韓国ドラマの中でも、人気ジャンルの時代劇。史実に基づいた重厚な史劇に、アクション要素やタイムスリップなどのファンタジー要素を絡めたもの、甘く切ない恋模様にときめかずにはいられないロマンス史劇など多彩な作品が次々と登場している。
U-NEXTでは、今年5月に開催された第60回百想芸術大賞で2冠に輝いた『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』といった話題作をはじめさまざまな時代劇を配信中だが、そのなかから、今、活躍著しい男優たちに注目して作品をチョイス。現代劇とはひと味違った魅力を発揮している彼らの演技を通して、時代劇の楽しさに触れてみてはいかがだろう。
演技の神と称されるカリスマ俳優、第60回百想芸術大賞に輝いた大ヒットロマンス時代劇でも魅力を炸裂!
1636年の春、両班の娘ギルチェは、自分が思いを寄せるヨンジュンが親友ウネと恋仲であることにやきもきしていた。花摘み祭りの日、ヨンジュンの気を引こうと乗った鞦韆(しゅうせん=ブランコ)から落下しそうになるが、その時、抱き留めて助けたのがジャンヒョンだった。どこか得体の知れない男だったが、以来、ギルチェの前に現れる。そんなある日、清の軍隊が朝鮮に攻め込んできたという知らせが届き…。
清(後金)が朝鮮を侵攻した丙子の乱という史実を題材に、苛酷な戦乱の中で繰り広げられる男女の純愛を壮大なスケールと映像美でドラマチックに描く歴史ロマンス。韓国では放送開始以来、高視聴率を獲得して大ヒット。今年5月に開催された第60回百想芸術大賞のテレビ部門で作品賞と、主演のナムグン・ミンが男性最優秀演技賞を受賞するなど数々のアワードを制覇した。
ナムグン・ミンが演じるのは、突然村に現れた謎の男・ジャンヒョン。キレ者で話がうまく、村の老人や女たちの心をするっとつかむくせに、非婚主義でひとりの女性に縛られたくないと思っている。そんな彼が、世間知らずなお嬢様、ギルチェの天真爛漫さに惹かれていく。そして、「どこにいようと、必ずそなたに会いに行く」と言葉通りに戦火の中を潜り抜け、彼女のもとに向かおうとする一途な姿には胸を揺さぶられてしまう。
こんなロマンチストな男を演じるナムグン・ミンは『キム課長とソ理事~Bravo!Your Life~』『ストープリーグ』など数々の主演作をヒットに導き、コメディやシリアスなど多彩なジャンルとキャラクターをモノにするところから、“演技の神”と呼ばれてきた。とくに、今回のジャンヒョンのように、イマイチつかみどころがないのに、いざと言う時は頼りになるキャラクターというのは『ストーブリーグ』『わずか1000ウォンの弁護士』などお得意な役どころ。また立ち回りの美しさなど、アクションもイケるところは『黒い太陽~コードネーム:アムネシア~』『昼と夜』で証明済みだ。
ヒロインを務めるのは、『賢い医師生活』のアン・ウンジン。彼女演じるギルチェは運命の人との出会いを待ち望みながら、当初は目の前に現れたジャンヒョンを毛嫌いする。だが、苛酷な運命に翻弄されるなか、自分を愛し続けてくれるジャンヒョンを支えにして、苦難を乗り越え成長していく。幾度となくすれ違っても惹かれ合うふたりの愛がどんな行方をたどるのか、最後まで目が離せなくなるはずだ。
韓服姿もパーフェクトな演技ドルが挑んだ、呪われた世子の青春ミステリー時代劇
3年前、急死した兄に代わって世子になって以来、イ・ファンは「呪いの書」に悩まされていた。そんな彼の前に家族を毒殺した容疑をかけられたジェイが現れる。恩師の娘で大切な友でもある彼女の無実の訴えを聞いたファンは、男装したジェイを内官スンドルとして自分の側に置くことになる…。
謎の呪いに翻弄されている世子と、家族殺しの濡れ衣を着せられたヒロインが織り成す青春ラブミステリー。パク・ヒョンシク演じるファンは頭脳明晰で品格もあるが、呪いの書のせいで疑心暗鬼になり、気難しい人物になっていた。ヒョンシクは憂いを帯びた表情で孤独なファンの心の内を表現。抜群の推理力と洞察力を持つジェイと宮中に渦巻く陰謀や謎に立ち向かうなかで、ファンが聖君へと成長していく姿を丁寧に演じている。
バク・ヒョンシクは、ボーイズグループZE:A(ゼア)のメンバーとしてデビューした“演技ドル”。『力の強い女 ト・ボンスン』(17年)や、米ドラマをリメイクした『SUITS/スーツ~運命の選択~』(18年)など数々の作品に出演、今年はパク・シネと共演したラブコメディの『ドクタースランプ』(24年)が世界的に大ヒットし、俳優として勢いを増している。時代劇はバク・ソジュンと共演した『花郎<ファラン>』(17年)以来だが、長身の彼は韓服が似合い気品も漂い、惚れ惚れするほどだ。そんなヒョンシクと韓服姿で並んだ身長差でキュンキュンさせた男装女子のスンドルことジェイを演じたチョン・ソニは『寄生獣 ーザ・グレイー』(24年)の主演女優。そのほか、主人公たちを助ける仲間たちに、『私は堂々とシンデレラを夢見る』のビョ・イェジン、『砂の上にも花は咲く』のユン・ジョンソクらが出演しており、青春群像劇としての楽しさにもあふれている。
話題作に次々出演して存在感増す最旬男優、痛快ラブコメ時代劇でも沼落ちファン続出
