を演じる大胆なスタイル、“人間の二面性”をテーマに1話ごとに異なるキャラクターの視点で描く構成、ジェットコースターのようなスリリングでスピーディーな展開、アニメーションやモノクロといった効果的な演出など、あらゆる面で突出したリミテッドドラマだ。
しかし最も衝撃的なのが、モミの同僚チュ・オナム役のジェホンである。オナムは幼少期よりいじめを受け、存在感を消すことを心がけてきた男で、モミにとっても空気のような存在。本物の女性とは目を合わせることができず、二次元の世界やライブ配信者に入れ込んでいる、要はキモオタだ。
原作の映像化はファンから厳しい目でチェックが入るが、ジェホンのオナムは「シンクロ率200%」と絶賛されるほどの再現度。外見に関しては、体重を10kg増やして太って見える装置を衣装に仕込み、まばらに薄い頭皮やニキビ跡で荒れた肌など、毎回2時間ほどかけてメイクを施したという。
また、日本語講師2人から細やかなニュアンスまで教えてもらい、“オナムっぽい話し方”を習得。絶妙なタイミングで呟く流暢な日本語が、オナムの異質感を浮き彫りにしている。「アイシテル!!」と絶叫する場面は鳥肌ものだ。
『マスクガール』同様、ジェホンの徹底的な役作りでも話題となったのが『リバウンド』だ。2012年、元バスケ選手カン・ヤンヒョンは突如、廃部の危機に瀕した釜山中央高校バスケットボール部の新任コーチに抜擢。寄せ集め部員6人と共に、全国大会で予想を覆す快進撃を続けて韓国内を驚愕させる。
そんな奇跡のような実話を映画化した作品でジェホンが演じたのは、作品の要となるヤンヒョンコーチ。コーチの考えを理解した上で現実みをもって表現するため、1週間で体重を10kg増やし、彼の行動や手の仕草、目つきなどを徹底的に研究。
当時彼が着ていた服を着て、髪型や小道具まで似せてみたという。前半、ヤンヒョンは新人コーチだからとなめられぬよう部員をシゴきまくって威厳を見せ、勝つことだけを目的とした指導で大失態を招いてしまう。しかし、そこで間違いを認め、生徒に対して涙を見せながら謝罪をする。少し不器用だけれど、心は熱い。そんな人間臭いコーチを、ジェホンも熱量をもって演じている。
ちなみに、部員6人を演じた若手俳優たちは、なんと6人中4人が競技経験ゼロ。全員が基礎からみっちりトレーニングを積み撮影へ挑んでいく中、ジェホンは実際に彼らの精神的な支柱に。特に試合のシーンではチーム一丸となって挑むため、本物のコーチさながら指示も出したという。
一緒に泊まり、一緒に食事をし、本物のバスケチームのように生活したキャストたち。そこで築かれた真の絆が画面越しに伝わってくるのも、本作の魅力たらしめる一つである。ロングテイクで撮ることにこだわったという試合風景も迫力満点。観に行く際は、ハンカチとティッシュをお忘れなく!
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序盤の数話だけでも目まぐるしい展開を見せ、先が全く読めないのも本作の魅力。1話80分というボリュームにもかかわらず、1話があっという間と感じるほど!
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