7年前に妃を亡くし、新しい妃を選ぶために禁婚令を下した王ホン。そんな禁婚令のせいで恋愛も結婚もできずにいる若い男女のため、ソランは縁結びをして稼いでいた。ある日、婚姻詐欺の罪で捕まったソランは逃げたい一心で霊感のあるフリをしたことから亡き妃の霊を憑依させるハメになり、成り行きから女官としてホンの側で仕えることになる…。
朝鮮時代に行われていた禁婚令を題材に、亡き妃を一途に思い続ける若き王と婚姻詐欺師が繰り広げるラブコメ時代劇。王ホンは妃を亡くして以来、心を閉ざしているという設定で、演じるキム・ヨンデは王としての威厳を漂わせながらもふと浮かべる寂しげな表情で視聴者の母性本能をくすぐる。
一方で、ラブコメ要素満点の本作だけに、亡き妃が憑依するというソランのことを怪しみつつも、明るく機転の利く彼女に心惹かれて恋に落ちてゆく。側近との三角関係にやきもきする姿もあり、さまざまな感情を表現。結果、初の時代劇となった本作で、キム・ヨンデは2022年MBC演技大賞の優秀演技賞に輝いた。最新作『損するのは嫌だから』も注目を集め、さらなる飛躍が期待されている。
ちなみに、本作でソランを演じるパク・ジュヒョンは、チェ・ジョンヒョプと『時速493キロの恋』で共演し、日本の行定勲監督が演出を手掛けた韓国ドラマ『完璧な家族』で主演を務めている。タイトルの字面だけ見ると、堅苦しく感じられる本作だが、原作は漫画化もされた人気ウェブ小説。架空の国が舞台でファッションもポップで痛快。全12話、サクッと楽しめる内容だ。
『私の夫と結婚して』で世界的にブレイクした俳優の出世作、サブキャラながら、凛々しい姿に惚れ惚れ
ボンファンは大統領府専属のシェフだが、あまりに傲慢な俺様ぶりで反感を買い、何者かに陥れられた挙げ句、逃げる途中でプールに転落。気がつくと、そこは朝鮮時代、なんと第25代王・哲宗との婚礼を明日に控えた王妃ソヨンの体の中に魂が入り込んでいた。現代に帰るため、ソヨンとなったボンファンは得意の料理で宮中の人々の胃袋をつかもうとするが…。
現代の俺様男の魂が、朝鮮時代の王妃の体に入ったことから起こる“魂入れ替わり”の痛快ラブコメ時代劇。“国民の娘”と呼ばれ、近作『サムダルリへようこそ』も人気を集めたシン・ヘソンが『愛の不時着』で大ブレイクしたキム・ジョンヒョンを相手に、ガサツすぎる王妃を演じて爆笑を誘い、大ヒットを記録した。
そんな作品でナ・イヌが演じるのは王妃ソヨンの従兄ビョンイン。宮中で王権を掌握するキム一族の養子で、幼いころからソヨンを見守り続けてきた純な男だ。だが、彼女を心底愛しく思うからこそ、抑えきれずに口づけしてしまうなど、叶えられぬ思いが切なすぎる。しかも、ソヨンへの恋慕が強すぎるあまり、哲宗を敵対視し、権力闘争の中で暴走していく。
188cmの高身長で腕も立つ武官という精悍な姿を披露しつつ、複雑な感情も体現。決して単純な悪役では終わらせていないところが見ものだ。本作後、ナ・イヌは降板した俳優の代役で主演した『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』(21年)でも絶賛され、今年世界的なブームを巻き起こした『私の夫と結婚して』の部長役で大ブレイクした。いわば、この『哲仁王后』はナ・イヌにとって出世作。未見ならば、ぜひオススメしたい。
『ソンジェ背負って走れ』で世界中を虜にしたイケメン俳優、時代劇でも眩しいほどの伊達男ぶりで魅了
イケメン仲人集団“コッパダン”のリーダー、マ・フンは、鍛冶屋の息子キム・スから、幼馴染みのケトンとの婚礼を頼まれる。だが、当日にスが行方不明に。実は、彼は王の庶子で、王の崩御と世子の殺害事件が起きたことから、密かに王宮に連れ戻されていた。成り行きから、フンはケトンをコッパダンの見習いに雇い、スの捜索に協力することになるが…。
朝鮮時代にイケメン揃いの結婚コンサルタント集団がいたら…という発想から描かれた人気ウェブ小説をドラマ化したラブコメ時代劇。物語は、初恋を忘れられない王と幼馴染みの女子と、その彼女に惹かれていく仲介人の恋模様と、宮中の陰謀劇を軸にしながら、朝鮮時代の恋愛&結婚事情を描く。そんななかで、ピョン・ウソンが演じるのはコッパダンきってのモテ男で情報屋のト・ジュン。妓楼に出入りする彼は女性扱いも手慣れたもので、簡単に情報を聞き出してしまう。長身で色鮮やかなピンクの韓服をさらりと着こなす姿は、ひと際、華やか。一見遊び人のようだが、実は芸術的センスに秀でていて洞察力も深い。権力者のお嬢様と繰り広げる身分違いの恋もメインキャラ以上に甘く切なくやるせなく、その行方も気になってしまうはずだ。
今年メガヒットした『ソンジェ背負って走れ』で時の人になったピョン・ウソク。もともとモデル出身の彼は、2017年『ディア・マイ・フレンズ』で俳優デビューしたが、長く端役時代が続いた。ブレイクのきっかけは、パク・ボゴムの親友役を演じた『青春の記憶』(20年)。『コッパダン~』はその前年の作品で、『浪漫ドクターキムサブ』シリーズのキム・ミンジェ、『青春ブロッサム』のソ・ジフンら成長著しい若手実力派たちとの共演だけに興味深い。
3位はジェジュン主演のラブコメ『悪い記憶の消しゴム~My Memories~ 』